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没 百四十九話 お店を開こう

 俺は威嚇した。

 ツバーシャも威嚇した。

 怒られた。



 そんなわけで、お金を稼ぐために街のそばにある市場までやって来た。


 市場と言っても地べたに敷物敷き、そこに商品並べて売る人が十数人いる程度。


 活気は無く、身なりを崩した人ばかり目につく。


「治安の悪そうな場所だな」


「街の外周は魔物が現れれば真っ先に襲われるからのう。貧乏人や浮浪者やならずものが自然と集まるのじゃ」


「ヒゲの生えてない人もいっぱいなのです」


 あまりラビを連れてたくはない場所だが、ここ以外だと場所代が掛かるそうだから仕方がない。


「まあいいや。ちゃちゃっと入場料を稼ぐとしようか」


「何のお店にするのです?」


「ん。俺はサツマイモと干し芋を売る」


 ウチで売るほど余っているのはこれぐらいだしな。


「あっ、シノはこれね」


「ん? 木片? こんなものを何に使えと言うのじゃ?」


「それで、売れそうなモノ作って売っておくれ」


「もっ、木片で売れそうなものを作れじゃと……?」


 芋が売れなかった時の保険だ。

 もっとも、稼ぐ気は無いので芋は安価に設定する。

 だから、芋が売れないなんて事はないとは思う。


「ご主人さま。ラビもラビのお店を開くのです!」


「おお、ラビもやるのか。ラビはカレーかな?」


「違うのです。ラビはお医者さんするのです」


 なるほど。

 そう言えばカレー言語魔法は人を癒す事も出来るんだっけか。


「ここら辺の人は医者に掛かる余裕なんて無さそうだし喜ばれそうだな」


「激安で癒すのです!」


「そうかそうか。ラビは偉いぞう」


 さて、残るはツバーシャだが──。


「私は何も出来ないわ……」


「うーん。あっ、そうだ。ツバーシャは用心棒をしておくれ。ラビから目を離さないで欲しい」


「そう。それならできそうね。分かったわ……」


 ラビは戦えないからな。

 うっかり拐われたら大変だ。


 取り合えずやる事は決まった。


 鞄から壺を取りだし、ひっくり返して椅子や台にして芋並べればお店も完成。


 そして、必死こいてマゴノテ作って売ろうと考えているシノに即席の看板と値札を作ってもらい、いざ開店。


『芋、干し芋』

『マゴノテ』

『ラビの魔法のお医者さん』


 支離滅裂な看板の並びだが需要はありそうだ。

 きっとこれなら直ぐにお金が稼げるだろう。



 しかし、しばらく経っても誰ひとり客は来なかった。



「何故だ。捨て値レベルの値段設定なのに何故誰も来ないんだ!」


「安すぎて逆に不安なのと、その頭に被った袋で胡散臭すぎるんじゃないかのう」


「ああ。そりゃそうか」


 こんなところに住んでるんだ。

 警戒心は強いよな。

 困ったな。

 

 どうしたものかと考えていると、二人組の男がラビの方へと近づいてきた。


 どうやら心配は杞憂だったみたいだ。


 男の片割れが血に染まった腕を抱え苦しそうにしている。


 最初のお客さんはラビのところか。


「おい、あんた。魔法で怪我を治せるんだろ? こいつの怪我を治してやってくれよ」


「いてーよ、いてーよ、早く治してくれよ」


「た、大変なのです! 直ぐに治してあげるのです!」


 んんー?

 何だかちょっと違和感があるような……?


 俺が男たちの様子に疑問を感じているとシノが耳打ちする。


「主さま。あれは血では無く絵の具なのじゃ……」


「はーん。そう言う事……」


 怪我なんて最初からしていないなら治せるわけがない。

 後でいちゃもんつける気か。


 ツバーシャに視線を送り、いつでも動ける状態で待機してもらう。


「ターメリック。ターメリック……。ウコンウコン!」


 そして、ラビの治療が始まった。

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