Можешь рассчитывать на меня 4
その数日後。
良史亜から「誠が車借りるって言うから、一緒に水族館に行こう」と電話がきた。
そして良史亜も休みの日曜日に、約束通り誠君は車を借りて、真理さんと四人でのドライブに連れ出してくれた。
「誠がドライブなんて、私も初めてだよ。桐絵ちゃんに約束したからって急に言い出してさ」
と真理さん。
誠君の運転で、車は快晴の夏空が気持ちいい海沿いを走り、郊外にある水族館を目指す。
運転する誠君を私は何度もそっと見つめた。
途中で穏やかに日差しを受けてうねる海を眺めながら、潮の香りのする中みんなでソフトクリームを食べたりした。
水族館に着くと、エントランスに天井まで届くほど大きく作られた水槽の前で足を止めて、深い青色の水中を銀色に群れなして泳ぐ魚たちに私は見とれた。
私の隣で、水が放つ淡く青い光に包まれた良史亜が「これはすごく綺麗だね」と言った。
「うん、水の底にいるみたい。魚の影もすごく綺麗」
そう私が答えると、良史亜は黙って微笑んだ。
その向こうには誠君と真理さんが、やはり水槽を見上げて何か話している。
水槽から反射する光と流れる魚影が、誠君の頬の上に映っていた。
様々な個性的な形や大きさをしたたくさんの種類のクラゲに、水に飛び込んだり泳ぎ回る元気なアザラシに、可愛いペンギンたち。
そして私は初めてすぐ近くで海水を跳ね返して泳いだり曲芸をするイルカのショーを見た。
真理さんと私へのお土産にと、誠君はフワフワして可愛いアザラシとペンギンの縫いぐるみを買ってくれた。
帰りに四人で私の寮の近くの焼肉屋さんで食事をしながら、私はこの前誠君に助けられた話しをした。
「なぜすぐに言わないんだ?やっぱり引っ越した方がいい。もっと環境良くて、セキュリティがいいところを今度探そうよ」
その出来事を心配した挙句の、ちょっと不機嫌そうな顔で良史亜が言った。
「良史亜は桐絵ちゃんのことになると、ほんと兄さんか父親みたいになるよね」と真理さん。
「家の近くでそんなことがあればそりゃ心配もするさ。まあ、僕はいつもそばにいられないからね」
良史亜は苦笑した。
「ねえ、良史亜にとって桐絵ちゃんてどんな存在?妹なの、それとも、……」
急に真理さんが言って、その言葉に私は戸惑いながら良史亜を見た。
目が合ったけど、彼の表情はいつもと変わらなくて苦笑いしたままだった。
「真理は単純だなあ、そういう問題じゃないだろ」
真理さんの言葉にそう反応したのは誠君だった。
「そうかな?だって良史亜はいつも桐絵ちゃんのこととなると、超全力じゃない」
「そりゃそうだよ。僕たち親がいないんだから、助け合うしかないだろ。桐絵は未成年で、まだいろんなことに助けが必要なんだから」良史亜が言う。
「でも私まだ良史亜を助けたことないし、力になれたことないよ」
「そう言うな、今がたまたまそういう流れなだけだ。将来僕が病気して、桐絵のいる病院に行く事になるかもしれないだろ」
良史亜はポンと私の頭に手を置いた。
「人のために動く事で、逆に自分が満たされるってこともあるしな」
そう誠君が真理さんに向かって言い、良史亜と真理さんがうなづく。
そうか、そういう感じ方もあるんだなあ、と私も思った。
「それはそうだね。誠、いい事言う。親が亡くなってるのは、誠も同じだもんね」
「そうだったの?」
私はその事は知らなかった。
「五年前に揃って事故で失くしたんだ」と穏やかに誠君は言った。
私と誠君は、両親がいない同じ境遇だったんだ。
良史亜の場合は違っていて、両親は亡くなったわけじゃない。
半分血の繋がった弟もいるけど良史亜は一人だ。
私は、彼の置かれた境遇の方がもっと辛いんじゃないかとも思う。
もう随分前のことだけど、親がないことを学校で言われて辛い思いをした私を慰めて、中学生だった良史亜が言ったことがあった。
「親がいても僕はいらない子だし、生まれてこなきゃよかった子だからね」って。
良史亜は実の母親と養父から虐待され、怪我を負って死にかけて、しばらく入院してから施設に入った。
誠君が言うように、人のために何かすることが自分の心も満たすことにつながるのなら、私は良史亜の心が満たされるといいな、と思う。
自分を頼っていい、いつも私にそう言ってくれる良史亜は、自分が成長した今でさえも、口には出さないけど大人が嫌いなのだって私にはわかる。
大人に頼ることも嫌いだし、できうる限り誰に頼ることもなく暮らしてる。
そして良史亜の心にはきっと、彼にしか見えない理想の大人が住み着いてる。
私にはそう思えるのだった。