ピアの心情
ラストまであと少し、もう少しお付き合いください。
流行り病に対しての民への注意喚起にも目途が立った。
調査や政令整備に追われ、気が付けばひと月が経過していた。
爆発的な患者の増加は見られないが、油断は出来ない。
シャロンへの報告もかねて教会へと向かうため、ピアは外出の支度を終え、城門へと向かっていた。
その道中、廊下を曲がるとミルトニアの姿があった。
ピアが来るのを待っていた様子だった。
「殿下!!」
ミルトニアは、ピアの姿に気づくと慌てて駆け寄ってくる。
「殿下、最近とてもお忙しいとお聞きして・・・。体調を崩されてはいないか気になっていました。」
「ああ、すまなかった。この通り元気だよ、ありがとう。」
微笑むピアにミルトニアは体の力を抜いて、息を吐く。
「良かったです。殿下を訪ねても会えなくて・・・、心配で・・・、寂しかったです。」
「・・・・・そうか。」
「でも・・・、また一緒にお茶を飲んだり、お話ししてくださいますか?」
「・・・・ああ、近い内に機会を作ろう。」
ミルトニアに微笑んで答えて、ピアは歩き出す。
「殿下・・。今からどちらに行かれるのですか?」
ミルトニアの声にピアは足を止め振り向く。
「・・・・街に視察に下りるつもりだ。」
「わ、私もお供しては行けませんか?久しぶりに殿下と歩きたいです。」
ミルトニアが何かしたいと言ってくることは滅多にない。
いつもピアが提案をして、それに素直に従う彼女にしては珍しい。
叶えてあげたいが、それだとシャロンに会うことが難しくなる。
「すまないが、今日は連れていけない。それに、病が流行している中でミルトニアを連れて行って、ミルトニアが病に倒れでもしたら大変だ。もう少し経ってから出かけよう。」
迷ったのは一瞬で、気が付けば断りの言葉が出ていた。
再び歩き出そうと前を向くと手が引かれ、振り返るとミルトニアがピアの手を両手で包み引き留められた。
「私は・・・・・。」
「・・・ミルトニア。」
「・・・・私は、殿下をお慕いしています。ずっと一緒に居たい・・・、誰よりもお側でお仕えしたいです。」
空色の瞳からは涙がこぼれ、繋がれた手から震えているのが分かった。
「・・・君の気持ちは嬉しいよ。」
「・・・・っ!!」
「ただ・・・、私に同じ気持ちが君に返せるか考えさせてほしい。」
「・・・・・・・・・・・はい。」
ピアはミルトニアの手をそっと解くと、城門へと向かって歩き出した。




