Можешь рассчитывать на меня 2
二人でコーヒーを飲んだ後アパートを出た。
ドアに鍵をかけてる誠君を見てると、一緒に部屋を出るってことを意識して不意になんだか恥ずかしい気がした。
白のVネックのTシャツにジーンズ姿の誠君と並んで一緒に歩くと時々すれ違う女の子の視線を感じる。
背が高くてかっこいい誠君は人混みの中でも目立つから。
まるで涼しい顔をしてる誠君と対照的に私は落ち着かない気持ちだった。
「桐絵はこれから病院の実習とかにも行くのか?」
「まだまだだよ実習は。でも誠君詳しいんだね」
「ああ、真理の友達で注射がどうしても怖くてナース辞めちゃったって子がいてさあ、いろいろ知ってるよ」
そして誠君は、その子から聞いたという話をしてくれた。
「初めて一人で注射することになって、なんとか注射準備して患者さんとこ行ったらしいけど、針のキャップを外して針先見たら怖くなって、キャー、やっぱり無理ですーっ!て言って逃げたらしいよ」
「それは患者さんの方がもっとびっくりだよね」
そして今その子は真理さんと同じキャバクラで働いているそうだ。
誠君は他にも面白い話をして、私は笑ってばかりいて、彼を意識しすぎて感じた緊張がいつの間にか解けていた。
良史亜のところで会う誠君は大抵いつも、私と彼が進学のことだの、これからのことだの真剣に話をするのを窓の近くでタバコを吸ったりしながら黙って聴いてる感じだった。
そして私が良史亜に逆らって小競り合いになってくると、そこで初めて何か口を挟んだり「もうちょっと桐絵に考えさせたら」とか言って良史亜をなだめたりするのだった。
でも横から真面目な話を茶化して、しまいに良史亜が「誠、茶々入れるならどっか行って!」とキレるときもあるけど。
飾り気がなくて飄々とした感じで、でもその場の空気をくるっと上手にひっくり返してしまう不思議な誠君。
「桐絵は何か欲しいものないの?」
街を歩きながら、そう誠君が聞いて来た。
「必要なものはちゃんとあるし、他にいるものは良史亜が口座に入れてくれてる分から自分で買っていいことになってるの。だから大丈夫」
良史亜はよく考えてくれていたけど私はできるだけ無駄遣いしないようにしていた。
良史亜が働いて貯めてくれたお金だし、彼自身が自分のことには質素なのを知っていた。
と言うより良史亜って物欲があまりないみたいなんだ。
私も別に無理してるわけじゃなくて、そこは良史亜と割に価値観が似ているってことかもしれない。
でも同世代の女の子と比べたら、私は髪型とかお化粧品や洋服に全然凝ってないし詳しくない。
だから真理さんのような綺麗な彼女がいる誠君から見たら、きっと地味で野暮ったく見えるんじゃないかな。
そう思うと女の子らしくない気がしてちょっと自分が恥ずかしくなって来る。
「桐絵って欲がないんだな。まあオヤジ枠とお兄ちゃん枠は良史亜のだから、この際、俺は孫を甘やかす無責任な爺ちゃん枠でももらっとくか」
「え、何でお爺ちゃんなの?」
誠君はただ黙って笑っただけで答えない。
「何でもいいから桐絵。俺とこれから靴買いに行こう。ナースの足は大事だからな」
そう誠君に言われて足元に目を落とすと、私の古いスニーカーは擦り切れてつま先に穴があきかけていた。
しまった。
そう思った途端、顔が赤くなる気がした。
やだな。
こんなことにも気づいてなかったなんて、やっぱり私は女子力が無くて本当に恥ずかしい。
でも誠君は楽しそうに探し当てた靴屋さんに入ると、私に新しいスニーカーを一足と「就活や挨拶にも使うだろう、これは」と言って黒いパンプスを選ばせた。
「合コンやデートで勝負できるやつは持ってんのか?」
「え、そういうのは行かないし相手もいないよ」
「じゃあ女子会に使えそうなやつでもいいんじゃないの、この際」
誠君は婦人靴の並んだ棚に向かうと、細かいラメが入って光沢がある紺のリボン付きのパンプスを手にとった。
それは7、8センチの華奢なヒールがあって素敵だなと思った。
でもそんなヒール履いたことないし絶対転んじゃう。
それに、そんな大人っぽい綺麗なパンプス。
一瞬そのパンプスを履いて誠君と並んだ自分を想像したけど、私はすぐにその想像を締め出した。
憧れるけど無理だよ。
「そんなの、履けない……」
思わず呟いて、なぜだか悲しい気持ちがよぎった。
私なんて子供だし、綺麗じゃないし。
私、今何に憧れたんだろう。
「俺も多分無理だわ」
そう誠君が言って、私を覗き込むようにした目が笑ってた。
そうだ。
今日はせっかく誠君と一緒なのに、気持ちがくすんでいじけた自分では居たくないなあ。
そう思った時、下段の棚にピンクベージュの可愛いパンプスを見つけた。
それはヒールも太めで低くて前リボンの中央にキラキラするラインストーンが付いている。
入学祝いにもらったハンドバッグにも合いそう、と思った。
「これ、履いてみようかな?」
「そうしな、色もいいな。桐絵に似合いそうだよ」
誠君の言葉に励まされて、私は可愛いその靴を履いてみた。