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ギルドマスターは面白い存在に出会う【臆病少女は世界を暗躍す】

 ギルドマスター、それはその世界において最強の一角である。

 世界に広がるギルドのトップ。ギルドをまとめ上げている、一種の英雄。

 それがギルドマスターである。

 ギルドマスターであるリカードは、正直言って英雄視されるにふさわしい人物であるかどうか、というとそれはどうだろう? と彼自身を詳しく知る者は何とも言えない顔をする。

 というのも、彼の性格は好奇心にあふれていて、どちらかというと子供みたいだからだ。

 そしてそんなリカードは、自分の名前を隠して遊んだり、面白いものを常に探している。

 さて、リカードはある時不思議な光景を見た。

 ……街からこっそりと出て行った子供である。茶色の髪を腰まで伸ばした子供。まだ小さな存在。街の入り口にいる兵士に全く気付かれることなく、ただ、街から出ていく子供。

 (あれは、なんだ?)

 最初にリカードが思ったことはそれだった。

 なぜなら明らかに不自然であったから。それはあまりにもおかしすぎたから。子供に誰も気づかないなどというのはまずおかしい。リカードでさえ、一瞬だったから見間違えかと思ったほどだ。

 しかし、確かに見た。

 リカードはそれを見間違えとはしなかった。

 だから、リカードはその子供を探すことにした。

 そして、その子供が何度も何度も気づかれないように移動しているのを知った。

 (……あんなに小さいうちから気配を消せるだなんて)

 ギルドマスターを務めているリカードでさえ、その事実に驚く。それはおかしなことだ。誰にも気づかれずに動ける存在なんてそうはいない。大人でさえもそれができないものがたくさんいる。あんなに小さいうちに、移動できること。誰にも悟られないこと。

 本当にそれが面白い。

 そして、将来有望だと思った。

 (……あれ、捕まえてえな)

 子供が何者か、などリカードは知らない。だが、どんな出自で、どんな人生を歩んでいようとも、あれだけ動ける子供を捕まえたいと思った。

 面白いのだ。

 見ているだけでその子供は。

 だからこそ、リカードは思った。

 「お父さん!! 最近何しているの? 街でうろうろしているところを目撃されているよ!」

 リカードが家へと戻れば、十六歳になる娘ルカにそんなことを言われた。

 「何をたくらんでいるの?」

 「……ルカ、お前に義妹ができるかもしれないぞ」

 「はぁ!? 何いっているの? まさか隠し子!?」

 「いや、違う。面白い子供を見つけたんだ」

 リカードが思わずそういって口元を緩めれば、ルカはひきつった顔をした。

 「お父さん……。獲物を見つけた魔物みたいな顔してる」と、そんなひどいことをリカードは言われるのだった。

 ルカに妹ができるかもしれないといったのもあるし、養子にしたらちょうど良いだろうと考えたリカードは早速子供を捕まえるために動き出した。

 しかしあの子供は中々見つけにくい。

 ギルドマスターで《超越者》であるリカードにさえも見つけにくいというのだから、よっぽど隠密に長けているというのがよくわかる。

 背の高さからして、まだ十歳か、それより下か。そのくらいである子供がそれだけの実力を持っているというのは、リカードにとって面白いといえるものである。

 そして、その子供がちょうど街から出て行こうとしたのを見た。

 だからリカードはそれを追いかけた。

 その小さな子供は、どんどん外へと向かっていく。

 人の生活している外の世界は、正直危険にあふれている。だが、そんな危険な場所に、進んで向かっている。

 正直その段階で止めるべきかとリカードは考えたが、以前にもその子供が外へと向かっているのを見たことがあり、その子供にとって魔物のいる地に向かうことは当たり前なのかもしれないという思考に至った。

 実際に、その子供は魔物を前にしても一切躊躇いを見せなかった。

 おびえるでもなく、逃げるでもなく、寧ろその魔物に向かって切りかかる。

 危ない面もあるが、勝利を収める。その様子が戦い慣れていることにリカードは驚いた。

 それから子供はどんどん魔物を殺していった。どちらかというと気づかれないように近づいてからの不意打ちが多い。そういう戦闘スタイルなのだろうとリカードは観察を続ける。

 そしてその子供が一通り魔物を殲滅しつくしたタイミングで、

 「面白いな」

 「!?」

 その子供に声をかける。

 リカードが声をかければその子供はリカードを見て驚いた表情を浮かべる。そして次の瞬間、全速力で駆け出そうとした。

 が、いくらその子供がその年にしては強かったとしても、ギルドマスターであるリカードから逃れられるはずもない。

 子供は捕まえられた。

 「ちょっと俺と話そうぜ」

 そう告げれば子供はぶんぶんと首を振る。よっぽど嫌なようだ。

 しかし結局逃げられもせず子供は名前を問われて「……リア」と答えるのであった。





 それが、リアとギルドマスターの始まり。





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