2人の距離 4
焼き色を付けたパンに卵と野菜、暖かいスープを添えて一般的な朝食が出来上がった。
どちらかといえば昼食に近い時間帯であっても、目覚めてすぐ食べるものが朝食と思いたい。
「冷めない内にどうぞ。」
ピアとシャロンは向かい会って座り、並べられた料理を食べ始めた。
「うん、美味しい。」
「お好みに合ったようで良かったです。」
「君と一緒に食べているからかな。今までで一番美味しい朝食だよ。」
ピアに浮かんだ眩しいくらいの笑顔からはお世辞ではなく心の底そう思っているのが感じられた。
感想を述べて食事を再開したピアの周りには色とりどりの花が浮かんでいる幻視が一瞬見えた気がしてシャロンは目を瞬いた。
(・・・すっかり忘れていたけど、殿下は感情が表に出やすい方だったわ。)
感情が豊かで、真っ直ぐで。
政略的な婚約者ではあったけど、そんな殿下だから恋をした。
好きで好きで仕方なくて、以前の私は殿下を独り占めしたかった。
(殿下をあきらめていたはずなのに。)
どんなに想っても報われない事に気づいた時、この気持ちに別れを告げた。
それなのに、こうしていると愛しい想いが溢れて来る。
(幸せで満たされる。)
世界が輝いているように感じる。
「今日のこれからの予定は?」
「そうですね。・・・買い物に行って、教会にも顔を出そうかなと。」
「そうか・・・、私も共に行ってもいいかな?」
「あ、はい。構いませんが・・・時間はよろしいのですか?」
「ああ。もう少しだけ・・・、君と居ることを許してくれ。」
「・・・はい。」
シャロンの返事を聞いて、嬉しそうに笑うピアにシャロンも小さく微笑んだ。




