序章2話 前編
1話を1,000~1,500文字目安に書いてますので、前後編と分けまさせてもらいます。
前回、あまりにも普通とは言えない不幸な事故により、普通に生きてきた人生を終わらせてしまった男。
「うぅ……」
意識が覚醒して、1番最初に思った事は。
「知らない天井だ……」
などと言う、ありきたりなテンプレではなく、転んだ時の痛みがまったく無い事だった。男自身が初めて感じる、なんと言うか肉体が通常感じる感覚が非常に【希薄】である、奇妙な感じであった。
「あれ?俺って確かル○バにぶつかってコケたよな?」
痛みも、背中に感じでおかしくないフローリングの感触も無い事に、戸惑いながらも、少し落ち着いて自分の肉体の確認作業を、男の脳は行っていた。
肉体の確認作業が終わり、辺りを見る余裕も出てきた男は、初めて、自分が居るべき部屋に居ない事に気が付いた。
「え?ここどこ?」
普通に生きてきた男らしく、普通の事を言っている。
男が今居る場所を、正確に日本語として表現する事は、かなりの労力が必要とされる場所であった。
「真っ白?」
そう、男が居る場所は、男自身が表現したように、1面が白1色に塗りかためられた空間であった。
男が、今の自分の状態を受け入れられず、戸惑っていると、白1色だった空間の1部が丸く円形に中心から外側に侵食していくように、黒に染まっていく。
男が黒の真円を凝視していると、そこから白い光が浮かび上がってきた。光は、男の目には、あまりにも眩しすぎて、しっかり見つめる事は出来なかったが、かろうじて、人型である事は解った。
『ぷっ……』
男が、目を細め額に手をかざし、目映い人型を見ているとふいに、含み笑いの声としか表現のしようが無い音が聞こえてきた。
『やあ、初めまして、ル○バにぶつかって転んだ拍子に投げ出した、冷凍ご飯で頭を強打した普通の日本人さん』
『そう、もう解っているよね?ここは、所謂死語の世界だよ』
『君は、有り得ない程、笑える死因で肉体から魂が抜きでて今、ここに居るんだ』
突然、自分の理解を遥かに越えた、見た事もない人型の光に言われ、自分が死んでしまった事を悔やむ暇も無く、笑われた事に対して、なんとも言えない思いを男は感じでしまった。
「わ……笑うな、事故は有り得ない事で起きるから事故なんだ」
「……」
男自身が(これは無理のある言い訳だな)と思いながらも、自己弁護して数巡。
「え?死語の世界?」
「俺……死んだのか?」
『そう、君は死んだのさ、お掃除ロボによって転ばされ、冷凍ご飯が直接の死因によってね……ぷっぷっ』
光の人型が、揺れている。笑っているのだろう。
『数千年ぶりに笑わせてくれた、日本人さん』
『ここで朗報だ、お礼として、君を生まれ変わらせてあげよう』
ひとしきり笑った後なのだろう、少し途切れ途切れだが、光の人型は男にそう告げた。
「生まれ変わり?生き返りではなく、生まれ変わりか?」
『君には、地球とは別の世界に生まれてもらうよ、所謂、異世界ってヤツだね』
【異世界に転生】そう告げられた男は、静かに立ち上がり。
「そうか、生まれ変わらせてくれるのか、ありがとう」
そう言って、光の人型に向けて頭を下げた。