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ぼつ 二十二話 空飛ぶ能力とナゴヤダンジョン ~あかん裏ボス出てきた~

 お魚焼いた。

 池作った。

 あとダンジョンめっけた。


「はー。それにしても懐かしいのです」

「ん? ラビもダンジョンに入ったことがあるのか?」

「住んでいたのです」


 はい?

 ダンジョンに住んでいた?

 何をおっしゃるウサギさん。


「いや、ダンジョンはおうちじゃあないよね?」


「ダンジョンの入口には、魔物が近づけないし、雨も風もへっちゃらなのです!」


「ほう。考えたのう。確かに入口は安全なのじゃ。中の魔物が外に出ないようになっておるからのう」


 どんな仕組みか分からないが、入口には魔物が近づけない。


 まあ、そうでもしないと、ダンジョンの魔物が外に出てしまう。

 確かにその性質を利用してダンジョンの入口に住むのは賢い。

 ラビが非力にも関わらず、野性味溢れている理由の一つがこれか。


「そろそろ、開けたところに出るからね。気を引き締めるんだ」


 ダンジョンの入口を抜ければ異次元だ。

 なあに、俺だって最初は驚いたさ。

 まるで世界の一部を切り取った様な世界が広がっているのだから。


「あっ、とてつもなく大きなおうちが見えるのです」

「お城じゃな」

「てっぺんにシャチホコ載ってるね」


 そう、この世界のダンジョンには外観が存在するのだ。


 なるほどナゴヤダンジョンか。

 お堀があって、高い石垣がある。

 このダンジョンはとても守りが堅そうだ。


「壁が登れないようになっているので、順路を辿る必要があるな」


「きっと魔物がうじゃうじゃ待ち構えているのじゃ」


「まっ、魔物がうじゃうじゃなのです!?」


 門を開いたら波状攻撃で並の人間なら秒殺されるだろうな。


「これは難しいのう。時間をかけて少しずつ進んで行くしかないのじゃ」


「ちょっと怖くなってきたのです……」


「心配するな。ご主人さまは凄いんだろう?」


 俺は努力が嫌いだ。

 だが、努力しないための努力ならいくらでもしてやる!


 俺は高いところから飛び降りないと空を飛べない。

 だがそれは空を飛ぶならの話だ。

 羽ばたいて名古屋ダンジョンのてっぺんに登るぐらいなら可能だ。


「ボスは多分シャチホコのある建物の最上階にいるはずだ。そこを目指すぞ! ラビ、しっかりと俺に捕まるんだ。シノはネコになってくれ!」


「分かったのです」


「にゃーん」


 ラビとシノが、しっかり捕まったのを確認すると、俺は羽ばたき始めた。


 一度羽ばたいたらもう突き進むしかない。

 羽ばたき止めたら、即落下だからだ。


「うおおおお!」


「浮いてる! 浮いているのです!」


「ひと振り五寸程度で進んでいるのじゃ」


 五寸ってどのぐらいだ?

 ああ、一寸法師の五倍か。

 結構進んでそうだな。

 そうとでも思わないとやってられんわ!



「主さまはすごいのう。大分時間が掛かったが大天守のてっぺんまでこれたのじゃ」


「ご、ご主人さま凄いのですが、汗で大変なことになってるのです」


「ひゅーっ。ひゅーっ……」

 

 もう……。

 絶対にやりたくない。


 俺は疲れが取れるまで休憩することに決めた。


 しかし、ナゴヤダンジョン。

 瓦とシャチホコが羨ましい。

 マイハウスには屋根がないと言うのに。

 貰ってっていいかな?

 ダンジョンに所有者なんていないだろうしいいよね?


「ラビ、シノ、この瓦とシャチホコ持ってかえって我が家に載せよう」


「流石ご主人さま! とても頭が良いのです!」


「も、持って帰るのかのう? なんじゃかバチでも当たりそうな気がするんじゃが」


 本物のお城なら気が引けるけど、ダンジョンだしな。

 別によかろう。


「ふぅ……。粗方剥がし終わったな」

「これでおうちに屋根が出来るのです」

「本当にこんなことしてよかったのかのう?」


「良いわけがないだろう。ダンジョンの秩序の化身である我が貴様に罰を下してやる」


「「「なっ!?」」」


 いつの間に現れたのか、俺たちが背後を振り返ると、全身黒タイツであるにも関わらず、とてつもない、プレッシャーを放つ男が存在した。

 

 あかん裏ボス出てきた。

 そりゃあ、ダンジョンもキレちゃうか。

 理不尽に順路を無視して屋根にのぼり、瓦を強奪。

 金のシャチホコまで盗っちゃったら、ダンジョンもキレちゃうか。


「貴様には、情緒と言うものがないのか。野蛮な行い。天に背くような行い。見過ごしては置けぬ。しかも貴様は天の使いではないか。支える神への冒涜に他ならぬぞ」


 あー。

 やっぱり天使に見えちゃうかあ。

 天使だと勘違いされたら恥ずかしいので、転生時にサイドセット感覚で、翼が生えていても笑われない程度の容姿を注文しちゃったからなあ。


「我には、絶対悪夢幻想と言うスキルが与えられている。このスキルがどの様な物かわかるか?」


「何だか、発狂でもしそうなスキルだな」


「分からぬか。つまり、この――」


 要約すると、相手の頭の中にある、イメージ通りの強さを得られるスキルだそうだ。

 なんともぶっ壊れたスキルだ事。


「我は、このスキル対象として貴様の中の神を選択する。天の使いであれば、如何にしても逆らう事は出来まい。さあ、掛かって来るが良い!」


「では、遠慮なく」


 俺は、股間を狙って下から上へと振り上げた。


「キョエアアアアアア!?」


 お股を破壊された自称神の力を持つ男はゴロゴロとのたうち回った。


「ばばばば、バカな! 神に矛を向ける天使の存在など許されぬ! しかも、神であるのにも関わらず、何故こんなにも脆いのだ」


 許すとか許さないとか鬱陶しいことこの上無い。

 だったら、俺もお前を許さんわ。

 だが、冥土の土産に種明かしをしてやるか。


「俺は元ニートだ。時間をもて余した俺はある日真実とは何なのかと言う疑問にぶち当たり、49日間それについて考えていたことがある。この世に真実など何一つとして存在しないのではないか? 何故なら真実を証明する手段など全てまやかしだからだ。真実を証明するのであれば、真実と全く同じものを用意しなくてはならない。完全なる複製を行われなければならないのだ。また、この完全なる複製を行う時点で既に、製造時間の矛盾が出るが、そこは仮になんとかなったとしよう。しかし、それでも、絶対に克服できない問題が残る。それは位置情報だ。完全に一致させなければならないので複製品と真実の判定対象を融合させなければならない。この時、一つの物質に二つ分の物質融合が行われて当然どちらも破裂してしまう。さて、この方法で世界が真実かどうか確かめてみたとしよう。するとどうなるか? 答えは簡単ビッグバンだ。世界を重ねたら、新たな世界が生まれてしまう。新たな世界の作り方を知ってしまった俺は最早人ではない。ではなんなのか?」


「な、何をわけの分からぬことを言っているのだ! だから何だと言うのだ!」


「分からないか? つまり俺は真実を追求した結果、神になったんだ。新世界の作り方を知っているのだから神と言っても可笑しくないだろう?」


 そう、俺にとって神と言うのは、ニートだった頃の俺の事だ。

 そんなん、コピーしたら最弱だろう。


「おかしいわ! そんな屁理屈が通ってたまるか!」


「そもそも神なんてものが屁理屈見たいなモノだろうが!」


 ニートの戯言で滅ぶとは哀れな奴だ。

 行き過ぎた能力なんてものは身を滅ぼすものでしかないのだ

 転生チャンスがあったら、謙虚に飛びたいと願うんだぞ。


 俺はたっぷりと懺悔の時間を与えると翼を下から上に向かって振り上げた。


「ギョアアアアアアア!」

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