閑話1
先に謝罪します。
色々とゴメンなさい。
一部、改行の、おかしなヶ所があり、修正しましたが、反映されません。運営に問い合わせ中ですので、暫くは、読みにくいヶ所がありますが、ご了承下さい。
まさに呆然自失状態の男は、システム88からの警告を受け、重い腰をようやく上げると、億劫そうに歩き出した。
2本の真っ直ぐ伸びる葉を持つ芝に似た、くるぶしに掛かるかというぐらいの背丈の青々と繁る草に埋め尽くされた草原。弁当を詰めたバスケットを手に、ピクニック等にシャレこみ、芝に似た草をクッションに寝転がり、空を流れる雲を見ていれば、山の方から吹き下ろしてくる、そよ風が、眠りに誘うであろう。そんな、素敵と言える時間をもたらしてくれそうな草原を、男は歩く。この世の全てを、はかなんだかのように、フラフラと左右に体を揺らしながら。
《警告……進行方向1m先に、直径およそ20cmの穴があります》
システム88は、方向性にある問題はあるものの、どこまでも自分のマスターに優しい、親切設計であったのだが、自分を見失い、ただただ機械的に2本の足を動かし歩いている男は、当然の結果、そんな親切な警告も耳に入っておらず、穴に足を取られコケた。
「いっつぅ……」
男は、自分の身に何が起きたのか、すぐには理解出来ず、四つん這いの姿勢のまま、動かない。
PBR> 《大丈夫ですか?マスター》
自分がせっかく出してあげた警告にも、気付かずにコケたマスターを、真っ先に心配する。
そしてシステム88は、男に語りかける。
《マスター、しっかりして下さい》
《確かにマスターには、少し特殊なスキルがありますが、役に立たないスキルなど存在しませんよ》
《……》
《マスターもご存知のように、この世界には、モンスター等の危険な生物も生息しています》
《そのような危険なモンスターに遭遇して、倒す事も出来ず、逃げる事も叶わない時に》
《マスターは、ストレスを感じませんか?》
今さら、慰めなんて。そんな気持ちで黙って聞いていた男だが、そんな場面に、この先絶体に遭遇しないとは言えないなと思い、システム88から掛けられる言葉の先を待った。
《きっと、今まで感じた事もないようなストレスを感じるでしょう、そんな時に、このスキルならば》
《死に戻りのような、痛い思いも恐い思いもする事なく、やり直せるんですから》
確かに男は、地球での人生の中で、大きな事故に遭遇したり、派手な殴り合いなどもした事がない。つまり、生死をさ迷うような痛みも、自分の力だけでは、どうにもならない恐怖も感じた経験が無かったのだ。
「死ぬ程の痛みも……恐怖も無く……やり直せるか……」
男は、1つそう呟くと、おもむろに立ち上がり、システム88に声をかける。
「そ……そうだよな!よ~く考えたら、死に戻りなんかより便利なスキルだよな!」
《そうですよ、要は使いようです、マスターなら上手く使いこなせると信じてますから》
システム88の言葉を聞き、先程までの男は何だったんだ。と思える程、急速に自分を取り戻し、気分も高揚してくる。割りと単純な面も持ち合わせている男であった。
「そうだよ、これ程便利なスキルないよ……」
「うんうん……そうだ」
まるで自分にとって不都合になる事など、起きないと思えるように、一人呟く度に元気を取り戻す。しばらく、ブツブツ言ってたかと思うと、男のテンションは、この世界に降り立った直後のように、高まっていた。
「ところで、システム88よ、残ったスキルの鑑定に付いて説明してくれるか?」
《はい、このスキルは、マスターが考えているであろう、ラノベ等に出てくる鑑定と大きな差のないものです》
《鑑定してみたい物に目を向け、心の中で【鑑定】と唱えれば、詳細が表示されます》
男は、システム88の説明を聞き、辺り一面を覆い尽くして繁る草に視線を合わすと、心の中で唱えた。
【鑑定】
名称:シハ草(多年草)
特徴:最大10cmほどまで成長する
発芽からの成長速度が非常に早い(2週間程)
無毒
ホルス世界では主に家畜の餌として活用されている
食用可能
「おぉ~しっかり詳細まで表示されてる、さすがLV.Max」
男は、鑑定を使って出た結果に、大変満足して色々な物を鑑定してみた。足元に転がっていた小さな石を拾い上げ。
【鑑定】
名称:火山岩の欠片
特徴:酸性岩 (デーサイト)
火山から噴きでたマグマが、急激に冷えて固まった物
「おぉ~すごいな、まるで……ネットの某百科事典のようだ」
男は、拾い上げた石を捨て、少し先に見付けた今の石とはまた違う感じの、握り拳程の大きさの石に鑑定をかけてみた。
【鑑定】
名称:深成岩の塊
特徴:酸性岩(花こう岩)
火山から流れ出したマグマが、時間をかけてゆっくり冷え固まった物
男は、鑑定の結果を見て、うんうんと一人納得する。
「そう言えばさっきコケた原因になった穴は、何だったんだ?」
男は、しゃがみこみ、シハ草をかき分ける。すぐに見付かった穴に、当然のように鑑定をかけた。
【鑑定】
名称:モクラの開けた穴
特徴:直径20cmほどの穴
深さ2mより先、計測不能
垂直ではなく、緩やかな角度の傾斜が付いている
男は、日本ではまったく馴染みのない名称に注視した。「モクラ?モクラってなんだ?」
《モクラに関する注釈を表示出来ます》
どうやら、この鑑定スキルには、注釈などという、この上なく便利な事も出来るようだ。本当に無駄に高性能なスキルばかり貰ったようである。
【注釈】
名称:モクラ(哺乳類)
特徴:小型の哺乳類型モンスター
土中を主な棲息地として穴を掘って生活
肉食(主に土中のミミスなど食べる)
魔石の過剰摂取により《モクラー》へと進化する
モクラー(モクラの進化形態)大型化し非常に獰猛。人を襲う
穴を作った正体が分かり、再び歩みを進めると、草原と道の境目に、ちいさな黄色い花を付けた植物を見付ける。
「この世界でも、植物は綺麗な花を咲かせ、道行く人を和ませるんだな」
などと、どこの詩人だよ!とツッコミたくなるような事を、のたまうと、すっかりお馴染みになった鑑定をかける。
【鑑定】
名称:タンホホ(多年生)
特徴:成長すると黄色の多弁の花を咲かせる
風または小型の昆虫等を媒介に受粉
受粉後は白い綿毛の種子を実らせ、風に乗せて繁殖
「なぁ……色々とツッコミたい事があるんだが、いいか?」
《遠慮なくどうぞ》
「まず、モクラだっけ?と言い、タンホホ?……何で微妙な程に、日本の名称と特徴が似てるんだよ?」
《偶然です!》
何か聞かれてはいけない事を聞かれた時に、明らかに誤魔化すかのように、強い口調で、システム88は答える。
「後……お前……口調変わってないか?」
「前までは、マスターリクエスト……認証……解、とか、機械的な話し方だっただろ?」
男は、黙って受け入れても、大した支障もない【禁断の質問】を、そうとは知らず、言葉に出してしまった。
《……》
《……》
「黙秘か?黙秘なのか?おらおら!キリキリ答えんかい!」
《……そ……それはですね……私を作った、光の人型よりも更に上の存在である……いわば【神】とも呼べる方がですね……》
「【神】とも呼べる存在が?どうした?」
《いちいち、マスターリクエスト認証とかやるのを……途中で面倒になられまして……普通に話せる事にしちゃえばいいや……などとですね……思ったらしくですね……》
しどろもどもになって答えるシステム88。
《そ……それで、途中でアップデートした時に……普通に話せるモードにさせようとしたんですが……各モードの口調をですね……やるのも面倒くさいと……ですね……》
《アレは駄目神です!そう【駄神】と呼ぶことにしましょう》
《その【駄神】が、以上のような、ふざけた理由によってですね……私を、コッソリ改造しちゃいまして……わ……私も不本意だったんですよ!》
《不本意だからと言って……【神】に逆らえる訳もなくですね……》
《そ……そんな質問しちゃうマスターに、私からも聞きたい事がありますよ!》
システム88からの、突然の切り返しに、自然と身構え、体中に力を入れる男。
《マスターも最初の頃は、なんていうか、COOLな感じで、どこか達観してて、冷静沈着だったじゃないですか!》
「アレも俺、今の俺も俺、どちらも俺だ!人は、多面性を持つ生き物なのだ!」
色々と誤魔化す男。どうやら、口は達者なようだ。
《屁理屈ですよ……横暴だ……》
「う……うるさい黙れ」
面白いのか面白くないのか、微妙な漫才を繰り広げ、男と相棒の旅が今、始まる……
この先どうなる事やら……
これにて、序章は終わりです。
次回から、作者が書きたかった話になります。
異世界に飛ばされて、人生も今後の生命も掛かる、大事な大事なスキルやらステータスの確認を、1話でサクっと終わらせていいのか?の疑問から、このような、非常に長ったらしく、説明の多い序章になってしまいました。




