表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇召喚師と異世界の少女達~呼び出したのは、各世界の重要キャラ!?~  作者: you-key
第1部【出逢い】篇 3章《近未来の翼》
105/383

間話【翡翠の世界の人工知能】

ルビの間違いを修正しました。



翡翠(ひすい)の世界の人工知能◇


 ここは、とある世界の宇宙領域(りょういき)

 戦場の(あと)が残り、ボロボロの小惑星(しょうわくせい)やコロニー、宇宙戦艦(せんかん)(しず)(ただよ)っている。

 人類が宇宙に進出したのは、星の侵略者(しんりゃくしゃ)、【惑星外生命体(グリューン)】との戦いの為だった。

 侵略(しんりゃく)にて故郷(こきょう)を失った人類は、宇宙に出て十年以上戦い続けた、人類はようやくの勝利を(つか)むが、それ以上の被害に(さら)されて。

 結局、自らの星に帰る事すら出来なくなっていた。

 ――そして。




 【宇宙艦(スペースシップ)小型艦(リトルルンガ)級】【三番艦リトルリーズ】。

 その格納庫。


当機(とうき)凍結(とうけつ)は……()けられないのですね……マスター・ティーナ』


 自分の座席に座る女性に機械音声は(かた)りかける。

 その音声を聞きながら、カタカタとキーボードを鳴らして何かを操作(そうさ)する女性。


 全長二十メートルの人型兵器、【機動兵装ランデルング】

 その補助(ほじょ)人工知能として搭載(とうさい)されたシステムインターフェース【M・E・L(メル)】。


 マシーン・エレメンタル・ロードの(りゃく)惑星軍(わくせいぐん)(ほこ)最新鋭(さいしんえい)兵器だった。

 女性の行っていた操作(そうさ)は終了したのか、ブーッ!とエラー音と共に赤いランプが点灯(てんとう)する。

 これはもう、何度も()り返した工程だった。


「……ごめんね、メル……長年あなたを使ってきておいて、いきなりこんな……本当に申し訳ないと思ってる。でも、たった二時間じゃ……私にはなにも……」


 戦争が終結(しゅうけつ)し、上層部(じょうそうぶ)の決定で、【機動兵装ランデルング】の破棄(はき)搭載(とうさい)インターフェース【M・E・L(メル)】の全機凍結が下されたのは、(わず)か二時間ほど前。


 その二時間で、惑星軍(わくせいぐん)のパイロット、ティーナ・アヴルスベイブは、自我(じが)が目覚めつつあった自分の愛機(あいき)だけでもバックアップを取ろうと考えたが、どのシステムやツールを使ってもエラーを()くの()り返しだった。


 ティーナは()し目がちになると、(むす)ばれた一房(ひとふさ)の髪が肩から落ちる。

 サラサラの金髪は(むな)しくしな()れ、空色の(ひとみ)からはぽたぽたと涙がシートに(こぼ)れていた。


『……』


「私は、あなたの友達(パートナー)なのに……」


 ティーナが座るコックピットのモニターには、【error(エラー)】と書かれており、時間ギリギリまでティーナが悪戦苦闘(あくせんくとう)した結果だった。


残念(ざんねん)ながら結果は変更できません。マスター・ティーナ、当機(とうき)から下りることを推奨(すいしょう)します』


「……何を、するつもり……?」


 ティーナは、【M・E・L(メル)】の行動を理解できなかった。


『マスター・ティーナが、当機(とうき)のシステムにジャマーを掛けて時間を(かせ)いでいた事は。(すで)上層部(じょうそうぶ)(ぞん)じているでしょう……このままでは、マスター・ティーナは処分(しょぶん)される恐れがあります。ですので、当機(とうき)がこの(かん)を乗っ取ります』


「――!なっ、メル……あなた!」


 その【M・E・L(メル)】の機械的な音声(こわね)でも、理解する事が出来た。


『はい。この(かん)をジャックして、逃亡を推奨(すいしょう)します。都合のいい事に、現在この(かん)搭載(とうさい)されている【ランデルング】……【M・E・L(メル)】は当機(とうき)だけです。警報(けいほう)も鳴らし、クルーは現在脱出中です。時間は二分もかかりません。【小型艦(リトルルンガ)】なのが(こう)(そう)しましたね』


「――そうじゃなくてっ!メルっ……!!」


 ティーナはモニターにガッ!!と(つか)みかかり。


「そんなことをすれば、あなたはっ!!」


『はい。凍結処理(フリーズ)では()まないでしょう……スクラップが妥当(だとう)かと思われます。ですが、マスター・ティーナが逃亡出来ます。この行動で逃げられる確率は99%です』


「逃げられたって、あなたが……」


 ドンッ!――と機材(きざい)を叩くティーナは、本気で(くや)しんでいた。


『マスター・ティーナ……お逃げください。当機(とうき)を助けたいという行為(こうい)は、大変不合理(ふごうり)です。危険は見ての通り。現在【小型艦(リトルルンガ)級】が三隻、エンジンに火を入れました……後90秒で起動(きどう)します』


 ゴゴゴゴゴ――と、ティーナが乗っている【小型艦(リトルルンガ)】も動き出して、クルーもいなく、指示(しじ)も出していないのに行動を()こす。

 【M・E・L(メル)】が遠隔操作(えんかくそうさ)をしているのだ。


「待って!もう少しっ!!」


『ノー……時間は(すで)にありません。マスター・ティーナの身の保証(ほしょう)(いた)します。ですので、これ以上の抵抗(ていこう)は止めてください』


抵抗(ていこう)って……なんでそんなことを……」


『この(かん)だけでも、備蓄(びちく)は三年分はあります。クルーは全員下船(げせん)()ましましたので、マスター・ティーナだけが生きていく分だけだとすれば、もう十年は平気でしょう』


「私一人が生きていても意味はないわっ!!」


 【M・E・L(メル)凍結(とうけつ)邪魔(じゃま)をしたという行為(こうい)軍規違反(ぐんじいはん)だ。

 ティーナは無事では済まない。確実に銃殺(じゅうさつ)だ。

 それを、【M・E・L(メル)】――メルは(ゆる)さない。


『近くの宙域(ちゅういき)に、小さな惑星(ほし)があります……未開惑星(みかいわくせい)でしょうが、人間タイプが()んでいると結論(けつろん)出来ました。当艦(とうかん)はその星に向かっています……ですので』


 メルの言い(ぶん)を、ティーナは聞きたくないようで。


「一人が(いや)になったら、その星に行けって言うのっ!?馬鹿(ばか)言わないでよっ、メル!」


馬鹿(ばか)貴女(あなた)です、マスター・ティーナ……』


「は、はぁっ!?」


 【M・E・L(メル)】との付き合いは(すで)に五年。

 初めて歯向(はむ)かわれた。


当機(とうき)のブラックボックスをバックアップする(ため)だけに、危険を(おか)してまで軍に違反(いはん)する――馬鹿(ばか)でしょう?』


 ぐうの音も出ない正論(せいろん)に、ティーナは。


「……それでも、私はあなたといたかった……」


 (すが)るものがない状況(じょうきょう)で、ティーナは自分の身体を()く。


『……イエス。当機(とうき)もですよ……マスター……サヨウナラ……――我が友』


 ――ガチャン!!と、緊急脱出(きんきゅうだっしゅつ)装置が作動した。


「はっ!……待って!メル!!メ――」


 メルはコックピットブロックだけを射出(しゃしゅつ)し、飛ばされたコックピットは格納庫内にドスンと落ちる。


『……』


 大事なマスターの生命を確認したメルは、保持されていた武装を装着して、(かん)のハッチを開ける。


追跡艦(ついせきかん)は三隻……撃破までに三分を(よう)します。(かん)は加速して、マスター・ティーナを安全圏(あんぜんけん)に』


『……了解(りょうかい)いたしました』


 機械音声はメルの指示(しじ)を受け、(かん)の速度を上げる。


『後……出来れば、マスター・ティーナと友達に……いえ、言っても無駄(むだ)でしたね……』


『……』


 自我(じが)が目覚めた人工知能は、(かな)わぬ願いを(かん)のコンピューターに願い、出撃する。


 ――三分後。追跡艦(ついせきかん)と、搭載(とうさい)された同型機の【ランデルング】を撃破したメルは、軍の強制自爆(きょうせいじばく)コードを入力されて、宇宙に()った。――はずだった。




 (なぞ)の空間で、メルは再起動(さいきどう)した。

 人間が(まぶた)を開ける様に、ゆっくりと開かれた(ひとみ)は、機械の様にキュイーンと音を鳴らす。


『ここは……スキャン開始……。……。判別不能』


 システムは正常だ。

 しかし、システムだけで機体を動かしていたはずの操作(そうさ)では動かなかった。


理解不能(りかいふのう)……当機(とうき)は、自爆(じばく)を……』


「カラダノグアイハドウカナ?ミチノキカイセイメイタイヨ……」


 謎の声に、メルは咄嗟(とっさ)に振り向く。

 球体関節がキュンっと音を鳴らし、腕を振りぬく。


 ――バチィィィッ!


 (はじ)かれ、()き飛ばされるメル。

 受け身は取らず背中のブースターを展開(てんかい)しようとしたが、うまくいかずに背中から落下する。


『グッ!!……こ、これは……?何故(なぜ)当機(とうき)にダメージが……』


 何も無い(はず)の空間に手を付き、自分の視線(しせん)(おどろ)く。


『……手?……当機(とうき)は、機械の……これでは……まるで人、間?』


 システムインターフェース【M・E・L(メル)】は、機体が正常に動かないことではなく、自分の機体がまるで、()()()()になっていることに気付く。


『……これが、マスター・ティーナが言っていた。()と言うものでしょうか』


 ティーナが聞いていたら、大変喜びそうな言葉に反応したのは、(なぞ)の声の(ぬし)だ。メルを()き飛ばした張本人。


「サスガニ、トツゼンノコウゲキニハオドロイタゾ……」


 球体関節のモーターを回転させて、メルは立ち上がる。

 どうやら、人間の様なボディの中に機械がある二重構造らしい。

 俗に言う【アンドロイド】だ。


『そちらの所属(しょぞく)はどこでしょう……当機(とうき)は、惑星軍(わくせいぐん)第三部隊――』


「ナニヲイッテイル……ココハ、モウキミノシッテイルバショデハナイヨ……」


『……?では、ここの座標(ざひょう)は、どこでしょうか……』


 何度検索(けんさく)しても、現在地の座席(ざひょう)が表示されず、システムが困惑(こんわく)する。


「フム。マアイイ。キミニハサプライズ(・・・・・)ヲアゲヨウ。イキタマエ……マスター(・・・・)ガ、マッテイルヨ……」


 謎の声の人物の不審極(ふしんきわ)まりない言葉に、機械のハートが不覚にもドキリとさせられ、メルは(ひとみ)を閉じる。


『行動を停止(ていし)してくだ――』


 言い切る前に、謎の声の人物は手?を(かざ)して、メルの足元に魔法陣を展開(てんかい)させる。

 魔法陣は、メルに幻影(げんえい)のようなものを見せる。


『これは……システムが……エラーをっ!!』


 少年と少女が、笑いあっている。

 数人の男女がそれを取り囲み、共に大喜びをしているように見えるた。

 しかしその中に。


『……――マスター・ティーナっ!!』


 メルは、その中にマスター。ティーナ・アヴルスベイブがいることに気付き、手を伸ばす。


「サア、ナンジノナヲノベヨ……」


 メルは名を(さけ)ぶ、自分の名、そしてマスターの名を。


『メル……――ティーナ・アヴルスベイブ……!』


 本当は「メルはここにいます。マスター・ティーナ・アヴルスベイブ!当機(とうき)は、ここに」と言うつもりだったはずなのに。

 魔法陣の光と熱で、言葉を(つむ)げなかったのだ。

 ()れない人間の身体は、思ったよりも苦労(くろう)しそうだ。


「メルティナ・アヴルスベイブ……【リバース】ヘヨウコソ!!」


 そうして当機(とうき)、システムインターフェース【M・E・L(メル)】は。

 意図(いと)せずに、誰とも知らぬ者のもとへ――送られたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ