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02

 この世界が『崇栄学園の喫茶店』という事に気付いて2週間がたった。この2週間私が何をしていたかといえば、授業を真面目に受け、空き時間には本を読みながらたまに目を休めるために窓から空を見る。という、完璧な深窓の令嬢ライフを送っていた。えっ、なに?ぼっち?友達がいない?とんでもない。私みたいな人は孤高と言うのだ決して孤独ではない。

 あっ、ほら今も私に近づいてくる人が


「こんにちは令嬢様。あの、今からわたしたち庭園におさんぽにいくんだけど、よかったら一緒にどうですか?」


「ごきげんよう、小森さん。せっかくのお誘い嬉しいのだけど、今小説がいい所なの。ですから、また今度誘っていただけますか?」


「あっ…そう、ですか…。じゃ、じゃぁまたお誘いします…」


「えぇ、待っているわね」




 今の子は小森 柚子ちゃん。『崇栄学園の喫茶店』にもちゃんと名前が出てくる子だ。モブの私とは格が違うなー

 そんな小森さんがなんで私に話しかけてくれたかと言うと、一人でポツンといる私を可哀想に思って、ではない。

 自分が所属する派閥に入れようと思っているのだ。

 小学生でもう派閥争いとか始まるんだなー、『崇栄学園の喫茶店』では、主人公は喫茶店メンバー以外の生徒からは男の子だと思われていたから派閥争いなんて描かれていなくて、基本的には出てくる女の子はニコニコしてたけど、きっと裏では激しい女の争いとかあったのかもしれない。



 あっ、小森さんが派閥の子に怒られてる


「なにやっているの小森さん!令嬢様を必ず連れてくるように言ったでしょう!」


「す、すいません神楽様!」


 今小森さんを叱っているのは羅生院(らしょういん)神楽(かぐら)さんだ。羅生院さんは派閥のリーダーで、いわゆる羅生院派を築き上げている。ちなみに彼女も『崇栄学園の喫茶店』に名前が出ている。

 それにしても漫画ではあんまり気にならなかったけど、羅生院 神楽って凄い名前だなー、まぁ私が言えた事じゃいけどね


 げっ、羅生院さんがこっちにこようとしてる


「こんにちは令嬢様!私達今から庭園に行くんだけど、よかったらご一緒しましょ!」


 さっき聞いたって…


「ごきげんよう神楽様。先程も小森さんに言ったのですが、今ちょうど小説がいい所なの。ですから本当に申し訳ないのですけど、また誘ってくださる?」


「あなた!この前も同じような事言ってたじゃないの!」


「えぇ、面白い小説が多くて困るわ。ふふっ」


「もういいわ!」


「えぇ、ではまた」


 羅生院さん恐いって…



 はぁ…入学式から2週間、こういう事が稀にある。いや、結構ある。正直言うとしょっちゅうだ。

 あぁ、またきた


「こんにちは令嬢様…


 ……………


 …………


 ………、


 ……


 …


「えぇ、ではまた」


 彼女達はそりゃもう毎日毎日話しかけにくる。手を変え品を変え何度も何度も何度も何度も…


 では何故彼女達がこう何度も私の所にくるかと言うと、私が魅力的だから…という訳ではもちろん無い。深窓家を派閥に入れたいのだ。我が深窓家は言ってしまえば家柄が良い、そりゃこの学園は家柄が良い家の子ばっかだけど、深窓家はその中でもとびきりだ。同学年の女子の中では一番だし、男子を含めても一、二を争う。学園全体でもTOP10には入るだろう。…モブのくせに


 まぁそんな訳で同学年の子達は私が自分の派閥を作ると思っていたはずだ。現に最初の1週間は私の取り巻きになろうとする子達が押し寄せてきた。私はその子達に対してそっけない態度で接し、彼女達は私が派閥を作る気が無いのを知り、四方八方に散っていき、私は平和に過ごしていたのだが…

 あっまたまたきた


「令嬢様…


 ………


 ……


 …


「必ずまたお誘いしますね」


「えぇ、ではまた」



  どうやら彼女達は私が派閥を作る気が無いのを知ると、今度は「私達の派閥に深窓 令嬢を!」といった感じに続々と私への勧誘を開始し始めた。深窓家を自分の下に置こうとするとは、凄い度胸だなー


 ちなみに、私が何故自分の派閥を作らないのかと言うと、派閥争いが面倒くさい…といった理由では無い。前世の私は派閥争いじゃないけど、グループ争いみたいなのはしてたし、女の子が学校生活をする上でそういうのは規模の大小はあるだろうけど必須と言っても良い。やらなきゃはぶかれちゃうしね

 では何故私は自分の派閥も作らず、また誰の派閥にも所属しないかというと、それはもちろん深窓の令嬢っぽく無いからだ


  深窓の令嬢が取り巻きに囲まれカバンを持たせたりするのか?Noだ

 深窓の令嬢が取り巻きになって誰かのカバンを持つのか?もちろんNoだ


 というわけで、優雅で上品でおしとやかな深窓の令嬢とはかけ離れた派閥争いには、私は参加しないのである。

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