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国王様はご機嫌ナナメ(短編版) 下

作者: ROOY

こちらは下巻となります。

上巻より閲覧下さいませ。

 夕食は2人のメイドの子が給仕してくれた。リリファが顔を出さないのは珍しいな。

 国王の夕食というのは、それなりに豪華かもしれない。

 美味しい料理に舌鼓を打ちながら、夕食を楽しんだ。


 それから風呂に入りながら、日中のリリファの事を考える。

 両親は王族、自身は国民か・・・。

 確かに王族というのは、なんだかんだ優遇されていると思う。住居が用意され、通常の活動をフォローする従事者が付けられている。


 日出国(ひいづるくに)の実家に、メイドの人達が派遣されていたのは、護衛だけでなく、王族だからという理由もあったのだろう。

 もし自身が、リリファと同じ立場であったら・・・?

 実家内では色々優遇されていたとは思うが、学校では普通の生徒扱いだったと思う。


 もし国王に就任えず、日出国(ひいづるくに)で過ごしていたら?大学へ通うために、一人暮らししたり、そして就職したり。

 たられば論となるが、一般市民として上手くやれただろうか?わからないな。







 風呂から上がり、TVを付けてみる。そろそろニュース番組がやるはずだ。

 日出国(ひいづるくに)で高校生をやっていた時なんて、ニュース番組なんて全く観なかったな。


『夜のニュースをお伝えいたします』


 おぉ、丁度良いタイミングだったようだ。


『まずは速報です。新国王に就任されたユージ国王陛下が初執務をされました』


 ・・・・。

 僕かよ。

 TVで映っているの、さっきまで作業してた執務室じゃないか。

 朝、妙に身支度を整えられて不思議だなと思ったら、こういう事か。


『1件の法令施行に追承され、10件の事後承諾を行い、そして1件を保留とご判断されました』


 手渡しで宮殿庁長官から書類を受け取っている様子が映されている。

 TV上ではリリファ達メイドの姿が見えてないが、うまく切り抜きしたのかな?

 確か、このタイミングでも居たはずだったけど。


『1件の法令保留ですか!』


 司会者の横でキャスターの女性が驚いている。

 

『はい、我等ステレッサ王国が連合ヨーロッパへの加入に対する法案について、国家として初めてである保留判断となりました」


 へぇ~、僕個人の中で保留しただけでニュースとなるのか。

 こういう事もニュースで報道されるのならば、あまり保留はできないな。

 なるべく早めに結論を出すこととしよう。


『今回の場合ですと、この法律はどのような流れになるのですか?』


『宮殿庁から開示された情報では、本法案は、有識者や国民間で積極的な議論がされておらず、加入・非加入におけるメリット・デメリットをもっと明確にすべきではないかと述べられたようです。

よって、この法案は一度国会へ差し戻されるようです。そして議論が熱したと国会が判断したら再決議となり、再度過半数の可決があれば国王陛下がご判断されるようです』


 あれ、どういう事だ?


『初執務なのに、素晴らしいご判断ですね』


 TV内でぶっちぎりの褒め言葉をキャスターが話している。

 ネットニュースで確認しよう。

 ・・・・。

 ・・・・。

 ・・・・。

 ネットニュースでもTVと同じような報道がされていた。


 慌てて執務室へ向かう僕。 

 途中でリリファとすれ違ったが、それ所じゃない。

 執務室に入り、机の上にあったはずの、法案に関する書類を探す。

 あったはずの書類が無い。


「どうされたのですが、国王様?」


 すれ違ったリリファ僕をおいかけてきて、声をかけてきた。


「リリファ、確認なのだけど。連合ヨーロッパへ加盟する法案の書類ってどうした?」


 彼女はきょとんとした様子だ。


「ご指示頂きました通り、保留として関係部署へお回ししましたが・・・」


「・・・」


 やっぱりニュースの通りか!

 いや、確かに宮殿庁長官にニュースでやってたような事を言ったよ。

 リリファにも保留と言ったけどさ。


「それが、どうかされましたでしょうか」


 今更、それは間違いですと言ったらどうなるだろうか。

 現在TVやネットニュースでも絶賛されている国王陛下。今更取り下げできるか?


「いや、何でもないよ。ありがとう。今夜はもう寝る事にするよ」


「あ、はい。お休みなさいませ」


 疲れた、寝よう。もう、今日は現実逃避する。

 僕はトボトボと寝室へ向かうのであった。

 僕の様子をみてか、この日は添寝係の話をしてこなかったのは安心だ。


翌日、リリファを通して宮殿庁長官との面会を望んだ。僕側の個人的な保留であったとの話をする。


「この度の件に関して、陛下の名誉を守る直訴権の施行をお許し下さい」


どうやら裏話をお望みのようだ。


「僕の為になるアドバイスなんだろ?許可するよ」


「この度の件、宮殿庁の不手際誠に申し訳ございません。そしてまた、国王陛下にご説明が遅れた事もあわせてお詫び申し上げます」


長官の話によると、最初の職務はやらせも含まれているとの事。つまり、エステレッサ王国の連合ヨーロッパへの加盟は、拒否しなければならなかったらしい。

国王の名誉アップの為、初執務は、許可と否決の二つが選ばれるらしい。議会も巻き込んで、国王の名誉アップの為の出来レースが開催されるとの事。

まじか、あんだけ昨日悩んだのに。

午後に直訴権を持つ総理大臣と国会議長が来訪するとの説明を受けた。


長官との話を終え、なんとなくリリファをお茶に誘ってみた。昨日の話が頭によぎったからね。


「リリファは、こんな僕の従事なんて面倒ではないのか?」


昨日のリリファの言葉が残る僕は、こんな言葉しか出せなかった。


「ユージ国王陛下、私めは私めの野望の為、ユーザー殿下を落とす為に、メイドとして従事しております」


わー、すごいコメントがキター。


「そもそも、何で僕を色仕掛けするのさ」


口を紡ぐ天才リリファ。答え方を考えているのかな?


「ご存知の通り、私めの父は王族です。そして私は一般国民であります。王族の親に育てられた私めは、一般的な国民生活に恐怖を抱いております」


リリファの説明はじっくり考えさせられる内容であった。


「ご理解頂けますでしょうか。一般国民(・・・・)が、王室方言で一般学校に通うのですよ。皆さんは、一般国民なのに王室方言を話す私を注目致します。しかし私めは、王室方言しか話せませぬ。表だって仲間外れされなかったものの、本当の友達は作れませんでした」


確かに、王室で話されているエステレッサ語の方言は独特だ。幼少の子供ならわかりにくい王室方言を話している子供なんて、コミュニケーションは取りずらかったに違いない。


「兄は自前の才能により、研究者として活躍しております。しかし私めは、国民間で評価されるような才能がございません。私めは、国民の行っている一般生活が想像出来なく、その世界が怖いのです」


リリファの本音が放たれた。親は王族、自信は国民。親は王族の概念しか知らぬゆえ、子も同じように育つ。

しかし、自分は一般国民の身分だ。


「私めは、親が王族であるというステイタスを生かし、それに関わる職しかできぬのでございます。私の野望はユージ国王陛下の妻となる事。伴侶となれれば、王族の娘として生きてきた環境が活きますゆえ…」


王族の元で育ったリリファは、王族としての環境でしか生けぬけないって事か。王族の親を持った子として、完璧な王室方言を話せる。王族でない自身の働ける先は、王室従事者としての職務しかできないって自己判断してるよね 。


「ですので、ユージ国王陛下。そろそろ私めにデレて良い時ではございませんか?私めは日出国(ひいづるくに)のデレというものを学びました!」


リリファのこのアピールは、彼女なりの冗談なのだろう。真面目ながらも彼女の心遣いに感謝しつつも、僕はぶっきらぼうに答える。


「リリファ、残念ながらまだまだだお嫁さんを決めれないよ。国王に就任して慣れてないしね」


彼女にはこれくらいハードルをあげても良いだろう。


「そうでございますか、残念です」


そう言い放つ彼女の様子は、本当に残念そうであった。王族の親から、一般国民となる子。彼ら彼女らについて考えなければならないのかもしれない。


「ところで、リリファは萌えというのを知っているか?」


「モエ?でございますか」


 この会話で、彼女が元気になってくれれば嬉しい。欲を言えば、僕に対して、萌えてくれれば猶更ではあるが。


「そうだ。男には、色々な萌え箇所がある。是非とも、僕の萌え箇所を分析して、攻めてくれる所を望むよ」


 国王ならば、これくらいの強権は許されるよね。


「つまりは、ユージ国王陛下がデレて下さる行動や言葉を探せという事でございますね?」


 んん?うーん、間違えではないと思うけど。。。


「うーん、そんな感じかな?」


「わかりました、このリリファ。精一杯、国王様をモエさせて、デレて頂けるよう努力いたします」


 彼女を元気つける為のはずが、勧めた方向性がズレたような気がしないでもない。あれ?


「それでは、国王陛下。今夜の添寝係は私めが・・・・」


「それは必要ない!」


 すまんリリファ。それに関しては、きっぱり断るぞ!

 少しだけシュンとした様子を見せる残念従者(リリファ)。これも作戦か?


「承知致しました。私めが添寝係となる為には、モエの行動が足らないのでございますね?」


 僕ってコミュニケーション能力が足らないのだろうか。

 リリファのコメントは大筋間違えないのだろうが、なんか納得できんし、同意できんぞ。


「必ずや、私めに国王様がデレて頂くよう努力します!」


 力強く意気込むリリファ。

 無言の僕に対して、何かを察したのだろう。うーむ、僕は何か間違ったろのだろうか。

 僕の行動も悪いのかもしれんが、彼女を残念系と評価せざるを得ないよ。





お昼のニュース。リリファによく似た人がアナウンサーとして放映されている。

調べてみると、リリファの従妹で、親が王族の自身は国民身分らしい。会った事はないのだけど、ひっきりなしに、僕の初職務を絶賛している。ちょっと前に日出国(ひいづるくに)でも流行っていた忖度かー?


「リリファは彼女の事を知っているかい?」


 何気なく尋ねたつもりであったが。


「国王様、ステファニーの事がお気にめされましたか?」


 う・・・。リリファの視線が怖い。


「いや、リリファの従妹なんだろ?身分が王族でなくて、どのように生活してるのかと思ってさ」


 この言葉でも目は恐いまま。リリファは束縛系か~?


「ステファニーは力ある娘です。自身の力でアナウンサーとしての新たな環境へ切り開いております。私めには真似できぬ、素晴らしい女性です」


べた褒めだ。やはり彼女は王室から離れる事を非常に恐れているのだろう。


「リリファから見れば僕は優遇されているのだと思う。僕は、日出国ひいづるくにで生活をしていたし、家にはエステレッサの人達もいたけど、国王になるとは思ってもいなかった。普通に大学へ行き、就職をし、一人暮らしを始め、結婚し、家庭をつくるものだと思ってたのさ」


 僕は、僕をリリファや彼女の従姉のステファニーと逆パターンと考えている。日出国ひいづるくにで一般人家庭を想像していた僕。そこへ国王就任となって、王室入りし、四苦八苦している。

 リリファは王室両親から一般国民として生活する事に四苦八苦している。


「だから、僕は今の環境に四苦八苦している」


 僕を見つめるリリファ。きっと彼女の頭では様々な事を考えているのだろう。

 数秒の見つめ合い後、考えが済んだのか、彼女はフッと笑みを浮かべた。


「国王陛下のお悩み、しかと拝領致しました。私めには解決できない事から、従事長や宮殿庁長官へご報告させていただき、解決への道筋を立てたいと存じます」


 自信満々な彼女の言葉セリフ。あ、これは面倒そうな事が発生するなと感じたよ。


「まずは国王様、昼食をお召しになり、心をお安め下さいませ」


 勧められるように僕は昼食を頂いた。ちなみに昼食は、兼ねてから要望を出していた日出国ひいるづるくにの牛丼だった。僕の無茶ぶりに対して、料理をしてくれた人たちに感謝しよう。









 その後、エステレッサ王国の総理大臣と国会議長さんが来訪した。今更ながらに気づいたのは、僕の国王就任に際しての王族会議にも参加してた人等じゃないか。


 少し話をしてわかったのが、流石国を運営する人達だなと感じたさ。少し前まで高校生だった僕には敵わんよ。いや、そもそも敵対するつもりは無いけどさ。


 でも、この政治家としてのスタンス、この実力。僕にも取り入れたい。うまい表現で説明できないけど。


 さて、今日この人達が来た理由。有体にいえば、国王は法律設立に関する拒否権を確かに持っている。しかしながら、「国王の国事に関する行為は、総理大臣および国会の助言と承認を必要とし、内閣および議会が、その責任を全て負う」という説明を散々とされたのよ。いや日出国ひいづるくにでも似たようなものがあったと思うけど。


「つまり僕は、可決された法律に関する書類にハンコをポンポン押せという事ですね」


 確かに僕が国家運営に対して実力不足なのはわかる。総理大臣や議会が全責任を取るから、すべて認めろよと言っているもんだ。たしか日出国(ひいづるくに)でも、同様のシステムを取っていたなと思いだした。








 それからいくらかの時が流れた。

 TVを見ると、僕がエステレッサ王国印をポコポコ捺印している様子が放映される。

 この風景も見慣れたものだなと感じてしまう。


 国王就任後しばらくして、リリファの従妹のステファニーに会った。

 エステレッサ王国のTV局一同からの取材という形で大勢の人達が王宮にやってきたのだ。

 リリファとは違った、ハキハキとした明るい人だ。日出国(ひいづるくに)でいえば、お天気お姉さんというイメージだ。

 当たり前か、TV局で働いているのだもの。


 こうしてみると、彼女とリリファは本当によく似ている。

 王族の身分と国民の身分か。

 そんな事を考えて眺めていれば、僕もリリファも東遠縁の親戚なのか。


 一緒の席に、ハゲオヤジとその孫さんも来ていた。アレクシアという名前で、僕から見てはとこだ。

 そして僕の1つ下で、半年の産まれ差らしい。また彼女の身分は王族。

 ハゲオヤジは王族の長老のような立場で、僕の後見人でもある。

 

 王族という立場でこちら側に座る僕らと、一般国民としてあちら側にいる彼女達。


 TV局からの質問等に答えながら、インタビューを受ける僕らとの境にはハッキリとした壁がある事が感じられた。




 インタビューに答える中で、僕の王族の振る舞いが話題にもなった。

 母の性格故か、日出国(ひいづるくに)での育ちのせいか、気さくな国王様と国民に思われているらしい。

 ハゲオヤジは何か言いたそうにしているけど、宮殿庁長官は何も言わないから、国王の権威は守られているのだろう。


「ユージ陛下は気さくな方だと、多くの国民が感じております。ユージ陛下におかれましては、これを聞き、どのように思われますか」


 なんつー難しいインタビューをしてくるんだ。


「僕の事を気さくであると皆様に思われているのでしたら、大変嬉しく思います。まだ若輩故至らない部分がありますが、国民の皆様に受け入れて頂いている事に感謝致します」


 こうゆう質問は、質問書がまとめられて届けられ、宮殿庁長官と一緒にウンウン考えて回答するものじゃないのか。

 即座にインタビューに回答するのも国王様の仕事なのだろうけどさ。答えつつも、にこやかに笑う事は忘れない。

 伝家の宝刀、日出国(ひいづるくに)風の当たり障りのない回答を叩き込む。



 今回のインタビューではっきりわかったのが、ハゲオヤジやはとこのアレクシアのインタビューされた際の回答だ。

 厳格である事を意識し、国民への奉仕精神あふれる回答が多い事に気づく。

 それに比べれば、僕みたいな日出国(ひいづるくに)で育った人間の言葉は、軽い(・・)のだろう。

 ハゲオヤジから痛々しい視線を向けられるわけだ。


 だけど国民から見れば、一般市民的な僕の性格は受け入れられているようだ。



 インタビューが終わり、エステレッサ王国のTV局一同が去っていった。

 僕も自室に帰ろうかと思っていると、ハゲオヤジに呼び止められる。



「貴殿は外国(・・)で育った故、王族であるが、王族でない」


 ボロクソに言われる。

 ハゲオヤジから見れば、王族の長老として言わざるを得ないのだろう。

 表立って敵対する事なく、話だけ聞けばいいかと思い、適当にはい、はい、と返事する。



「以上の事から、貴殿には王室に精通している者を伴侶を娶ってほしい」



「はい。………、え?」



「国王陛下の英断感謝する。リリファ、こちらへ来なさい」


 あれ。何かハゲオヤジがしてやったり的な顔をしているぞ。

 リリファがこちらにやってくる。ヲイ、ちょっと待てや。


「待て、なぜここでリリファが出てくるんだ?」


 まずいぞ、ハゲオヤジに嵌められたぞ。


「ワシの孫のアレクシアでも構わないのだが、まだ18歳になっておらず、婚姻できる年齢でない。その点、リリファは婚姻できる年齢だ。彼女の両親からも、よしなしにと頼まれておる」


 いや、違うぞ。論点をすり替えられてるぞ。

 呼ばれたリリファも目の前に来ちゃったし。 


「どうされましたか?」


「喜べ、国王陛下が君との婚姻を了承したぞ」


 あの残念系リリファの顔に笑みが浮かぶ。


「まぁ、本当ですか!国王様、私めは幸せの最高点におります」


 何か、リリファが超喜んでる。え、嫌じゃないの?


「国王陛下は王族、引いては王室に精通しておらんからな。君には伴侶として国王陛下を手助けしてもらいたい」


 何故ハゲオヤジが話を進めるのだ。


「ちょっと待って。リリファ、君は僕と婚姻するのが嫌でないのか?」


 僕の言葉を理解できなかったのか、キョトンとした表情をする彼女(リリファ)



「はて…。私めは、国王陛下をお慕いしております。私めは、国王様の伴侶となれませぬのでしょうか?」


 リリファの表情が曇る。

 もの凄くショックな表情してし・・・。


「リリファ、そう言ってやるな。国王陛下は表立って言えず、照れておられるのだ」


 待てや。ハゲオヤジ、お前黙っとけ。


「ガラハッド大叔父。黙れ!」


 ハゲオヤジが睨みつけて来る。

 さすが王族の長老だな。


「国王陛下が照れているようなのでな、向こうの部屋で話をしてくる」


 ハゲオヤジがリリファに話しかけた。

 何かおかしいが、おかしい所の反論ができない所に自分がいるぞ。


「承知いたしました、リリファはこの度のお申し出、ありがたく存じます」


 ドウシヨ。この彼女の笑顔を壊すのは忍びないぞ。

 お世話してもらって彼女の事は信頼できるし、ちょっと残念な所があるけど嫌いじゃない。






「結論だ、リリファと婚姻せい」


 部屋に入るやいなや、ドストレートに言い放つ王族長老。


「何故、彼女だ?」


 すかさず言い返してやるぞ。


「貴殿には、生粋のエステレッサ王国人と婚姻を結んで頂きたい。尚且つ、王室に詳しい者が良い」


 確かにリリファの親御さんは王族で、生粋のエステレッサ王国人で、本人は王室に対してもパーフェクトだ。


「これは決定した事なのだよ」


 追加で言い放つハゲオヤジ。


「そんなに民族主義が大事か?」


 ハゲオヤジは大人だな。僕の挑発なんぞ、軽々と受け流す。

 年季が足りなく、勝負すらさせて貰えん。


「あぁ、大事だ。貴殿にはエステレッサ国人と婚姻し、正当(・・)な後継者に時代を繋いでもらいたい。これは政治的な駆け引きも含まれておる」


「リリファとの婚姻を断った場合は?」


「ワシの孫のアレクシアか、リリファの従妹のステファニーがなるか、または総理大臣の長女が婚姻する予定だ」


 僕の婚姻に対して、僕は了承してないのに決定事項なのか。

 なんだろうか、日出国(ひいづるくに)感覚では、色々とおかしい。

 そしておそらく、エステレッサ王国の一般市民感覚でもおかしい。

 エステレッサ王国での、王族価値観を変える必要がありそうだ。


「貴殿が跳ね除ければ、跳ね除けるだけ長続きするぞ。貴殿へ慕っているリリファを娶るのが一番だと思うがな」


「どうしても決めないといけないのか?」


 確かに、僕は日出国(ひいづるくに)の衆議院そのものだ。

 だけど、王様個人の自由はないのだろうか。


「貴殿の正妻はエステレッサ王国人で、これは譲れない。そして他国が介入する前に決めてもらう必要がある」


「王族には自由は無しか?」


 ここでハゲオヤジが苦笑いしだした。

 大叔父の初めて見る感情に驚きを覚える。


「そうだ、表立った自由はないな。だが、国王陛下の自由に関しては手をまわしてやれるがな」


 色々と政治的判断もあるようだ。

 僕自身。リリファの事が嫌いでない。

 いや、照れているから好きだとかではないのだがな・・・。

 リリファの事は嫌いじゃない、でも色々とおかしくないか?これに関して僕の機嫌が悪くなるばかりだ。









 こうして僕、ユージ・デルマッサ・フォン・エステレッサはリリファ・エル・ボルアージと婚姻する事となった。

 結婚式典では各国の総理やら大使やら諸々の人が参加してくれた。

 僕の婚姻式で参加くれたのだから、感謝せぞるを得ない。

 だけど、エステレッサ王国議会には精一杯の文句をつけたい。


 結婚式が終わった夜に、こんな文書が届いたのだよ?



「国王陛下のご伴侶様に対する要望書。エステレッサ王国議会一同」



 この度は、リリファ・エル・ボルアージ様とのご婚姻、おめでとうございます。

 王族人数が低減している事から、国王陛下には多数の伴侶をお迎えする事を、国会は決議提案いたします。

 国王陛下におかれましては、今後伴侶を3人以上(・・・・)を迎える事を王国議会は要望いたします。  



 リリファをお嫁さんに迎えた日の夜に、あと二人のエステレッサ人女性と結婚してね!ってメッセージを受けるのってどうなのさ。



「私めも、同様の事を考えておりました。是非とも、第二妃、第三妃をお迎え下さいませ」


 初夜の奥さんから、こんな事を言われるのだよ。もう色々と故郷の日出国(ひいづるくに)との感覚差があるよね。



 ね、国王って立場が弱いでっしょ?

この物語は、長編として書いていたものを色々圧縮し、投稿したものです。

細かな部分で端折っております。


閲覧頂き、ありがとうございました。

感想や物語の構成等に対する言葉を頂けると、次回作品の参考となります。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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