後編2
申し訳ありません。
終わる終わる詐欺を働いてしまいました。
ということで、まだ完結しませんorz
もう、地面にめり込んで五体投地するしか……。
期末テストを終え(イベント的には勉強会があったが、なぜか俺様なアホの子を含めた数人のクラスメイト男子とでテスト勉強していた。これも逆ハーではあるのか?)、球技大会を終え(タオルを渡したり、差し入れしたり、つまづいて抱きついたりと、攻略者間をこま鼠のように走り回るヒロイン蝶々さん。……そんな夫人と、それを追っかける私たちともども息切れだ、お疲れ!)。
そして我々は――ついに夏休みを迎えたのだった。
夏休みに入ってすぐのイベントは、夏祭りである。夏休み一の目玉と言ってもいい。もちろん、乙女ゲーム的にだ。
それは何故か。
ヒロインと夏祭りを過ごす攻略対象者が、現在一番高い好感度を持つ相手だと判るイベントだからである。
もしかしたら、夫人はパラメータとか攻略キャラのデータが見えるのかもしれないが、こちとらモブである。まさしく群衆の一人でしかない。パラメータなどという奇ッ怪な数値が見えるはずあるか――!
というわけで、観覧者側からしても大変貴重かつ重大なイベントな訳であったのだ。
夏祭り会場の最寄駅周辺は、帰宅の混雑と合わせて浮き立った喧噪がそこかしこで起こっていた。
その喧騒に華やぎがあるのは、祭り客がそれなりのお洒落をしており、特に着物という日頃見慣れない装いをする人々が散見されるからだろう。風もない茹だるような暑い夕べに、涼やかな風情がなんとも目に清々しい。
友人や恋人、あるいは家族で連れだって歩く彼らの賑わいを後目に、待ち人を見つけた私は愕然とした。
「……浴衣じゃない だ と ?」
危うく膝から崩れ落ちて、地面に両手をつくところだった。
そのかわり、思いの丈を魂を削る勢いで叫んだ。
「夏祭りっていったら浴衣だろおおおお!?」
「……ナンデヤネン」
返答は棒読み関西弁でした。ハルちゃん怖いよ、冷凍マグロの目になってるよ。
なぜこうも咆哮しているのかと言えば、魂削った叫びそのままなのだが、要するにハルちゃんが浴衣を着てこなかったからである。シンプルな黒のTシャツに、洗いざらしで白っぽくなった細身の黒ジーンズ、ゴツイ腕時計や黒い革にシルバーの飾りがついたネックレスや黒銀の財布チェーンのアクセサリーといった出で立ちなのだ。黒々しい。どんだけ闇に溶けこむつもりだよ。
待ち合わせた駅前で、ハルちゃんを見つけた時のガッカリ感といったらなかった。打ちひしがれた。絶望だ。
うなだれる私を他所に、ハルちゃんは気を取り直したようで、ぶっきらぼうに言った。
「浴衣は動きにくいだろ。なんで、そんな恰好してくるんだよ」
責める色合いを帯びた口調に、私は自分の袖の裾を手で軽くつまんで持ち上げて見せる。
「うん、コレ? お母さんにやられてさー。まあ、大丈夫だよ。下駄じゃなくってサンダル履いてるから、移動に支障はない」
数日前に夏祭りへ行く旨を母に申告しておいたら、浴衣一式が用意されており、無理やり着つけられたのだ。母のほわほわ乙女思考が何やら嗅ぎつけたらしく、いつの間にか一緒に行く友達を男だと決めつけられていた。まあ、ハルちゃんも見た目は男だが。ならば、可愛らしく装えと言わんばかりに飾りたてられたのである。
清々しい白地に大輪の花が裾にふわりと咲き誇り、落ち着いた赤の花々には切り絵のような黒蝶が軽やかに舞う浴衣は、黒味の強い紅色の帯を締めることで大人っぽさを演出している。
いつもは下しているかおさげにしている肩までの髪は、アップにしてトンボ玉の簪がさされていた。
正直に白状すれば、他人の浴衣姿は好物だが、自分が身に着けるのは面倒だ。
だが、母の色恋などに関する乙女思考は、それ以上に面倒くさい。強硬に断れば、後々まで響く。ここで女友達と行くと言って、祭りにやってきた両親にハルちゃんといる所を発見された日には、一週間は家庭内で母が大騒ぎする。そして一か月は、ぐちぐち恨み言を呟かれるだろう。母よ、ウザイ。
なので、機動性に少々難があるが、浴衣で来たのである。救いは、最初からサンダルを用意してくれていたことか。帯色に合わせた和風のもので、厚底は木製だから少し下駄の雰囲気があった。
まあ、私のことはいい。それよりハルちゃんだ。――いや、浴衣じゃなかった件じゃなく。
「ていうか、ハルちゃんこそ、前髪はそれでいいの?」
そうなのだ。いつもは完全簾化している前髪が、今日は真ん中と左右の三束に分けられているのだ。緩くワックスでセットしているので、すっきり目元が全開という程ではないものの、冷凍マグロの目になったと判別できるぐらいに容貌が丸見えとなっている。
ツッコめば、ハルちゃんは小さくため息をついた。
「暗い場所もあるし、さすがにあれじゃ夜間は視界が悪すぎる。出店の明かりはそう強くないからな。距離さえとっておけば、蝶々も気づかないはずだ」
「ああ、確かにねー」
もともと攻略キャラである黒峰遥を、そこまで積極的に探し出そうとはしなかった夫人だ。しかも、祭り会場で一緒に来た攻略キャラを放っておいて、他のイケメン漁りはしないだろう。それに学校内ではないのだし、攻略キャラ時とは髪色も違うハルちゃんを、遠目の上に薄暗がりで見分けるのは困難だと納得する。
「うむ、了解。じゃあ、夫人たちを探しにいこっか」
と、祭り会場である神社へ向かい捜索を開始したのだが、出店に意識を持っていかれながらも、案外すぐに目当ては見つかった。
男女ともに美形のカップルだから目立った、とかいう理由ではなく、見知った顔が集団となって固まっていたという事情からだが。
アレだ。蝶々さんと俺様アホの子、そして同クラスの男子たち――テスト勉強を一緒にした仲間たちだ。
わーいやったね夫人逆ハーレムだー(棒)。
ダメだ、思考を放棄するな、がんばれ私。
予想外の状況だが、なんとか気を取り直す。
しかし……ええー、これ、どう見るべきなの。一応、俺様アホの子の好感度が一番高いということで合ってるのか。それとも、本来なら二人っきりのデートにクラスメイトがいるという時点で、乙女ゲームのイベント自体が潰れてしまった状態なのか。
「ハルちゃん、どう思う?」
「現状ではなんとも。しばらく様子を見てみるか」
互いに微妙な表情で話し合った結果、とりあえず推移を観察となった。
「……ふん、これが夜店というものか」
鋭い視線をまわりへ巡らすのは、秀麗と言っていい面立ちの少年だ。やや吊り気味だが、それがマイナス要素にならないアーモンド形の瞳は、長い睫毛に縁どられ、形の良さを際立たせている。程良い高さの鼻と厚さの唇は主張が強すぎず、十五歳という若さが輪郭に華奢さを残しているというのに、不思議と男らしい自信にあふれた表情で、またそれが似あう。意志の強さが、美しい双眸に表れているからかもしれなかった。
その隣に立つのは、彼に劣らない美貌の少女だ。
彼女は小首を傾げ、上目づかいで訊ねる。
「え? 継護君、初め」
が、クラスメイトのB君に途中で乱入された!
「えーっ、初めてか? 若!」
「ちゃんと財布持ってきてんの、若?」
クラスメイトC君も、すかさず参戦してくる。
「財布ぐらい、持ってきてるに決まっているだろう!」
「っ、そうだよ、みんな、ひど」
若、反論、プラス美少女の応援を受けたが、皆まで言う前にあっさりC君に首をふられた!
「や、なんか持ってなさそうだし」
「あーわかる、赤木ってお付きの人に支払い任せてそうだよねー。AKAGIグループの御曹司だもん、小銭数えて出すとかしなさそう」
「だよな。財布の中、小さいの入ってる?」
C君はさらに、D君、E君の援護射撃を受けた。
「は、入ってるよね、継護君!」
「……カードはダメなのか」
美少女のフォローが、むしろクリティカルヒットのようだ。若、がんばれ。
「いやいや、夜店でカードは……」
「若、マジでお坊ちゃま!」
E君の控えめな指摘を、台無しにするF。
「う、うるさいっ、現金も持ってる!」
「でも万札なんだよな」
「……」
血も涙もないC君の鋭いツッコミに、ついに若は撃墜された。
そして、BとFの無慈悲な追撃によるトドメ。
「「わー若、夜店の人に迷惑ー」」
「無駄にきれいにユニゾンするな! 双子か!」
…………。
おめーら、仲いいな。主に男子同士で!
「若」ってあだ名呼びされるぐらい気安い仲のせいで、夫人が男子トークに混じれてないじゃないか。そして今、俺様アホの子もとい赤木継護君以外のクラスメート男子に、夫人は口説かれ始めているよ。
美しさは罪、だね!
だが、あえて言わせてもらおう。
夫人よ、おまえもか! なぜ着物で来なかった!?
フェミニンワンピもいいが、女子ならなおさら浴衣だろう!
美少女の浴衣姿を見せてくれよ、と。
いや、主旨が逸れた。そこじゃない。
その後も、やたらに砕けた雰囲気のクラスメート同士(男子)で楽しんでいて、弄られたりしても俺様アホの子は切れて帰るなんてことなく、また頃合いを見て蝶々さんと二人で抜け出す様子もなかった。
結果――
「……これ、もう乙女ゲーのイベントじゃないでしょ」
「……そうだな」
小一時間ほど観察した私とハルちゃんは、悄然として結論付けたのであった、まる。
乙女ゲーム観覧としては肩透かしを食らったイベントだったが、せっかく祭りに来たのだし、その後はふつうに出店や花火を満喫した。
ハルちゃんも乗り気というほどではないが一緒に回ってくれ、祭り気分を心友と堪能したのだった。ハルちゃんは無愛想だが、意外に付き合いがいいよね。
そして花火大会が終わり、出店はまだ開いているが客足は確実に家路につきはじめた時間、我々も最寄駅に向かうことにした。
「いやあ、花火きれいだったー。型物とかスターマインとかわかりやすいのもいいけど、柳のキラキラも捨てがたいし、花雷とか霞草や、音もかわいい蜂なんかの演出的なヤツもいいよね。だがしかし、意外に基本的な銀菊が趣深くて一番味があると思うのだが、ハルちゃん、どうかね?」
「オマエガ何ヲ言ッテイルノカワカラナイ。それとおまえ、花火見てる顔が完全に子どもだったぞ」
「ほうほう、そんなに純真無垢な表情でしたか」
「ポカーンと口開けて、食い入るように一心に見てて、怖かった」
「なんですと!? ハルちゃん酷い!」
とまあ、軽く弄られながら歩いていた私は、不発(?)とはいえ乙女ゲーのイベントが終わり、また祭りも終わって、ぶっちゃけ気が緩んでいた。おそらくハルちゃんもだろう。
「あ、っと、悪い、ちょっとコンビニ寄っていいか」
「いいよいいよ、どぞー」
ハルちゃんの要望に応えて、駅前まで来ていたが祭り会場へ続く通りとはまた別の道へと進路を取る。来た道にもあったのだが、駅からだと違う通りにあるコンビニの方が近いからだ。
そしてコンビニがすぐそこに迫った瞬間、気の抜けた我々は遭遇したのだ。
コンビニから出てくる、蝶々さんと俺様アホの子に!
えっ? なんで今さら二人っきりに? あれから何があったというんだ! まさか面白場面を見逃した!?
という驚愕・無念と。
こっち来るか!? 当たり前だ駅はこっちだ! ヤベッ、街灯でハルちゃんが顔バレするかもっ。
という懸念・焦燥が、走馬灯かとツッコむ速さで瞬時に脳内を巡り。
とっさに、ハルちゃんを押しこんだ。
コンビニ隣り、ファッションビルのショーウィンドウ横の柱部分の影にだ。
すでに閉店しているため、ショーウィンドウは明かりが落とされているが、柱は外壁から独立しておらず、通りから姿を隠せるほどに深く入り組んでもいない。街灯は背後にあって、相変わらず我々を皓皓と照らし出していた。はっきり言って、正面まで来られたら丸見えだ。
背中をショーウィンドウにそこそこ強打させられたハルちゃんが、小さく呻く。
「つっ……何すんだよ、急に」
「シッ! 夫人が来る」
どうやらハルちゃんは、蝶々さんたちにまだ気づいていなかったらしい。かなり建物寄りを歩いていたから、視界に入る前だったのだろう。
驚くハルちゃんを横目に、柱に遮られて見えない、けれども確実に近づいてきている彼女らに視線をやる。
どうにか、ハルちゃんを隠せないものか。
考えるものの焦っているせいか、アイデアの種はぷかぷか浮かび漂っているようで上手く地につかない。
何かないか、何かないか。せめて顔だけでも……。
空転しまくっていた感覚しかない頭がその瞬間、閃きを得た。
アレだ、ものすごく古典的な裸電球がピカッと点く閃きだ。
そのせいか、思いついた名案は、後から考えれば迷案だったと言えよう。
まあ、このときは名案だと思ったのだ。このときは。
「ハルちゃん、まずはこっち!」
素早く両肩をつかんで、 柱に背中を預けるよう、その場でハルちゃんを九十度回転。
「で、右手はここ。左手はこう」
ハルちゃんの右手は私の腰を支えさせ、左手は後頭部へ導く。
「最後、上半身前傾!」
有無を言わせぬ迫力を小声で出しながら指示を出すと、同時に自らも左手でハルちゃんの頭を下げにいき、後頭部を道側へと向けさせる。
途中、ハルちゃんが抗うような身じろぎをしたので、右手で胸倉ひっつかんで既定の形へ持ちこんだ。
顔面距離、五センチ。そこで近づけるのをピタリと止める。
よし、これで覗きこまれでもしない限り、バレないはずだ。
そう、所謂キスシーンというヤツである。
古典的な閃き方をしただけあって、洋画などでの古き良きお約束、ヒーローが追っ手を振りきる際に使われる手段を思いついたのだった。とはいえ、本当にハルちゃんの唇を奪う訳にはいくまい。なので、してるフリだけだ。
できれば、道側へハルちゃんの背を向ける体勢にしたかった。その方が、顔をよく隠せる。だが、詳しく説明している暇などなかったし、抵抗されれば後方へ逃げられた挙句に夫人の注目を浴びる可能性が高まるので、柱に押しつける仕儀と相成った。
そして、我々の体勢が整った瞬間。
「ひゃっ」
小さな声でかわいらしい悲鳴があがった。
それを、抑えた低い声が諌める。
「蝶々、電車の時間」
「あっ、うん、そうだね。急ご」
気を取り直し、そそくさと通り過ぎる美少女とイケメン。言わずと知れた蝶々さんと俺様アホの子だ。
ハルちゃんの顔を盾にして、薄目で通り過ぎるのを見張っていたのだが、こら夫人、興味津々でチラチラ見ない。若はいっそ天晴れなほど頑なに前方だけ凝視だ。見倣え。
さすがに振りかえってまで見ないだろうと思うが、気配が遠のくまで目を閉じて動かないでいた。話し声も足音も聞こえなくなったが、後頭部に目がないために確認できず、蝶々さんたちの進行方向に顔が向いている心友に声をかけてみる。
「夫人たち、行った?」
突如、後頭部と腰に置かれていた手にぐっと力がこもる。
反射的に瞼を開けた私は、息をのんだ。
う、わっ、近っ!
いざ落ち着いて正面から向き合ってみると、顔面の接近ぶりが凄まじかった。
というか、設定距離五センチより短くないか。ただいま三センチ……って、なぜか距離がどんどん縮まっている。
「ハ、ルちゃ……」
当たった。
「……ハルちゃん?」
おでこが。
接触音がコツッとゴツッの中間ぐらいで、なんとも曖昧なおでこごっつんこだ。
「……行った。なんつー手段使ってんだよ、バカ」
「あー、びっくりさせちゃってゴメンね?」
ハルちゃんの声には、軽く責める響きがふくまれていた。
触れているおでこ部分がちょっぴり痛かったが、本当のところは頭突きを食らわせたかったのだろうから、ここは素直に謝っておく。
果たして、顔バレ阻止した功績ゆえの手加減か、危機一髪の後で単に力が入らなかっただけなのか。ふむ、ハルちゃんの名誉のため、前者ということにしとこうか。
と、ハルちゃんが胡乱な雰囲気を漂わせる。
「正解は、近すぎて頭突きに威力が乗らなかったから、だ」
「うおいっ! 心の声にまでツッコむなよ、怖ろしい子!」
慄きながらもにらみあげてみたが、うーむ、やはり顔が近すぎるためにぼやけて見えるから、表情はちゃんと伝わらなさそうだ。
というか、でこはいつまでくっつけたままなんですかね。いいかげん暑いので、ハグ解除もお願いします。ハルちゃん、体温高いな! 筋肉質か!
てな具合に、こちらがツッコミ返そうかと思えば、ハルちゃんがでこからするりと滑り落ちるようにして、我が肩に顔を伏せた。
「おぉい、どうした、大丈夫?」
「……大丈夫じゃない」
疲れ果てたと言わんばかりに、大きく長く息を吐かれる。
お疲れモードなのは、蝶々さんとのニアミスもあるのだろうけど、私がとった古典的な追跡者攪乱(?)方法も理由だろう。素面で友だちに唇奪われそうになるとか、そりゃ精神的にクるわ。いくら中身JKで、同性みたいなものでもな。
「うん、ホントにごめんね、ハルちゃん。こんな方法しか考えつかなくて」
労りをこめて、背中に回した手でぽんぽんと柔らかく叩く。
ハルちゃんはじっとして、触れる手のリズムを聞いている。そして、そっと呟いた。
「……ありがとな」
知らず、口許がほどけた。
「ふっ、全力でサポートするって言っただろ、しーんゆー!」
べしっと背を叩くと、なぜかハルちゃんが脱力した。
「っ!? 重っ、ハルちゃん重いよっ。ちょっ、ハルちゃん!? えっ、意識ある? えっ? ぎゃー、寝るなー、寝ると死ぬぞー!」
「寝てない! 遭難どころか冬でもないだろーがっ。あぁー、ホントおまえってさぁ……」
「いや、じゃあ、ちゃんと立ってよ! つーぶーれーるー、あ゛ー」
なんなんだ、ハルちゃんのお礼にはプレスの無料サービスでもついてんの? 只って、怖い。
まあ、地に膝をつく前に開放してはくれたが。
ちくしょう、ツンデレめっ。照れが面倒くさいなっ。そこが萌えーとか言えねえよ。
胸中でこっそり罵っていると、ハルちゃんの猜疑心に満ち満ちた双眸がこちらをじいっと窺っている。
ので、また心の声にツッコミを入れられる前に、コンビニへ逃走したのだった。
ちなみに、ハルちゃんのお買いものはシャーペンの芯だった。
くそう、芯ごときで危機一髪に陥りかけ、あげく報酬がプレスとか酷ぇ。
と、我が運命の不条理さを、商品棚の前でちょっぴり嘆いてしまったのは余談である。
そんな訳で、夏祭り編のみお送りしました。
次回こそ、エピローグで最終回です!