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ミルトニアへの思い
ピアは教会へ向かう馬車に揺られながら考えていた。
どうしてミルトニアに応えることが出来なかったのだろうかと。
ミルトニアの事は好ましいと思っていた。
彼女の純粋で綺麗な心に惹かれていた。
会えば楽しく、愛おしいと感じていた。
それなのに、今日、彼女から告げられた言葉を望んでいたはずなのに。
今の心に広がっているのは困惑した負の感情だけだ。
「殿下、到着いたしました。」
アコニタムの言葉に思考の波から意識が戻る。
馬車の扉から見える景色はお馴染みのもので、いつのまにか教会へ着いていたようだ。
いつものように教会へ入ると、人気がなく静かな空間が広がっていた。
「・・・おかしいですね。子供たちの勉強会は再開されたと報告があったのですが。シスターに伺ってまいりますので、お待ちください。」
そう言って、アコニタムは教会の奥へと進んでいく。
時を開けずして、シスターを連れてアコニタムは戻ってきた。
「殿下・・・。」
「何かあったのか。」
「・・・・それが――――。」




