ミルトニアの出会い
ミルトニアと皇太子の出会いです。
初めて参加した夜会はどこを見てもキラキラ輝いて、奏でられている音楽も優雅で美しいものばかりだった。
小さい頃から病弱で、生まれてからほとんどの時間を屋敷で過ごしてきた。
周りの子が次々と社交界入りして、夜会や茶会の話をするたびに期待は膨らみ、自分が社交界へ繰り出す時を今か今かと楽しみにしていた。
しかし、私の体調はなかなか安定せず、16になりやっと念願の夜会へ参加できるようになった。
「ミルトニア、あまり無理はしないようにな。」
「はい!お父様。」
「ははは、あんなに来たがっていた夜会だ。楽しみなさい。」
「はい!」
お父様のエスコートで、色々な方にご挨拶をして回った。
とても緊張したけれど、失礼のない挨拶が出来たのでホッとしている。
何度も練習していて良かった!
幾人かの御令嬢の方々ともお話をすることが出来て楽しかった。
皆様とてもお優しく美しい方々ばかり。
そして、なにより・・・。
御令嬢の皆様と話していると、急に周りが騒がしくなった。
人々の視線も入り口に向けられている。
「・・・・・?何かあるのですか?」
「おそらく、皇太子様が御出でになりましたのでしょう。」
「皇太子様?」
「あら、ミルトニア様は皇太子様をご覧になったことがありませんこと?」
「まぁ、それは惜しいことを。ぜひ、ご覧になるべきだわ!」
「一緒に参りましょう!」
浮き立つご令嬢達につれられわざめきの中心へと向かった。
「皇太子様とはどのような方なのですか?」
「お優しく聡明で・・・・、女神も隠れてしまうようなお美しい方ですのよ。」
「ほら!あちらに御出での方ですわ!!」
視線を追った先に皇太子様はいた。
(わぁ・・・・・・!!)
絹の糸のような光る銀糸。
深い紫水晶のような瞳。
袖口や襟に銀の装飾が施された濃紺の正装が、すらっと伸びた体躯によく似合い、御伽噺から王子様が出てきたように思えてミルトニアは見惚れていた。
「・・・・すごく素敵な方ですね。」
「ええ、本当に。」
「お側に居られるシャロン様もお美しいですわ。」
皇太子様の数歩後ろを見ると、1人女性が控えていた。
艶のある黒髪を高い位置でまとめ、薄い紺色のドレスをまとい静かに佇んでいた。
女性では少し高い彼女の身長に、最小限まで装飾が抑えられたドレスがよく合っていた。
「シャロン様・・・?」
「カーライル公爵の御令嬢ですわ。皇太子様とご婚約されているのよ。」
カーライル家といえば、私でも知ってる名門貴族の1つだ。
王室との関わりも深く、貴族の中でも一線を画している。
「とても美しい方・・・・、お二方ともお似合いですね。」
皇太子がシャロンに声を掛けると、シャロンは微笑みながら皇太子の側で立ち止まった。
並んだ2人をミルトニアは飽きることなく眺め続けていた。