確認作業3話
若干の不信感と、こんなものか……と言う達観した気持ちを持ってしまったが、ここで話の流れを断ち切ると、いつまでも話が進まないと男は思い。システム88に告げる。
「俺の名前は……健三……三井健三だ」
男は自分の名前が少し嫌いであった。あまりにも自分が生きている同世代の人達に比べて、時代錯誤な堅苦しく、三男なのだと言う事がすぐ分かってしまう名前だったからだ。
《マスターの氏名確認……登録完了……以降、ステータスの氏名欄を、三井健三にて表示いたします》
システム88の言葉を聞きとげ、改めて修正された自分のステータスを見て、納得した。納得はしたが、次の疑問を浮かべた。
「年齢は、そのままの年齢でと希望したのだから、これでいい……種族も人間の男、これもいいが……この括弧内の、地球人と言うの何だ?」
異世界転移・転生モノのネット小説を読み漁っていた男には、違和感しかない。
「ここは、普通は異世界人とか表示されるべきじゃないのか?」
男の疑問は、男の価値観から考えると、極々当たり前の事だった。何故なら、その手のネット小説では、そのような表記になっている物が、大多数を占めていたからだ。
男の疑問をぶつけられ、回答を模索しているのであろう、しばしの時間が流れた後。
《マスターからの質問……認証……解、現在表示されているステータスは、マスターが閲覧する際に、ご自分の事を理解しやすくする為のプログラムが働き、こうなっております》
《マスターに逆にお聞きしますが、マスターは地球で生まれ、地球で育ち、地球で死んで、地球の知識を有したまま現在、この世界に居ますが、ご自分の事を異世界人と認識してらっしゃるのでしょうか?》
《日本人としての、アイデンティティを持ったままの、ご自分を異世界人と?》
システム88からの逆質問などという事を、まったく意識すらしていなかった男は、突然、自分のアイデンティティを問われ、即座に答えを出せなかった。
《この世界の人達から見た時には、マスターは異世界の人間ではありますが、マスターから見た時には、この世界の人達こそが、異世界人なのではないですか?》
《現在表示されているステータスは、マスターご自身の事柄を表示しています、ご納得いただけますと、嬉しく思いますが?》
完璧とも言える、システム88の回答を聞き、確かにそうだよなと納得もしてしまった男は、ぐうの音も出なかったが……
《マスターが、ご自分のアイデンティティを曲げてでも、ご自分を異世界人としたいのであれば、表示を変える事は可能です……変えられますか?》
と、トドメを刺されてしまった。
早く街に行けよ!って思っているだろう?
この流れはまだまだ続くぞw
ごめんなさい。どうしても、しっかり確認作業をやれと、私の脳ミソが指令を出してくるんです。