ボツ百八十九話 おさんぽと落とし物
章題 城がないから城なし城がなくても城下町
さて、時はあんまり進まず、マルチンを送り出してから、再び炊き出しをして見世物小屋のみんなと昼食をとったあとの事。
「ご主人さま。四つ葉のクローバーを見つけたのです」
俺はラビと一緒に城なしの新しい層を視察がてら散歩をしていた。
「おおっ、なんか良いことあると言いな」
「良いこと無かった見世物小屋の人たちにあげるのです!」
「ああ、全部燃えちゃったしな……」
ちなみにマルチンに聞いた話では、テントに火を放ったのはルーシアの人間だったそうな。
そら、ヒゲリアよりもポールランドの方が立場が弱いから、テントにまだヒゲリア人がいる状態で火を放てる分けもない。
ともかく、見世物小屋の人たちは衣食住の全てを失ってしまった。
城なしに連れてきた以上は見世物小屋の人たちに責任をもって衣食住を提供しなくてはいけない。
で、それらを深く考慮すると──。
衣はどうにもならんので今着ているので我慢してもらう。
あまりにも、ひどい状況であればツバーシャが以前ドラゴンのダンジョンで拾ってきたアイテムBOXを提供しようと思うが数がないので考えなしだともめそうだ。
食は俺たちのストックで取り合えずは凌ぐ。
ただ、長くはもたないので安定した食料供給の手段を考える必要はある。
そして、最後の住が問題だ。
城なしの夜は冷えるからこればっかりは今日中に何とかしないといけない。
マイホームに52人も詰め込むわけにはいかないし、52人も上の層にいたら俺の心が休まらないから下の階に見世物小屋の皆の住居を構えたい。
──と、言う結論にいたり、皆の住居をどうにかするために先ずは城なしの下の層を視察と相成った分けだ。
「あっ! また四つ葉のクローバーを見つけたのです! みんなの分を集めるのです」
「いや、全員分集めていたら夜になって、なんもないところで野宿することになる。そしたら早速みんなしあわせどころじゃなくなるからほどほどにね」
「それもそうなのです」
城なしの下層は上層三つ分の直径があり、かなりの広さになっている。
地上をそのままくりぬいた形なので地面には草がはえて緑色。
休ませている最中の畑、あるいは放牧用の土地だったのか生えている草はクローバーが目立つ。
家畜特有の臭いがわずかに鼻につくので放牧用にクローバーを撒いた可能性が濃い。
まあ、土地らにせよクローバーには多少土地を肥やす力があるので、耕すだけで畑になりそうだ。
どれだけの間見世物小屋のみんなが城なしにいるのかは分からないが、商売道具がテントごと炭になったんだ。
復興に一年や二年、場合によってはもっと掛かるかも知れない。
なら、畑を作る必要もあるだろうし、これはラッキーだ。
「ご主人さま、変な棒が落ちていたのです」
「それはクワだよ畑を耕すのに使うんだ」
「でもボロボロなのです」
放牧用ではなく休耕している農地だったか?
クワの朽ち具合をみるに十分に休ませた後の様だ。
使い物にはならないクワだけれど、これで怪我をすると破傷風になるかもしれないので布でくるんでウエストポーチに放り込んだ。
こう言った人工物のゴミは処分に困るな。
柄は木で出来ているから燃やせるけど先っぽは金属だから燃えない。
小さな金属としてゴミに出そうにも回収業者がいない。
まあいいや、今は視察を再開しよう。
そう思い足を踏み出したところで。
「ご主人さまうんこなのです!」
突然の暴言。
「ら、ラビ? ご主人さまはうんこじゃないぞ? あれか? 朽ちたクワが欲しかったのか? でもこれは危ないから……」
「違うのです! うんこ落ちているのです!」
「えっ!? ぬおっ!」
危ない、ラビが腕を引いてくれなければうんこ踏むところだった。
しかし、デカイな。
「あいつらのうんこなのです?」
ラビの指さす先には、くっちゃくっちゃ草食ってるヤギがいる。
野生のヤギでもなければ、ローミャのはぐれ家畜でもない。
見世物小屋の所有物だ。
人や物を運ばせるのに使っているそうだ。
「ヤギの糞はこんなにデカくないよ。これは牛とか馬の糞だ」
「でもヤギしかいないのです」
「ご飯だけここで食べさせて、普段は別の所で飼っていたんだと思う」
家畜を休耕状態の畑にクローバーの種まいて放牧と言うのは合理的だな。
ただ、糞をそのままに耕して畑にする分けにはいかないから、これも拾い集めなきゃならんな。
集めた糞の処理はトイレに流しても良いが、乾燥させて肥料を作った方が良さそうか。
まあ、それも追い追い考えよう。
トイレと言えば上の層から水を雲の上に流していたのでその水が下の層に流れ落ちている。
何てことはなく、下水は城なしの内部に流れ込む形になっていた。
ついでに下の層にもトイレだけは何故か既にある。
城なしはトイレ作らないと俺が見世物小屋の人たちにまでたちしょんさせると思ったんだろうか。




