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ギニア王国の始動、エミリヤの正体は?

母キャサリンを待つミカ

二千七年夫の誠を仕事に送り出した良子はルンルン鼻歌を歌いながら台所で楽しい料理、シチューを煮て肉を焼いていると美味しそうな匂いが漂い女の子が目を覚ました。ーおふとんから起き上がりキョロキョロー「ここはどこかな」

「あなたもう起きたの?」良子は女の子がもぞもぞ起き出したのに気づいて部屋戻るとちょこんと毛布にくるまっていたー。

「叔母さーんウン」

「お目目が覚めたようね、お食事の前にお風呂に入ろー」良子は裸の女の子の手を引いて浴室に入り湯舟にドボーン、キャッキャ女の子は暖かいお湯につかりはしゃいだ。

良子は丁寧に女の子のカラダを洗いー出ると洗濯してきれいになったお洋服を着せてニコリ。

「さあ―お食事よ」

女の子は美味しそうに食べているのを見て良子は手放したくないと思った。

「だめよーこの子にはお母さんがいるのだから」

食事が終わると良子はろくろを回し、女の子は窓にすわって眺めている、

「あなたーお名前は」

「あたいの事?ーミカよ」

「フーン可愛いお名前ね」

「ウンお母さんが付けてくれたの―お母さんお舟に乗っているのよー」

ミカは思い出しているのかお母さんの話に夢中になったが誰か来た。

「こんにちはー民生局の高田です、女の子を預かっていると聞きました」

良子はスタスタと玄関に行きドアを開けると女性が立っていた。

「親御さんは分かりましたか」良子は聞く。

「いえー調べますから女の子に会わせてください」

「どうぞお入りになって、ミカちゃんいらっしゃい」

ミカは部屋から走り出て来ると良子に抱き着いた。

ーこの子ねソラリスの子供だわー高田はミカの顔を見て思った。

「この子よーお母さんは船に乗っているそうなの、早く連絡してあげて」

「わかりましたわー、お嬢ちゃんお手て見せてくれるかな」

ミカは手を出すと係官は端末のような装置をちょこんと当てる、一瞬に数十兆の遺伝子情報の中からミカの母親の遺伝子を探しだした、

「分かりましたわ、ソラリス軍の関係者ですから直ぐに勤務先に連絡して迎えにきてもらいます、それまでこの子をお願いできますか」

「いいわよー早く迎えに来てね」

高田が帰ってミカはお母さんが来るのをヒヨコと遊びながら待っていた時、最後の植民船が無事にギニアに到着した。


再出発

地球で最後まで戦っていた防衛隊のメンバーがギニアに到着したとき、幸子はソラリス王国から顧問団を招聘し国作りに邁進していた。

国の形は井上やクラークが送り込んだ行政の専門家の協力で枠組みは出来つつあったがソラリスからの資本誘致が進まない。

「これでは予算がつくれないわー」幸子は途方に暮れていた。

「陛下ーソラリスでは借款の用意がありますがご利用しませんか」顧問団の団長グリトフはベニーから預かった融資資金五兆トーラーがあると暗に知らせた。

「グリトフ団長ーありがとう、でも今一度考えてみますわ」

幸子は白瀬グループのメンバーをグリジア庁舎の会議室に呼び集めていたが国防軍出身の三浦大佐は司令部で艦隊設立の会議をしていた時幸子の呼び出しと聞きぶつぶつ言いながら庁舎までやって来た。

「この忙しい時何の用があるんだ」

もとはホテルだから一階のエントランスは豪華、天井から吊り下げられていたシャンデリアを眺めキョロキョロしていた時出しゃばりの藤田は迷子になっていないか探しに来ていた。

「あいたー大佐なにしてるのよーみんな集まっているわよー」

「ああー藤田さんか」

「さあーいくわよー」藤田は三浦の手を取って歩き始めエレベーターで十二階の会議室に入ると三浦はジロリ見渡した

「なんだー代わり映えのしない顔ばかりだなー」

「三浦ーつべこべ言ってないで席につけー」宮城少将が叫ぶ。

どうやら三浦が最後らしい、席に着くと今井少将兼侍従長が号令をかけた。

「女王陛下御入室ー」扉が開き黒のワンピースを着た幸子が二十歳になったピンクのドレスにダイヤの髪飾りをつけた智子を連れ入って来た。

「皆さん忙しい時お呼びだてしてごめんなさいね、今日はご相談したいことがあって集まってもらいましたの」幸子は会議室にいる全員の顔を見ながら告げた。

「テーマ―はお金よー、国の金庫は空っぽなのー、何とかしたいのだけど皆さん案はありませんか」

「陛下ー資本を呼び込むというのは上手く行きませんでしたか」

「そうなのーソラリスからの資本は無理みたい、それでギニアから採れる売り物は金属だけよねー江田資源エネルギー省長官金物の生産は増やせませんか」

「陛下ー増産は可能ですがすでに需要は満たしています、これ以上採れば暴落してしまい意味がありません」

「そうなのー国内の建設が進まないのよねー」

「陛下ー国民は建設より明日の食料を得るのに精いっぱいで、それを解決できれば国内の建設は進められます」

「船で魚を取ればいいんじゃないかなー」川村文部省長官がつぶやく。

「川村長官ー漁業船団は休みなく働いています、これ以上採っても冷蔵倉庫が不足して腐らせるだけですー」田口農水省長官は目をつり上げ吠えた。

「あなたたちいがみ合わないで」

「陛下問題はコメや麦の収穫量が需要の半分もないことで国民への配給量を抑えざるえません」

「なんですってー備蓄があるでしょうーなぜ出さないのです」

「陛下ー現在全国に一億トンの備蓄がありますがそれを放出すれば五年でカラになってしまいます」

「何を言っているの―五年分あるのなら国民のお腹を満たしなさいよ」

「ですがー備蓄がなくなりますがー」

「ほほほほ何を言うかと思えばそうなのー備蓄がなくならないようー作ればいいのよ、国民のお腹を満たせば建設が進みますわ、あなたたちはそのために今の役職についているのよ、五年あるのよーその間に解決できないと考えるのなら職から身を引きなさい」

会議は行き詰った時左右をキョロキョロみていた水野博士は小さく手を挙げた

「博士何かしら」

「はい陛下ー小生は陛下の命令で惑星の調査をしていますが、数日前第八惑星が金でできているのを発見しました、単位当たりの金含有量が通常より一千倍も含まれております」

「本当ですのー」

「はいこれをご覧くださいー惑星表面はドライアイスの層で覆われていますが取り除けば金色に輝く岩石です」

水野は持ってきた袋からこぶし大のキラキラと輝く石を取り出し幸子の前に持ってきた。

「すばらしいですわー金は流通させても経済に影響がありませんしそのままトーラーの替わりになりますわ」

「陛下ーその事実が漏れると銀河から盗掘に押し寄せてきますから軍を配備するのを進言します」

「三浦大佐そのとおりですわ、直ちに編成し向かわせてください」

金が見つかったと聞いた幸子はランラン気分、三浦に艦隊の派遣を命じると田口長官を睨み命じた。

「田口長官ー国民に備蓄を放出しなさいお金のない人には無償で配るのです」

「あわわ陛下こんな大ごとになるとはーもし間違っていましたラー」

「博士ー違ったらやり直せはいいの、あなたを罰したりしませんわ」

会議が終わり三浦は司令部に戻ると急遽第八惑星警備計画の実施を幕僚会議にかけた。


吉川長官は経済省に戻ると部下に休眠状態の製鉄やセメントのプラントを動かす人員の確保を命じた。

「長官ーどのように集めればいいのですか」

「山本局長ー国民に従業員には給与のほかに食料を供給すると伝えろ、そうすれば安心して集まるぞ」

「長官―それが可能になったのですね」

「そうだーみんなに心配かけたけど食料を購入する目途が立ったのだよ」


キャサリンの帰還

ギニアが国として動き出した時銀河本体へ七千光年行ったソラリス星にキャサリン中佐を乗せた巡洋艦クリオが降りた。

キャサリンが所属する部隊の兵士五千名が整列し号砲を合図に敬礼する中を艦から棺が降ろされる。

ベニーとリリカが黙とうする前を静かに棺は進み葬儀場へ向かうがベニーは部隊司令官に尋ねた。「中佐いいえ准将の娘さんはどうしました」

「ハッ王妃様ーただいま行方を捜索しております」

「何ですって―どういうことですか誰が世話をしていたのですか」

「申し訳ありません、地球では災害の混乱で住まいに迎えに行ったときにはどこかに行った後でしてー」

「なんということなのー、幼い子を一人にしていたの呆れたわ、なんとしてでも見つけ出しなさい、准将が亡くなった今わたくしには残された子を育てあげる義務があります」

「王妃様必ず見つけ出しますので暫く猶予を」

マコード司令官はベニーの怒りを解くように低頭に謝り其の場を離れたが途方に暮れた「日本はもう炎のなかだ、もし残っていたのならもう命は無くなっている、職を辞さなければならんのか」考えながら司令部に戻るが連絡士官のツェンシー中尉が駆け寄ってきた。

「司令官ー中佐のお嬢さんがみつかりました、ギニアにいまーす」

「本当かすぐに迎えに行かせろ」

報告は宮殿にも伝わりリリカと智子を乗せたフラレシア号が緊急発進しギニアには二日後に着く。


ギニアの発展

ギニアでは食料が安定して得られると知った国民は狩猟活動を辞めて工場や建設現場で生産に入り、白瀬は商船団を連れルビリアに出発した。

空港では船団が出発するのを待って三浦は上空で待機していた巡洋艦の艦隊を降下させ急いで兵士を乗り込ませると轟音を発し出発。

草だらけの空港から出撃して行くのを星系に入って来たルビリアの商船は見ていた。「なんと慌ただしい国だな、船団が飛び立ったと思ったら艦隊も着陸してすぐに出て行くのかーどこかで戦争でもするのかな」モゼル財閥のモリソン会長は首をひねった。

「会長ーそのような情報はありません、何でしょうね」

モリソンは庁舎になっているホテルを訪問、幸子に面会を申し込んだ。

「今井さん誰が来ましたの」

「はい陛下ールビリアの財閥でモゼル商会のモリソン会長です」

「知らないわーなにかしらねー、いいわ会いますから」

幸子は謁見の部屋にしているホールに現れるとモリソンが頭を下げていた。

「そなたがモリソンですか、ご用件は」

「はい陛下ーギニアで商売を始めたいと思いご挨拶にお伺いました」

「そうなのーでもこの国は貧乏よー商売は無理なんじゃないかしら」

「はははは陛下私どもは売るだけではありません、作る事も致しております、この国に工場を建てこの辺境星域を市場に販売したいと考えております」

サチコの頭にひらめいた―鴨がネギしょって来たわホホホホー「それはいいお話しね、だけど国からなんの支援も差し上げられないけどよろしいかしら」

「それは分かっております、それでは土地の確保から始めたいと思います」

「そうねーちょっとお待ちになってー麻美さん高見長官を呼んでください」

『陛下かしこまりましたわ」麻美恵子補佐官は電話で国土開発省長官を呼ぶ。

「陛下ーお呼びですか」

「あー高見さんこちらモゼル商会のモリソン会長、この国に工場を建てるため挨拶に来られましたのよ、土地を探すお手伝いをして差し上げてくださいな」

「はい承知しました」

モリソンは高見の推薦する場所をいくつか巡り海に近い平野に建てることにして購入の交渉に入った。

「高見さんー敷地を売る条件よこれを承諾させなさいな」幸子はメモを高見に渡して命じた。

高見は一目見てギクッ驚きながら尋ねた。

「陛下ーこのような条件を付けるのですか、無茶だ」

「ほほほほどうしました、彼らはどのような思惑で来たと思っていましたのーこれくらい気にしませんわ」

「陛下はどのようにみられているのですか」

「ほほほほルビリアはギニアを手に入れたいのよ、この地域をルビリアは自国の領域と言ってますけど現実は違いますわ、ここ辺境星域は帝国にもルビリアにも属していませんのよ。辺境はルビリアの領域と同じくらい広大なの、一つの帝国だわ」

「なるほどルビリアがギニアを手にすればこの星域に経済進出が可能になります、さすれば支配領域が倍になるから多少のムリも飲まざる得ないですか」

「そうよー独立した王国を攻め取るよりギニアは今なら経済で思い通りになると考えたのよ」

高見は不安を抱きながら幸子の指示通り協定書を作りモリソンに渡して成立。

モゼル商会が工事に入ると続けて七社が参入ーギニアに開発ラッシュが巻き起こり建設が始まった。


ギニアにルビリアの進出

国土開発庁では高見の腹心池田慎吾が土地区画整理局を束ねルビリア企業の立地を担当していた、「みんなー良く聞け、今現在ルビリア企業十社以上がギニアに土地を求めて訪れている、長官は業態別に集約化を望んでいるから企業の計画を調べてわが国のペースで決めさせるようにしたい、いいかな」

「はーい局長、建設地を一つにまとめればいいのですか」

「そうだー工業団地のようなものにしたい、それと交通だな空港と港を整備して工業団地を道路と鉄道でむすぶのだ」

「えー局長ーべらぼうな金がかかりますよーどうするのですか」

「心配ない、資源エネルギー省は天体資源の開発を進めているから予算の調達は任せる、俺たちはこの計画を実施するのにいくら必要が計画をたてるのだ」

「任せるだなんてー見つかるかわかりませんよ」局員は池田の考えに不安を感じ集まってぼそぼそ、高見はその様子を聞いてにやにやしていた。

局員の努力の甲斐あって企業を農地に適さない海に面する平野に集約できたからそれを見て道路局は空港から企業団地へ繋ぐ幹線道路の建設に着手し、建設局では空港と港湾の整備が始めた。


金星では本格的に金の掘り出しが始まり、掘りぬいた空間に選鉱プラントを建設して一年が経過したころすべての計画が実施段階に入り資金が発生した。

「局長ー工事の代金を支払わなければなりませんが資金はありますか」

会計課の水田が請求書の束を抱えてやって来た。

「ふーんいくらかな」

「およそ五百万トーラになります」

「フーンそれだけか大した事はないな」池田の意見を聞き水田は耳を疑った。

「財務省に現金で決済するよう頼んでくれ」

水田は不安気味に局長の意見をつけてまわした。

「水田課長ーいつまでに現金は必要ですか」財務省から気安い返事。

「一月後ですがありますか」

「現金はないが金塊ではだめですか」

「金ですかーそれならあるのですね」

「ええー何万トンもありますが現金だとトーラーに替えなければなりませんので時間がかかるのです、必要な時までに換金できるか微妙です」

ー何万トンもあるだとどういう事なんだー水田は驚きながらも考えた。

「なんとか換金を急いでください、もし間に合いそうにない時は業者を説得するしかありませんな」

財務部は中央銀行を通してソラリスの市場に金塊千トンを売りに出した。

日にちを替え十回に分け出したからあまり注目を集めなかったがそれからはうなぎのぼりに売り出し量が増えレムリアの市場へも出すようになり情報機関の網にかかった。


海賊船の襲撃

「局長ー大量の金塊が売りにでています」

「なにを言ってるのかモートン君、金は限られた量しか産出しないのだぞ」

「局長事実です、数か月前から同一人からのものと思われる金塊が今月だけで五千トンも売りに出されました」

「五千トンだとー十兆トーラになるぞあり得ないな詐欺ではないのか」

「取引所に確認しましたが毎月間違いなく現物が動いているそうです」

「フーム誰が売り出しているのか調べる必要があるな」

「ですか―取引所では秘守義務を盾に教えてくれません」

「モートン教えてくれなければ探り出せ、それが仕事だ」

モートンは取引所に忍び込み、資料を盗もうとするが電子脳は騙されない、警報を出されて慌てて逃げ帰った、そして思い出した。

「もうー無理だ盗まれないようシステムを作ったのは俺たちなんだぜ」

ソラリスで金塊の出どころが追及されていた頃金星では地下に保管していた金塊を船に運び入れていた。

「さーあ今日も売って来ないとな今回はどこだー」輸送船ゆうこの船長米田は予定表を取りに船団事務所に顔を出した。

「米田さんーレムリアに運んでくれ、これが配達先のリストだーそれから何でお前の船はゆうこっていうんだ」

「フーン娘の名前だうらやましいか」

「変わっているなーでも遠慮するよ、海賊が出るらしいから気をつけろよ」

「ふーん海賊など返り討ちにしてやるさ」元空軍中佐の米田は鼻ぱしが強い、襲われるのは速度を落として飛行する惑星間空間だ。

「ゆうこ」はレムリア星域に入りカラワ星系の第二惑星に向かうと突然警報が鳴り響いた。

「ゆうこーなにごとだー」水田は電子脳に聞いた。

「前方に不審船、注意」

「不審船だと―海賊かー亀田戦闘用意だ」米田は船を戦闘態勢に置くとスクリーンを睨み様子を探るー前方に三隻の船が見えた。

「まだ遠いなどこのかわからん」

ギニア船団の船はソラリス軍の輸送船を商船に改修したもの、巡洋艦と同程度の防御シールドを持っていたから海賊船の一撃は難なくはじき返し水田はSOSを発した。

「お前たち救援がくるまで逃げまくるぞー」水田はエネルギー全開「ゆうこ」は軍艦の底力をだし疾走した。

軍艦と民間の船の違いは発進の加速力、海賊船では到底追いつかない。

あっという間に三隻の間を潜り抜けて飛び去った。

後方で待機をしていた海賊船団のボスレグフォンは先発部隊が振りきられると布陣していた部下の船に戦闘開始を命じた。

「野郎どもー捕まえろー逃がすんじゃないぞー」

五隻の船が一斉に裕子の進路を塞ぐように飛び出す。

水田はスクリーンを見ながら元砲術長に言った「亀田ー良く狙え」

巡洋艦クラスの主砲がエネルギー球を超光速で放出ー真っ赤な光の珠は突進し海賊船の鼻先を吹き飛ばした。

「すごい威力だ」

「船長ーこれなら怖いものなしです」燥いでいる間に燃える船の前を飛び去り残る四隻が追跡にかかった。

「しつこいな―まだくるぜ」

水田はスクリーン眺め後方に見える船に呆れていたが突然スクリーンにレムリア軍の巡洋艦隊が現れ海賊船は一気に藻屑に変った。

「レムリア軍巡洋艦マーレのホスイ少佐です、ギニア船団の船申告せよ」

「船名はゆうこ、俺は船長の水田だバレンナ星に金塊を輸送中だ」

「金かー水田情報が漏れたな、これからは気を付けた方がいい」

「ありがとうー」後方ではレムリア艦艇が海賊船の残骸を取り囲み調査をはじめたのを見てゆうこは目の前に見えるバレンナ星に向かった。


情報部の暗躍

金塊は顧客に届けられるとギニアにトーラーの貨幣が続々搬入されるのを確かめたソラリス情報部はギニアが金塊の売り主と知った。

「ふむ君はギニアがどこからか打ち出の小槌を手に入れたとみているのか」

「ええー間違いありません、ギニア政府がソラリスにもルビリアにも借り入れを起こした事実は確認されませんでした。ギニアは開発を加速したのは資金に余裕が出来たからです、それによってルビリアを呼び込みソラリスから離れる考えではないでしょうか」

「マフィーその小槌を探せ、ギニアが何を計画しているのか探るのだ」

マフィーは部下とともにギニアに潜入、建設作業員に化け探索を開始した。

この時期ルビリアから出稼ぎが続々来るようになっていたからマフィー達が紛れ込むのは容易だった。

開発ラッシュで人口は一気に十万人以上増え店も彼らの後を追いルビリアから進出してきた。

町は賑やかになりそれらが落とす資金で国の経済は順調に伸びて道路などの公共施設の建設が進み現場を視察に来る政府役人も口が緩む。

マフィーは現場主任の後をつけ居酒屋で役人を張っていた。

「新郷さん工事はどうですかずいぶんはかどっているようだが」

「ははは松原課長もわかりますか、国は貧乏のはずが金払いがいいからですわ、資金はどうしているのですか」

「これは困った貧乏などと昔の事ですわい、わが国は金の成る星を手に入れたのですわ、資金に心配は無用ですからこれからも頼みますぞ」

「金の生る星だとーどういう事だ」マフィーは答えは星系のどこかにあると気付くと調査船を呼び寄せた。


ルビリアにギニア船団の拠点を開き販路を開拓していた健一は幸子の動きを聞き顔をしかめる。

「幸子がルビリアの工場を誘致しているだってー、何を考えているんだ」

報告はベニーにも届いた。「幸子はそんな事してますの?」

「陛下そうよー工場の建設地付近はルビリアからの出稼ぎ目当てに有名店がずらり並んでまるでルビリアの繁華街よーこんな資金はどこから得たのかしら」タリヤは見てきたことを知らせた。

ベニーはスクリーンに幸子を呼んで真意を尋ねた。

「幸子ールビリアの工場を誘致しているんですってー、なぜなの」

「ソラリスの資本が来ないからよ、追い出したかったらソラリスも工場を建てなさいよー」

ベニーはソラリスの財閥がギニアには進出したがらないのを知っていたから幸子の指摘に反論できない。

ー幸子はギニアの経済を確立したいのねやめさせればソラリスがギニアをしょい込むわーそんな事できない残念だけどやめさせられないわー。

「あなたの言い分は分かったけど資金は足りないじゃないの」

「へーお金の心配をしてくれるのはありがたいけど大丈夫よ、産業が産まれればなんとかなるわ」

ーおかしいわ石橋をたたいて渡る人間よ、ソラリスの資金を断ったくらいの堅物が山師のような事を言うはずないわ、グラノフはいませんか」

ベニーは情報部部長のグラノフを呼んだ。

「陛下お呼びでしょうか」

「グラノフーギニアの経済はどうなっていますか、最近ずいぶんと出費しているようだけどどこから資金は得ているのかしら」

「はい情報部でその件で調査しております、わかっているのはギニアは金の成る星を手に入れたらしい事です」

「それはどういう事ですか」

「ただいま調査をしておりますのでわかり次第報告いたします」

「頼みますよ」


訃報

軍民生官のエルマーは快速艇を仕立てギニアに向かい二日後に着くと鶏の歩き回っている住宅の玄関で呼んだ「こんにちはー」

「誰ー空いているわよ」

「失礼します軍から参りました、民生官のエルマーですこちらにキャサリン中佐のお嬢さんを預かられていると聞きまして参りました」

「そうなのーお母さんはどこなのー」

「それが中佐は数日前艦隊の行動中に事故に会いまして亡くなりました、ご遺体はソラリスで国葬に伏して軍人墓地に納める予定です」

「そうなの事故がありましたの、それでどうなりますの」

「お嬢さんは軍が責任を持って育てますのでお渡しください」

「嫌よー軍が育てるって施設に入れるのでしょ、それならあたしが育てますから」

ドドドドドー庭でヒヨコと遊んでいたミカが慌てて走り込んできた。

良子はミカを抱きしめ目から涙がポロリ、

「ミカちゃんお母さんはもう帰って来ないわー亡くなったのシクシク」

「嘘よーお母さんは強いのよー死んだって嘘よーえーんえーん」

良子とミカ二人が泣き出したからエルマーはオロオロ。

庭の外に豪華な六輪車が止まり運転手がドアを開けると二人の女性が降りたーリリカと智子だ「ここがそうなのね」

「はい王女様」

「待っていてすぐに用件は済みますから」

「あははは鶏がいるわよ、飼っているのね」智子は庭で親鳥がはこべを食いつまんでいる間を生まれたばかりのヒヨコ達が列を作り歩き回っているのを眺めて笑った。

「本当ね、平和だわ」

玄関前に来た時ワーンー突然鳴き声が聞こえリリカは驚いてドアを開けた。

「何かありましたか」リリカはエルマーの制服を見て何が有ったか理解した。

「王女様来られましたのですか」

「亡くなったのをお話したのですね」

「はい王女様」

リリカは二人が落ち着くのを待って話始めた。「神田さんでいいわね、わたくしはリリカーソラリス王国の王女ですわ」

「王女様がこんなとこになぜおいでになったのですか」

良子はミカを膝の上に座らせ連れていかれないようギュっと抱きしめながら尋ねた。

「任務で母親を亡くした少女を放ってはおけませんわ、わたくしが引き取りにまいりましたの」

「王女様が引き取るのですか」

「そうですわ、そしてわたくしが後見人になりそれ相当の家に養女として送り出しますわ」

「たらいまわしにするのこの子がかわいそうだわー王女様の家族としてならお渡ししますが」

「奥さんー王女様になんという事を」

「エルマーあなたは引っ込んでいなさい、神田さんわかりましたわーあなたの納得する養女先を見つけてまいりますのでそれまでこの子を預かってもらえますか」

「いいわよー、何年でも預かりますわ」

「エルマーお嬢さんは暫くこの方に預けますから王国は生活の支援をいたします、これからは軍は責任をもってこの子を見守ってくださいな」

「はっ承知しました」リリカが帰るとエルマーは良子に告げた。

「それじゃーミカはあたしが育てていいのね」

「はいー王国から養育費が支給されます、それからご葬儀にお嬢さんの出席は願えますか」

「どうやっていくのーうちは貧乏よ」

「はい往復の船やお着物など軍が用意いたしますので後程儀典官がお伺いし詳細をご説明いたします」エルマーが帰るとミカの衣類など必要な物を買いに出かけた途中に農場へ寄り事務所に走り込んだ。

「あなたー大変よー」ドアを開けさけぶ。

「神田さんどうしました、ご主人は現場ですが」野村がビックリ顔を上げた。

「野村さんー急いでソラリスに行ってこなければならなくなりましたの、お休みもらえますか」

良子はミカの事を話し事態が母親の国葬と聞くと野村もあわてた。

四日過ぎて儀典官が神田邸を訪問し三人分の喪服を届けに来た、良子は開けてみるとダイヤの髪飾りと白いヒール真っ白いシンプルなドレスの三点セット、ドレスの腰にある赤いリボンが際立っており良子はさっさと着替えると誠に聞いた「あなたーどうかしら」

「フーンソラリスの葬式は真っ白い衣装で行うのか、日本と違うな」

ミカにも着せて具合を見る「ミカちゃんのはすごく豪華よ」

子供服だからかミカのドレスには絹のフリルがふんだんに使われ、何重にも重ねられたスカートはバラの花びら、胸元にはダイヤの飾りがキラキラ輝いていた。

良子とミカは衣装をみて盛り上がっていたが誠は真っ黒いタキシードを眺めうんざり「俺はカラスかー」


キャサリンの葬儀

十日後誠と良子は向かえに来た車で空港に行き船の到着を待った。スカイブルーに輝く軍貨客輸送船フライセーラー号が静かに降り立ち虹色に輝くエスカレーターが降りてくると数十人の軍人に混ざって三人は乗り込みソラリスに旅立った。

五十時間の船旅のちソラリス星の周回軌道に入った。

「ついたみたいだな」誠は部屋の窓から青く光る惑星を眺める。

「地球によく似ているわ」良子は海が広がり島が点在しているのを見て思った。

船はソラリス軍中央空港に降下し着陸、エスカレーターを降りたとたん三人は目を疑った。

船の脇で勢ぞろいした軍楽隊が三人が降りて来ると重く静かな曲を奏で迎えた。

「気を付けー」白の制服にモールをつけた士官が大声で叫んだ。

サッピシッー儀仗隊の兵士が一斉に姿勢をただし高級士官がミカの前に来て片膝を突き話しかけた。

「キャサリン准将閣下のミカ令嬢ーお迎えに参りました、お車にお乗りください」

ミカはキョロキョロ良子に目で訴える。

「ミカちゃんこの人の言う通りにしなさい」

高級士官はミカを乗せると其の場を走りさり残された誠と良子はポカーン。

「お二人方いきましょうか」

「あのーミカはどこに行ったのですか」

「お嬢さんはお母さんと最後のお別れに安置されている霊廟にまいりました、式典が始まると女王陛下始め高貴な方々が見えられますからあの子は母親に対面できないので今日のうちに会わせてやりたいのです。女性士官が付ききりで世話しますから安心してください」案内の士官は涙声で伝えた。

二人は高級ホテルで一晩を過ごしたがミカは戻ってこない、良子は心配になりホテルのロビーで待っていると、朝方目を真っ赤にはらしたミカが女性士官に連れられ帰って来て良子を見ると抱き着き泣いたーわーーーんー

「ミカ―ちゃんどうしたの」

「わーんーお母さんが起きないの、あたいが何度も呼んでもお目目を明けないのよーワーン」

良子はミカを連れて部屋に戻り支度をさせながら思ったーこの子には負担よ、なぜこんな惨い目に会わなければならないのかしらー

式典の行われる会場に行きピラミッドを見た、白い御影石で造った五百メートルの巨大三角錐の霊廟は見上げる人々を圧倒していた。

遺族らしい人たちが多数列を作って受付をしている、良子はミカの手を引き列に並んだ。「ずいぶん多いわね、合同式典なんだわ」

「お母さんどういうことなの」

「ミカちゃんーお母さんのような軍人さんが亡くなって国がお葬式を上げてくれるのよ」

「ふうん」

良子達の番が来た「遺族はお嬢さんね、あなたは?」

「ミカをリリカ王女様から預かったのよ」

「王女様からですか、うれしいわーあなたたちはこの番号のボックスよ頑張ってね」受付の女性兵士はニコニコ良子達を送り出した。

遺族はそれぞれ指定されたボックスに入り周りを始めて眺めた。対面する向こう側では豪華な衣装の貴族が続々と席に着く、見ていると白い装束だが豪華に見えるドレスを着て宝冠をかぶった女性が入って来た。

「お父さんあの人が女王様よ」

「お前知っているのか」

「知らないけど見ればわかるわ」

女王の後からクロのタキシードを着たさえない男性がのたりと歩いて来た。

貴族の席が埋まり軍楽隊が勇壮な曲を演奏始めた。

「お集りの諸兄ーこれより第〇〇回葬別式を開催いたします、全員起立をお願いします」

ミカも小さいながら席を立ち、国王がマイクの前で開会の宣言を読み上げると次は御棺の行進だ、軍楽隊が静かな曲に演奏を替えるとソラリスの国旗に続きレナがキャサリン准将の遺影を掲げ入場してきた。

遺影に続き豪華なガラスで出来た棺が馬に引かれた車に乗せられミカの目の前をゆっくり進む。

スピーカーからキャサリン准将閣下と名前が式場に響き渡り葬列は進んだ。

次々と殉職者の氏名が読み上げられ半分くらい名簿が進むとミカは目に涙があふれて来た、ついに堪えられなくなり飛び出し祭壇に置かれた御棺を目指して大泣きしながら走って行く。

白いバラの花が走り抜け参列者たちは驚くが気づくと涙ぐんだ。

会場警備の士官が驚いて止めようと追いかけると激しく甲高い声が轟いたー。

「お待ちなさいー」ベニーは立ち上がり指揮棒を士官に向けた。

ギクッ士官は思わず脚を止めたーもし従わなければ指揮棒の先から発せられる力で吹き飛ばされると知っていた。

「皆の者ー娘を母から引き離してはならん良いな」ルフト王は立ち上がると威厳を込めて命じた。

ミカが母の御棺にすがり泣いているなかで混声合唱団による清らかな歌声が会場を満たし、国王の献花に続き貴族と遺族は献花した。

誠と良子は献花を終えるとミカのもとに行き呼びかけた「ミカちゃん」

一般市民の献花の列は夜通し続けられていたがミカは霊廟に納められた母の棺に一晩寄り添い泣き明かし朝になった。


幸子の娘ミカ

「ミカちゃん、お母さんとお別れは済みましたか」

ミカは涙を拭きながら棺から顔を上げた。「あんた誰かな」

「ミカー王女様よ」補佐官のミーシャが優しく伝えた。

「ミカちゃんお姉さんはミカちゃんの母になってくれる人を探しているの、ミカちゃんはどんな人がいいかな」

「王女様ー亡くなった母の前でミカを誘惑するおつもりなのーミカはあたしが立派に育てるから」良子は走り込んで来るとミカを抱き締め叫んだ。

リリカは暫く良子を睨みつけていたが言った「いいわあなたにお任せしますわ、だけどこの子を不幸にしたらわたくしが直ちに迎えに参りますよーミーシャこの方とミカの養子縁組をしなさい、ミカには母親の軍人年金が支給されますから養育費とも合わせて間違いなくお渡ししなさい」

「わかりました、王女様」

良子はミーシャから書類をもらい必用な事を書き込みその場で養女として戸籍が創られ良子に決定書類が渡された。

「神田さん、法律関係はこれですみましたわー、ミカはただいまからあなたのお子さんとして認知されましたからなにかありましたら軍の民生部門に相談ください」

「あたしの娘になったのね、うれしいわー」良子はミカに頬ずりをした。

リリカはミーシャと帰るとミカはピラミッドのなかで眠る母と別れ士官の案内で母が指揮していた部隊を訪問した

ー講堂の中に祭壇が作られており遺影にあるキャサリンが将官の制服を着て指揮を執っている姿はミカに晴れ晴れしく感じられた。

「これがお母さんなのよー素敵あたいも大きくなったらなりたいー」その写真からミカはいつまでも離れない。

「お嬢様准将の活躍されたお写真はここにも有りますからお持ち帰り下さい」

「もらえるの嬉しい」ミカは受け取ったアルバムを胸に抱きしめ遺品を持って


ギニアに戻ると良子の友だち田沢祥子が尋ねてきた。

「良子―聞いたわ養女をもらったんだってー」

「そうよーかわいい子よリリカ王女様から奪って来たのよ、会ってもらいたいのだけど今は無理だわ」

「どうしてー」

「お母さんのお葬式から戻ったばかりなのー可哀そうに帰ってからずーと泣きどおしよ、お部屋にお母さんの写真を並べて動かないわ」

「そうなのーまだ小さいからショックなのよねー」

「でもお母さんはソラリス軍の将軍だったのよ負けないわ」

良子がミカをいとおしんでいた時誠は果樹園を作る事にした、休みの日に農場から機械を借りて隣接する手付かずの山林を平地にならしリンゴの苗木を植えていく。「ミカのためだ立派な果樹園を作るぞ」

誠は一本一本植え終えると日当たりのよい場所にミカの母キャサリンの墓を建てた。

「ミカちゃんここがお母さんのお墓よ、大きくなったらもっと立派なお墓にしましょうね」良子は墓のなかにソラリスから持ってきた遺品をしまい、ミカは花をささげながらうなずいた。「うん」


トルセンの暗躍

二千九年工場は竣工し操業が始まるとトルセンは家族を連れギニアに住みつき人々の暮らしを探った。

「殿下面白い情報があります」情報部の指揮官マトン大佐が報告にきた。

「マトンどのような事ですか」工場ー事務棟の一室でトルセンは従業員の募集計画を思案していたがマトンの報告は欠かさず聞いていた。

「はい、農場で働いている家族ですがレムール族の娘を養っていました、調べまして親はソラリス巡洋艦クリオに乗っていたそうです」

「二年前にサフリアでいざこざを起こしたクリオですか」

「はい、それでその娘は今七歳、サクワ王子様と同い年です」

「フームレムール族ですか、どのような娘かわかりませんが知性は高いはずですからサクワの遊び相手になりますね」

「殿下ーその娘はなかなかの美形でしっかりしております」

「ほーうマトンは気に入ったのか」

「ハハハ俺に息子がいればあのような娘を嫁にもらいますな」

「娘をうまく利用すれば帝国を分断する作戦に使えるかもしれませんね」トルセンはミカが通う小学校に息子のサクワを転入させた。


ミカのボーイフレンド

「皆さん今日から新しいお友達が加わりますよーサクワ君です、ルビリアから来たばかりですから皆さん仲良くしてください」教師の北川は気の弱そうな男の子を生徒たちに紹介した。

周りが地球人ばかりの教室でレムール族のミカはサクワの目に新鮮に映つり友達になろうと席に近づくと声をかけられた。

「あなたルビリアの生まれなのー」

突然サクワはミカから聞かれおどおど、良く見るとミカは地球生まれの男子に囲まれていた。

「そうだよー君はどこなの」

「あたしは地球で生まれたけど親はソラリスの生まれよ」

「へえーソラリスって帝国の親戚だよね、だからレムールの人に見えたんだ俺来た時ビックリしたよ」

「なにがよー」

「だってーなんでここにレムールの人がいるのかなって」

「おいー新入りあまりミカちゃんに近づくな、ミカちゃんは俺たちのアイドルなんだからな」

「なんだよー俺が誰と話しても君には関係ないだろー」

「なんだとー新入りのくせに生意気だ、苛められたくなければ向こうに行け」

「ふざけるなー」

教室の中で二人はにらみ合うがその様子を女の子は眺めてワイワイ「ねーどっちが勝つと思うかな」

「あのサクワって子は弱そうよ、でも男の子は何でミカばかりに夢中なのー」

「ミカは成績がいいでしょ、テストはいつも満点よそれにお家ではリンゴ園をやっているわよね、お父さんはまだここに来て四年くらいのはずなのにあんなに財産を持つなんておかしいて言っていたわ」

「きっと悪いことして儲けているのよ、それにあの髪よーあの真っ赤な髪に男子は狂うのね」

「でもあれは染めているんでしょ、あんなに赤いのってそれ以外知らないわ」

「そうよー辞めさせなくちゃー」

サクワは男子と言い合いをしている最中女の子はミカを取り巻き叫んだ

「ミカーその髪の色なんとかしなさいよ」

「なんなのよーこれがどうしたって言うのよ」

「あなた髪を染めているんでしょ、まだ子供のくせに生意気よ」

「変な事言わないでこれは自毛よ文句を言われる筋合いはないわ」

「嘘よーこんなに明るい赤毛なんて知らないわ」榊桃子はミカの髪を引っ張って喚いた。

「痛いーあなたこんな事してただで済むと思っているのー」ミカは大声を張り上げ教室にいた生徒はビックリ注目した。

ミカはじゃじゃ馬娘だ桃子に飛び掛かりドシーン―バターン。

机が倒れ響いた音は教員室にいた先生たちに聞こえた。

「何ですかあの音は、北川先生あなたのクラスではありませんか」

北川は呼ばれてビックリ教室に走り込むと唖然、ミカが馬乗りになって榊をたたいていた、

「あなたたち何してるのやめなさい」北川は叩いているミカを引き離し帰らせたが父兄に連絡をした。

「ミカ―学校で喧嘩をしたそうね」

「やったわよー桃子があたいの髪を引っ張ったから懲らしめてあげたの」

「そうなのーだけどもう喧嘩はしないようにね」

「うん」

お休みの日ミカが庭で鶏と遊んでいるとサクワが生垣の外をうろうろ、植木の隙間から庭を覗き込んでいる。

「サクワ君なんのようなのー」

「えへやあーここがミカの家かー?」

「そうよー何しに来たの」

「誰ー」良子が気付いて顔をだした。

「俺ミカさんと同じクラスのサクワって言います」

「ふーん遊びに来たの、暑いからジュースを持ってくるわー」良子はミカにボーイフレンドが出来たと勘違いルンルン気分で冷たいジュースを二人に渡し引っ込んでしまった。

「ずいぶんあっさりしたおかあさんだね」

「とんでもないわーあたいが黙って外に行けば大騒ぎして大変なんだから」


農場ではトルセンが挨拶に訪れていた。

「農場長さん、隣同士ですからうまくやって行きましょう、今度の土曜日に工場の開業一周年のパーティーを開きますからよければご出席願えませんか」

「はははルビリアのゼルダ財閥は有名だ、その会長さんから誘われるとは光栄ですな、いずれ取引の方もよろしくお願いできますかな」

「それはこちらからお願いしたいことです、原料が手近で手配できればうれしいですよハハハハ、ところでこちらにリンゴ園を経営されている方がいると聞いて来ましたが」

「ああー神田さんか、まだ苗木を育てている段階で出荷は無理ですよ」

「ほーうそうですか、もし良ければその方もパーティーに呼びたいので伝えてくれませんか」

「分かりました、神田さんは遠くの地区を担当しているので私から伝えておきます」

トルセンは話が済んだとパーティーへの資料を渡して帰って行くと野村は早速車で十八番耕地に向かった。

その日誠は帰って来ると良子にパンフレットを渡した。

「なにこれ」広げてみるとパーティーの招待状、ご家族皆さんでご出席くださいと書かれていた。

「あなたーこれ隣で工事していた会社のパーティーよね、なんであたしたち招待されたの」

「俺だけでないよ野村さんもだよ、将来リンゴが欲しいんじゃないかと言ってたな」

「フーンお得意さんになろうと言うの、それじゃ出席しないとーこんなことしてられないわ」良子は台所仕事を止め二階に上がっていく。

「ミカ―お出かけするから降りてらっしゃい」

「何よ―もう暗くなるわよ」

「お父さんがパーティーに呼ばれたのあなたのドレスを買いにいくから早く」

ミカはぶつぶつ言いながら部屋から出て来た。

「なんでよーあたい宿題しているのよー」

「いいから来るの将来のお得意さんからの招待よ」

良子はミカと自転車で農場の隣のショッピングセンターに向かうが残された誠はポカーン。

「俺の夕飯はどうなるんだー」


あっという間にパーティーの当日ー誠は良子とミカを連れゼルダ会長から回された車で会場に来た。

会場にはギニア政府の代表やルビリアから進出していた企業の責任者など多数出席していた。「すごい顔ぶれだー」

テーブルでドリンクを持ちながら誠は辺りを見回し呆気にとられ叫んだ。

「本当ね、あたしたち呼ばれたのは間違いじゃないの」

良子は集まった顔ぶれを見て場違いに見えたが客の一人がミカを見て言った。

「クラウスーあの子は帝国の生まれではないのか」

「はい会長ーそのように見えますな」

「隣にいるのが親御さんのようだがどちらも地球からきたのだろー」

「ハハハハ会長ー気になりますか、たぶん養女に向かえたのではないですかな、良くある話です」

「フーン養女か、それにしても子供なのにあの美貌は人を引き付けるな」

グラモン商会のハーデスはミカを見つめていた時声がした。

「ミカ―来てくれたのー」サクワが手を振って人をかき分けて来る。

「サクワ君あなたも招待されたの―」

「違うよお父様の会社なんだ、紹介するからおいで」サクワはミカの手を引き大勢の人に囲まれているトルセンの前に来た。

「御父上―ミカちゃんだよー」

トルセンは声が聞こえると客に断ってサクワのそば来た。「サクワその子がガールフレンドか可愛い子だね」

「ミカちゃんていうのかお母さんはどうしたの」

「お母さんはあそこよ」ミカは人をかき分け近づいてくる良子を指さした。

「ほほほほミカがなにかしましたか」

「あなたがミカさんのお母さんですか、始めましてトルセンです」

「御父上はこの会社の会長なんだー」

「あらすごいですわーあたし良子といいます、サクワ君にはミカと仲良しになってもらって嬉しいですわーじゃじゃ馬娘ですがよろしくほほほ」親同士挨拶している時サクワはミカの手を引き外に遊びに行ってしまった。

パーティーが終わりトルセンがルビリアの財閥だと知った良子はウキウキ自宅に帰るとペラペラ「ねーあなたサクワ君は財閥の御曹司よー将来ミカは財閥の奥様になるのね」

「おいまだ会ったばかりだろー何でそうなるんだ」誠は呆れた顔して聞いた。

トルセンはマリモシティーを拠点に着々と傘下の企業を進出させて三年過ぎると空港から延びている立派な道路沿いにはルビリアの企業が林立していた。

神田家も農園の仕事を続けながらリンゴ園は十ヘクタールまで面積を広げてトルセンの食品工場に出荷して順風満帆。


ミカの中学時代

二千十二年ミカの住んでいる村は人口が増えて街になり、道路や公共施設はルビリア資本の投下が有って整いつつあったが市民は毎日を暮らしていけるだけ、まだ住宅や耐久消費財の保有率はひくい。

ミカは中学の一年生になって今では静かな生徒、いつものように登校して教室に入ると他の小学校から来た生徒のグループが見つめていた。

「あんた達なにか用があるの」ミカはグループのリーダー露木真知子に尋ねた。

「あなたの事は草木さんから聞いたわ、ルビリアの御曹司といい関係らしいわね」

「フーンそれがどうしたって言うの、ただのお友達よ」

「そうかしら、ずいぶんいい暮らしをしているらしいけど御曹司の親から施しをもらっているのかしら」露木はミカの着ている洋服をみて言い放った。

この時ミカが着ていたものはルビリアの最新モードー良子が市内にオープンしたルビリアの衣料店から争って勝ち取ったワンピースで女の子なら一度は袖を通したいと憧れていた。

「なんですってー言っていい事と悪い事があるのよ、取り消しなさいよ」

「本当の事言われて怒ったの?今着ているワンピースは高価よねー」

露木はワンピースについている飾り石をもぎ取ると窓の外へ投げ捨てた。

「きゃー何するの許さないわよー」ミカは目を吊り上げ叫ぶと生徒たちは驚いて露木から離れていく。

「真知子ーなんてことするの謝りなさいよ」

グループには加わっていない春川律子が怒りを見せているミカを宥めようと露木を非難して其の場はミカが我慢して収まったが数日後には学校中に噂が広まりミカは学校に行きたくないと言う。

「ミカどうしたの理由を言いなさい」

「あのねーお母さんべらべら」

「何ですってー誰がそのような事言いふらしているの、あたし学校に抗議に行きますからあなたは家にいなさい」

「お母さん無茶しないで」

「冗談ではありませんわあなたの亡くなった母はソラリス王国の将軍なのよ、このような事言われて黙っているとお母さんの名誉に瑕がつきますわー」


良子は自転車に乗り学校へ行くと校長室へ乗り込んだ。

「校長ーいませんかー」良子は学校に着いてドタドタ廊下を行くと事務室の扉が開き猪山が顔を出した。

「どちらさんですか、勝手に入られてはこまります」

「あなたー誰校長に用があるのよ」

「俺は猪山というのですがあなたこそ誰ですかー」

「なんですってー誰に言っているのよ、娘が学校の中で暴行されたのに一言の謝罪がないのはなぜなの警察に行ってもいいのよ」

猪山は良子の警察という言葉にビビった。「ちょっと待ってください」

良子のヒステリックな声を聴き事務室から職員がぞろぞろ出て来た。

「神田さんどうかしましたか」良子と同じ部落に住む内藤真由美が怒り狂っている良子を宥めるように尋ねた。

「あら内藤さんここにお勤めなのー、ミカが大変なの」良子はミカから聞いたことを話した。

「そんな事があったなんて初めて聞いたわ、校長も知らないわよキット」内藤は良子を校長室に案内して校長室のドアをあけた。

「校長先生いいですか」

「はい内藤さんどうかしましたか」校長の山野は顔を上げて尋ねた。

「神田ミカの母ですわ、娘が教室の中で暴行を受けお洋服が破られましたわ、学校ではそのような事をした生徒を放っておくのですか」

「おかあさんそのような事があったとは初耳です、今担任を呼びますからその椅子にお座りください」

「初耳ですってー校長はこのような重大事件の報告を受けていませんの、この学校はどうなっているのですか」

良子の目を吊り上げ激しい剣幕に校長は簡単には済みそうにないと考え担任の桜井和香子を呼んだ。

「校長先生まだ授業中よ、どうしたのですか」

「桜井先生ー神田さんの親御さんだ、お嬢さんが教室のなかで暴行されたと言われた、なにがあったのかな」

「そういえば今日ミカさんはお休みのようですが」

「ミカは休ませましたのよ、ことが片付くまでは登校させませんわ」

「あのーどういう事でしょうか」

「先生ふざけるのはいい加減にして欲しいですわ、宅の生活の事でありもしないことを言いふらしているそうねー、妬みから娘のワンピースを破るような事が起きていたのを知らないなんてあなたは何をしていたの」

「あたしは心当たりがありませんがどういう事ですか」

「なんですってーこんなレベルの低い教師はあたしの方から願い下げよ」

「まあまあお母さんそう言わないで具体的に何が有ったのですか、教えてくれませんか」

「他人から施しを受けて生活しているなどと宅の名誉を傷付けられましたわ、娘の持ち物を勝手に妬むのは許せるとしても破り捨てるのは言語同断ですわ、いいえそれだけでないわーミカは将軍の娘よ、リリカ王女様からあたしが預かった娘が施しを受けているとそのような中傷を放って置けば王女様は黙ってはいないわ、乗り出されたらこの学校など風前の灯よ」

良子の話で校長の山野はブルッ桜井に向き尋ねた。「先生それは事実ですか」

「そんな噂や事件が有ったなんてあたし知りませんでした、すぐに生徒から話を聞きますから今日のところはお時間をくれませんか」


ミカが学校に出れない事件はすぐにサクワを通してトルセンに伝わった。

「校長先生ーゼルダの会長さんがお見えですが御怒りのご様子です」

「ゼルダ財閥のですか」校長の山野は街の開発に尽くしたゼルダの力を知っていた、その会長が怒っているだとー」

事務長はトルセンを仰々しく校長室に案内した。

「ごめんトルセンだが校長はあなたかな」

「はい私が校長の山野です、どういうご用件でしょうか」

「この学校は当社になにか恨みでもあるのかな、当社の信用を損なう中傷が校内で蔓延していると息子が言っているが返事次第ではあなたの席は他の人に代わってもらうがいいかな」

トルセンの話から神田家とはリンゴの取引関係が有るだけと知り山野はガタガタ震えた、名誉を重んじる財閥はこのような誹謗中傷を決して容認しない、関係者を処分し疑惑を払しょくしなければおのれの首が危うい。

トルセンが帰ると山野は桜井を呼んだ。

「桜井先生ー神田さんの事だ、どうなりました」

「生徒から聞いて誰が関係しているかは分かりました、神田さんのワンピースが破られたのは生徒の一人が興奮してしてしまったことでした」

「ほーうそれでどう収めますか」

「校長先生ー加害者側の生徒を一方的に攻めるのは酷ですわ、始めは誤解から始まったことですから破いたワンピースは弁償させて話し合いで解決したいのですが」桜井は露木の主張に同情している様子を山野は見逃さなかった。

「桜井先生はこの問題を解決する力が足りないようだ、担任を降りますか」

桜井は降りると言葉にビクッそれは解雇に等しい。


担任は須田佳代子。

「須田先生ー学校の置かれている立場は深刻です、この事態を収束したい」

「校長先生たかが噂でしょ放って置けば消えますよ」

「先生そうはいかないのだ、関係者の一人は学校を名誉棄損で告訴すると言っているんだ」

「そんな事無理よ」

「嫌その方は政府の要人を左右できる実力者だ、甘く考えていると学校の存続自体に影響しますぞ」

「分かりましたわ」

学校で対策が議論されていた時ミカは自宅の庭で生まれたばかりのヒヨコをダンボールの箱にいれて親鳥がハコベを食いつまんでいる中に放しながら優しく言った。「いい子だからたくさん食べるの」

露木たち女子グループがミカの家にやって来て呼んだ。

「ミカ―ずいぶんいいお家ね」

声がしてーミカは振り返り女子グルプを眺めた。「あんたたち何の用なの」

「桜井先生が辞めさせられたのよーあなたの御母さんが何か言ったんじゃないの」

「そんなの知らないわ」

庭が騒がしいと気付き良子は顔を出した。「ミカ何があったの」

女の子のグループがミカとにらみ合っているのをみた良子は叫んだ。

「あなたたち家まで押しかけていじめに来たの、可愛い娘に手を出すのならあたしが相手になるわー」

「お母さんは引っ込んでいて、喧嘩ならあたいは強いのよ」

良子は急いで部屋に入ると学校に通報、事務職員が慌てて駆け付けて引き離し名前を聞き自宅に帰したが翌日に事務長は昨日の事件を報告した。

「本当ですか」

「はい間違いありません、神田さんのご自宅に生徒五人が押しかけトラブルを起こしました」

「なんということをー須田先生を呼んでください」

「校長先生またですか」

「須田先生この生徒たちを停学にしてください、もう懲り懲りですわ」

生徒たちの停学は親に衝撃を与え子供から知らされた父母会会長の松本登美子が父母集会を呼びかけ会議室に集まったお母さんたちは何事かと不安顔。

松本登美子が議長で始まった。「父兄の皆さん起こし頂いてありがとうございます、今日来ていただいたのは本校で起きた不祥事について学校側の意見を聞き皆さんと話し合いをしたいからです。

「松本さんーどんな不祥事なの」

「川越さんね、これから先生に聞きますけど教室の中で暴行事件ですわ、女子生徒一人が当校できなくなりました、それに対し学校側は加害者の生徒五人を停学、担任の桜井先生を他校へ移動させました」

「まあー恐ろしいーそのような事が起きましたの」

「詳しい事は須田先生お話願えますか」

「皆さんにはお忙しいとこお集り願て恐縮です、実は一年生のクラスでいじめが発覚しました、生徒が一名登校できなくなっています」

「まあー可愛そうどのようないじめですか」

「加害者の生徒グループが一人の女子生徒を同じく通っている生徒の親から施しを受けていると誹謗しました、その際女子生徒の着ているワンピースを破ったのです、一方ー施しをしていると名指しされた方は名誉を傷つけられたと大変なお怒りです、この学校の存亡にも影響するので学校としてはそのような事態を引き起こした教師の管理能力に疑念を抱き、担任を外しました。

しかしそれにも関わらず翌日加害者の女子グループは被害者宅に押しかけ騒ぎをおこしましたので学校として停学処分に至ったのです。

問題は被害者側の生徒さんをどうしたら登校させれれるかです」

「先生待ってください、私の娘が一方的に悪者にされるのは納得できないわ」

「そうよー喧嘩両成敗よ、なんで一方的に決めつけるの」

「木村さんでしたね、言い分があるのですか」

「娘が指摘したのは風紀上の問題ですわ、お金をもらって豊かな暮らしをするのばいい事かしら」

木村の発言はお母さんたちの注意を引いた。「木村さんどういう事教えてくれませんか」

「あの子の家では他人からお金を恵んでもらい豊かな生活をしているのですわ、恥ずかしくないのかしら」

「へえーそんな事して暮らしているのまるで乞食じゃない嫌ねー」

「貧しくってやっと暮らしている人なら許せるけど農園をもっていますのよーえげつないわー」

木村は思いつくまま喋っていたが須田はついに切れた。

「木村さん、ずいぶんないい方しますわね、私が調査した事とはずいぶん違ってますわーご自宅でそのような事を言ってるから娘さんが今回のような事態を引き起こしたのだわ」

「なんですかどこが違うと言うの」

「ほほほほあの方が裕福なのは施しなどもらっていませんわ、お母さんが殉職してソラリス王国から年金が払わられているからよ、お母さんはソラリス軍の将軍でしたから年金の額は私の年収分あり恵んでもらう必要はありませんわ」

「先生嘘は止めてください母親はいるではありませんか」

「あの子は養女なの、地球で一人留守番している時任務で出撃したお母さんは部下を助けるためおとりになって殺されたの、それを知らないまだ五歳の幼い子は地球に取り残されていたけどなんとか一人で脱出しましたの」

須田がその時の様子を話すと教室の中はすすり泣く声が響いた。

「五歳の子はギニアに着くが親も住む家もない、とぼとぼ歩いて草を食べ川の水を飲み養子宅の庭にたどり着いたのよ、その家の方も決して裕福でないけどその子を引き取り養子縁組を済ませ育てて来ましたわ」

「先生その人は年金目当てではなかったの」

「あなた恥ずかしい方ねー其時はその子の身元は誰も知らなかったのよ年金がもらえるなんて考えてもいないわー幼い子を引き取り親を探したのそして身元が判明したのよ」

夫婦はその子には不自由はかけさせないとそれからは仕事をしながら農園を作り上げたのよ、今はそのかいあって果物の出荷が順調その子の年金は使わず貯めているそうですわ」

「先生もしかして神田さんの事ではありませんかあたし良子とは仲いいからミカちゃんを引き取った時から知っているわよ、あの時はソラリスの王女様が駆け付けて神田さんにミカちゃんを預けたのよーそして良子はかわいい子が授かったて喜んでいたわ」一緒に農場で働いていた田沢祥子は叫んだ。

「田沢さんは私より詳しそうね」

「もちろんだわ同じ農場で働いていたんですもの、学校に来られないってミカちゃんなのね、大変だわあたしが話してみるわ」

「田沢さんにはお願いしますけどクラスとしてはどうですか、来れる環境を作ってもらえませんか」

「先生それは当事者が謝らなければ進みませんよ、まず謝ってわだかまりをなくしてもらいたいわ」松本は提案したが部屋の中のお母さんたちは木村を含む五人の父母に非難の目線を向けていた。

「そうですわね、できますか」須田は当事者のお母さんたちを見て言った。

父母たちは頭を寄せひそひそ・・・・・翌日になると露木と木村は退学届けを持ってきた。この時ギニアではまだ教育制度は整っておらず、学校に通うのは任意だった。


ギニアの造船工場

二千十五年ギニア王国創立十周年ーグリジアから一千キロ離れた砂漠地帯にギニア船団の宇宙船の建造プラントが完成した、南北八キロ東西十一キロの広大な敷地に製鉄から組み立てまで一貫した流れの工場は三万人の従業員とロボット作業員が働きひと月に一隻完成させる能力を持っていた。

幸子と健一は溶鉱炉に火が入れられる開所式に参加し完成をいわった。

「あなたーこれで輸送船が作れるわ」

「うん今は一本のラインしか動かないがいずれ八本にする計画だよ、何年後には自前の艦隊を持てるかもな」

「でもー問題があるのよーソラリウムよ今はベニーから回してもらえるけど何とか自給できるようにしないと困るわ」

「そうだな」この時健一はプラントの建設を始めた当初からそのことは危惧し独自に探していた。


智子は未婚の母

ラインが動き出した時智子は三十歳、ギニアの造船部門の責任者としてリリカの補佐官に就きながらソラリスから宇宙船製造技術を持っている企業をギニアに誘致していたから休日にはいずこかに消えてもリリカは企業経営者に会っていると当初は考えていたが違う様子。

不審を抱き出かけたのを確かめると差し足忍び足智子の部屋に忍び込みこそこそ引き出しなど探していた。

「姫ー何をしているのですか」後ろから声がかかった。

「ギクッ見つかったかな」恐る恐る振り向くと女官のルイナが鼻息荒くリリカを睨んでいた。

「ルイナー見つかっちゃたの」

「姫ー一国の王女という方が他人の部屋で何をされていますの、王妃様に報告しますわよ」

「やめてー怒られるわー」

「姫―なぜこんなことをしたのか説明願えますか」

「しかたないのよルイナー智子は最近お休みの時どこかに行くでしょあたいが聞いても教えてくれないのよー」

「ははあーそれで探ってましたの、補佐官はプライベートで出かけていますのよ、放って置けばいいですわ」

「嫌よー、あなた知っているのなら教えて」

「知ってますけどダメですわ」ルイナは平然とそっぽを向く。

暫くルイナを睨んでいたがあきらめた。「いいわよあたいが必ず突き止めるからね」

リリカは自分の部屋に戻るとひそかに虫ロボのランを呼び頼んだ。「ねーあんたなら探れるよね」

「姫ーそのような必要はありませんわ、補佐官が何をしているかわたくし知っていますもの」

「本当ー教えて」

「嫌ですわ良く言いますでしょ、人の何かを邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまえってほほほほ」

「げー智子に恋人ができたの―悔しいー」リリカはランの言葉を聞いて驚きベニーの部屋に飛び込んだ。

「お母さま―大変智子がー」

「なにごとですか、智子がどうかしましたか」

「お母さまー智子に彼氏がいるんですって」

「そんな事ですかわたくしが引き合わせしましたのよホホホホ」

「げーなんでー相手は誰ですか」

「あなたのいとこのコレトクよ、フェンフォント伯爵の第三王子よほほほほ」

「なによなんであいつなのーもっと他にいるでしょー、いとこでなければあたいが一緒になりたいわブス」リリカはコレトクの顔を思い浮かべたー悔しいけど顔は芸能人にしてもいいくらい甘く運動能力は抜群、智子にはもったいないくらいの男性だ。

「うまくいけば白瀬家をわたくしの系列に引き込めるのよ、すべては辺境を握るためよ。そうだわそろそろサチコにお話ししませんとねほほほほ」

ベニーの計画を聞きリリカは欲の深さに呆れた、-ソラリスだけでは足りないのー。


その後ベニーの親書を携えタリヤが幸子を訪問して智子とコレトクの仲を伝えた。

「えー智子に結婚相手がいるというのですか」

「そうよー帝国の王族七家の一つでフェンフォント伯爵家の第三王子ですわ、将来皇帝に就く家柄よ。

彼は地球で生まれて育ちましたのだから地球人の女性が所望なの」

「へーあんな跳ね返りの智子がいいと言う男性がいるのですか、ベニーの推薦なら変な人ではないでしょうから当人が良ければわたくしが反対する理由はありませんわ」ベニーの思惑に反し幸子は帝国に食い込むチャンスとみた。

タリヤが帰ると幸子は今井を呼び計画を授ける。

「ハッー陛下は皇后さまに接触するチャンスと見たのですか、わかりました当職に事前の工作をせよと言われるのですな」

「そうよーエミリヤとは子供のころ会ったきりだから楽しみだわー」

今井は幸子の親書を持ちレムリアの宮殿に着いた、歴史のある建物は豪壮一つの街ほどの規模だ。

今井は女王の間に通されるとリヤが待っていた。「遠くから御苦労さま、母上に会いたいのですか」

「はい、フェンフォント家の王子様がギニアの智子姫とお付き合いをされていると知りましてこれからどう進められるのか皇后さまに伺いたいと幸子の希望です」

「ほほほほーあの娘がもうそのような歳になりましたか、それはよいお話ですが母上は関わりませんわークリス家としては反対はしませんからまとまると良いですわね」

リヤの話で帝国の同意を得たと理解した今井は幸子の帝国訪問を決めて来た。

「陛下ー帝国は智子姫様の結婚に同意をしていただけました、ですが皇后さまはこのお話に関わらないと言われまして」

「ほほほほ良くやりましたわー、エミリヤはズーズーしい女よ、来るなと言っても出てきますから見てればわかりますわ」

サチコは結婚が進むと確信しご機嫌、早速婿として迎えるための準備を今井に命じた。

智子はいつの間にか結婚の話が進んでいるとは知らないで今日もコレトクとデートの真っ最中ベットのなかでコレトクはささやいた。「智子ーおばから俺たちの結婚はいつ頃になるのか聞かれたんだ、どうしようか」

「えーなんでよーわたくしは誰とも結婚しませんわそんな暇はないの、今のままでいいのよ」

「智子ーなんでそんなに忙しいんだ、王国の跡継ぎは必要だろー」

「ほほほほ結婚より国の事の方が重要だわーあなたは結婚を望んでいるのなら他の女性を探しなさいよーわたくしは子供だけもらえれば別れて差し上げますわ」

「げー君はそういう考えだったのか」コレトクはあわててからだを引き離したが既に遅く子種は智子の体の中に移っていた。

「ほほほほそうよーもういただいから用は済みましたの、あなたの娘ならきっと優秀で美人だわー」

その後ベニーはコレトクから智子の本性を知らされ呆れたがリリカは喜んだ。

サチコは智子がコレトクの子供を妊娠したと聞くとにっこり。

「これで白瀬家は王族の係累になったのよ、楽しみだわ」

一年ご可愛い娘が生まれるとクリス家からお祝いの特使が訪れフェンフォント家からは孫姫として由緒あるサファイラ・フェンフォントの名が与えられた。

「ほほほほギニア王国に帝国王家の血を継ぐ跡継ぎが誕生しましたわ、これで白瀬家も帝国に食い込みましたわねニコリ」


プラントが操業を開始して三年が経過、智子は二歳になったサファイラ姫を連れ造船所にある空港にいた。

今日は初めてギニア国産の輸送船プロトンが就航する、全長二百メートルの貨客輸送船でソラリスの輸送船の設計図で完成させたが細部に地球のシステムが組み込まれていた。

「いい船だわー皆さんのおかげよ」智子は船内を視察し感想を造船責任者に伝えた。

「王女様に褒められ努力した甲斐がありました、これから月に一隻のペースで就航させますです」

「頼りにしていますよ、今はプロトンだけですがいずれは一般向けに小型の船舶も作りたいですわね」

試乗を終えて智子は引き上げるが健一は船の所有数が増えるのを見越して探検隊が発見した辺境の星系に進出を計画していた。


惑星カメロン

二千十八年ー防衛隊は惑星開発軍に役割を替え探検隊を辺境各地に送り込んでいた。高木大佐も科学捜査部門のメンバーを連れギニアから何十もの星々を巡り、一年かけ八百光年まで進出して惑星を五個持った黄色く輝く太陽の光を分光測定していた。

「大佐見つけましたこの星系にソラリウムがあります」

「やっと見つけたここまで来たかいが有ったなー基地を置けそうな惑星を探そう」探検船は第二惑星が地球タイプと分かり接近して周回軌道に乗り地上の調査に入った。

「大佐ー帆船が見えます、どうやらまだ電気はしらないようだ」

「それは都合がいい、教育を与えて俺たちのために使えるな」

「大佐ー奴隷にするのですか」

「バカいうな、将来ギニア王国を支える一つの種族にするのよ」

高木は住民のいない大陸を見つけるとプレハブの建物を組み立てロボット兵士の部隊を配置した。

海の上では未知の大陸を目指して帆船クリフ号が進んでいて深夜海岸近くまで近づいたが船長のレガドは海岸を眺め明朝に上陸を決め乗組員に準備をさせた。

「船長ー水がもうありませんがどうしますか」乗員頭のベタが報告に来た。

「上陸したら海水から水を作って出発する一日あれば必要な量はできるだろーそれだけ持って川のあるところまでいきそこで汲めばいいだろうー」

「へいそれでは出発はそのあとですね」ベタは納得し作業の手順を考え出しながら船倉に戻って行く。

朝になり小舟に乗り換え船員たち総勢六十名は上陸しー三十名は船の保守のため残った。

「お前たちー石を集めて炉を作れー、他のやつらは薪を集めてこい」ベタはしょっていたドラム缶を降ろし部下の船員たちに仕事を命じた。

その日は缶に海水を汲み集めた薪で煮詰め蒸気を集めて竹に通すと冷えて水になって垂れて来る。

「おいーおまえ樽を持ってこいグズグズするな」

ガンガン火を炊くからドラム缶いっぱいの海水は二時間で塩に変り夕暮れまでに全部の樽は満杯に出来た。

戸田は木の影から一生懸命バケツで海水を運んでいる船員を監視していたが持っていた端末から声が聞こえた。

「戸田さーん気の毒にあの人たちは水がないのねー」部隊の庶務を担当する糸川静香は戸田の送ってきた画面を見て燥ぎながら言った。

「ああーそうらしいよ、一生懸命に沸かして作っているぜ」

次の日になり乗員たちは隊を組んで出発大陸の奥に進みだした。

「大佐ーやつらうごきだしました」

「分かった、戻ってこい御苦労だったな」

高木はロボット士官のコリン大尉を呼び事態を報せた。

「大佐原住民が六十人だな」

「そうだーコリン、追い返すのは簡単だが取り込みたい、方法はあるか」

「大佐ー本官に任せてもらおう」コリンはそれを告げると部下の待つ部屋に戻り偵察円盤を放出し彼らの監視から始めた。

その日ー午後待っていた採掘チームを乗せた輸送船が二隻轟音を発して上空から降下してきた。

「あの音は何だ」レガドは音のする方角を見上げると巨大な丸太が炎を吹き降りて来た。

「船長あれは炎を吐く怪物だー」船員たちは喚きだした。

「お前たち静かにしろー近くに降りたようだぞメノラスあれが何か見てこい」

「俺がですかー食われませんか」

「いいから早く行け」

メノラスはぶつぶつ言いながら船が降りた辺りを目指し森の中をいく、五分も歩くと青光りする物体が見え様子をうかがった。

「あれは口を開けて人が出入りしているぞ化け物じゃないー空飛ぶ船だ」

船の側面が大きく開き貨物室から巨大な機械が続々現れ草原に並んでいく。

「あれはなんだ怪物かな、人が出て来たぞ」

器械の操縦室からオペレーターが降りて喋りながらその先にいた男性に近づいて行った。

「高木さんお久しぶりね」

「ホー江田長官自らお出ましですか、人手不足ですか」

メノラスは降りた人物を睨む、黄色いピシッとした服を着ているが腰を覆っているドレスは極端に短い、白い脚に見とれていたが気づいた。

「あれは女だ、女があの怪物から出て来たんだ」メノラスはブルッと震えると一目散にその場を離れたが意識を失う。

「たわいもない奴、連れていけ」コリンは部下に命じた。

広場では江田がにこやかに高木と談笑を続けていたが話は核心にせまっていた。

「ほほほほソラリウムはここでどれくらい採れるかしら」

「長官の期待に応えられるか心配ですなー」

「ここで期待できる量が取れれば王国に取って重要な星になりますから原住民を放置するわけにはいきませんわ」

「そうですね、それが来られた理由ですか」高木は江田が幸子から原住民を手なずけるよう示唆されて来たと感じたが江田の周りに作業員がやって来た。「準備はいいかしら」

「長官ー宿舎を置くからここからどいてくれ」作業主任者はふて腐れて言い放った。

「あらーごめんなさい邪魔していたようね」

江田と高木が離れると空中に浮かんでいたプレハブの建物が降りて来たドシーンドカドカー、三棟の建物が据えられたから広場は一気に手狭になり調査隊の隊員たちはぶつぶつ。

「こんなに大きな建物を持ってきてなんなんだよー」

「ははははこれは実験室さーここでソラリウムの純度を調べるんだ」


メノラスの帰りが遅いとレガドは様子を見に来て建物が何棟も建っているのを見た。

「なんだ見たことのない建物が建っているぞー石積みでないようだがなんでできているんだ、建物の隙間から何かが見えるぞー空から降りて来た怪物に違いないぞ」

突然機械が上昇し飛び去るとレガドの部下は恐怖からバラバラに逃げだした。

「おいお前たちどこに行くー」レガドは部下たちを追おうとするが彼らは一目散あらゆる方角に逃げ去りやむなく船のある海岸に戻るがないー船の姿はなかった。

「どこにいってしまったんだー」それからレガドは海岸で暫く待つが現れることは無く空腹から見かけた建物の方に歩き出した。


コリンは捕えた船員たちを連れ高木の前に来た。「大佐ー船で来た連中だ」

「大尉よくやった、みんなを席に座らせてくれ」

「君たちこの大陸に何しに来たのかな」高木は船員たちを眺め尋ねたが誰も口を開かない。

「俺たちをどうするんだ」

「どうもしないさ、君たちと話がしたくって来てもらったのだよ」

「あんたは誰なんだーこの部屋はなんでこんなに明るい」船員は派手に手で回りを指し叫んだ。

「我々はこの大陸で商売をしているが君たちの国にも行ってみたいものだ」

「来て何を売るんだ」

「この部屋のように君たちの部屋も明るくしないか、食料も売れるな」

「食料だとーあるのか」

「ああー大陸は広大だ、いくらでも畑は作れるからな」

高木はメノラスを尋問し彼らの国が食料不足に襲われているのを知りカマをかけてみた。

「君たちこの部屋が明るいのは電気というものがあるからだ、電気は便利だぞ、ここにある機械も電気で動くんだ」

高木はしゃべりながら机の下から小さい箱を取り出した。

「これは電気が詰まっている箱だ、見ていたまえ」高木がスイッチを押すと光り出した。

「おーすごく明るい」船員たちは一斉に叫び声をたてた。

「どうだ君たちの国にこれを持っていけば部屋の中は夜になっても明るいぞ」

高木の話で船員たちは光る箱を欲しそうに眺めていたが一人の船員が尋ねた。

「それはたかいのだろー俺たちでも買えるのか」

「ははは買えるさ、そのために店を開きたいんだ、どこがいいかな」

「店なら俺の住んでいる街はどうかなー国で一番大きな街だから港が有ってお城もあるんだ」

「いいねー行ってみるか」

「それよりあんたー食料を売ってくれないか」

「いいがどれくらい欲しいんだ」

「俺の家族が食えればいい、麦を二百キロ欲しいな」

「かまわんよ届け先を教えてくれ」高木が承諾すると他の船員たちからも同様の申し出が有った。

「君たちの国では麦が不足しているのか」

「そうですぜ、今年など半分しか収穫がないからお城では備蓄の麦を街に出しているんだ」

「そうだよーここに来たのも食べ物を探しに来たんだ」

「ほーうそれなら来年は農民を連れて来るがいいー畑ならあるからな」

「作らせてくれるのか」

「ああー構わんよ」

ドアが開きロボット士官に連れられレガドがフラフラしながら入ってきた。

「大佐ーもう一人いた、腹がすいているらしいが食事をさせていいか」

船員たちは一斉にレガドが入って来るのを見た。

「船長ーどうしたの」船員たちは心配そうに一斉に話しかけた。

「ハハハ道に迷ってな森の中を歩いていたらこいつに捕まったのよ」

「リベッター少尉ーちょうどいい、みんなと食堂に行くことにしよう」高木は船員たちをせかせるように席を立ち別棟の食堂に連れて行った。

百人が一度に食べられる広い食堂はセルフスタイルで肉や野菜の料理が並んでいた、豪華な食事に船員たちは目を見張ったが皿に山盛りによそってガツガツー船員たちは腹を満たすと別れを言いロボット兵士に案内され船に帰って行った。

「大佐やつら帰りましたがこれからどうするのですか」

「ああー彼らが国に着くのは二か月先だーその間に俺たちは畑を作り大将に出張ってもらうのさ」


ソラリウム

採掘部隊は宇宙から資源探査を行い有望な山の麓にキャンプを置いてモグラが地下に潜り込み開始した。原子分解装置で地盤に穴をあけてモグラはゆっくり潜り込んでいく、一千メートルまで百二十時間かけ掘り進み竪坑が完成、原子消滅エネルギーを水平に回転させながら放射すると広い空間が産まれ路盤となる面を溶融し舗装した。

「清水さんこれだけ広ければいいですわ、プラントを運び入れましょうか」

江田は地下基地建設技師長の清水を捕まえ促した。

「長官ーマグマの井戸を掘ってからの方がよくはないか」

「なぜですの」

「もしソラリウムがなかったら無駄骨ですからな」

「ほほほほ清水さんは心配性ねソラリウムはありますわ、この太陽系は異質なの、なぜかあたしには分りませんがここと同じ太陽があるのは地球のある太陽系だけよ」

「へえー知りませんでした、他の太陽とどのように違うのですか」

「ほほほほ太陽の色がグリーンなの、地球からは黄色にみえるけど色の干渉でそう見えるだけで本当はグリーンなのよ」

プラントを組み立て終わると汲み上げトンネルの掘削、五万メートル以上掘り進むから工事期間を百五十日と計画し装置をセットした。

「さあーみなさんこれでいいわ、地上の基地まで引き上げましょうか」

江田は機械が掘り始めたのを確認し全員をつれ高木の基地に戻り、部下にギニアに戻るよう命じた。

「長官は帰らないのですか」

「ほほほわたくしはやぶ用がありますの、あなたたちはトンネルが出来上がった頃来ればいいわーそれまで他の惑星で仕事があるでしょ」

江田は部下たちを帰還させた後基地から何百キロも離れた開墾地にやってきた。「皆さんお疲れ様、やってますわね」

巨大なトラクターが草原をどこまでも掘り起こしやがて姿が見えなくなったが暫くすると猛スピードで戻って来る。

「長官なにか御用ですか」

「様子を見に参りましたのよ、ここでは何を作るのかしら」

「ここは麦畑になります、種まきの時期になりましたら現地人たちが大勢やってきますから彼らに栽培は任せます」

「そうねーここに村を作らせましょうか」

江田の頭には植民の構想が出来つつあったが船団首脳部の構想と衝突するなどと考えていなかった。


サントナ王国

二千二十年白瀬は高木から要請のあった商品を集めて帆船が帰港する時期を見計らってギニアを出発した。

一週間の航行で黄色の太陽系入り第二惑星カメロンの大気圏に潜り込むと白瀬は乗員に話しかけた。

「いいかな君たち今向かっている惑星はまだ電気を持たない中世の文化だ、国と言っても都市国家程度だが江田軍が触手を動かしているぞ」

「司令官そんな小さな国に何であいつらが来るのですか」

「この星にはソラリウムがあるのが分ったから幸子は王国の直轄領にしようと企んだのだ」

「へぇーそれで司令官はどうしようと考えているのですか」

「俺はここを船団の拠点にしようと思う、すでに高木君が有望な大陸に居座っているからあいつらが来ても自由にはさせないからな」

白瀬は船団という巨大な組織を預かり育てているが辺境を市場と考えているから中心部にあるこの星系を船団の中央拠点にする考えだ。

輸送船は高木の待つ大陸に降りて事務所棟の隣に巨大な商品倉庫を組み立てると広い草原に街の雰囲気が出て来た。

「大将ーここに一本道路が欲しいですな」

「そうだな空港からこの前を通って海に出られたら便利がいいぞ」

白瀬はギニアにある船団の建設部門を呼び寄せ道路建設を始めると江田が渋い表情で眺めていた。「ここは王国の植民地よー都市計画に従って開発するから勝手に施設を建設されると迷惑だわ、高木さん工事は待ってよ」

「何だー工事の事なら大将に言ってくれ、俺は知らんからな」

「団長はどこにいるのー」

「サントナにいっているぞ、店を開くとか言っていたな」

江田は海の向こうのサントナ国に向かうがその間も工事は進んでいた。


サントナ王国へギニア船団の上陸

サントナ王国ハリエット港ではレガドの船が帰ってきたから住民は土産を楽しみに集まっていた。

「あんたー何もないの―?」

「しー大きな声でいうなよ、間もなく麦が家に届くからな」

「エッ本当ー助かるわー」パイルの妻クリはニコニコ顔で馬車に荷物を載せ住まいに戻ると麦の袋を満載にした荷車が止まっていた。

「やあーパイルさんの家はここでいいのか」

「パイルは俺だがどちらさんですか」

「ご注文のものを持ってきた、受け取ってくれ」

「へぇーもう来たのか早いな」

「へへへ俺たちギニア船団はそれがモットーよ、どこに置けばいいかな」

クリは麦の袋を眺めてニコニコしながら土間に案内した。

「この台の上に置いてくれればいいわよ」

この国の公定料金を受け取ると田沢は次の客の家に向かうとしたが馬車の周りには聞きつけた住民がワイワイ、「あなたーあたしにも売ってよー」

「うちにもだー」

「ええー困ったな―これは予約した客の家に持っていくんだ、港の近くにギニア商会って店があるからそこでいくらでも買えるよー」

田沢は叫ぶと人々は港のほうに駆けて行った。

「ふーうやれやれだな」


ギニア商会は開店して何日もたっていない、店先は高木の娘シイラがあくびをしながら店番をしていたが人々が押しかけて来るのを見たドドドドド。

「きゃーなんなのーあたい逃げるわよ」

シイラは翻ると奥の部屋に逃げ込んでしまい人々は誰もいなくなった店の前でウロウロしていたが様子を見ようと顔を出したシイラを見つけた。

「あなたーお店の人でしょ麦が欲しいの」

「あれーお客さんなのー」

シイラはニコニコしながら出てくるとドカッ机に向かい注文を聞き麦が欲しいと知ると大陸の倉庫に麦の入ったコンテナを送るよう依頼した。

「お客さん明日麦が届くからねー買いにくればいいよ」

その日の深夜大陸から小型の輸送艇が百トンの麦が詰まったサイロを持って店の上空に到着、屋根を開いてサイロを店の中にセットした。

翌日になり客が来ると池田が応援に加わりシイラは販売を始めた、客の目の前で池田が計量器に袋を乗せ麦をジャーと流し込むと重さを量り口を閉じた。

「はいーお客さんお代は〇〇だよー」

シイラは飛揚機器で袋を客の引いて来た台車に積んでいく。

客は麦の袋が空を飛ぶのを不思議そうに眺めていたが食料を確保できてニコニコーこの日は朝から販売を始めて夕方まで客は途切れず待っている客は合間に店の中にある商品も買っていった。


店を開けて八日目の朝シャッターを開けると女の子がいた。

「おはよう何か買いに来たの」

「あたちを働かせてください掃除でもなんでもしますから」

「フーン幾つなの親御さんは知っているの」

「あたち十五になります、お母さんがいますご近所の畑を手伝っています」

「フーンあなた字の読み書きは出来るかな」

「はいできます」

そうー偉いのね、はきはきして感じのいい子だわ「いいわー一日千コロンよ」

「えーそんなにもらえるのですか」

「ギニア商会はあなたには想像もできないとても大きな会社よ基準があるの」

「あのー何をすればいいですか」

「カウンターの中に入ってお客さんが来たらあいさつしなさい、それから荷物を出し入れするときは呼ぶから来なさいね」

「はーい」レイラは言われた通りカウンターの中に入り椅子に掛けているとお客さんがやってきた。

「いらっしゃい」明るい声で叫んだ。

「わっー驚いた、レイラここで何してるのよ」

「叔母さんおはようございます、あたち働いているのよ」

「そうなの頑張りなさいね、麦をもらいたいけど」

「はーいわかりましたーおかみさーん麦が欲しいそうです」

「はいはいレイラ」シイラは池田と奥の仕事を止めて表に出て来てお客の相手を始めた。一袋売って百二十コロン、見ていたレイラは思った。

「あれだけあって百二十よあたちのお給料で買えるわ」その日はカウンターでお客が来るたびにシイラを呼び仕事が終わると聞いた「おかみさんーお手当の一部を麦でもらえませんか」

「構わないわよ、付けとくからお手当の支払いの時清算するのでいいわね」

「はい」五キロの袋をもらいレイラはニコニコ。

「ただいまー」

「誰ーレイラなのこんなに遅くまでどこに行ってたの」ケリーは怒りながら玄関に顔を出した。

「ごめんお母さんお土産よー」

「なんだいこれは」ケリーは受け取ると袋を開けて驚いた。

「レイラこれはなにいくら貧しくっても人様のものを取って来るような娘に育てた覚えはないわよビシー」ケリーはレイラの頬にびんたした。

「えーんちがうのーあたちが働いてもらったのエ―ンエ―ン」

「えっ働いたってどこでよ、いい加減な事言わないの」

「エ―ンうそじゃないわよー港の近くのギニア商会ってお店よーエ―ン」

「一日働けば千コロンもらえるの」

「そんなにかあたしでもその半分だよ、どんな仕事しているの」

「ぐすっ店番よーお客が来たらおかみさんを呼ぶの」

「そんな仕事でそんな大金もらえるのか」

「そうよー頑張ればあたちでも社員にしてくれるって」

翌日ケリーは仕事を抜け出しギニア商会が見える場所まで行きレイラを探した。「いたわーあんなとこに人と話しているわーあの人が店長かしら」

ケリーが見ているとシイラに案内され商品を一つづつ教えてもらっていた。


一週間が過ぎるとレイラはお給料の入った袋をもらい帰ってきた。

「お母さんこれー」

「こんなにたくさんなのか、これはお前が働いてもらったお金だよ」

「いいのよーお母さんこれできれいなお洋服買いなよ」

「グスッ嬉しいよ、でもそれはお前のために使いなさい」

そして順調に働いて日にちが立ったある日シイラはケリーに会いたいと言う。

「おかみさんあたちなにかしたですか」

「ううん違うの、あなたを社員になってもらいたいからお母さんの了解をもらうのよ」

「えーあたちが社員ですかー」

「そうよーそのために二年間ギニア商会の本部に行って欲しいの、もちろんお母さんと一緒よ」

「お母さんいいかしら」

「ありがたいお話ですわ、でもあたしは仕事がありますからレイラ一人で行かせるのはダメですか」

「わかりましたわ、それでは娘さんを二年間お預かりしますから」


ギニア王国のサントナ乗っ取り

ギニア商会の繁盛ぶりをみて周辺の商店主は集まって話し合いを始めた。

「それではみなさんかの店に関して意見を聞きたい」

「新参者なのにあんなに大量の麦を売られては儂の店は上がったりですぞ」

麦を売っている粉やの主人から話し始める。

「そうそうーあの光る箱はなんだ魔法ではないのか、おかげてランプの灯油が売れなくなりましたわ」油やの主人は顔を真っ赤にして吠えた。

「役人に訴えて魔法使いなら捕えてもらいましょう」

商店主たちの訴えで警察官のセバッチ警部がギニア商会にやってきた。

「この店かーなにがあるのかな」

店をうかがうと市民が並んで麦を買っていたが計量器をみてギクッ「袋に入れた麦を乗せると数字が現れた、どういう仕組みになっているんだ」

店の中に入り昼間のように明るい。「どおしてこんなに明るいんだランプはどこにあるのかな」

セバッチは探すが見当たらず天井に太陽のように輝いているものが有った。

「これは太陽の子供かー」

「ハハハハおじさんそれは電球というものよー電気で光るの売り物よー」

「君は誰かなこの店の人か」

「そうよーシイラって言うの、店にあるものは何でも売るから欲しいものが有ったら言って」

シイラは政府の思惑を知らずに販売をしていたが江田から命じられ店の様子をうかがっていた霧降祥子はセバッチの監視を虫ロボのノーマに頼んだ。


「あんたーあの男を調べて」

「ハハハ俺様に任せろ」

セバッチは署に戻ると署長に見たことを報告。

『警部それでは麦が大量にあると言うのか」

「はいー店の裏には何十トンも入るおおきなタンクがありましてそこから変な機械を使い量り売りしていました」

「国内では飢饉で余っている麦などないはずだがー?どこから持って来るのかな」

「所長ー船乗りの間では海の向こうにある大陸の住民が売りに来ているとうわさしています」

「そうか、その大陸では穀物が豊富なのか」

「署長―穀物だけではありませんよ、変な器械も彼らが作っているそうで決して魔法ではありませんな」

「フムー王様に報告してくるか」バウス警察署長は席を立つと馬でお城までポコポコ行き、ワイベル王に謁見を求めた。

「王様、最近市中で起きている話題ですがいつのまにか海の向こうの大陸から物売りが来ていると分かりました」バウスは子細を報告しワイベルに指示を求めた。

「そのことは商人どもからも話は聞いているが彼らの話では魔法使いとか言っていたが」

「ハハハハ現代にそのような者がこの世にいると信じている愚か者などいませんわ、噂では向こうの世界には我々の知らない機械があるそうで科学者に研究させれば正体がわかるかもしれません」

バウスが帰るとワイベルは情報部長官を呼んだ。

「セッターギニア商会という店を探って海の向こうある国の情報を集めろ」

「はい命令承りました」

セッターは王様の前から下がると部下の待つ部屋に行き命令を伝えた。

「ボス―あの店には小娘が一人いるだけです、連行して取り調べればわかるのではありませんか」

「チャペルーどんな国なのかわからんのだ、将来関係を持つかわからん国を刺激するのはまずい大変だが女から聞き出せ」

「はーんボスは女を色仕掛けで落とせと言われるのか」チャペルは若い独身の部員マフィーを選び任務を命じるがノーマに知られ報告を聞いた霧降は店で待っているとマフィーがやってきた。

「いろんな物があるなー」

「お客さんなに探しているのー」

「はーん君は店の人かな」

「そうよー祥子っ言うの、欲しいものがあれば売るわよ」

「ふーん見たことのないものだけどどこで造っているのかな」

「海の向こうよ商人の国なのーこの国にも売ろうとやってきたのよ、これからは科学技術の時代だからあんたたちもとりいれないとドンドン遅れて行くわ」

祥子は飾ってある商品を取り出し動かしてみせたーブーン扇風機が回り風がマフィーの顔にあたる。

「なんだーどうやって風車が動いているんだ」

「ほほほほ電気というものがあるのー目に見えないけど何でもしてくれるのよ、太陽の替わりや馬の替わりもするわ」

「そんなものがあるのか、そして君はそれを売っているのか」

「そうよーこれから隣のグレイザー国にも店を出すから忙しいわ」

ノーマの報告はワイベルの耳に届き危惧を抱かせた。

「グレイザーだとー敵国にこのような商品は渡せん、販売を阻止しろ」

ワイベルはひそかに部下に命じて買い集めさせた商品を科学者に調べさせ国が発展するのに欠かせない技術だと知ると独占を考えていた。

「そういわれましても相手は海の向こうにおりますが」

「ふむ店の責任者を連れてこい、わしが話をしてみよう」


ワイベルは捕えていう事を効かせようと考えていたがノーマはお見通し、祥子は堂々と城に入れるからワイベルを拉致するチャンスと見て城からの招待状が届くと江田に部隊の派遣を頼んだ。

透明化スクリーンに隠れたロボット士官が祥子とともに城の謁見室に入りワイベルが現れるのを待った。

「儂が国王のワイベルだ、ここまで御苦労だなーウッ」ワイベルが現れ話しを始めたが突然意識を失いその場で崩れる。

「ほほほほたわいもないわ、クラド大尉うまくいったわね連れて行って頂戴」

「ハハハ簡単な任務だーこれからどうする」

「あたしの出番よ政府を乗っ取るの」祥子は通信機で部隊を呼んだ。

巡洋艦が降下してロボット兵団が飛び出す。

城の中庭に続々と降り立ち進軍を開始して城の虫垂を占拠した、城のなかに敵が現れたと驚いたサントナ軍はドタバタしているうちにロボット兵士が目の前に現れ城から追われた。

無血占領は市民に気づかれる事がなく終了し江田が国主の席に着いた。

「さすが長官だな手際がいい、いよいよ女王になったか」

高木は虫ロボのナナから報告を聞くと呆れながら新政権での営業計画を練った政変など関係がない市民はギニア商会へ目新しい商品を購入しようと頻繁に通うから繁盛していたがシイラは悲鳴をあげた。

「御父さーん麦が売れて足りないのよー追加を持ってきてー」

「そうかー百トン持ってきたんだが大将と相談しないとな」

その後白瀬の指示で買い付け部隊が辺境の各国を回り麦を集荷した。

「大将ー今回はなんとか量を揃えられましたが来年が心配です、開墾地を大幅に増やさなければならないのですが人手が足りません、何とかなりませんか」

「高木君問題は資金だ、それさえあればソラリスからでもルビリアからでも呼べるんだが」


レイラの凱旋

レイラが旅立っって一年が過ぎた日に港のギニア商会専用桟橋に薄紫色のキラキラ輝いたワンピースを纏い白いハイヒールとつばの広い帽子をかぶった女性が降り立ち、辺りにいた人々は絵に描いたようないでたちに注目した。

「レイラー忘れ物はないかー」船から石田は顔を出し呼びかけた。

「石田さーん荷物はこれだけよー」レイラは手に持っていたワニ皮のバックを振った。

「レイラだってー嘘だろー」知り合いのレンは愕いてレイラの前に立ち覗き込んだ。

「お前レイラか」

「なによレンー何しているの」

「お前ーこんな格好してどうしたんだ」

桟橋にシイラとケリーがやってきたがレンを見るとずかずか近寄り手で払い退ける。

「おどきよレン、レイラお帰り」ケリーは抱きしめた。

「あっ綺麗なお洋服が汚れるわ」ケリーは慌てて離れたがレイラはにっこり。

「ほほほほお母さんーお店でゆっくりしたら」シイラは二人を誘い店の中に入って行き残されたレンは安物のワンピースを着て泥仕事をしていたレイラの替わりぶりに唖然と突っ立ったまま。

この日レイラはお休みをもらい久々の里帰り、店に入るとシイラに聞いた。

「統括ー家は暗いしボロでしょ、建て替えたいのだけどいくらくらいで出来ますか」

「大して費用はかからないわー、手配してあげるからゆっくり返済すればいいわ」

「本当ですかー、お母さん良かったね」

「おいー建て替えるなんてあたしは知らないよ、そんなお金あるのか」

「ふふふふ任せてーレイラはすっかりギニアでの生活に慣れてしまったからよね」

「そうよあの生活をすればもう戻れないわ」

ケリーは知らない間にどんどん話が具体的になって行きオロオロするだけ、話しが終わる頃には諦めレイラに任せてしまった。

工事が始まってひと月、ケリーは目の前に出来上がったばかりの住まいに入りビックリ、どの部屋も昼間のように明るく床には足首まで埋もれる絨毯が敷かれ部屋に入るのにオドオド。

「お母さんー入れば」

「レイラ―あたし怖いよ、汚れたらどうするの」

「ハハハハそんな事これは汚れはつかないわ、このクリーナーで掃除をすればいつまで綺麗よ」

あれから一週間、レイラは昨日ーギニアとかいう星に勉強のため行ってしまったから寂しかったが隣近所の奥さんたちが新居を見に訪ねて来た。

「へえーすごいお家ねーいくらしたの」

「レイラが計画していたから知らないわー」

「レイラはまだ子供なのになんでこんなことできるのー以前は港の近くの店にいたわよね」

「そうよーいつの間にかお店で働きだしたのよー、そしたら今では幹部にするからって本部へお勉強にいかされているの、あたしが一年働いてもらう給料をあの子はひと月で稼ぐのよ大した子だわ」

「へぇーすごいわねー息子のセクトを雇ってもらえないかしら」

「わからないわーお店で聞いてみたらー」となりの主婦アンは紹介して欲しいと暗に頼んだのだがケリーはレイラの邪魔になると直感店に頼むよう勧めた。


白瀬はレイラと入れ違いにギニアに戻ると資金を得る方法を模索していたが幸子に知れた。

「あなたーそんなにお金が足りないなんて何を計画しているの」

「麦畑を作っているが人を雇う金がないんだ」

「ほほほほ何かと言えばカメロンの事ねー、冴子から食料事情が悪いと聞いているわー作物が取れないのは農地が悪いから土地改良すればいいのよ、冴子が現地の農民に方法を教えるからあなたは農民にトラクターと肥料を売りなさいよ、お金なんか無くっても解決だわ」

サチコは笑いながら離れていくと健一は唸った「クソッーその手が有ったか」



ミカのルビリア留学

辺境との関係が深まるとギニアの経済は沸騰し、ミカの高校卒業が近づいて来るとリンゴの世話をしながら誠はつぶやいた。

「ミカの学校どうするかなー」

「あなた何言っているの景気は最高よー行かせるのに決まっているじゃない」

「違うよギニアの学校よりソラリスかルビリアのアカデミーの方がミカにいいんじゃないかなーと思うんだ」

「そうね先生もとても優秀だと言っていたわ」

突然二人の後ろで泣き声があがったー「ウワーンあたいを追い出さないでよーウワーン」

「おい聞いていたのか、誰もミカを追い出すなんて言ってないぞ」

「嘘―ソラリスかルビリアに行かせるって言っていたじゃなーいウワーン」

「泣くなーアカデミーに行かせようか話していたんだ」

「えーあたいを行かせてくれるの―嬉しい」

「そうよかわいい娘を誰が追い出すものですかーミカはソラリスとルビリアのどっちらに行きたいかしら」

「あたいならルビリアね、サクワ君も行くんだって」

「はははは彼氏と一緒か」

「ブスッサクワ君は友達よ彼氏ではないわ」

ミカとサクワは一緒にルビリアアカデミーで学び三年が経過、ミカは間もなく二十二歳になりサクワは悪だくみをもくろんだ。

「御婆様俺ミカと一緒になりたいんだ、力を貸してくれない?」

「ほほほほ王子にそのような方が現れましたか、宜しいですわ宮殿に招きましょうか」この時リリヤはトルセンからミカの事を聞いていた。


ミカの婚約

アカデミーの寮に入っていたミカは一通の手紙を受け取った。

「何かしら差出人は王国政府よ」手紙を開けて読むと就職説明会の招待状。

「あたいをルビリア政府に勤めろというのかな」ミカは翌日招待状を持ちアカデミーの学生課に聞きに行った。

「神田さんこんなものもらったのですか」

「そうよーいつもこうして政府は人集めするのー?」

「いやー知りません、王国政府職員試験は数万倍の競争率で超難関ですぞ、このような事をしなくとも応募者は十分におります、これを読めばすでに採用は決まっているように思えますがなぜか心当たりはありますか?」就職係は不思議そうに尋ねた。

ミカが政府から請われたと話はあっという間にアカデミーに広がり友達のリサが頼みに来た。

「ねーミカあたしも一緒に行っていいよね、おまけでいいからあたしも採用してもらえるかもしれないからさ」

「リサーあなたズーズーしくない」

「なんでよメリナも頼めばいいじゃない」

「ふーん私は父の経営している会社で働くのが決まっているのよ、そんなうさん臭い話なんかに乗らなくってもいいの」

リサはアメリカ州の出身、ギニアに戻っても就職難が待っているだけだが女官になれば将来が保証される。

招待日の当日ミカとリサは初めて王国宮殿にやって来た、建物の内部に道路が通り商店街が軒を連ね土産品を販売していた。

人が多いから二人はウロウロ「ミカーどこに行くか知っているのー」

「知らないわよどっかで聞かないとね」

キョロキョロしていたら案内の看板が目に留まりミカはとことこ走り寄った「女王陛下に会いたいのどこ行けばいいの」

「陛下に御用なのー?」

「そうよーこれが招待状」ミカは手紙を職員に見せた。

「あらーいいわねちょっと待ってね今聞くから」職員は画像電話を取りピポパ

「迎えが来ますから待ってて」

五分もすると紫の豪華なドレスを着た女性が現れた、切れ長の大きな目で二人に呼びかけた「わたくしキティーよ陛下から招待されたってあなたたちねー追いてらっしゃい」

女性はそれだけ言うと踵を返すように来た方向に歩いて行った。

長い廊下を歩きすれ違う女官はドレスをつまみ上げ腰を落としてキティーにご挨拶、その様子にリサの目が瞬いた。

「これよー素晴らしいわとても優雅よねー」リサはキョロキョロしながら舞い上がっている。

エレベーターに乗り空中庭園のようなフロアーで降りてとことこ、あずまやのような建物に入った。

「陛下連れて来ましたわ」

「侯爵御苦労さま」

「えーあなた様は侯爵さまなのー?」リサは驚いて目を丸くした、侯爵は上級貴族一ギニアのような星を統治している女王だとリサでも知っていた。

「ほほほそこのカウチにお座りなさいな」

リサとミカは指図されたソファーに座ると目の前にいるサクワに気づいた。

「サクワ君なぜここにいるの」

「ミカーおばあ様を紹介するからな」

「なんでー今日は就職説明会よ、リサもそう思って来たのに」

「ほほほほそれに間違いありませんわ、ミカといいましたねサクワがあなたのもとに永久就職したいそうなのーこんな孫だけどどうかしら」

ミカは結婚の申し込みと分かりビックリキョロキョロ辺りを見回す。

「キティー侯爵は補佐官が欲しいと言ってましたわねーこの娘はどうですか」リリヤはリサを指して侯爵に尋ねた。

「ここまで押しかけて来るなど積極的で面白い娘ですわ、わたくしの手足として使ってみようかしら」

「ありがとうございます喜んでやらせてもらいます」リサは突然思いもよらぬ形で希望がかないニコニコ、隣にいた女官に呼ばれ具体的な話を聞かされた。

ミカはいつの間にかリサの就職が決まり、サクワから求婚され頭が回らない。

「えー困ったわ結婚なんて早いわよーどうしたらいいの」

「ミカさんすぐ返事はいいの、今日は婚約という形にしますから式は帰ってゆっくり考えてから返事をもらえればいいのよ」

「分かりました陛下」

次の日学校に行くとミカは一斉に注目された。「なによーあたいの顔に何かついてるの」

「神田さんちょっと来て」校長のレノンが呼ぶ。

「はーい先生何かしら」

「神田さん王子と婚約されたと聞きましたが本当ですか」

「えー何で知ってるの」

「リサさんが話してました」

「まったくあの女おしゃべりなんだから、先生ー結婚はまだ返事してませんからね」ミカは詳しい事は話さず校長室から逃げ出しリサを探しに教室まで来ると声が聞こえた。

「あたしねー陛下の副官をしているキティー侯爵様付きの女官に採用されたのよ、卒業したら侯爵様の側で働くの今からドキドキよ」

「嘘ー女官職は超エリートが着く地位よ、王国中から何万人も応募して勝ち取る地位なのにあなたが簡単に採用されるなんて信じられないわ」

「本当よーこれを見て」リサはアリア王国の補佐官採用証書を得意そうに見せた。

クラスメートはそれほど成績優秀でないリサが庶民の女性にとって憧れの職業に就いたと知り不満ブーブー、証書を回し読みしてリサを睨む。

女官になれば侯爵の代理として王国の官僚たちを指揮したり世界を飛び回りいずれ諸侯の王子や財閥の御曹司との結婚に結び付く花形職業だからだ。


ミカは銀河ネットで良子に婚約してしまったと告げ相談したが聞いた良子は驚いて有頂天ー誠が帰って来ると知らせた。

「あなたーサクワ君はルビリアの王子様なのよー知らなかったわ、ミカが女王陛下に呼ばれて結婚を申し込まれたってすごいわー」

「おいよくわからないなー、サクワがどうしたというんだ」

「王子様なのよー女王陛下がミカとサクワ君の仲人するのよ、こうしてはいられないわ会長さんの屋敷に言って話を詰めて来ないとそれから・・・・・」

良子は部屋の中をうろうろするが何からしようか頭は混乱してしまった。


ミカとギニア王家

事態は幸子やベニーに情報部から報告された、幸子は孫姫をあやしながら報告を聞くと執務室に入り乳母の田口雅子に二歳になったサファイラ姫を返した。

「田口さんー姫の世話を頼むわね、この子目を放すと何するかわからないの」

「陛下承知していますわ、お任せください」

幸子は執務室に落ち着くと市民の娘がルビリアの王子と婚姻するのはギニアにとってどういう事か考え白石を呼んだ。

「陛下話は分かったわ、ルビリアの意図を探るのね」白石はギニアにあるトルセンの屋敷に虫ロボを放した。

「殿下ー女王陛下はミカ嬢を結婚の相手と認めてくれたと聞きました」

「タクランー計画通りだ、サクワとミカが一緒になればトルセン家はギニアの市民権を得られる、今まで自由に動けなかったがその束縛もなくなるぞ」

「殿下ギニア併合が現実になりますぞ」

虫ロボは二人の話をしっかり聞き取り、白石に送信したがその電波は警備網に引っ掛かった。

一方ベニーは諜報員をルビリアに送り込んだ。

ルビリア領域内はそれほど警戒されていない、ゲルトはギニアから定期航路の客船に乗り込みルビリアの空港で降りるとアカデミーに向かった。

「ここが女の通っているアカデミーかさすが王国一と言われるだけあるな」

ゲルトは五十階建ての本棟を中心に様々な施設が回廊で繋がり、何万人もの学生が動く歩道で往来するのを見た。

女の名前はミカ、寄宿舎で生活していたから忍び込もうとしたが男性禁止の文字が浮き上がり歩道から排除されてしまった。

「畜生ー男は入れさせないのだな、アカデミーも女子校舎だから入れないぞ」

学生たちが出入りするキャンパスでウロウロしながら出てくるのを待っていたが一時間もするとパトロールのロボット警備官が近寄って来る「やばいぞー逃げなきゃ」ゲルトは正門のほうに歩きだすが突然背後から声をかけられた。「もしもし身分証明を見せて欲しい」

一分後ゲルトは拘束されソラリス情報部に通知が来た。

「陛下ーどうやら捕まってしまったようです」

「なんですってなんというドジしますのーマーキン長官を呼びなさい」

ギニアでは白石はトルセンの屋敷を眺めていた。

「素晴らしい屋敷ね、ルビリア宮殿と呼ぶのかしら」

白石は虫ロボを潜入させ情報を聞いていたが途中で妨害が起きた。

「しまった発見されたわ」

通信が途絶えて白石は其の場を去ってから一分後警備ロボットの小隊が現れた「逃げたようだな」

「まあーいい正体は分かっている」

サクワが王子と分かり会長と思われていたトルセンはリリヤ女王の第三王子と探り出した白石はミカを息子の妻に向かえることでギニアから退去させられなくなったと気付いた。

「トルセンはギニアに足場を固めたわー法的に追い出せなくなったのよ。これからはおおぴらに活動できるわー」白石は幸子に報告した。

「息子を使ってギニアの市民権を取ったのね」

「はい陛下ーここでレムール族のミカを利用するとは大した謀略家ですわ」

「そうね、誰一人親族のいないミカにリリヤは唯一の叔母さんになるからルビリアの思いのままよ、合法的に反ギニア活動を始めたら市民だから退去させられず公然と動けるわ」

「陛下もそう考えているのですね」

「間違いないわーミカは若さと美貌が武器よ、あのクレオパトラのような美しさでルビリアをアピールされたら人々の心はソラリスを離れるわ」

「それで知らないうちにルビリアが勢力を広げるのですか周到な計画ですわね、それではトルセンの目的はギニア乗っ取りと考えていいのですね」

「未然に防ぐ方法を探らなきゃならないわ、警察を投入すればルビリア軍に王子救援の大義名分を与えて艦隊を送り込ませますからできないわねー」


幸子の危惧はベニーも抱いていた「だめだわー追い出せないわ」

「陛下ーギニアは風前の灯です、このままルビリアに併合されるのを指を銜えて見ているのですか」

「ガ―トンールビリアの王子は追い出せないわ、これからは彼らの思いのままよ」

ベニーはルビリアに対抗するためソラリスの資本投入を考えたが幸子はルビリアに食い込むのを考えていた。

「そうだわーそれにしましょう、柴田はいませんか」幸子は思いついた。

「陛下およびですか」

「ミカをギニア王国の王女としてルビリアに輿入れさせます、法的に手続きを進めてください」

「ははあー陛下それは良い思い付きで早速進めますです」

「幸子ーあの娘を王女にするのか」連絡を受けた健一はビックリ。

「そうよーこれで白瀬家とフロンフォルト家は親戚よ、ルビリアの攻撃は無くなるわ」

「そういう事かーソラリスから攻撃されたらどうする」

「ホホホホーここは境界から十分離れてますのよ、ソラリスが境界を越えたらルビリアにせん滅されますわ」

「君はルビリアひいきだっのか」

「違いますわ、わたしは国民が平和に暮らせればいいのよ」幸子は神田家に使節を送りミカを養女にもらいたいと伝えた。

「ミカを取り上げるというのですか」

「違いますわ、生活は今のままなんの違いもありません、身分だけ市民から白瀬家の王女に替えるのですわ」

使節のネネは丁寧に説明、王女で結婚すればどう遇されるか知らせた。

「ミカが産んだ子供は王子や王女の身分がもらえるのね」良子の眼はキラキラ

「そうよ、それに神田家はギニア王家の外戚になるの」


ソラリスの陰謀

ギニアを取り戻す策略としてベニーはルビリア企業の工場をギニア政府は接収すると欺瞞の噂を広めた。

「どうやら政府はフロンフォルト家と姻戚になるから強気になったぞ、俺たちの資産を取り上げる考えだ」

「本当かー」

「そうよーリリヤがバックに着けばどんな事もできるじゃないか」

「女王には逆らえないぜ、ここは引き上げた方が得じゃないか」

「取られるならその前に売り払って撤収しようぜー」

起業家の間で噂が広まり工場の売却が始まると株価が下がり始め、幸子は報告を聞き驚いた。「柴田はいませんか」

「はい陛下お呼びですか」

「市場が混乱始めましたなぜですか」

「はい最近町中で政府がルビリアの企業を接収すると噂が飛び交いまして不安が高まっているからです」

「誰がそんなウソ流していますの」

「調べていますがまだつかめません」

「そんな噂を流すのはなぜかしら」

「陛下なぜかわかりませんがその結果起業家たちの間で引き上げる動きがみられます、このままで暴落し経済は混乱します」

「対策はありませんか」

「はい株を買い支えられれば静まります」

「分かりましたわ、江田長官を呼んでください」

柴田は携帯で資源エネルギー省に連絡すると江田は何事かとやって来た。

「陛下お呼びですか」

「江田さん鉱物の増産は可能ですか」

「陛下可能ですが資金をお求めなら金星からとれた金塊がありますわ」

「ほんとうー忘れていましたわ、どれくらいありますの」

「公共投資と輸送船の更新にほとんどを使いましたから今は中央銀行の地下に保管してあるだけですわねーおよそ一万トンかしら」

「そんなにありますの、素晴らしいですわ」

「それで足りなければ金星の保管所に同じくらい置いてありますから」

「わかりました、柴田ー西の財務長官に株の買い支えを命じてください。誰が企んだか知りませんがギニアの資本を増やすいい機会ですわ」

翌日からギニア財務局が市場に加わり売りに出た株を次々と購入していくー

やがて市場の混乱は止み、経済省は買い取った企業から生産される製品の販売先を模索した。

「幸子販売先だが辺境の国へ大々的に売るのはどうかな」

「いい考えですわ、船団でやってくれますか」

ベニーは事態が収束していくのを見て歯ぎしり、ギニアからルビリアを排除する策が失敗その原因が気になった。「誰かーギニアが使った資金はどこから出ていますか」

「はい陛下ー情報部ではギニアの急速な発展を以前から問題にしておりまして極秘に調べましたらなんと金で出来た星を発見していた模様です、その星に金の加工工場を作りすでに数十万トンの純金を保管してました」補佐官のカートンは調査結果を報告した。

「そんなにですか、何兆トーラーになるのかしら」

「陛下問題はそれを利用して何をするかです、すでにギニア政府は辺境にあるカメロン星を王国に組み入れて近代化政策を行っています」

「そうなの、それでは資金を断つ作戦は使えないわねー」ベニーは暫く考えていたが情報部のマーキン局長を呼んだ。

「陛下お呼びでしょうか」

「マーキン、ルビリアでの失態を返上する機会を差し上げますわ、娘がギニアに戻ったらわたくしの前に連れて来なさい」

「ははあー承知いたしました」


ミカは王女様

アカデミーを卒業したミカは半年ぶりに自宅のある街に来て辺りが見違えるように変わっているのにビックリしながら自宅前の停留所でバスを降りた。

「おかしいわーお家はどこにいったのかしら」

見慣れたプレハブの二階家が見当たらない、キョロキョロして目に入ったのは近代的な三階建て建物「お家を売り払ったのかしらみてみようー」

玄関に近づくと表札が有った。「なによーこれあたいの家じゃないー?」

暫く茫然としていたが玄関で喚いた。「ただいまーこんな家建てるお金どうしたの?」

良子がトコトコ出て来た。「ほほほほミカお帰り、王女様の住まいですからこのくらい当たり前ですわ」

「なによー王女って」

「ほほほほあなたはギニア王国のミカ王女になったのよ、建物は政府が立ててくれましたの」

「そんな事あたい知らないわよ」

「ホホホホ幸子女王様がミカがサクワ王子に嫁ぐのに平民では御妃に成れないからと王族に加えてくれましたの、これであなたは王宮に入っても他の王子の妃と対等になれますわ」

良子の話を聞いてミカは知らないところで結婚話が進んでいると知りビックリ、「これでは断れないじゃないのーどうするのよープリプリ」


ベニー対ルル

ミカの自宅を監視をしていたマルタックは帰宅を報告、作戦が開始された。

「お前たちこの女だ良く覚えておけ」マーキンは写真を部下に見せた。

「ボスひっ捕らえればいいんでしょ」

「ルモン簡単に考えるな、王子の婚約者だ警備は厚いぞ」

「ボスどうやるんですか計画はありますか」

「警備しているのはルビリアだけでないのがやっかいだな、ギニアも独自に警備体制を引いている。あの屋敷は警備が厳重だから襲えないぞ、外に出た時がねらい目だな」

「お母さん行ってくるわ」

「ミカー気を付けるんだよ」

ミカはサクワから贈られた車に乗りゼルダ食品にサクワを訪ねようと出かけた、

「りりーお願いね」

搭載されている電子脳はミカの要請に反応ーエネルギーを送りスタートプルン

会社まで車なら五分もかからないからマーキンには時間がない、部下のマルモは透明化スクリーンを張り、交差点で止まったところを襲った。

突然ドアが開いてミカはビックリ「なんなのよーこのドアー壊れているの」

見えない手で引きずりだされ降りて来た快速艇に押し込まれそうになった。

スクリーンのエネルギーは警備していたロボット兵士が探知して出動ーミカは羽交い絞めにされながら船の入り口で抵抗していたのを見たロボット兵士は弾丸のように突進。

「キャーキャー――」ミカは激しく抵抗していた時激しい衝撃を感じて空にまいあがった。「キャー落ちるー」

押し込もうとしていたマルモは蹴り上げられ、勢いでミカは飛ばされたがロボット兵士に抱かれて着地。

「何なのどうしましたの」突然ロボットの腕の中にいたのにビックリ尋ねた。

「ミカ安心しろ、敵は排除した」

数十メートル離れた場所にマルモは落ちてうずくまっていたのをロボット兵士は抱きかかえると飛び去ってしまった。

残されたミカはポカーン慌てて車に乗り込みサクワのもとへ、会社の事務室に入るとサクワを捕まえペラペラ。

「へえーそれで助かったのか危なかったな」

「サクワ君本当に心配しているの、まるで他人事よ」

「ハハハハ悪かったな」

サクワはこの時事態の報告を受けミカの身辺警護を強化するよう命じていた。

この事件は白石の部下服部信子が観察し白瀬まで報告された。

「白石さんミカが襲われたのか」

「はい司令官ー犯人はどうやらソラリスですわね」

「ベニーのしわざか、あの女なにをもくろんでいるのかな」

「ほほほ司令官決まってますわー、ギニアからルビリアを追い出したいのよ」


ミカの拉致に失敗したマーキンはアジトに戻るとマルモが戻っていないのに気づいた「マルモはどうした」

「隊長捕まったぜ、どうしたらいい」

「捕まるなど取り返しがつかんぞ、ルビリアは間違いなくベニーを追い詰める証人に使うはずだ、助けだすから監禁場所を探せ」

「隊長ー考えられるのはトルセンの屋敷の中だ、まるで要塞ですぜ」

マーキンは部下を連れ屋敷の外で監視をしていると玄関からルルが入って行くのを見て苦虫を潰した。「まずいルルの野郎が首を入れて来たぜ」

「ボスどうしましたーたかが小娘一人ですぜ」

「お前はルルを知らんのか、あの女は一筋縄ではいかないぞ」

この時マーキンたちはルルの放したスパイ円盤に監視されているのに気づかなかった。

「サクワいるの」ルルは部屋のドアを開けて叫んだ。

「キャー誰なのー、サクワに手を出したらただじゃすまないわよー」突然扉が開き女の声がしたからミカはビックリ叫んだ。

「あらあら元気なお嬢さんね、あたしは王子に関心はないわー」

「それじゃー何しに来たのよー」ミカはルルを睨みつけ聞いた。

「ミカ―俺が来てもらったんだ紹介するよ、王室護衛隊のルル少尉だ君の警護を頼んだんだ」

「あたいの警護に来てくれたのー?」

「王子ー外にお客様がいるわよ、どうしましょうか」

「目当ては捕まえた男だろー父上に任せればいい」

トルセンはルルから知らされた報告でロボット兵士をマーキンの周囲に配置

し気づかれることなく捕獲した。

「あー父上からだ」サクワは通信機を取り出しみた。

「ルル全員捕まえたって」

マーキレンと部隊がルビリアに捕獲された事はタリヤからベニー報告された。

「それでマーキレンたちはどうなりました」

「一晩取調べを受けて釈放されましたわ」

「どうしようもない人たちね、ソラリスに帰還させなさい」


トカゲの来襲

二千二十四年第八惑星金星に三角翼船が近づいていた。「ボスーあの星です」

「リンクル良く見つけたな」

「へへー偶然ですわ、やつらの通信を聞きましてね」

金星の地下基地で三角翼船の接近はスクリーンに捉え守備隊長遠藤大尉は監視していた。

「永野ーあれは何しに来るのかわかるか」

「決まってるでしょ、金が欲しいだわさ」

「困ったなー仲間がいるか捕まえて吐かせるか」

遠藤は地下への出入り口を閉鎖してスクリーンで囲い敵を近づけないように処置を済ますと戦闘準備を命じた。

「遠藤君接近してくるのは一隻だな」

「はい司令官ー探知したのはそれだけです」

「分かった君は防戦に努めてくれ近くいる巡洋艦隊を直ぐに向かわせるぞ」

田上大佐はスクリーンを切ると二十一巡洋艦隊へ金星支援を命じた。

「田上指令何事ですか」

「島本少佐ー海賊が金星を狙っているらしい、この星系からたたき出してやる」田上大佐は久しぶりの事件に闘志満々目は煮えたぎっていた。

二十一巡洋艦隊ーソラリスから購入した三隻の巡洋艦は星系を定期的にパトロールしていたがコースを外れ金星に向かった。


三角翼艦の中では海賊のボス・ベタがスクリーンに映る地上を眺め誰もみえないのに気づいた「無人なのかー」

「ボスーやつらは地下にいて出て来ませんや、ですから地上にある倉庫を襲えば簡単です」

「野郎どもあの建物の脇に降ろせ」

船はベタの指示通り商品倉庫のそばに降りると作業ロボットが降りて倉庫に向かうのを地下の警備本部で遠藤と部下たちがスクリーンをながめて話し合っていた。

「隊長ーやつら来ましたぜどうしますか」

「まあーまてやつらに防御スクリーンを敗れると思うか」

「まあー無理ですな」

「そうだ、俺たちは巡洋艦隊が片付けてくれるのをまてばいいんだ」

「そうですか―つまらないですな」

ロボット作業員は倉庫のドアをこじり開けようとするがスクリーンが邪魔をしてうまくいかない。「くそー簡単に済みそうもないぞ、ドりーエネルギー砲であの扉をぶっ飛ばせ」

ドリーと呼ばれた砲術士は小型の破壊砲を扉に向け放ったドカーン。

「はじき返しやがったーもう一度だ」

ベタは何度か試みたがとびらを破る事が出来ずついに堪忍袋の緒を切った。

「野郎ども、地下への入り口を探せー掘っているやつらをひっ捕らえて開けさせるんだ」

船から海賊たちは降りると辺りを探し回るが見当たらない、彼らが倉庫と考えていたのは実は地下に降りるエレベーター棟だった。

「ないぞーどうする」


ベタが考えていた時巡洋艦隊が到着遠藤と連絡を取り海賊たちが気付いて船に戻る前、砲は火を噴いたドカーン。

巡洋艦からロボット兵士が一大隊飛び降り海賊たちを取り囲み指揮官のリム大尉は攻撃を命じた。

勝負は一瞬、目に留まらない速さでロボット兵士の鉄拳が飛び海賊たちは手足を折られた。「ウウウウ殺せー」

「お前たちを本部に連行し尋問する」リムは海賊たちに言うと部下は縛り上げた。「隊長こいつらは人間ではないな」

「ふむトカゲ族のようだ、なぜ人間の領域に入り込んだのだ?」

「皇后さまにお知らせするようですな」

「そうしよう」リムは人間たちでは探知できない五次元を経てエミリヤに知らせた。

「リムートカゲが紛れ込んだのですか、わたくしがまいります」

「トカゲどもを保護する、エミリヤ様が来られるまで人間たちから守れ」

遠藤は戦いが終わったとみて地上に現れリム少佐にトカゲたちの引き渡しを求めた。「警備隊の遠藤大尉です、彼らを尋問したい」

「遠藤それは出来ない、彼らは銀河帝国に渡す」

「帝国だとーここはギニアですぞ」遠藤はビックリ。

「皇帝陛下の命令だ、逆らったらギニアは滅ぼされるぞ」

「そんなばかな帝国はソラリスと同盟関係にあるはずだ」

「はははは君の言う帝国はレムリアのことだ、私が言っているのは銀河帝国、

別名クロリアの名で銀河では知れ渡っている」


遠藤の要求をリムが拒否していた時シンデレラ号がルブル星系に現れるとネットを繋げた。「ギニアの幸子応答しなさい」

「幸子よだれ」

「わたくしですわ」スクリーンが明るくなりエミリヤが現れた。

「エミリヤよね、全然変わっていないわ」

「幸子ー金星で捕えたルークはわたくしが連れて行きます、いいですね」

「ちょっと待ってルークて誰、知らないわよ」

「ほほほほ銀河では金星にやって来たトカゲ族をそう呼びますわ」

それだけ伝えるとエミリヤはスクリーンを切り艦長に金星へ着陸を命じ、遠藤と対峙していたリムはシンデレラ号が降下して来るのに気づいた。

「陛下が来られた、諸君トカゲどもをネットで運んでくれ」

「待てーそんなことはさせないぞ、引き渡せ」

「遠藤ーあなたは引っ込んでなさい」背後からから甲高い声が響き、リムは目に留まらない速さで翻ると片膝を突き述べた「陛下お待ちしていました」

「誰だ」遠藤は驚いて叫ぶ。

「ほほほほわたくしはエミリヤー人類を支配する者、逆らう者は土に返して差し上げますわ」

「人類を支配しているだとー、いい加減な事をいうな」遠藤はエミリヤに暴言を吐いた。

「貴様ー陛下に何を言う」リムは怒りを見せ足蹴りが遠藤を吹っ飛ばした。

「ほほほほリム少佐ーその程度でいいでしょう、粋がっているあなたートカゲたちを少佐に渡しなさい、これ以上反抗するのなら命をもらいますよ」

「グググ本部の指示に従う」遠藤はフラフラと立ち上がりながら制服に着いた汚れを払い落とし通信機をつけるといきなり声が聞こえた。

「遠藤ートカゲたちを皇后に渡せと陛下の指示だ」

「司令官ー皇后って来られたのは銀河帝国の女帝陛下ですが、帝国のですか」

「俺は知らんー渡せばいいのだ詮索無用分かったか」

其時ロボットたちはエネルギーネットを広げ歩けないトカゲたちをシンデレラ号に収容していた。シンデレラ号が去ると遠藤はリムに尋ねた。

「リム―君たちは誰に従っているのですか」

「はははいい質問だ、我らロボット族は全員陛下の配下にある、ソラリス艦に乗っているのは陛下の命令で支援しているだけだ」

「ギニアにいるロボットたちもですか」

「その通り我々の産みの親は皇帝陛下なのだ」

「皇帝の正体はご存じですか」

「しっているが君には不要の知識だ」リムたちはそれだけ話すと上空にとどまっている巡洋艦に乗り込んだ。

「隊長大丈夫ですか」ロボットたちがいなくなると部下が心配そうに駆け寄ってきた。

「大丈夫だ、いつかこの借りは返してやる」

残されたのは半壊の海賊船、遠藤は技術者を呼び調査にかかった。

「司令官遠藤です、トカゲどもの船を持ち帰りたいので運搬船を寄こしてくれませんか」

「困ったなーないぞ、ソラリスから借りるから待っていてくれ」


一週間ご破壊された船と一緒にギニアに戻った遠藤は田上の部屋に直行。

「遠藤大尉何か用か」

「司令官ーあの女は誰なんですか、ロボットは俺たちが作ったものではないのですか」

「まてーそうせっつくな、君の質問には俺は答えを知らん科学院で聞いてくれ」

「分かりました聞いて来ます」遠藤は帰ろうとするが田上は尋ねた。

「遠藤君報告はないのか」

「報告ですか、銀河帝国の女皇帝がトカゲを十二匹連れていきましたーバタン」遠藤は怒鳴るように叫び部屋を出て行った。

遠藤は隣にあるギニア船団の事務所に入り白瀬に尋ねた、「司令官ー銀河帝国はご存知ですか」

「なんだーいきなり銀河帝国の何を知りたいのだ」

「司令官はご存じなのですね、実はペラペラ」遠藤はリムから聞いた話を伝えた。

「ロボットの産みの親は銀河帝国の女帝だとークロリアの名は初めて聞いたぞ、ただ俺が知っているのはロボットの器械部分は工場で作るが電子脳はソラリスのどこかにある養育センターから送られて来るんだ」


エミリアの正体

遠藤の話を聞き白瀬は銀河帝国の女帝の事が気になった。

「女帝は誰なんだ、リアはレムリア帝国の皇帝だが確か銀河帝国の王女と聞いたことがあるぞ」

健一は幸子にエミリヤがトカゲを連れて行ったのか聞いてみた。

「あなたーあたしは忙しいのそんなことはあなたが聞けばいいのよ」幸子は健一の気まぐれにほとほと呆れて答えた。

「今度はエミリヤに興味があるの、いい加減にしなさいよね」ぶつぶつ言いながら通信室から居間に戻ると智子が娘と遊んでいて幸子を眺めていた。

「お母さん何ぷりぷりしているの?」

「お父さんよ、ベニーの事を言わなくなったら今度はエミリヤよ、あの姉妹とそんなに仲良くしたいのかしら」

「あはははお母さんのやきもちね、お父さんでは無理よ相手にされないわ」

白瀬はベニーに連絡を取りエミリヤとロボットの関係を尋ねるが返事は簡単「知らないわ、電子脳養育センターに聞きなさいよ」

「どこにあるかご存知ですか」

「わたくしはどこに在るか知りませんわ、子供のころに聞いた記憶ではクロリアにあるとか言ってましたわね」

「クロリアですか」

「白瀬は知っているのですか」

「はい、部下がロボットからエミリヤはクロリア帝国の皇帝だと聞きました」

「おかしいわねー姉はレムリアのクリスランス皇帝の妃よ、クロリアの皇帝なんて聞いたことありませんわ」

「陛下はトカゲのルークはご存じですか」

「知りませんわ、それがどうかしましたか」

「金星に来た海賊をエミリヤは以前から知っていたらしくそのように呼んでました」

「そうなのーーフェン本家に行けば分かるんじゃない、あそこには過去からの記録がびっしり残っているから」

「俺でも見せてもらえますか」

「ほほほほサファイラ姫の御じいですのよ、姫の名前で見れますわ」


白瀬の乗った船は何重に敷かれた警備網を通過して最後に次元シールドを通り抜けたー突然目の前の空間が変わる、今まで見えていた惑星とは違ってみどり豊かな星が目の前に現れた。

「これは本家の星ではないぞ、どこなんだ」

「フェンフォント星の管制です。接近中の船はコードを流せ」スピーカーから呼びかけがあった、白瀬は知らされていたコードを発信した。

「コード確認サファイラ姫―これより着陸誘導を行う操縦装置をニュートラルにせよ」誘導標識灯がともり船は動き出した。

十分後地上に降りると目の前に白く光り輝く豪壮な建造物がそびえて暫くとどまっていると車が近づきロボットが降りた。

「サファイラ姫の代理か」

「そうだ、白瀬という」

「これに乗れ、過去の記録の保管庫に向かう」

「ありがたい」白瀬が乗ると車は引き返し地下に入って行った。車は竪坑を何千メートルも下がりトンネルを走ると明るくきれいな空間で止まった。

「降りろー担当官が案内する」

クルマを降りて待つと間もなく担当らしいロボットが現れた

「わたくしについて来なさい」

案内されたのは巨大な電子脳の部屋、何人も操作員が手元のパネルに情報を出していた。

「白瀬ーあなたはこの席を使いなさい、操作は簡単このヘルメットを被り知りたいことを音声で伝えればいい」

宇宙船の操縦と同じと理解した白瀬は礼を言い電子脳に尋ねた「エミリヤの事を知りたい」

「エミリヤの秘密を探る者は何人たりとも土に返る」ロボット脳はそれだけ言うと黙ってしまった。

白瀬はギニアに戻ったが電子脳の答えを考えていた。「探る者は土に返るとはどういう事だ」

「あなたどうしたの」

「ああー幸子かエミリヤが連れて行ったトカゲの事を考えていたんだ」

「そんな事どうでもいいじゃないあたしには関係ないわ」幸子はそれだけ言うと呆れて出て行ってしまった。


ミカの結婚

二千二十四年ミカとサクワの結婚式がルビリアの開祖を祭っている神殿で行われる事になり、王国中の諸侯や政治経済界からの諸氏数万人が集まった。

式の当日ーギニア王国では華やかなピンクパールに塗装した花嫁送迎船を仕立て戦艦艦隊が護衛にルビリア向かうがルビリアでは孫王子の結婚だからと市民の多くは感心が薄く熱狂的に歓迎はされなかった。

式は市民の歓迎を受けずに行われたが、神殿では数万人の列席のなかでリリヤ女王の媒酌で盛大に繰り広げられ、式の後に開かれた宴ではリリカはミカを呼んだ。

「ミカーわたくしは辺境諸国と関係を強めたいと考えていますがギニアと衝突は避けたいのです、そなたにギニア政府へわたくしの意向を伝えてもらえますかな」

「陛下ー当然ですわ、あたしでよければ精いっぱいさせてもらいます」

「ほほほほ陛下は無用です、わたくしはそなたの御婆ですのよ」

「はいおばあ様」

ミカはこの時リリヤの野望に気づかないままサクワのため辺境を制覇する方策を思案した。

「ギニアは国作りの真っ最中よー幸子女王は市民に目が向いているから周辺諸国はあたいが手なずけるわ」


この時ゼルダグループはギニアで造られた製品を持ってギニア船団と競い合いながら辺境の国々へ売り込みをしており勝敗は五分五分、そこにミカは目を付けた。

ギニアに戻るとミカはギニア船団に対抗するためリリヤ女王からお祝いに貰ったクイーンシップキャサリン号で諸国訪問を計画しトルセンの承諾を得た。

「おいミカー大丈夫なのか俺心配だよ」サクワはミカが知らない国に行くのを危惧していた。

「サクワ君任せてーおばあ様を喜ばせなきゃ」

「だけど危険じゃないのか」

「フフフ大丈夫よあたい一人ではないのよ、おばあ様が信頼できる部下を大勢つけてくれたし、お父様の巡洋艦隊が護衛に着くわ」

キャサリン号の航海クルーはゼルダ艦隊から選ばれたベテランぞろい、トルセンを統帥とする近衛艦隊十二隻が護衛にあたる。

キャサリン号はギニアの空港を幸子とサクワに見送られ発した。

第一の目的地はクリント星、ギニアから百三十光年先にある星で半径三十光年以内にある七つの星系を統治している小帝国だ。

巡洋艦五隻から成る艦隊はキャサリン号に先行しクリントの領域に近づき、艦隊旗艦グリーフ号の艦長レール大佐はスクリーンを眺めて先任士官に話した。「ハンクこれから先はルビリアに恭順するのを拒絶しているやつらの巣窟だ襲ってくる可能性があるから監視を緩めるな」

「艦長ー承知しました、彼らの戦力はどれほどですか」

「ははは大したことはない、今までは離れ過ぎていたから放っていたのよ、だがこれからはギニアがルビリアの拠点として使えるから腰を落ち着けてやつらを従わせられるからな」

「そうですね、女王陛下は平和的にギニアをソラリスから手に収め感服しました」

「ハハハハ二十年かかったんだ、リリヤは気が長い女王だよ」

艦隊は領域を十光年侵入したとき警報が鳴ったブーー。

「前方に艦隊を探知」

「戦闘配置に付けー」レールはマイクに叫ぶ。

「戦闘機隊は発進の用意、戦闘になったら飛び出せ」

ルビリア艦隊で戦闘準備が進んでいた時司令室のスクリーンが瞬いた。

「クリント連邦軍艦隊よりルビリア艦隊、何しに来られた」

「司令官、クリントから通信が入っています」

「ルビリアのレール大佐です、クリント政府へリリヤ女王陛下の名代でサクワ王子妃が表敬訪問を希望しています、我らはその先遣部隊、クリント星に着陸を要望します」

「レール大佐ー要件は承った、政府の判断を求めるから待機していてくれ」

連絡が切れてスクリーンが暗くなるとレールは全艦に命じた、「全艦監視を強めろ、奇襲があるかもしれん」

レールが考えていた通り、その時クリントの基地では出撃の準備に大わらわ、乗員が招集され続々乗り込んでいた。

クリントの大統領ソリスは閣僚達を集めてルビリア艦の接近を知らせ政府としての判断を求めた。

「大統領ールビリアは王子の妃を寄こして何を求めているのでしょうな」

「マルコル大臣ー決まっているルビリアはこの領域を取り込みたいのだ」

「女を送って懐柔しようと言うのかハハハハ」

「まずは会ってみようではないか、ルビリアの女がどれほどのものか興味はあるからな」


政府の方針は司令部を経由してレールに伝えられた。

「全艦へクリントは承諾した、計画通りグリーフ号が降りる、残りの艦は惑星から離れ、安全圏で待機だ」

「司令官問題が起きれはすぐに駆け付けますから」

「ふむそうしてくれ」

グリーフ号はクリント艦の後に続いてクリントの宇宙空港に降りレールとルビリア政府交渉官のへリウスは艦を出て迎えに来た車で大統領官邸に向かった。官邸は石造りの豪壮な雰囲気を醸し出し、レールは見ただけで年代物と感じた。「この種族は技術はルビリアに敵わないが歴史はあるのだな」

「司令官ここで大統領がお待ちしています、これから先は侍従官がご案内しますので本官は失礼します」

「あーありがとう、世話になったな」

空港から案内してくれた士官は玄関で侍従にレールたちを紹介し去って行った。

「ルビリアの方たちですな大統領は謁見の間でまっていますのでご案内します、ついて来て下さい」

侍従官は大きく頭を下げると踵を返し廊下の奥へ歩いて行った。

「行くかー」

「そうですね、思っていたより平和的ですな」

「自分たちの力に自信があるのですな、池の中の蛙とは彼らの事ですわ」

侍従官は廊下を百メートルほど進み背の高いドアの前まで来ると知らせた。「ここが謁見の間です、お入りください」

ドアは自動的に開き二人は部屋の中に脚を入れるとそこは質素な部屋、正面に丸テーブルがあり数人着席していた。

「やあーよく来ましたな、わしが大統領のソリスだ、空いている椅子に座ってくれ」

二人は呆気に取られた、王国とは全然雰囲気が違う。

「何をしている座らなければ話に入れん」

レールは良く見ると集まっているのは側近だろうーしかしソリスと同じ席についている。

「分かりました、失礼します」

二人が席に着くとソリスは話しかけた。「王子の妃が何のために来るのかな」

「陛下は貴国と平和と通商関係を強める事を望んでいます、そのため王子妃を挨拶に伺わせたいと申しておりました」

「ふーん平和と商売か、ルビリアとは争った事はないから今でも平和共存しておるが」

「はいーそれを一歩進めて取引を活発にしたいのです」

「ふーんわが国の市場を牛耳りたいのか」

「そうではありません、経済的に相互に発展をしていきたいのです」へリウスは熱っぽくソリスに語り掛けるがルビリアの腹はソリスに丸見え。

「妃が来るのは構わんが国賓としてもてなす考えはない、それでよければ日程はどう考えているのか」

「はい、一週間ほど滞在しその間に政府や経済界の方たちと懇談を計画しています」

へリウスはソリスからホテルの手配や経済界など準備を整えるため滞在するのを認め謁見は終わった。

「ヘリオスどんな感触だ」

「大統領制の政治とはあのようなものなのか、あれではわが王国の敵にはなりえない彼らを抑えるのに軍は必要ないぞ」

「ほー経済で取り込めると言われるのか」

「その通りー君は民衆の力を知らないだろうがお后を呼べは分かる、見ていたまえ」

キャサリン号は護衛をつけずに悠々とクリント星にやって来た、すでにへリウスが事前にミカの写真など国内にばらまいていたから国民は興味深々宇宙空間を航行中からキャサリン号を追跡し家庭のテレビに放送していた。

キャサリン号は海に百メートル以上の水しぶきを立ち上げ海面を切り裂いて着水し首都の港を目指した。

航行中潮風に立ち向かうよう帝国の慣例に従いミカは舳先に立つ。家庭のテレビはその様子を移し真っ赤な髪が風に吹かれて妖精のような雰囲気を伝えた。

港にはミカをみようと大勢の市民が集まり歓迎の嵐。

キャサリン号が桟橋に接舷し降ろされた昇降路の下にはレールを先頭に先遣隊がずらりと並び、ミカは微笑みながら女官を引き連れ彼らの前を行く。

「キャスターのエッセンです、ただいまルビリア王国から来られたミカ妃殿下が港におつきになりました、市民から熱烈な歓迎を受けられ手を振られております、妃殿下はこれからホテルに入り記者会見が予定されています」

その日からテレビはミカの素顔を放映、男性たちは美しさに茫然とした。

「こんな美人が俺の嫁さんなら死んでもいいぜ」

「なにいうんだー俺たちには高値の花だぜ」

「聞いたかーお后様の母親はサフリア人に殺されたって、今回の訪問航海にはサフリアも含まれているのだろーどうなるか見ものだぜ」

「へールビリアは報復したんだろー」

「嫌ー犯人を逮捕しただけだ」

些細なことだがこの出来事はルビリアを受け入れる重要な要素となって行く。

「ヘリオスー市民のあいだでわが国を平和的な国という雰囲気が広まっているな、なにをしたのかな」

「ははははたやすい事だよ、お后様を市民の中に入れればいい、あとはキャラとして商品にお后様の絵柄をつければ若者に売れるわ」

「おいーそれでは芸能人のようだぜ」

「そうさーお后様はわが国が平和のシンボルとして送り出した大事なタレントだ、その人気に乗せてルビリアの製品を送り込むんだ」

ミカは連邦議会から請われて挨拶に出席、政府にギニア訪問を承諾させた。

報告を受けたリリヤはニコニコ、「参謀長ーギニアに艦隊を終結させなさい」

「陛下戦争ですか」

「ほほほほ違いますわ、クリントに見せつけるのです」

参謀長のルガー元帥はリリヤの思惑を理解した、陛下はわが国の戦力を誇示したいのだなー。


クロリア帝国現れる

二千二十四年ルビリア艦隊のギニア集結はソラリスに警戒態勢を取らせエミリヤの興味を引いた。

ソラリスでは軍部が騒ぎベニーはレムリアに艦隊の支援を要請した。

「リヤ―これはリリヤのデモンストレーションよ、心配はいらないわ」

「でも叔母様から送ってくれって」

「いいの、リリヤは辺境を手に入れようと画策しているのよ、ソラリスが目標でないわ。ベニーにそう言ってあげなさいな」

「陛下ー帝国から連絡が入りました」

「そうなの来てくれるのよね」ベニーは急いで執務室に行きスクリーンに向かった。

「リヤどうでした」

「叔母様、母は必要ないって」

「そんなールビリアは艦隊を集めているのよ」

其時スクリーンにエミリヤが口を挟んだ。

「ベニーリリヤに戦う意思はないのただの牽制行動よ心配ならリーズの艦隊をギニアに送るわ」

「リーズってお姉さまそんな事できるのですか」

「ほほほほリーズは帝国の同盟者よ、頼めばいいの」

ベニーはエミリヤの言葉に底知れぬ恐怖を感じた、リーズとは銀河最強の艦隊を擁し領域の中からは出てこない事で知られていたがエミリヤは彼らを操っている。

一千隻を率いてギニアにやって来たガウス提督は星系の中に球形艦が無数に遊弋しているのを見た。「どこの艦隊だ」

「司令官ー信じられませんがリーズ艦と電子脳は言っております」

ガウスが驚いていると目の前に帆船が現れスクリーンがともった。

「ルビリアの艦隊司令官に通告しますわーわたくしはエミリヤ、辺境星域はリーズで管理していますから攻撃的な行動はとらないようお願いしますわ」

「初めてお目にかかる皇后陛下ですな、わたしはガウスこの艦隊の指揮官です、リーズ艦を率いたのは陛下ですか」

「ほほほほその通りよ、ルビリアがギニアで面白い事を計画していると聞きましたから見に来ましたの、平和的に動かれるのならリーズの事は気にしないでいいのよ」

エミリヤの動きはソラリスに伝わりベニーはビックリ「姉上がリーズとギニアに来たですってー」

リリヤにも知らされエミリヤの意図を探った。

一方ギニアでは中央空港にシンデレラ号が降りてエミリヤは宮殿に幸子を訪ねていた。

「エミリヤー突然に何事ですか」

「幸子は気にしないで、ベニーがピリピリしているのだから気休めよ」

「ですがーどこの艦隊ですか、帝国とは違いますよね」

「ほほほほこの銀河はクロリア帝国が支配していますの、レムリアやルビリアは村組織に過ぎませんわ」

エミリヤは久しぶりに会ったからか幸子と長時間無駄話をして帰ると健一がやって来た。

「さちこーエミリヤが来ていると聞いたが」

「あらー残念もう帰りましたわ」

「何か言ってなかったか」

「あなたの事ー?」

「違うよ変わったことは言わなかったか」

「そうねーボールの艦はエミリヤが連れて来たっていってたわ、なんでもクロリア帝国の艦隊だってー、そんな国があったなんて知らなかったわ」

健一はクロリアと聞き驚いた、「やはりエミリヤはクロリアの皇帝だ、目的は言ってたか」

「顔見世興行みたいよ」

この時幸子はルビリアの大艦隊が近づいていたのを知らなかったが司令部ではルビリアの意図が分らずピリピリ。

「ここにはミカがいる攻めて来たのではないぞ」田上は部下を宥めるが不安は募る。

「ルビリア宮殿に問い合わせろ」

情報部で問い合わせると帰ってきた返事にみんな呆れた。

「はははは最近平和でなー艦隊が埃だらけなんだ、だからすす払いでギニアまで遠足に来ただけだよ」

「司令官そういう事だそうです」

「なんと人迷惑だな、ここをすっかり身内だと考えている」

日が変わってもギニア星系内はリーズの艦隊とルビリアの艦隊が混ざり合い混雑が続いていた、ベニーは専用船のフィッシュシード号でやって来てその混み具合にあきれた。

「御姉さまーどこにいるの」ベニーはスクリーンに呼びかけた。

「ベニーあなたも来ましたの」

「御姉さまがリーズを連れて来たと聞いたからよ食べられるわよ」

「ほほほほリーズは紳士的よ誰がそんな事言いましたの」

エミリヤは否定したがベニーはエミリヤから聞いたと言おうとした。

「リーズは暫くここに留まりますから辺境の国々の使節団が訪問してきたらどう思うかしら」

「御姉さまそれが目的なのーリリヤは怒るわよ」ベニーはエミリヤがリリヤの上前を撥ねるため来たと分かり思わず笑いをかみ殺したがその事態はすぐにやってきた、


二千二十五年クリントの訪問団はひと月かかってルブル星系に着いたがスクリーンを見ると円盤とボール状の船がうようよ。

「こんなに混んでいるのか」訪問団団長のセック議員は驚いた。

突然目の前に球形艦が実態化し驚いて眺めてたら通信が入った。

「帝国軍ギニア管理隊レルンだ、貴艦の所属を申告せよ」

「クリント政府ですギニア政府に挨拶に来ました」

「了解した、管理隊の指示に従い着陸せよ」

クリント船内ではセックが戸惑っていた。

「キレイリー帝国の艦隊がいるが確かギニアはルビリアの一族ではなかったかな」

「議員ー俺もそう聞いていたが違うようだ、どうするかだな」

クリントの訪問団はギニアの中央空港に降り立ち迎えの車で真新しい宮殿に入った。ガラスと御影石で造られた建物の一階は店舗が入り市民に開放されているから観光客などで混雑、訪問団は呆れながら女王府のある十階に昇った。

「ここのようだな」

エレベーターを降りホールに出ると目の前に豪華な石積みの玄関が見えた。

玄関に入ると右に受付があり係官に来訪を告げた。

「陛下クリント星から訪問団がまいりました、謁見室でお待ちです」

「ありがとう佐代子すぐに行きますわ」

サチコは補佐官の瀬戸佐代子と謁見室に入り、代表団を見つめた。

セックは戸惑っていた、クリントの謁見室と雰囲気が全く違う、クリントでは椅子があり座れたがここでは立っているしかない。

正面の一段高見から女王が見下ろしていた。

「遠くから来られてお疲れでしょう、ミカは外遊中ですからわたくしがお相手いたしますわほほほほ」

「女王陛下とお見受けいたします、わたくしは訪問団団長のセックですが貴国はルビリアと繋がりがあると思っていましたが違うのですか」

「ほほほほ来られて間もないのにもう質問ですか、わが国は中立ールビリアや帝国と等距離外交を取っておりますわ」

謁見は簡単な挨拶で済ませ明日からの交渉に備えるため宿舎であるホテルに引き上げたが代表団は検討を始めた。

「団長ー女王の話ではどうやらルビリアとは距離を置いている様子ですな」

政治担当参事官のデフが感想を述べる

「ああー俺もそう思う第三の勢力だな、調べたがこの国は建国して二十年しかたっていないがいずれかにも吸収されないで来たのだ」

通商が専門のミッチ参事官は知ったかぶりして吠えた。

「それでかー、俺はこの星系にはいった時ルビリアの艦と球形艦が同時にいるのが不思議だったんだ、それでこれからどうする」

「そうだなクリントはどちらにもつかないのが大統領の方針だ、妃はギニアに行かせればルビリアに丸め込めると考えたのだろうが女王がこの態度では見込みが違ったな」


使節団が疑心暗鬼の様子は白石は虫ロボを放して探っていた。

「陛下ー使節団では対応を決めかねていますわ」

「ほほほほそうでしょうね、クリントはどちらについても危険だと考えていますわー」

「そうなるとどうするかしら」

「ほほほほ逃げるが勝ちよ、リリヤは悔しがるでしょうね」


サチコはうまくいったと考えていたがルビリアは二段構えの戦略にたけていたークリント社会が訪問団に関心を持っているうちにゼルダ財閥は極精密工業製品などを売り込んだから商品を満載した輸送船がクリント空港に降りて商品を降ろしていた。

「陛下ーお后様がクリントをまわって商品の宣伝をしたから王国の倉庫はからになりそうですな、おかげで商人どもの鼻息は荒いです」

「ほほほほそんなに売れていますか」

「はいー、クリントの市場は七つの惑星をかかえていますからなー大きいです、特にお后様が乗って宣伝された車種は納車が間に合わないと業界ではクリントに進出が話題になっています」

「ほほほほそれでは土地を確保するよう通商代表に命じますかほほほほ」


ソラリスではベニーがルビリアの報告を受けていた。

「リリヤがクリントに地歩を固めたというのですか」

「はい、クリントでは市民の圧力に負けて第五惑星に通商基地を置くことを拒絶できなかったらしく橋頭保を確保したと同じです」

ルビリア軍は商船を海賊から守るのを名目にいつの間にかクリントの空港に駐在するようになっていた。


レール大佐の先遣隊は次の訪問国サフリアを目指て向かった。

サフリアはまだ宇宙船を開発しておらず二十年前の事件を教訓に開発を急いだがまだロケット程度で隣の惑星にも届かない。

レール大佐の戦艦イーブンは艦隊から抜けサフリア星の大気圏を降下を始めると軌道にいる人工衛星に捕えられた。

「司令部へ宇宙管制センターです、未確認飛行物体が外から来ました」

「司令部より管制センター詳細を報告」

「全長数百メートルの円盤型飛行物体です、降下し現在地上のレーダーに現れています」

多数のレーダーサイトが探知すると追跡をはじめた、「飛行物体は首都を目指しているもようー」

報告が次々入り軍は首都に兵力を集結した。


イーブン艦内でレールはスクリーンを眺め迎撃のないのをいぶかしく感じていた。「なぜないのか」

「艦長―原住民は宇宙船を持っていませんから我々が突然現れとまどっているのです」

「そうだな、呼びかけてみよう」

レールはマイクを取るとサフリア政府に全チャンネルでよびかけた「ルビリア王国からサフリア市民にあいさつに来ました、代表者と会談を希望します」

レールの呼びかけに政府はすぐに反応した。

「貴官の希望には応じられない直ちに退去せよ、従わなければ撃ち落とす」


キャサリン号のスクリーンが明るくなってレールが現れた。

「大佐―どうかしたのか」

「ネグリン少将ーサフリア政府は訪問団を歓迎していませんな実力で阻止する考えのようです」

「なるほどな予期していたがな、それでどうする」

「少将ー公然とわが王国に反旗を翻しました、放って置く訳に参りませんから実力で従わせるべきでありませんか」

「わかった、だがまだその段階ではない命令を待て」

ネプリンはスクリーンを切り替えミカの意見を求めた。

「あー補佐官お后様にサフリアは訪問を拒んでいるからどうするか聞いてくれ」

「分かりましたわ」暫くしてミカが護衛官のルルをつれ司令室に入って来ると指令マウントにいるネプリンを呼んだ。

「少将閣下ー聞きましたわ、サフリアがどう考えようがわたくしはこの一帯を纏めるのが役割ですー反抗すれば従わらせるだけですわ」

「わかりました、ではこの場は強引に押しかけてよろしいですな」

ネプリンの命令を受けレールは上空から見つけた空港に強硬着陸した。


サフリアの大統領官邸

大統領のレイジは戦艦が強行着陸したと報告を受け軍参謀長のカレフと外交補佐官のメルガを呼んだ。

「大統領ー困ったことになりましたな、どうしますか」

「君たち彼らはルビリアと名乗っていて二十年前にも訪れていたな、その時の記録によれば儂らとおなじ人種らしい、ここに来た理由を探ってもらいたい」

「大統領あの時は当時の大統領と警察官が連行されいまだ帰されていません」

「補佐官ーあの時の相手と国が違う、ルビリアはわが国を支援したいとやってきた記録がある」

「ははーんそれでは味方と考えていいのですな」

「そう思いたいー今回も武力の示威は無かったな」

カレフは思案しながら意見を述べた。「大統領ーまずはメルガ補佐官に任せた方がいい」

「そうですな、まずは俺が出向いて聞いて来ますよ」

「そうかそうしてくれ」

メルガは一人で空港に停まっている戦艦に来た、何機も止まっている航空機のなかで巨大な船体は目立ちー戦いに来たのではないとわかっているから軍は動かず警備隊が周りを警戒しているだけ、コンテナを積んだトレーラーの運転手は見上げながら引っ切り無しに戦艦の傍を通過していく。

「こんなところに降りられ邪魔だな」

カレフは太いスコープ脚の隣に車を止め降りると見上げてつぶやいた。

イーブンの艦内スクリーンにカレフが映る「艦長ー誰か来たみたいです」

「誰かなーレゴル聞いて来てくれ」

警備隊士官のレゴルはロボット兵士とともに降りるとカレフに呼びかけた。

「何か用ですか」

「あーおれはカレフー大統領の補佐官をしているが用件を聞きに来た」

「分かりました、待っていてくれ」

レゴルは戻るとレールに報告。

「フーン平和的な種族のようだな、会ってみるか」

レールは通商のため王子妃が訪問を希望しそのための先遣隊だと説明した。

「わかりましたお后が大統領と会見を希望ですか、その下打ち合わせに来られたのですな」カレフはルビリアの希望を聞くと官邸に戻り報告した。

「補佐官ー通商をしたいと言いに来たのか」

「はい、それで王子の妃が挨拶にこちらに向かっているそうです」

「ふむ妃が来るのか女の身で乗り込んで来るとは度胸があるなー会わずばなるまい、カレフ歓迎の準備をしないとな任せるぞ」

大統領の意向を知ったレールはネプリンに報告し国内の工作にかかった。

一週間ごキャサリン号は首都の港に接岸大勢の市民が歓迎するなかで船を降りた。「すごいわーこんなに歓迎してくれるわ」

「御妃様ー彼らは母上の仇よ、あまり信用しないほうがいいわ」

「ルルーわたくしもそう思っていましたけど国がさせたわけではありませんわ、あの時初めて宇宙船をみたのよ混乱したのだわ」

「御妃様は変わっていますわね」


ミカがサフリアで思いもかけない歓迎を受けていた頃ギニアではルビリアが第四惑星に艦隊基地を建設の真っ最中ー完成したばかりの司令官室でゴルフ司令官は微笑んでいた。

「マッセラ、リーズはどうしてる」

「はい司令官帝国は我々に介入するそぶりはありません、隻数もだいぶ減ってきました、皇后の言っていた通りソラリスと戦争にならないよう監視に来ていただけのようです」

「はははは皇后もソラリスの女王には手を焼いているようだな」


ソラリスの宮殿では情報部のフレンシアはギニアが採っている行動に関する報告をしていた。

「王妃様どうやら皇后陛下とギニアの女王が密談をしてルビリアの基地を容認したらしいですわ」

「なんですってー今第四惑星で行われている工事は御姉さま公認でしたの」

「ええーどういう事でしょうか」

「わかりました、姉上に聞いてみますわ」

ベニーは壁に掛けられているスクリーンをつけ銀河ネットに接続火星の皇后府を呼び出した。「ベニーよお姉さまを呼んで」

「御姉さま、ギニアの第四惑星にルビリアが建設している基地の事ですわ」

「あらーもう知られたの耳が早いわねー」

「御姉さまが容認していると聞きましたけど本当ですか」

「ええーそうよー、ルビリアも親切よねーリーズのため基地を建設してくれるなんてほほほほほ」

「えっどういう事ですか」

「あの基地はリーズが利用するの、ルビリアは完成したらせっかく造った基地を捨てるのよーもったいないでしょだからリーズが使ってあげるの」

「なぜですか出て行くわけはないでしょ」

「お化けがでるのよー怖いわー兵士は怯えて反乱を起こしルビリアは収束させるのに廃棄するしかないのよ」

ベニーはエミリヤの話をあきれながら繭につばをつけて聞いていた。

会見が終わりスクリーンを切るとフレンシアに向いた「聞きましたか」

「はい王妃様、化け物が出るなんて信じられません」

「フレンシアー基地の様子を監視するのです、本当に姉上の言われた通りならどうやってか調べて報告しなさい」

十日が過ぎて完成すると地下格納庫に戦艦が収容され初日は五隻収まった。

しかし異変はそれから始まる。

「おいネッブルはどこに入れたー」艦長のケルがリト―ル格納庫管理士官に尋ねた。

「ネッブルですな、v-26ハンガーに収容しました」

「おかしいぞ見当たらないんだ」

「そんなー良く見てくださいありますから」

リトラはケルを案内し泊めたと思われるハンガーに行くが無いー唖然。

ーそれからは兵士総動員で基地の中を探したが見つからない、その日は捜索を諦め翌日に回したがその日も戦艦が無くなっていた。

「司令官ー戦艦が何隻も行方が分かりません、兵士の間からこの基地には幽霊が出ると噂が出回ってます」

「バカなここはまだ出来上がったばかりだぞそのような噂を流すやつは厳罰にすると伝えろ」

司令官の命令は基地全体に伝わったが戦艦の消失はそれからも続きリリヤの耳に入った。

「参謀長ギニアに建設した基地で戦艦が無くなるとはどういうことですか」

「はっまことに由々しき事態です、すでに十二隻行方が分かりません」

「信じられません、何が起きているのですか」

「現地では悪魔が艦を持ち去ると大騒ぎで艦長たちは基地に降りることを拒んでいます」

ルビリアで船の消失が取りざたされているときソラリスではベニーがフレンシアからルビリアの基地で起きている異常事態の説明を受けていた。

「フレンシアそれでは艦長たちは格納庫に艦を入れるのを拒んでいるのね」

「はい王妃様これは以前に皇后さまの言われていたことではありませんか」

「お化けが出るってことー?」

「はいーこのまま進めばルビリアは作った基地を放棄するでしょうから空き家になればリーズが入り込みますわ」

戦艦を消すなんてお姉さまはやはり魔女なの?ベニーは以前からささやかれていたエミリヤへの噂が真実に思えてきた。


エミリヤは泥棒

二千二十五年リリヤは相次ぐ戦艦の消失で第四惑星の基地放棄を決めたのはそれから間もなくの事、ルビリア軍が去るとリーズの艦隊が基地を占拠した。

事態を知ったルビリア軍は慌ただしくリリヤに報告

「陛下ーギニアに建設しました基地ですがリーズに横取りされました、どういたしましょうか」

「横取りとはどういう事ですか」

「はい、艦隊がルビリアに戻るとリーズの艦隊がその基地を使い始めたのです、すでに地下も地上もリーズの艦で塞がっています」

「なんという泥棒ではありませんか」

「陛下艦隊を送り取り返しませんと」

「待ちなさい相手はリーズです、戦えば損害が膨らみますからわたくしがエミリヤに返すよう抗議をしますわ」リリヤは火星の皇后府に出向いた。

火星の空港から迎えの車でエミリヤの隠居所へ行く。

「ずいぶん山の中ねー、ここにエミリヤがいますの」

「はい女王陛下、皇后さまは静かでいいとめったにここから外には出て行かれません」

山道をごとごと走り粗末な門の前で止まるとリリヤが降りた。

「女王陛下ーこちらにどうぞ」迎えの士官はリリヤを門のなかに誘い石段を上るとエミリヤが花に水やりをしているのが見えた。

「エミリヤーお久しぶりよね」

「リリヤがこんな場所に来るなんて思いませんでしたわーいつもコンクリートとガラスで囲われている世界にいるのに、中に入ってお茶などどうですか」

エミリヤは玄関から居間に誘い、器用な手つきで茶を差した。

「あなたがこんなことができるなんて思いもしませんでしたわ」

「ほほほほルリナもおいしいって言いましたのよ」

「げっルリナってわたくしの五代前のおばあ様よ、エミリヤーあなたはいくつになるの」

「ほほほほそのような事どうでもいいではありませんか、それよりリーズの事で来られたのでしょ、わたくしルリナに申し渡しましたのよールビリアが生存できるのは現在の領域の中だけ、出たら安全は保障しないーギニアに基地を設けるのはそれに違反していますわ」

「グッー何を勝手な、そのような事あなたに決める権利はありませんわよ」

「ほほほほ辺境に入れるルビリアの船は非武装船のみで武装艦が入ってくればリーズは駆逐しますわ、警告しましたわよ」

エミリヤはリリヤの抗議を聞き流してしまったからリリヤはエミリヤを睨みつけるがエミリヤは何もないかのように茶をすすっていると客が来た。

「皇后さまエルナ総統閣下がお見えです」

側近の一等家臣レーバ大佐の後から金銀の飾りをつけた黒服の蜂が長い触角をピーンと張って入ってきた。

「あらー総統閣下いらっしゃったの、珍しいわー」

「エミリヤ相変わらず子供たちに振り回されているらしいな―イメルダは心配していたぞ」

「ほほほほお母さまは楽しんでみていますのよ、心配いりませんわ」

エルナは椅子に座るため回り込む時リリヤと目があってジロリと見た。

「ほほほほ閣下には御手数をおかけしますわー」エミリヤはエルナに茶をふるまいながらニコニコ、そんなエミリヤを眺めリリヤは恐怖を覚えた。

「エミリヤはリーズとこんなに親しいのはなぜなの」


リリヤは急いでルビリアに戻るとエミリヤの資料を要求した。

「陛下ー皇后陛下の資料はこれだけあります」

侍従のボイセンは資料庫からかき集めた王国創建時からの資料を担いできた。

「ありがとうそのテーブルの上においてくださいな」

資料が置かれると女官たちが手に持ち調べ始めた、リサもキティーの指示で先輩たちに混ざり探し始めるが帝国の歴史を知る事が出来嬉しい仕事だった。

続々とエミリヤの動きが見つかり、リサはルリナと会談しているエミリヤの写真を見つけた。

「陛下ありましたーこれですよね」リサは写真を持ってリリヤの前に行く。

「リサ良く見つけましたね」

リサは写真をリリヤに渡し解説記事を読んだ。「あれーおかしいわー年号が違っているのかしら」

「リサどうしました」

「はい陛下ーこの年号だと会談したのは四百年も前です、あり得ないですよ

これが事実なら皇后さまはお幾つになられるのですか」

「リサーわたくしもそのことを知りたいから探してもらっているのよ、このことはこの部屋の中だけの秘密よいいわね」

リサは秘密と言われ部屋の中をキョロキョロ先輩たちも茫然、やがて驚くべき事実が明らかなりリリヤはキティーと別室へ作戦会議に入ってしまった。

秘密と言われてもリサはうずうず銀河ネットでミカを呼んだが幸子が出た。

「あなたはどなたーミカはいないわよ」

「あ女王様だわーまずい」

「何がまずいのです、わたくしに知られては困る事ですか」幸子に睨まれリサはエミリヤの事を話してしまった。

なんという事でしょう―、健一がこの頃エミリヤのことを探っていたのはの事なのね。


ルビリアでリリヤが策謀を練っていた頃火星の皇后府ではリリヤが情報が載っている資料を集めたと知ると微笑み五次元を経由して抹消してしまった。

資料とともにその事を知っている人たちの記憶もなくなりリリヤは領域から出てはならない事だけを覚えていた。

「領域をでるとリーズと戦う事になるとエミリヤは言っていたわ、どうしたらいいのでしょうー参謀長はいませんか」

「陛下お呼びでしょうか」

「グラモンーリーズと戦って勝てますか」

「それは聞かれてもリーズ戦艦の資料がありませんから何とも言えませんが」

「ギニアの基地を取り返したいの、幽霊話はエミリヤの仕組んだ事でしたわ、あの女完成するまで待って乗っ取るなんてズーズーしい」

「陛下あの基地は難攻不落ですから簡単には落とせません」


一年かけて辺境の国々を回ってきたミカはギニアに帰って来てビックリ、球形艦に迎えられスクリーンから金銀の飾りがついた黒い制服を着た蜂が大きな目で見つめていた。

「わたくしはサクワの妃ミカです、あなたたちはなぜここにいるのですか」

「ほほーう噂に聞いていたが鼻っぱしの強い娘だ、我らはリーズ、銀河帝国の皇帝陛下の命令でこの星域を管理している、我々の事は気にせず行けばいい」

ミカと艦隊はそのままギニアに戻ると幸子に尋ねた。

「女王様ーリーズとはどういう事ですか」

「ほほほほ驚きましたかエミリヤの艦隊よ、ルビリアとソラリスが武力衝突する直前に介入したのよ、おかげで平和が保たれたし政治には介入しないと言っているからギニアは艦隊を持たないで済むわ」

「帝国の艦隊ですか」

「そうだけど帝国違いね、銀河帝国って言ってたわ」

「銀河帝国ですかー聞いたことありませんが」

「わたくしも初めて知りましたけどエミリヤが皇帝だそうよ」

この時幸子はレナから聞いた話からエミリヤの正体を知り銀河帝国を味方につけて辺境を制する計画を立てていた。

ミカは得心のいかないままルビリア宮殿に戻りトルセンに尋ねた「お父様ーリーズってご存知ですか」

「ミカお帰り、リーズかーわたしもよくは知らないが母は銀河最強の艦隊を持っていると言っていたよ」

「お父様ー第四惑星の基地を横取りしていますわ、取り返さないのですか」

「ミカ―わたしもそうしたいが母が先日も皇后のところに談判に行ったが無駄だったな」

「そんなー見損ないましたわ、わたくしが掛け合ってきます」

「ミカ危険だリーズは人食い蜂だぞ」

「ギクッー人食いですってー」

「そうだよ、彼らの餌は人類なんだ」

「こわいわーギニアが襲われたらどうしましょ」

「ハハハハ脅かしすぎたがこれは噂だ誰も見たことはないぞ、だけどミカー軽はずみはよした方がいい何かあったらサクワが悲しむからな」

「母はリーズの戦闘力を知らなければ戦いを始められないと言ってその方法を思案中らしい」

「そうなのわたくしも考えてみるわ」ミカは考えながらサクワの待つ廓に戻って行った。

「そうだわールルー直径十キロくらいの小惑星を見つけて欲しいの」

「御妃様何するのですか」

「リーズを追い出すのよ」

「へぇーまさか第四にぶっつける考えじゃないわよね」

「その通りよ、そうすれば蜂の力をみれるわ」

「分かったわ、面白そうね」ルルは軍の廃品置き場に行きスクラップになっているソラリス軍の戦艦を選び出した。

「一度飛ぶだけだからこの程度の船でいいわ」

「ルル中尉ーこんなスクラップ船を持ち出してどうするんだ」資材管理部隊のハントック大尉は不思議そうな顔して尋ねた。

「フフフ大尉ー面白い事に使いますのよ」

ルルは小惑星帯に戦艦から取り外した推進器などを運んで来るとめぼしをつけていた小惑星に降りた。

ロボット工兵が小惑星に推進器を取り付け、ルルは計算した軌道に乗るよう点火すると小惑星は軌道から外れ放物線を描いて星系の中に落ちて行く。

「これでいいわー一年後が楽しみね」

小惑星が軌道を外れるのは日常茶飯事、誰もが気にしない。

「御妃様準備はできましたわ」

「そうールル手際がいいのね、成果がでるまでわたくしは辺境を纏めていますわ」ミカはそう言って机に向かうが頭にはギニア船団が居座っているカメロン星が有った。

「ギニア王国は半径百光年の範囲を勢力圏としているのになんで八百光年も離れたカメロンを植民惑星にしたのかしら」

「ほほほほお后様わかりませんか、カメロンはギニア王国の避難惑星ですわ、ソラリスが戦争を始めたら白瀬家はカメロンに避難するのよ」

「そうかしらわたくしはそのようなお話し聞いてませんわ」

「白瀬家はルビリアに向いているから戦争になったら真っ先に女王は逮捕されますわ、だからルビリアの勢力圏の奥に逃げ込むのに都合の良い星なのよ」

ルルはルビリアの立場で話したから全くの的外れだと気付いていない。

「ふーんそれなら放っておいていいのね」この時ルビリアはすでに諜報員をカメロンに潜入させ江田軍の動きを追っていた。


レイラの引き抜き

二千二十五年ギニア船団がカメロンに進出して七年がたち無人の大陸には近代的な都市が姿を現して白瀬はカメロニアシティーと命名した。

辺境の国々からの植民者が十数万人暮らし、サントナ王国のお店で採用したレイラはサントナ地区に展開している十店舗の支配人になりシティーに母親と住んでいた。お店には毎日快速艇でシティーから出勤、今日も朝から忙しい。

「お母さん行ってくるわよ」レイラは朝食をバックに詰め庭に止めてある艇に乗り込む。

「レイラそんなに慌ててー三十分早く起きればいいのにー」

「そんな事いったってー眠いのよ」

「しょうがないわね仕事ばかりで」ケリーがあきれている前を快速艇は飛び立ち十分で大洋を横断するとサントナ国の陸地が目に入る。

今は店の前の道は舗装されトラックや乗用車が走り、街灯も付いて明るい街に変っていたが上下水道の工事で掘り返しては補装をやり直していた。

レイラが本店に入ると店長のクルセが近寄り報告した。

「支配人おはようございます、総督府から呼び出しです何かありましたか」

「総督府からー?何かしら、ちょっと行ってきますから」

レイラは車庫から社用車でお城に出向いた、駐車場に車を止めて玄関を入って行く。

「総督はどこかしら」石造りの廊下を歩きながらキョロキョロしながら歩いていると目の前にカウンターが目に入った。

「あのーギニアのレイラよー総督閣下から呼ばれましたのどこに行けばいいかしら」

「ギニアさんね、この廊下の突き当たりが総督のお部屋です」

レイラは礼を言い総督の部屋に入った。

「ギニアのレイラですが閣下から呼ばれましたの」

「あーレイラさん良く来てくれましたな、突然で悪いがあなたを私の補佐官としてお呼びしました、女王陛下は将来はサントナ国の統治を地元出身の者にさせたいと言われてなあなたが候補に選ばれたんだ、暫く私の補佐官として勉強してもらいバトンを渡す考えだがどうかな」

突然の話レイラは戸惑った。

「なんであたしなのー有力者は五万といるでしょ」

「ははははーいくらいてもこの国を変えられんよ」

「あたしだって無理だわ」

「君はギニアの教育を受けているだろー、君がこの国を発展させるんだ」

「そんなーあたしには荷が重いわ」

「はははは今すぐとは言わんよ、私の補佐官に就いて宇宙の国々を回り勉強してもらういいかな」

レイラは総督に丸め込まれ、店に戻ったが部屋に入り考えているとクルセが心配そうに入ってきた。

「支配人どうでしたか」

レイラは話しかけられると頭を上げて行った「あたしこの店を辞めなければならなくなったのどうしたらいいかしら」

「支配人―何が有ったのですか」

「じつはー・・・・なのよー」

「えー支配人が将来の総督にですかー」

総督の提案は大陸にいる高木の耳に入った。

「シイラ―ちょっと来てくれ」

「なあにお父さん」

「シイラーレイラが女王に引き抜かれたぞ」

「なんなのーレイラが引き抜かれたってどうしたの」

高木はレイラがサントナ国の女王候補に選ばれたと話した。

「なによーあたしがせっかくここまで育てた人間を引き抜くなんてずるいわ、文句を言って来るから」

「まてーシイラ、これは船団がこの星を手に入れるチャンスだ、レイラが女王の地位に付いたらシティーと合併しろと言い聞かせろ」

「お父さんーシティーを手放すの」

「違うー逆にサントナ国を吸収してカメロンの国々を統一して俺たち商人の国を作るんだ、そして自由に商売して生活し王国や帝国の争いに巻き込まれない世界を作るんだ」

「でも争いが起きたらギニアと一緒に行動するんでしょ」

「その時は国民の意思に従えばいい、現在はギニア王国の一機関にすぎないが国にすれば選ぶ自由が得られるんだ」

高木はサントナの近代化を急ぎ市民を教育してカメロニアシティーの力を高めたいと考えその先鋒にレイラはうってつけと考えた。


もう一つの勢力

この時江田軍は高木の意思に反しギニア王国に組み入れようと隣国ラフ―ル国に移動し古い農家を基地にして作戦計画を話し合っていた。

「長官ーカメロンに統一国家をつくるのですか」隊長のビレット少佐は江田の考えを確認した。

「そうよビレットー今まで関係を結んだ辺境の王国と違ってここには統一国家がないわ、ギニアが統治するには手ごろよーまずはサントナとラフ―ルを合併させるから弱点は分かったの」

「はいーここもサントナと同じ食料が不足してます」

「ふーんここは内陸国よね、海に出られないからサントナが付け入るスキがあるわーラフ―ルにサントナの発展を風潮しなさい」

外を飛び回り警戒していた虫ロボのモモが部屋に入って来て江田に告げた「敵が来たわよ」

「本当ーモモ」

「ええー五十人くらいが三百メートルまで近づいているわ」

「そうなのみんなB基地に移動しましょうか」江田は全員が出て行くのを確かめ最後に出た。

その十分後山道をふうふう言いながらハッセリは部隊を連れてやってきた。

「あの建物か」ハッセリは遠くに見える茅葺の建物を差して聞いた。

「隊長そうです、あの廃屋から見かけない男たちがごろごろ出入りしていたと通報がありました、盗賊でしょうか」

「まあー捕まえてみればわかるがこんな山の中にアジトを置くのは普通ではないな」ジリジリ距離を詰めていき飛び込んだが誰もいない。

「カラだー畜生ハスンは部下と残って見張れいいな」

「はい隊長」

「盗賊どもどこに行きやがった今夜は警戒を厳重にしなければならんな」ハッセリは盗賊たちの行方が気になっり外を見ていたがその夜は何事もなく翌朝を迎えた。









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