プロローグ
のんびり休みの日に更新していく予定です。
「調べはついている。今更言い訳が通じるとは思うな。」
突きつけられた証拠。
そこには私の悪事が余すとこなく記載されているだろう。
「ええ、全て私が行ったことです。間違いありませんわ。」
堂々と罪を認めた私に彼らは拍子抜けた顔をしている。
言い逃れようなんて思ってもいない。
これでようやく終わることが出来て安堵しているくらいだから。
私の名前はシャロン・カーライル。
この国の公爵家で生まれ育った貴族の令嬢だ。
いや、正しくは令嬢だった。と言うのべきか。
あの日。
私の悪事が白日の下にさらされた後、我がカーライル家は貴族としての地位を失った。
豪邸に住み、煌びやかな衣装を纏い、欲しいものは何でも手に入る。
そんな生活から一転、今の私は貴族の身分を剥奪され平民へと成り下がっていた。
家が没落するほどの何の罪を犯したのかって?
虐めたのよ、彼女を。
だって私、そういう役割なんだもの。
男爵令嬢ミルトニア・ダレル。
最近、社交界へデビューしたばかりの男爵令嬢で年は私より2つ下の16歳。
貴族の令嬢としては少々遅いくらいだ。
ミルトニアは幼い頃から病弱で、ずっと男爵の領地で療養しており、そのせいで社交界入りが遅れたとか。
ほとんどを屋敷内で生活していた為か、ミルトニアの肌は真っ白で血管が見えそうなくらいだった。
緩くウェーブがかかった柔らかそうな金の髪に、澄んだ空色の大きな瞳。髪と同じ色の長い睫毛に小さな桃色の唇。
小さく華奢な身体は見る者の保護欲を掻き立てる。
だが彼女の魅力は美しい外見だけではない。
明るい笑顔で誰にでも優しく接し、純真で素直な心を持っている。
所々で世間ずれしているとこもあるがそれも愛嬌の一つだ。
彼女の魅力に惹かれ、彼女の周りには多くの男性が群がった。
騎士、宰相の令息、隣国の王子。
その中の筆頭は私の婚約者である皇太子だった。
そんな彼女を私は妬み、彼女に罵詈雑言を浴びせ、公爵家という地位を利用し様々な事で彼女を虐げた。
その結果、カーライル家は取り潰されて平民の仲間入りとなった。
それが、この世界において『私』の運命らしい。
なんせ、この人生は4回目なもので。
私は同じ人生を繰り返している。
1回目の転生ではミルトニアが憎くて溜まらなかったので、前回の反省を生かしてミルトニアに嫌がらせをしたが結局バレて家は没落。
ならばと次の転生は、ミルトニア本人に危害は加えず、ミルトニアと彼らの出会いや交流を邪魔したが失敗。
何やかんや理由をつけられ家も没落させられた。
3回目の転生で、疲れた私は傍観を決め込んだ。ミルトニアに関わらず、避けに避けまくった。なのに、最終的にミルトニアを虐げたという冤罪をかけられ、家は没落。
ここまでくると、いくら鈍くてもは気がつく。
これがこの世界での『私』役割で足掻いても変えることは出来ないと。
そして、人生リプレイ4回目。
私はミルトニアを虐げた。
これまでの経験と知識をフル活用して周りもドン引きのイジメっぷりだった。
当初は他の御令嬢も協力していたが、私のミルトニアへの仕打ちを見るに耐えず脱落していき、最後は私1人になった。
まぁ、これも予定通りなんだけどね。
だってコノ計画は私が自己満足で行おうとしていることだから、他人の人生まで狂わせるわけにはいかない。
出来ることならば、『シャロン』1人の処分で済めば良かったんだけどそう上手くはいかないらしい。
家族には悪いが、血縁のよしみということで諦めてもらおう。
そういえば、先程は「平民に成り下がった」と言ったが。
平民の何が悪い。
王都にいる人の半分以上は平民だし、その平民の納める税金のおかげで貴族は生活出来ているんだから、むしろ平民様と敬うべきだ。
そんな平民様が汗水垂らして働いて納めた税で必要以上な贅沢をし、地位を嵩に着て威張り散らす貴族達。私を含め、貴族は平民のことなんて家畜と同等かそれ以下にしか思っていない。
平民は貴族にどんな横暴をされても黙って耐えるしかない。
この国では身分が絶対的ルールなのだ。
いくら人望に厚く、聡明でも身分が低くければ、良い職業どころか学ぶ機会すら与えられない。
どんなに無知で馬鹿でも身分が高ければ官職が与えられ政治が行える。
愚かで醜く馬鹿げた国。
それでも私はこの国が愛しくて仕方ない。
だって生まれ育って、4回も転生した国だもの。
だから私は決めた。
国を変えるなんて大それた事は無理だけど、自分に出来る最大限の事をしようと。