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「らぶりいえんじぇう」とやら

よろしくお願いします。

「あの……、フミカちゃんって本当に俺を救うのが使命なの?どんなご褒美目当てか知らないけど、ギブアンドテイクでミッションを完遂しようよォ!それがお互いのためなんでしょ?」


「まあなあ。ミッション成功の暁にはゼウスさまが願い事を一つだけ叶えてくれるって約束だけど、サルのような生態のお前を見てたら、とてつもなく高いハードルに思えるんだよ」


「そんなことないって。俺も精一杯協力するからさァ。フミカちゃん、何か飲む?と言っても、安物のウイスキーか実家から送って来た梅酒しかないよなあ。摘まみもチーズかサキイカくらいだし。インスタントならコーヒーくらいあるけどさ」


「じゃあ、梅酒でいいよ。ホットにして梅を一粒入れてくれ」


「了解!お安い御用です」


 タリーズで買ったマグカップに梅酒を注ぎ、ビンの中から浸かった梅をトングで一粒取り出して入れた。あとはレンジでチンしてホット梅酒の出来上がりだ。


 二分後、俺はおずおずとえんじぇうさまの前にマグカップを差し出した。


「フミカさま、どうぞお召し上がり下さい」


 カップを両手で抱え、フーッと冷ましながら口に運ぶ様子がカワイイ。ニヘラ~と眺めていたらキッと睨み返された。


「マサハル。あんたの名前は北條正晴。年齢は二十四才。カノジョなしの冴えない貧乏リーマン。指令書にはそれだけしか記されてなかったけど、他に付け加えることある?」


 カノジョなしにはなったばかりだろうがァ!ムッと来たけど、指令書ってことは書いたのはゼウスさまってことか。全能の神ってことだし、俺の悲惨な未来が見えてたのかな?とにかく、フミカに怒ってもしょうがない。


「いや、そんなもんですよ。何処にでも転がってる平凡な男です」


「ふーん。私としては、生態は極めてサルに近いって注意書きが欲しかったけどな」


 本人を目の前にしてシレッと言いやがった。こいつ、神の使いにしては極めて口が悪いよな。でも、俺を救うのがミッションだから我慢してやるよ。


「俺はフミカちゃんの情報は何も持ってないから、もう少し聞かせてもらっていい?大切なミッションを成し遂げるための大切なバディなんだからさァ」


 空になっていたウイスキーグラスにクラッシュアイスを放り込み、ボトルに一割ほど残っていた「バランタイン」を全て注ぎ込んだ。


「そもそも、天神衆って何で中途半端な百八人なの?その神の使いとやらは世界中に散らばってお仕事してるの?」


 フミカは蔑むような視線を俺に向け、フウッと溜め息をついてから返して来た。


「百八人は中途半端じゃないわよ。人間の煩悩は百八つって言うでしょ。お前みたいな煩悩の塊が最低百八人はいるってことだと思うわよ。除夜の鐘で証明してるじゃない。私たちの仕事場は全宇宙よ。今も同僚たちは火星や土星に出向いて頑張ってるわ。まあ、私は地球専属みたいなものだから、他の星の内情は聞いた話しか知らないけどね」


「へーえ、火星や土星にも生物が存在してるんだ。やっぱり人間と似たような生活をしてるのかな?フミカちゃんは地球専属ってことだけど、どれくらい任務に就いてるの?」


「火星や土星にも生物はいるし社会もあるよ。ただ、見てくれはモンスターも真っ青の奇怪な奴らってことだけど。立ち姿は人間が一番美しいって先輩が言ってたな。仕事に従事してた期間は、お前らの時間で言えばざっと百五十年ってとこか。まだまだ若輩者だよ」


 ゲッ!それじゃフミカは少なくとも百五十才以上ってこと?とんだBBAじゃん。危ねえッ!チートで妖しい香りに嵌められるとこだったぜ。まあ、天空の彼方在住の女だから関係ないってか。俺はあくまでミッションの対象でしかないんだろうしね。


 さて、そろそろ本題に入ろう。神の端くれだったら、人間から見ればスゲエって能力も当たり前に備えているだろう。精々それを活用させてもらおうっと。俺の輝かしい未来のために。


「それでさあ、フミカちゃんのスーパーな能力って何なの?そいつを駆使して俺をハッピーに導いてくれるんでしょ?」


「うん、そうだよ。毎日曜の夜に一週間分の未来を見せてあげるわ。夢の中でだけどね。予知夢ってやつよ」


「えっ?それだけ?魔法を駆使して現状をイージーモードに変換してくれるんじゃないの?呪文を唱えて杖なんか振り回しちゃってさ。何か一週間分の未来ってセコいと思うし」


「マサハルって、てんでズレてるよなあ。今時呪文なんて誰もやらないって。こっちの世界にも流行ってもんがあんだよ。そんなダサいやり方で報告書提出したら、ゼウスさまは元より同僚にも笑われちゃうよ」


 俺は正直、梯子を外された気分である。お前らの世界の流行なんて知るかってんだァ!でも、俺はニッコリ微笑んだ。スゲエことを思いついたからだ。


 グッヘッヘッヘ、これで俺の未来はバラ色確定だ。女なんて向こうから擦り寄って来るに決まってる。社畜の未来よ、さよおならあ……。


「でも、今夜はサタデイナイトだよね。一日フライングじゃない?」


「今夜はオリエンテーションを兼ねた前夜祭よ。いきなり未来を見せたって、あんたの少ないお味噌じゃ到底理解出来ないでしょ?私も無限にお前ごときに引っ付いてるわけじゃないんだし。ゼウスさまが撤収って言ったら、即、お別れだよ」


「ええっ?それは切ないなあ。しあわせ確定するまで現れてくれるんじゃないの?じゃあ、急いでやって早く億万長者にならなくちゃ」


「はあ?絶対に何か悪企みしてるよね?正直に言ってみなさい!でないと、この話は無かったことにするわよ!」


「そんなあ……。いや、月曜日の新聞が読みたいだけだよ。それには公営ギャンブルの結果が載ってるからさ。土日に馬券や車券を買ってワンコインで成り上がるんだ。倍々ゲームってやつ。ステキでしょ?」


「お前って奴は、心底発想がクズだよな。イカサマ博打は断じて認めません!」


「イカサマなんて関係ないじゃん。大宇宙の基準に日本の法規を転用してるわけじゃないでしょ?俺の味方なら好きにやらせろっつーの!」


 バシッと頬をぶたれた。痛ってえ!ほっぺにヒトデの跡がついちゃうじゃん。恥ずかしくて外歩けなくなったらどうすんの?この暴力BBAがァ!


「ダメッ!倫理観が許さないから。私はいつだって身も心も美しくなくちゃいけないの!このミッションが終わったら大宇宙のミスコンにエントリーするんだからね。内面審査で落とされたら一生の汚点になっちゃうわ!」


 そんなの俺にはどうでもいいよ。と言いたかったけど、これ以上機嫌を損ねるのは得策でないと判断した。まあ、未来が見えて損するってわけでもないんだし。


「じゃあ、取りあえず見せてくれない?ダイジェスト版でいいからさ」


「まだ録画中だよ。来週の日曜分もまだ未録だし。そのあと編集作業もあって多忙なんだからね!」


「わかりました。じゃあ明日の夜来て下さい。俺、楽しみに待ってるから」


「うん、必ず来るわよ。あなたの夢の中へね。じゃあ、今夜は初日だからこれくらいにしておくわ。どうもお邪魔しました。梅酒をありがとう。とってもおいしかったわ」


 えんじぇうさまは俺の頭を掴んで、額にやさしくキスすると映像が乱れるように消えて行った。


 すっかり覚醒してしまった俺は、誰もいなくなった部屋をグルリと見廻した。本当にあれは何だったのだろう?でも、テーブル上には彼女が飲み干したホット梅酒のカップがポツンと置かれたままだった……。


読んで下さりありがとうございました。

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