転生者とヒロインの関係 【転生者と悪役令嬢の関係より】
転生者と悪役令嬢の関係の続きというか、ヒロイン(義妹)side
私の名前はリンカ・ミシュカンダル。
ミシュカンダル公爵家の次女で、何不自由なく、生きてきた。
私には一歳年上のお姉様とお義兄様がいる。
お姉様は、私とは腹違いの姉で、昔はお姉様という実感は全然なかった。この年になってお姉様と私の昔の状況を思うとそれも仕方がないのかもしれない。
お姉様のお母様と、お父様は政略結婚だったらしい。それでいて、お姉様は黒髪を持っていて、不吉だといわれていた。そう、それもあってお姉様たち親子は疎まれていたのだ。幼い頃の私はお姉様の存在なんて全然知らなかった。お姉様のお母様が生きていた頃は、私たちは親子はいわゆる別邸に住んでいて、お父様はよくこちらにきていた。お父様は私を可愛がってくれていた。
で、それで、まぁ色々あって私たち親子は本邸にすむようになった。そこで、はじめて別邸に押し込められたという『悪魔の子』と呼ばれるお姉様の存在を知った。
お姉様の事を口にするとお母様は悲しそうな顔をして、お父様も怖い顔をしていて、お姉様は悪い人なんだってその時は思ってた。
だけど、そうではないってわかったのは、お義兄様とお姉様が婚約してからだった。
お姉様が婚約したと知った時、その時の私は婚約相手がかわいそうだという思考があった。それはお母様たちにそういう思考を植え付けられていたからで、悪魔の子は疎まれる存在だというのが常識だったから。
でも、そんな気持ちはお姉様とお義兄様に会ったときに、消し飛んだ。
今までちゃんと話したことのなかった、不気味だと思ってたお姉様は、お義兄様の前でとても幸せそうに笑っていたのだ。私はそんなお姉様の事、綺麗だって思った。
そしてお義兄様は、本当にお姉様の事がいとしいとでもいう風にお姉様を見ていた。お義兄様は、かわいそうな人なんかじゃなくて、幸せそうな人だったのだ。子供だった私の目から見ても。
お義兄様は、優しくてかっこいい人だった。剣の腕も、魔法の腕も凄いらしくて、それでいて見た目もかっこいい。私にもお母様にも優しくて、私はお義兄様が大好きになった。お母様も、お父様も、お義兄様を通してお姉様と距離を縮めていた。それで、なんか、よくわかんないうちにお父様はお姉様の事嫌がってたのに優しくなった。お母様もお姉様の事を悲しそうに、見ていたのに優しくなった。私も、優しくて、綺麗なお姉様が好きになった。
お父様が、それはお義兄様のおかげだって言ってた。それが、凄いなって私は思っていたのだ。お義兄様って凄いって!
お義兄様のもとでお姉様は同棲していて、お義兄様はあまり公爵家に来なかったのがさびしかった。
それで大きくなるとお父様、お母様、お姉様の関係が色々わかって、それで私は何とも言えない気分になった。結局私はお父様が浮気して出来た子供で、お父様とお母様、そして私も、黒髪だからってお姉様の事を忌避していた。あんなにやさしい、今では大好きだって思えるお姉様なのに。
余計にそれで、最初からお姉様が好きだっていって、『悪魔の子』って呼ばれていて人と距離をおいていたお姉様と仲良くなれるお義兄様って凄いって思って。
それで私は一つの事を思った。
「お義兄様、私もお嫁さんにしてください!」
「なんで!?」
だから、学園に入学してお義兄様にあふれんばかりの思いを口にしたら滅茶苦茶驚かれた。そんなに驚かなくてもいいのに。あれ、隣のお姉様が悲しそうな顔してる! 勘違いさせちゃったかもって思って私は慌てて口にする。
「お姉様! 悲しそうな顔しないで! 私別にお姉様からお義兄様を取るってわけじゃないの! 私二番目でいいから、お義兄様の第二夫人になりたいの!!」
「え」
お義兄様が驚愕の声をあげている。お姉様も驚いた顔をしている。でもそれは本心からの言葉だ。私はお姉様を愛しているお義兄様が本当に好きなのだ。お姉様を一心に愛していて、そういうお義兄様のお嫁さんになれたら幸せだろうなってそんな風に思って、でもお姉様から取りたいわけじゃない。
そもそも貴族では第二夫人なんて合法であるし、お姉様も私もお嫁さんにしてもらえばいいんだという思考に陥ったわけである。いい考えでしょ? えっへん、一生懸命お姉様ともそのままで、お嫁さんになるとしたらって考えたんだー。
「……そ、それなら」
「いやいやいや、エミリア、俺はエミリアだけでいいから。他いらないから。受け入れるとか俺悲しいから」
「わ、私も私以外嫌だけど、でも、リンカ可愛いから……。リンカが第二夫人になりたいっていうなら、イスカも……。私はこんなんだし、また黒髪の子が生まれるかも……」
あああ、悲しそうな顔をしているお姉様も、お姉様がいとしいっていうお義兄様も、二人を見ていると気持ちが昂る。てか、ごめんよぉ、お姉様ぁ。お姉様を悲しませたいわけじゃないんだよ。お姉様が娘が黒髪だったことを気にしているのを思うと、昔の私の黒髪を忌避している態度はお姉様を傷つけていたんだなって悲しくなった。昔の私の馬鹿!
「エミリア、気にしなくていいんだよ。黒髪でも、エミリアは綺麗だよ。俺は黒髪のエミリアの事大好きだから」
「……イスカ」
「だから、そんな悲しい事言わないで。これから生まれる子供がもし黒髪だろうとも、俺がエミリアの事も子供たちの事も絶対に守るから」
おおおおお、なんだか私が居るのにお義兄様はお姉様にキスしちゃったよー。ここ、学校なんだけどね! ラブラブなお姉様たちを見ながら顔が赤くなるけど、やっぱ私お義兄様のお嫁さんなりたいよ!! 愛されたいよーって思うもん。
「……ってわけで、リンカ、俺はエミリアだけでいいから第二夫人とかいらないから、別の男探して」
で、キスが終わったかと思えばお姉様を抱きしめてお義兄様はそういった。あああ、抱きしめられて、未だに顔を赤くしているお姉様が可愛いよぉ。そしてお義兄様がかっこいいよぉお。
「はい。でもあきらめません! 私第二夫人なりたい!」
「……えー。そこはあきらめてよ」
「他の良い男見つかったらあきらめるけど、お義兄様が一番かっこいいもん」
「……あー、そう、でも俺頷かないから」
お義兄様は呆れたようにそういった。
で、それから私が一生懸命お義兄様に「第二夫人にしてください」って言っているうちに、お義兄様の親友であるフェイシス・ヒューズと仲良くなるのは別の話である。
―――転生者とヒロインの関係
(ヒロインは転生者の第二夫人になりたいのでした)
ヒロインが仲良くなる男はヒーローです。