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 みなさんごきげんよう。わたくし深窓(ふかまど) 令嬢(れいじょ)と申します。

 日本有数の企業である深窓財閥を経営する一族、『深窓家』に生まれた前世の記憶がある6才です。



 私が前世の記憶を思い出したのは、物心がついた頃だ。ぼんやりとしか思い出せないのだが、頭の中にパズルみたいなのがあり、それを解いたら前世の記憶を思い出した。


 何故前世の記憶を思い出したのか、何故パズルなのかについて全く分からなかったので、そこについては早々に考えるのを止めた。

 だが私を悩ませたのはこの記憶をどうするかだ。あいにくこの世界は前世の日本とそこまで変わらないので、前世の知識を使い発明したりして一財産築くという事は出来ない。そもそも既に財産なら山ほどあるし


 では何が出来るか、と考えたのだが、せいぜい家庭教師のお姉さんに覚えが早いと誉められたり幼稚舎のお姉さんに落ち着いていてまるで大人のようだと誉められたりするくらいしか思い付かなかった。


 まぁ、下手に知識を披露して、天才児とか言われても後で困るからいいんだけど。





 と、ここでみなさん気になっているだろうこの愉快な名前について説明しよう


 名前の由来は、産まれてもすぐに泣かず、優雅に微笑んだ事から名字の深窓(ふかまど)と合わせて「深窓の令嬢のようになるな」という訳で名付けられたらしい。


 私がその話を聞いた時に一番最初に思った事は、「えっ、なにそれこわい」だ。

 だってそうだろう。産まれたばかりの赤ちゃんが泣かずに微笑むのだ、ホラー映画の冒頭を飾れそうなシーンじゃないか。


 そして、次に思った事は、「深窓の令嬢のようになるな」って「なるな」ってなんなの、既になるのは確定なの?そこは普通「なりますように」とかじゃないの?


 で、最後に思った事は、「これはからかわれてもしょうがないな…」だ。


 そもそも名前の由来を両親に聞いた切っ掛けは、 幼稚舎で名前をからかわれたからだ。

 私は「深窓の令嬢みたいなのはたまたまで、きっと深くて素敵な由来があるに違いない」 と思ったのだが、まさか本当に深窓の令嬢で深窓(ふかまど) 令嬢(れいじょ)だったとは…


 私はそれを聞いてから数日悩んだ。

 今は幼稚舍だから、まだからかわれるくらいですんでいるが、初等部、中等部、高等部に進んだらきっと名前の事で苛められる。それは嫌だ。


 ではどうするかと考えた時に思い付いた、名前の由来通りに深窓の令嬢になっちゃえばよくない?だってそうすれば、「深窓 令嬢って深窓の令嬢みたいよねー、ぷぷぷー」とか言われても、「いやだわ、深窓の令嬢なんて、そんなに誉めないでくださる?」みたいに言っちゃえば大丈夫じゃない?大丈夫かな?…大丈夫だ!


 まずは言葉遣いからだ!ふふっ、ごめんあそばせ~




 そんなこんなで、わたくし深窓 令嬢は優雅に上品におしとやかにを心掛け生きてきて、無事に上流階級の生徒が多く通う、というかほぼ上流階級しかいない、崇栄学園初等部の入学を果たし、本日つい6時間ほど前に入学式を終えたのだが…


  「どういう事なの…」


 私は今、入学式を終え、家族で食事をして、そして自室にこもっている。


 今日の入学式、私は何かずっと違和感を感じていた。それは、そう前世の記憶を思い出したときのような、なんともいえない違和感だった。


 だがその違和感は、配られたクラス名簿を見た時に氷解したのだ。


 そのクラス名簿には、知ってる名前がいくつもあった…

 そう、前世で私が愛した少女漫画『崇栄学園の喫茶店』の登場人物達の名前が。



 大人気少女漫画『崇栄学園の喫茶店』

 そのあらすじは

 選ばれた上流階級の子供しか通えない崇英学園(たかえがくえん)

 その高等部に通う特待生の涼宮ツカサは、昨日買った納豆巻きの消費期限が今日の17時までだった事を思いだし、家に急いで帰ろうと学園の階段を下っていた。

 だが、急ぎすぎたあまり学園の王子様にぶつかり怪我をさせてしまう。



 と、そんなこんなで主人公は手を捻挫してしまった王子のお世話をするため王子とその仲間たちが放課後にやっている喫茶店のお手伝いをしたり

 何故か男子制服を着ていたため男だと思われていた主人公が、実は女の子だったりしたりのドタバタラブコメディーを繰り広げるのだが…


 そこに深窓 令嬢なんて子いないのよねー。


 うーん…どういう事なの?私が忘れてるだけなのかなぁ…

 でも、深窓 令嬢なんて名前絶対に忘れそうにないし、あっ!もしかしてモブ?確かに私が目指してる深窓の令嬢は物語に関わりそうにないし。

 そっかぁ…私モブかぁ…

 まぁ、悪役令嬢とかじゃなくってよかったか、うんっ!ここが漫画の世界でも関係ない!目指せ深窓の令嬢!






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