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「おっ!そろそろ踊る時間じゃないか?」
「確かに、もうそんな刻なんですね。」
夜会も賑わいを増し、メインの舞踏の頃合いだ。
「ミルトニア、踊ってくれるか?」
「はい!喜んで!」
差し出した手に、柔らかな手が重なる。
そのまま歩んでダンスホールの位置まで移動すると、楽団は今までの音楽を止め、舞踏曲を奏で始めた。
ミルトニアの腰に手を当て、ゆったりとしたワルツに合わせリードする。
目を会わせるとはにかんだ笑みを返してくれ、自然と笑みがこぼれた。
「何てお似合いの二人かしら。」
「まるで絵画のようにお美しい。」
見つめ合い踊る二人を周りはうっとりと眺めていた。
「ほっっんとうに、ミルトニアが好きだねぇ、殿下は。」
踊る二人を眺めてカリカは感想を口にした。
「ええ。ですが、これ以上の愛情が増すのは危険です。」
「何故だ?人を愛するって美しいことじゃないか。」
「・・・下手な詩人みたいな事を言わないで下さい。」
鳥肌が立ちますと言ってロードは心底嫌そうな顔をした。
「寵姫にかまけて道を踏み外す愚王なんていくらでもいますから。」
「ああ、そういうこと。殿下なら心配いらないんじゃない?」
「万が一。ということも有ります。」
「え~、そうかぁ?う~ん。」
「失礼ながら、言葉を挟むようですが。」
「珍しいですね、貴方が話すなんて。続けて下さい。」
必要以上の事しか話さないアコニタムが会話に、しかも遮ってまで入ってくるのは珍しい。
ロードも驚いた顔をしていた。
「僭越ながら、殿下が愛欲に溺れるなど有り得ないことだと私は思います。」
「だよね~。」
「カリカは黙っていて下さい!理由を聞いても?」
「殿下はミルトニア様を好ましく想っておいでです。その想いは、暖かな日のように包み込む気持ちであって欲に駆られるようなものではありません。」
「確かに、殿下って嫉妬とかしなさそう。今もミルトニアのことは見守るつーか保護ってゆーか・・・父親?若しくは兄的な?」
「・・・まあ、解らなくもないですが。」
2人の説明にロードは眉間にしわを寄せて頷いた。
「だろ?ん~、でもやっぱり恋には刺激がないと燃え上がらないよな。俺ちょっと行ってくるわ!」
「って、待ちなさいカリカ!貴方今の話聞いてたんですか!?」
ロードの制止は聞こえない振りをしてカリカは踊る2人の下へ向かって行った