2人の距離 5
「殿下が戻られました。」
侍従からの知られを受け、ロードとカリカは皇太子殿へと向かった。
昨夜は王宮には戻らず、城下町にて視察を続ける事は近衛隊から聞いており、アコニタムからも異常なしと報告を受けていた。
歴代の王族も城外の花街や愛人の元に通い、夜まで城に戻らないことなど珍しくない。
ピアもこれまで視察で遅くなり、城に戻らないことも時々あった。
だが、今回は違う。
「殿下、ロード様とカリカ様がお越しです。」
「通せ。」
ロードとカリカはピアの部屋へと入った。
「殿下、少々よろしいですか。」
「どうかしたか?」
「カーライル嬢の件、と言えば分かりますか?」
ロードが言うと同時に、カリカが調査報告書をピアへと渡す。
ピアは書類に目を通す。
「・・・よく調べられているな。」
「検討は着いていると思うが、カーライル嬢には金輪際関わらないでほしい。」
「・・・・・・。」
「忘れたとは思いませんが、彼女は罪人です。惑わされてはいけませんよ殿下。」
「この事を知っているのは俺達だけだ。まだ引き返せる。」
「それは、脅しか?」
「・・・そう捕えられても構いません。」
ロードとカリカの判断は正しい。
ピアを問い詰める2人の顔はとても苦しそうで、気持ちが痛いほど伝わって来る。
ピアがシャロンを好きだった気持ちも、冷え切った関係に悩み苦しんでいた事も、側で見て来た2人は知っている。
この結末が正しい事も。
「・・・・分かっている。分かっていたよ、始めから。」
「殿下・・・。」
いつか時が経てば、また会えるのだろうか。




