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4度目の正直  作者: 冬真
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繰り返す人生

コンコン。


戸を叩く音に驚いて、部屋の中を見回すと西側の窓から日が差していた。

時計を確認すると、昼はとうに過ぎていてあと数時間もすれば日が沈む時刻を示していた。

(また、昼ごはん食べ損ねたわ・・・。)

けれど、空腹は感じない。

空腹だけではなく、睡魔もやってこない。

世界に現実味がなくて、ガラスを1枚隔てて、ボンヤリと時が過ぎていくような感じだ。

生きている実感がわかない。


コンコンッ。


再び聞こえた扉を叩く音に、そう言えば誰かが来てたんだっけと思い出す。

椅子から立ち上がり、扉へと向かう。

身体がまるで鉛をくくり付けたように重かった。

「・・・・はい。どなた・・・?」

扉を開けると目に入ったのは、男物の革靴。

上質な布を使った簡素なデザインの服、濃い紫の瞳に銀の髪。

「・・・殿下。」

久しぶりに会う殿下の顔は焦りと心配が入り混じった表情が浮かんでいた。

「・・・シャロン。」

「・・・お久しぶりですね。手狭な家ですが、中にどうぞお入りください。」

シャロンはかすかに微笑んで、家の中にピアを招き入れる。

「アコニタム様もどうぞ。」

「いいえ。殿下、私共は外で待機しております。」

「すまない。感謝する。」

「・・・・はい。」

アコニタムは一礼すると、部下へ警護の指示を与えた。

ピアが家の中へと入ったのを確認して、シャロンは扉を閉めた。

「こちらへお掛け下さい。お茶を用意いたしますので、お待ちください。」

部屋の中央にはテーブルと椅子が置かれ、示された椅子にピアは座り、家の中を見渡す。

奥には台所があり、そこからシャロンがお茶の用意をしている音が聞こえる。

入口とは反対にドアがあり、2つほど部屋もあるようだ。

シャロンの言葉通り、間取りは狭いが、手入れはされており綺麗に整えられた家だった。

「お待たせしました。」

シャロンはピアの前にカップを置き、ピアと向かい合う形で椅子に座った。

「・・・教会で、お聞きになりましたか。」

「ああ。・・・御父君と御母堂が逝去されたと。」

「はい、先月の末頃に。流行り病が原因でした。」

両親は街での生活に馴染めず、精神的に疲れ果ててていた。

毎日、食べては寝ての繰り返しで、家に籠りきりで体力も落ちていたのだろう。

「2人とも怠惰な毎日を送っていましたから。」

最近では母が少し家事を手伝うこともあったが、本当に少しの事だった。

私が仕事から帰るとお酒を飲んでいることも多く、歩くときにふらつく様にもなっていた。

当然、流行り病の対策など行っていなかった。

「仕方のない人達だったんです・・・。」

そう、これは分かっていた事。

シャロンは2人を救うことが出来ないということも、知っていた。

どんなに足掻いても救うことは出来ない。

2回目も、3回目も、そして今回も。

両親が亡くなるのは知っている。分かっている。

何度も見て、繰り返してきたことの1つだから。

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