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不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
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101話【サクヤとメルティナ】



◇サクヤとメルティナ◇


 手足を穿(うが)たれて阿鼻叫喚(あびきょうかん)する傭兵(ようへい)達を尻目に。

 メルティナは呆然(ぼうぜん)とするサクヤに自己紹介を始めた。


「こんにちは。サクヤ……当機(とうき)名称(めいしょう)はメルティナ。メルティナ・アヴルスベイブです。これはお近づきの品です、お受け取りを」


 そう言ってメルティナは、両腕の大型リングを外す。

 それを(ちゅう)に浮かせ、左右に浮いた二つのリングは反対方向に回転し、不思議(ふしぎ)な光を放つ壁を作る。

 赤子サイズの(つつ)の様になったリングは、中で光子(こうし)を発生させて何かを形作っていた。


 この両腕両脚のリングは、メルティナの補助(ほじょ)ユニットでありながら、創作装置でもある【クリエイションユニット】と呼ばれる万能(ばんのう)ツールだ。

 成分(せいぶん)情報(じょうほう)をメルティナの記録媒体(メモリー)からロードして、記録されているあらゆるものを物体化する事ができる。

 この世界【リバース】の仕様上、魔力が消費(しょうひ)されるようだ。

 あっと言う間に作業(さぎょう)を完成させたのか、(ちぢ)んで連結されたリングの穴から、細長い(つつ)のような物が出てくると、メルティナはそれをサクヤに渡す。


「どうぞ」


 サクヤに渡したのは【解毒(げどく)アンプル】だった。

 固定されたスイッチを入れる事で(はり)展開(てんかい)し、そのまま使用できるものだ。

 元の世界では毒を持った生命体(せいめいたい)とも戦っていたメルティナ。

 パイロットスーツの上からも使う事が出来るこの【解毒(げどく)アンプル】はよく使われていたものであり、【M・E・L(メル)】としてマスター、ティーナ・アヴルスベイブをサポートしていたころからよく作っていた。

 消費(しょうひ)も少なく、メルティナの世界では割と安価(あんか)なものだった。


「……へ?」


 座り込んでいたサクヤは、ルーリアに(ささ)えられながらそれを受け取るが、使い方が分からずに眉根(まゆね)を寄せてメルティナを見る。


解毒薬(げどくやく)です。サクヤの体内で増殖(ぞうしょく)する毒性物質(ぶっしつ)【ウルゼリン】を除去(じょきょ)します……それをこうすると(はり)が出ますので注射(ちゅうしゃ)してください」


 メルティナは球体関節を鳴らし、身振り手振りを交えて説明するが。

 サクヤはチンプンカンプンで更に混乱(こんらん)する。


「うる……え?」


 ジェスチャーが下手なメルティナだった。

 単に身体の動かし方がまだ()れていないだけかもしれないが。


「む?……それを、こう……?どう?」


()してっ」


 見かねたルーリアが、その注射器を()(さら)って代わりに操作(そうさ)し始める。

 横にある小さなボタンを押すと、カシュッ!と下方から(はり)が飛び出した。


「おおっ!凄いなルーリア、わたしはさっぱり――っ!!ああああああああああっ!!」


 ルーリアの適応(てきおう)関心(かんしん)していたサクヤだったが、そのルーリアは何の戸惑(とまど)いもなく注射器の(はり)をブッスリとサクヤの青白くなった腕に刺す。

 (はり)はちゃんと血管(けっかん)に刺さっており、装置が起動(きどう)して勝手に薬液(やくえき)が注入されていった。


「ル、ルル、ルーリアっ!いきなり何なのだぁっ、ビ、ビックリするではないかっ!心の臓がバクバクしているぞぉっ!?」


 (はり)の痛みはほぼ無かったようで、痛みよりもいきなり行為(こうい)をされてことに(おどろ)いていたサクヤ。


「……ノー。サクヤ、それは毒の症状(しょうじょう)です」


 メルティナは、頭部(耳の付け根)の【高性能センサー】によって、サクヤの症状(しょうじょう)を的確に把握(はあく)している。

 (すで)に全身に回っているはずの猛毒【ウルゼリン】を、早く解毒(げどく)させるために(うなが)したつもりだったが。


「――分かっておるわっ!!」


 と、サクヤは目に涙を浮かべて声を上げたのだった。




 (さいわ)いにして、毒は()ぐに中和(ちゅうわ)されてサクヤの顔色は見る見るうちに良くなっていく。

 毒を中和(ちゅうわ)している最中(さいちゅう)、メルティナは周囲を警戒(けいかい)していたようだ。

 その中でも特にボルザは、何も言葉にできずにルーリアを見ていたが。

 ルーリアが、屋根に傭兵(ようへい)がいないことを確認して、ボルザに歩み()る。


「ボルザ……」


「お、お(じょう)さん……オレは、オレは……」


 ルーリアを叩いてしまった(こぶし)(にぎ)り、自分がしてしまったことを()やむボルザ。


「ボルザ、立って」


「お(じょう)さん?」


「いいから、ほらっ」


 ボルザの手を取り、無理矢理立たせる。

 ルーリアの顔には笑顔が見え、ボルザは「許された」のだと思い、ルーリアを()きしめようと前に出る。が。


「――この、馬鹿垂(ばかた)れがぁぁぁっ!!」


「お(じょ)――へっ……?――ぶっっ!!」


 ビンタではない。グーだった。

 ――ルーリアは、渾身(こんしん)のグーで(なぐ)ったのだ。


「いだぁぁぁぁぁい!」


 (なぐ)られたボルザは、ひっくり返ってルーリアを見る。


「――お、お(じょう)さん……」


 一方(なぐ)った側のルーリアは、手をひらひらとさせて痛がる。

 物凄く痛がる。


「ゆ、許すとは言わないけど……さっきぶったことは無しにしてあげる」


 そっぽを向きながら、半テレで言う。


「……はは、ルーリア。やるではないか……よっ……と!」


 サクヤは、ルーリアのお嬢様らしくない行動に誰かを連想(れんそう)させながらも、立ち上がりボルザに言う。


「お(ぬし)がルーリアを大切にしていることは(つた)わった……だが、選択(せんたく)は間違いだったな」


「……!くっ……」


 ボルザは、恋仲(こいなか)であったルーリアとの関係をルーリアの父、デトリンクに(とが)められ。(はな)(ばな)れにされた。

 デトリンク・シュダイハは、娘には死んだと(つた)えておいて、裏ではボルザを自分が仕切る店の支配人(しはいにん)としてこき使っていたのだ。


 ボルザは、ルーリアが屋敷(やしき)(だっ)したと知らせを聞き、助けるためになけなしの金で傭兵(ようへい)(やと)ったのだが、その傭兵(ようへい)達は二重契約で子爵からも依頼(いらい)を受けていた、だからボルザの指示(しじ)を聞かなかったのだ。


「ああ……そうだ。そうだな……オレは間違ったんだ。自分の危険を(かえり)みて、お(じょう)さんを(あきら)めたんだ。でも……これが最後のチャンスだと思った」


 ボルザは、ルーリアに殴られた(ほほ)(さす)りながら(くや)しそうに続ける。


(すき)を見てお(じょう)さんを助けられれば、その後に(いく)らでも王都を逃げることが出来るんじゃないかって……」


 デトリンク・シュダイハ子爵はボルザを殺さず、気概(きがい)があると()めて重宝(ちょうほう)した。

 かなりあくどい事もしてきたのだろう、顔や身体は傷だらけで、元々使用人だったとは思えないほど無骨(ぶこつ)になっていた。


「ボルザ……私は、貴方(あなた)は死んだと思って……お父様も、セイドリックも……貴方(あなた)は死んだ、忘れろって……理由も、何も教えてくれなくて……うぅ、うっ……」


 だから、先程顔を見たときは本当に(おどろ)いた。

 ルーリアは、ボルザにしゃがみ()って涙を見せる。


(そうか……この男が、ルーリアが自暴自棄(じぼうじき)になっていた理由の一つでもあったのだな)


 サクヤは笑う。

 だがしかし、この状況(じょうきょう)解決(かいけつ)したわけではなく、あくまでも一時凌(いちじしの)ぎにしかならない。


「はぁ……これからどうするべきか……そうだ、めるてな殿」


「メルティナです。サクヤ」


 名前を言えないサクヤに、メルティナは()ぐに訂正(ていせい)する。


「う、すまぬ……めるて、いな……殿?……心の中では言えるのだが……むむぅ」


 回らない舌に、腕組みして(うな)る。


「……では、メルで構いません」


 メルティナが計算(けいさん)したところ、サクヤが横文字の長文をすんなり言えるようになるまで、五日かかると出たため。メルティナと呼ばせることは断念(だんねん)した。


「それでサクヤ。()いは何でしょう?当機(とうき)としては、すぐにこの場から離脱(りだつ)することを推奨(すいしょう)(いた)しますが……」


「助かる、メル殿!!それでだな、わたしもそれを言おうとしていたのだ!……見るに、メル殿がここに居るのは、あの牛乳(うしちち)――ではなく、ローザ殿の差し金であろう。ローザ殿は何か言ってはおらぬのか?」


 名前の略称(りゃくしょう)に感謝し、メルティナに同意(どうい)するサクヤ。

 周りを見ながら話すあたり、やはり感はいいのだろうとメルティナは思った。

 それにしても、本人が居ない所でそう言う呼び方をしているのか。知られたらどうなることやら。


「イエス。もう(すで)に数十の反応が近づいています。(ちな)みにですが、当機(とうき)対象(たいしょう)全てをデリートするには、二十八分(よう)します」


「わ、わたしが手伝えばどうだ?」


「ノー。逆に所要(しょよう)時間が増えます。端的(たんてき)に言えば、今のサクヤは、足手纏(あしでまと)いです」


 機械的な答えに「ぐぅ、端的(たんてき)すぎであろう!」と言いつつも、それでも自分で理解しているのか反論(はんろん)はしなかった。


「もう一つの問いですが。ローザは、マークスと言う人物のところに行け。そう言っています」


「……【鑑定(かんてい)師】殿のもとに……?しかし……どうやって行くか、だな」


 サクヤは、目視(もくし)出来た傭兵(ようへい)(やと)われ騎士の援軍に、口の(はし)を吊り上げて薄笑(うすわら)いを浮かべる。


「……ノー。戦っている時間はありません。当機(とうき)には目的があります。ですので、サクヤ。それからルーリア……後そこの男性、当機(とうき)搭乗(とうじょう)……いえ、(つか)まってください。飛びます」


 大型ロボットのサポート【M・E・L(メル)】であった頃の対応が抜けず、乗れと言いかけるも。

 メルティナは背中のウイングバインダーを再展開(てんかい)する。


「――おぉっ!?」


 ガシャン!と、背中から脚付近まで展開(てんかい)し、足を掛ける場所が露出(ろしゅつ)する。


「サクヤとルーリアは、ここに足を掛けて、当機(とうき)の背中に手を。無傷の貴方(あなた)は……根性で(つか)まってください」


「お……おう……」


 随分(ずいぶん)と雑な(あつか)いだが、キチンとボルザも助けてくれるらしい。

 それにしても、根性とはまた機械的では無い。


「こ、これでいいのかしら……」

「多分な……わたしも分からぬ」


 メルティナに(つか)まったサクヤとルーリアは、不安(ふあん)げに見合う。

 ボルザも、何が何だか分からないままにメルティナの脚に(つか)まっている。

 顔は臀部(でんぶ)に近く、ほんのり顔を赤くするボルザ。


「――なんでしょう……この感覚(かんかく)は……いえ、では、行きます」


 メルティナは不快(ふかい)そうな顔をしつつも、背中のブースターには火を入れず、ウイングバインダーの出力と、脚のジェットブーツ、両手の大型リングからエネルギーを噴射(ふんしゃ)すると。


「――テイクオフ!!【ランデルング】!」


 と、抜けない大型ロボットの発進シーケンスを行い。

 ――大空に飛び立った。


「え?……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっっっ!!」

「――あああああああああっ!!」


 サクヤは、飛ぶ=跳躍(ちょうやく)だと思っていた。

 まさか、文字通り空を飛ぶとは、思いもよらなかったのである。

 (たと)え、メルティナが空から降下(こうか)してくるのを目撃していても、だ。


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