1.キ-60
(´・ω・`)数字や技術的考察は全てでたらめなので信じないで下さい。
(´;ω;`)パラレルワールドwww
参考資料
戦闘機「飛燕」技術開発の戦い 碇 義朗
日本の傑作機 小川 利彦
双発戦闘機「屠龍」 渡辺 洋二
空のよもやま物語 わち さんぺい
秘めたる空戦 松本 良男
その他 Wikipedia等
そうだねえ…。ドコから話そうか…?
尋常小学校の窓から見える汽車を見て、小さい時から漠然と汽車を作るんだと思っていたんだ。
機械好き、特に乗り物好きだったからねえ。
ソレで中等工業学校に入ったんだが、好きも手伝って信じられないくらい勉強したんだ。
楽しかったねえ。
成績で先生から”上の学校行かないのか?”と言われて舞い上がって。
ボクは汽車で通える名高工、まあ、今のナゴヤ工大だねえ…昭和13年の春、機械科に入ったんだ。
よく覚えているのは入学式の日にイキナリ駅の前で新聞の号外貰って国家総動員法公布だろ?びっくりしたよ。
キナ臭くなってたけど、学校の雰囲気はまあのんびりしたもんだった。
二年に上がる時、機械科が機械工学科に変わって、航空工学科が新設されたんだ。
編入できるって聞いて、学友の”コレからは飛行機だ!”の声で航空工学科へ入ったんだ。
クラスの三分の一はソッチへ行ったんじゃないのかねえ?
で、卒業まで一個下と肩を並べて授業を受けたよ。
いよいよ卒業になって皆、ミツビソへ行ったけど。
ボクは家から近いK崎航空機製造所に入ったんだ。
まあ、見習いみたいなモンだけどね。
入社してスグに完成したばかりのキ-60の試験に立ち会った。
間近に見る飛行機は随分と…機関車に比べると華奢な印象を持ったが。
コレも乗り物だ、ただし何故か自分で乗りたいと思わなかったねえ。
怒鳴られ、怒られ何とか覚えて仕事も一通り叱られずは出来る様に成ったと思ったら。
入社して4ヶ月が建っていた。
ある日、部長室に呼ばれた。
部長と設計主務も居る。
「はい?キ-60を海軍に売り込む?」
「うん、そうだ木村君。試作三機は陸軍サンに納品したが未だ予備機の部品が工場の一部を占領している、邪魔で仕方ない。」
「ああ、アレですか…。」
工場の片隅で首ナシ外装ナシの飛行機を思い出した。
「そうだ。そのアレを飛べる様にして海軍サンに見せたい。」
「はあ、組み立てるんですか?」
「いや、海軍サンの話では液冷は要らないらしい、星型空冷を付ける。」
「は?ウチの発動機じゃないヤツですか?」
「まあ、独逸の発動機は貴重だからね。ほら、キ-45改の発動機(ハー102)なら海軍サンも使ってる。土井クンも何とか成るんじゃないかと言っている。」
課長が設計主務の方を見る。主務が頷く。
主務が付くと言っているなら…。まあ、付くんだろう。
「まあ、そうですね…。」
しかし液冷を空冷に?どうやって?
「うん、良かった。実は主務は今、他の方で手一杯なんだ。まあ、簡単な改造だからキミに任せたいんだ。」
「はい!?ボク一人ですか?」
「まあ、土井クンもキミなら出来るだろうと言う話だ。」
何故かボクと目を合わせない土井主務。
「まあ、ウチは飛行機で海軍サンと取引が無いから何とか顔を繋ぎたいんだ。」
「は…あ?」
「海軍サンは局地戦闘機が欲しいが上手く行ってないらしい。陸軍サンの飛行機で使えそうなモノは無いか内々に話が有ったんだ。ナイナイだからね。くれぐれも気をつけて。」
「はい。」
口止めされ部長室を出て。
自分の製図版の前に座る。
キー60の設計図面を受け取りボクのノートを取り出して考える。
4ヶ月の経験が詰まったノートだ、少し泥で汚れている。
屋外の試験が多かったからなあ。
どうしよう?まず問題と計画を立てよう。
必要なモノは…。
まず発動機連結部のスリあわせだ。
燃料消費時間と…。
簡単な風洞実験。
要らない物と必要なモノの…。
絵を描いてメモを作る。
かなりオカシナ形状になる。
まるでコルク抜きだ。
一晩かけてかなり大雑把な計画書ができる。
こんなの工務長に持って行ったら怒鳴られる。
未だ作るわけじゃない。
設計主務に見せに行く。
一読したまま主務はそっけなく。
「部長に見せろ。」
と言っただけだった。
部長に報告に行く。
軽く目を通す部長。
「海軍サンから機銃を預かってきた。7.7粍と20粍だ。それぞれ6丁倉庫に届けてある。ソレを付けて欲しいそうだ。それから…。」
「同調発射装置が無い?」
「ハー102用はな、水上観測機に使われていた物を受け取ってきた。7.7粍機関銃用だそうだ。ああ、それから、海軍サンがねえ、機首機関砲は辞めてクレだそうだ。機銃なら良いらしい。」
「まあ、作らなくては成らないのなら手間が省けて良いと思いますが…。付くんですか?」
「あ~、過給器が邪魔になるかもしれないね。まあ、参考には成ると思うよ。」
「はあ?」
「主翼に海軍サンの20粍機関砲を積むコトに成るが…。」
「図面は受け取りました。本体は何故かギリギリ入ります。しかし弾倉が入りません。」
「まあ、何とかしてくれ。」
「何とか…。」
自分の製図版の前には主翼の図面が有る。
細かい変更図面を作るのだ。
主翼は出来上がっている。
コレを設計しなおすのは時間が掛る。
マウザーの台座に海軍の20粍ムリヤリくっ付けるのか?補強を入れて。
ダメだ重たくなる。
補強を入れるぐらいならケタを繋いで下にぶら下げた方がマシだ。
主翼上のコブも無くなる。
調整の度に外すのが面倒な装備品にはウンザリした。
簡単に取り外しできる様にしよう。
キ-60の試験で感じたのは機体が重いのだ。
いくら液冷部分を外しても重たくなるのでは無駄だ。
しかも胴体内部の液冷タンクも潤滑油タンクも外す予定だ。
星型空冷発動機に熱交換器は必要ない。
発動機周りの外装はキ-45改のモノをそのまま使う…。
ダメだ。
キー60は試験中に油温が上がり気味に成った。
対策が必要だ。
大型の冷却装置が必要だが。それだけではムリだ。
幸い発動機台座の間には空間が有る。
空気の流れから考えなくては…。
計算を出すが思った程軽くならない。
重戦だから重いのは仕方ない。
いや、違うもっと大きな発動機が必要だ。
だがこれ以上大きな発動機を積むと前方が見えなくなるだろう。
前が重たくなりすぎる。
主翼中心に重点を取る必要が有るが。
連結台座と発動機重量を考えて…。
連結部には発動機のトルクが直に掛るハズだ。
軽くて強い台座を作らなくては…。溶接ではムリだろうか?
何を拾って何を棄てれば良いんだ?
主翼の位置を変えなくてはいけなくなる大工事だ。
ソレに頼っていては後で問題が出そうだ。
余裕を出す必要がある。
無駄が増える。
とりあえず三つの案を出して大まかな図面にした。
キ-45改の発動機をそのまま付けた形だ。油槽は本体の中のモノを使い。
冷却装置は胴体下部の水冷冷却装置の位置に持ってくる。
昔の、九七式戦闘機(キ-27)を引き込み式にしたような形だ。
そう言えば、キ-60を見た整備員は”九七式戦はエンジンカウル外して付けるのが大変だった”と言っていた。
設計する時は簡単に外せる様にして整備しやすいようにしよう。
次は前を長くして発動機台座内に油槽と冷却装置を納めた形だ。
エンジンと胴体の差をココで埋める為の長さだ。
バランスを取る為に主翼の位置を前にする改造が必要になる。
Me109に似た前が長い形状になっている。だが空冷だ。
胴体下部の水冷冷却装置は取り去り塞ぐ形に成る。下は平だ。
スマートに見えない。
最後はカウルを新設計して集合排気管を外し単管で排気管を側面に出したモノだ。
台座をできうる限り切り詰め下面に冷却装置を入れる口が大きく開いている。
操縦員が排気オイルで窓が真っ黒になると言っていたので胴体側面に並んで出している。
発動機との段差を利用しているのであまり目立たないハズだ。
胴体の成型覆いも少なくて済む。水冷部分も切り取り塞ぐ。
全て主翼下に20粍機関砲の出っ張りが有る。丁度主翼下に機関砲が半分ぶら下がっている形になる。
覆いは付けるがオカシナ出っ張りだ。
二日間かけて纏めた三面図を主務に見せる。
「この主翼の機関砲は何とか成らないのか?」
「12.7粍までなら何とか成るんですが海軍サンの20粍で円筒形弾倉が収まらないんです。ベルト給弾式なら問題無いのですが。取り外し整備は楽になる予定です…。主翼の厚さをいじるコトに成ると主翼から設計しなおしです。」
「そうか…。」
「主翼の取り付け位置が自由に変えられると楽なんですが。」
「なに?」
「いえ、どうせウチの飛行機は主翼だけ一体なので、穴を増やせば簡単に取り付け位置を変えられるハズです。装備や発動機が変わる度に設計しなおすのは骨ですから。」
「…。」
主務の目が厳しくなる。
怒っているのかもしれない。
「えーっと、2案のモノは主翼位置変更の為に補強が居るかもしれません。ハ-102も強化型ですのでコレから重い高出力発動機が出来たらその度に主翼位置の改造が必要になるのは手間です。」
すごく怒っている様な気がする。
「重量を測ってその場で主翼取り付け位置を変えれば楽なのでは?」
「わかった。風洞実験に廻せ。許可を取れ。」
乱暴に三面図が帰って来た。
怒られなかったが怒っている様子だ。
風洞実験の申請書を書き木工部門へ模型の制作を依頼する。
資料室でキ-60の風洞実験資料を受け取り風洞実験の写真を眺める。
ドコを重点的に試験すれば良いんだ?
試験の量は膨大だった。
全てやる必要は無いだろう。
三種類も有るんだ。
トンでも無い量になる。
大きな改造は出来ない少ない工数で改造を完了させる。
実験計画を立てる。
夜遅くまで会社に篭って計画書を立てたら10日ほどで木製模型が出来上がってきた。
木工部門で三つの模型を受け取り眺める。
変な形だ。ホントに飛ぶのか?こんなの?
「プロペラ付いてないですね。」
「ああ?風洞実験でプロペラは付かないぞ?やったコト無いのか風洞実験?」
「いえ。学校で実験したのでやり方は解かりますが…。ありがとうございました。」
呆れる木工工員を残して礼を言って木工場を出る。
うーん、乱流がどうなるか見たいんだが。
主務に一応見せる。
あまり興味がない様子だが。一応たずねる。
「プロペラの乱流は何とか風洞実験で再現する方法は無いんですか?」
「お前なあ…。」
呆れる主務。
「いえ。発動機の回転数が毎分2600回転、毎秒45回転ですから。3枚羽で130枚羽のプロペラ模型付けて廻せば再現できるのでは?と思いまして…。」
呆れが笑いに変わる主務。ボク、変なコト言ったかな?
「ハハハ、試験が終わったらやってみろ。」
「はい。」
許可は下りたので最後にやってみよう。
風洞実験に入り一ヶ月ほど掛った。
もう夏も終わりに近づいている。
試験結果も出てきた。
プロペラ模型は円形銅版に蝋を塗って薬品で溶かして作った。
130枚プロペラだ。見ても馬鹿馬鹿しくなる。
風を受けた模型のプロペラはよく回るが何故か煙がかき消されて乱流が見えない。
コレか…。乱流を受ける範囲しか分からない。
一応実験したので写真を現像して付ける。
主務に判断を仰ぐコトになる。
「…。」
無言で実験結果を見る主務。
「全て重心の変更がおこります。バラスト配置の計算は未だです。」
「ああ、無駄に重りを付ける位なら燃料タンクにしろ。現地で燃料を加減するはずだ。」
「はい。そうですか。三つめの案が一番良好でした。」
「そうか…、何だコレ?」
資料の一番最後の130枚羽プロペラだ。
「ああ、プロペラ乱流ですね、結局、乱流を受ける範囲と強く受ける場所しか解かりませんでした。」
「ハハハ。ホントにヤッタのか?」
「はい。」
「面白いコトするなあ…。」
「翼面への影響はあまり無いと考えて良いようです。」
笑っていたのに怒った様子だ。
ボク、何か悪いコト言ったかな?
「そうか…。この資料を貸してもらって良いか?」
「はい、特に問題ありません。第3案で行きたいのですがよろしいでしょうか?」
「ああ、解かった部長には俺から報告しておく。部品図面の製作に掛れ。」
設計と言う仕事は約束事と前提がある仕事である。
ボクは今一個ずつ数字の空白を埋める仕事を行なっている。
設計に必要な強度を部品に変換してソレを製造できる形にする仕事だ。
図面は言語であり数字だ。
工員が解かる言語で空想を現実化する言葉である。
月日を積み重ねる程に紙が増える。
青焼きの図面を見比べ数字の修整を行なう。
全ての図面が揃ったコロには。
山が紅く染まる頃だった。
そして、部品が出来始める頃。
遂に米英との戦争が始まった。
海軍
エンリコFF→海軍魔改造→零戦!零戦!!
陸軍
エンリコFF→マウザー社魔改造→マウザーマンセー!!
小ネタ集
彡(^)(^)「よし!キー61は主翼桁と胴体をレール式にしてボルト結合にするぞ!!」
彡(゜)(゜)「キー45改は乱流の影響を避ける為、発動機を下に下げる。」
そはら工場「何コレ?機関砲?20粍?まあ良いやキー61に付けちゃえ。部品も有るし。」
日野軍曹「コレです。20粍砲です。海軍の九九式一号銃です。なぜコノ20粍が装備されたのかは不明ですが…。」
松本少尉「日野さんあんた、この20粍わかるの?」