第四話
めでたく最初の神器を手に入れた俺たちは、報告も兼ねて一度ギルドに戻ることにした。
「ほう、これが神器…鎌ってことは、風の神器だな。どれ、ちょっと貸して…」
「あっ、触ったら…!」
「ん?どうした?」
アルスが握ろうとした時には弾かれたのに、ジャンは神器を簡単に握った。
「私の時には弾かれたのに…なんで…」
「俺は選ばれし勇者じゃなかったのか…」
「二人とも違う理由で落ち込んでる…まぁでも、早速神器が手に入ったのは素直に喜ぶべきことじゃないかな?」
サトシは俺たちを励ましてくれているようだった。確かにこんな簡単に手に入るとは思っていなかった。
「よくわからんが、とりあえずよくやった。これで一歩前進だな。しばらく休んだら早速次の目的地を目指してくれ。今回は場所も近かったし、たまたまうまくいっただけかもしれん。準備は怠らないように」
「今度はどこを目指せば…?」
「そうだな…」
ジャンが悩んでいた時、ジャンに端末に通知が入った。
「…なんだと!?すまんお前たち…今すぐミーミルの泉に戻ってくれ!」
「何があったんですか?」
「ミーミルの泉が襲われたらしい…」
俺たちは急いでミーミルの泉に戻った。そこはついさっき見た景色とは違っていた。
木々は燃え、泉は水位が極端に減っていた。ドラクロワの小屋も、見る影もなくなっていた。
「これって、もしかしてサタン…」
「覚えててくれたのか、こいつは光栄なことだ」
突然背後から声が聞こえ、俺たちは慌てて振り返った。
「なんでこんなことを…!」
「なんでって、そりゃ俺を怒らせたらこうなるぜ?」
「ドラクロワさんはどこだ!」
「どら…あぁ、さっきの変な喋り方のやつか。それならそこらへんに転がってんじゃねぇか?なに、殺しちゃいねぇさ。まだ、な」
俺は辺りを見渡した。すると少し離れたところにドラクロワが倒れていた。俺たちは慌てて駆け寄った。
「ドラクロワさん!?」
「おう、ボウズか…すまんな、こんなみっともない姿見せてしもて。ちと油断したわ」
「もう大丈夫です、今応急処置を…」
応急セットを取り出そうとした時、アルスの悲鳴が聞こえた。
「アルス!?」
「ボウズ、行ってやれ。俺は大丈夫やから」
「…わかりました」
ドラクロワに言われ、俺は急いでアルスの元に向かった。
「いやぁ、あいつの相棒っぽいからもっと強いもんだと思ってたんだがな。ちょっとどころか、かなりがっかりだよ」
「くっ…私じゃ敵わない…このままじゃ…」
「残念だがお前に用はない。サヨナラだ」
サタンはアルスの頭を掴んで持ち上げた。このままではアルスが殺されてしまう。俺は持っていた神器でサタンに斬りかかった。
「その手を離せ…!!」
「おっと、そんな物騒なもん振り回す…な…?」
アルスの頭を掴んでいた手は、攻撃をかわした衝撃で離してしまったようだ。しかし、だとしても様子がおかしい。
「お前、なぜそれを…!」
「これを知っているのか?」
「知っているも何も、そいつは…いや、おもしれぇから教えてやんね。まぁ、せいぜい足掻くんだな」
「おい、待て!また逃げる気か!」
俺はサタンを追いかけようとしたが、駆け出した時にはすでに姿を消していた。
「くそ、なんだったんだ…」
「ユーク!」
「アルス、大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫…それより、ドラクロワさんが…」
アルスにそう言われ、俺はドラクロワの方を振り返った。
「なんやボウズ、そんな焦らんでも俺は大丈夫や言うたやろ」
「だとしても回復早すぎない!?」
俺はドラクロワを見て驚いた。傷一つないどころか、まるで何事もなかったかのような顔をしていた。
「俺たちデラゴンは超回復力を持った種族やからな、即死以外はかすり傷や」
「すごい…そ、それはそうと、サタンはどうしてここを襲ったんだ?」
「恐らく神器の奪取が目的やったんやろうけど、ここにはもう無いとわかった瞬間辺りを燃やし始めたんや。俺も止めようとしたんやけどな、敵わんかったわ」
サタンも神器を狙っている…その情報で俺たちにはもう時間がないと言うことがわかった。
「そう言えばサトシは?」
「ここにくる途中ではぐれちゃったみたいだけど…迷ってるのかな?」
俺たちは周囲を見渡してサトシがいないか探した。すると、少し離れたところからトボトボ歩いてくるサトシの姿が見えた。
「あ、あれぇ…もう終わっちゃった?」
「遅いよサトシ。何してたの?」
「ごめん、途中で迷っちゃって」
サトシは意外とおっちょこちょいらしい。
俺とサトシは周辺の消火活動、アルスは念の為ドラクロワのフィジカルチェックをすることになった。
アルスは今でこそ戦闘任務に就いているが、医療チームに所属していた経歴がある、戦闘も救援もできる有能な人材である。
「大丈夫やって言うとるのに…あのボウズは心配性なんやな」
「そこがユークのいいところなんですけどね。でもドラクロワさんは超回復力があるからと言っても、もう少し自分の体大事にしてくださいよ?」
「嬢ちゃんにそれ言われちゃ敵わんな」
「サトシ、そっちどうだ?」
「順調だよ。ユークは終わったみたいだね」
「あぁ、手伝うよ」
サタンの襲撃は思ったより被害が少なく、俺たちの手だけでも鎮火できそうだった。とはいえ、ドラクロワの住んでいた小屋や祠まではどうにもできなかった。
消火活動を終えた俺たちは、アルスたちの元に向かった。
「アルス、お疲れ様。調子はどう?」
「うん、あれだけの傷を受けてもびっくりするほど絶好調みたい。まさに不死身って感じ」
「不死身とはちゃうわ。即死以外はかすり傷って言うたやろ?」
ドラクロワの元気そうな姿に、俺たちは改めて驚かされた。
それから俺たちは、ギルドに戻ってジャンに状況を報告した。
「そうか、やはり奴が…神器の存在もすでに把握済み、と言うわけか」
「何が何でも、奴より先に神器を回収する。それが俺たちの使命…ってことですよね」
「さすがユーク、理解が早くて助かる。だが無理は禁物だ。今日のところは帰って休んでくれ」
そう言われ、俺とアルスはギルドを出てそれぞれの家に帰った。
「…それで、どうするつもり?わかってるんでしょ、あれの存在。このままだとまた同じことを繰り返すことに…」
「わかっている。だからこそあいつをこの任務に就かせたんだ。お前こそあまり出しゃばりすぎると…」
「わかってるよ。もう二度と、失敗はできない」
「あぁ、失敗…それ即ち、滅亡」
「急いては事を仕損ずる…だけど、先んずれば人を制すとも…彼はどちらに転ぶか、楽しみだね」
「そうだな。あいつなら、若しくは…」