CoHO:英雄達の集い
はじめまして、樹遠零といいます。
題名のCoHOについては深く突っ込み無しの方向で。
自分がメインでやってるのはCoHではありますが。
VRMMORPG。
五感を接続した仮想世界でのゲーム体験を実現してから数年、至極当然にネットゲームの世界はVR技術を利用したものが当然となっていた。
FPS、ADV、そしてRPG。
コンピュータゲームの歴史がそうであったように、ネットワークという受け皿のキャパシティに余裕ができてくるにつれ、大規模MMOがネットゲームの中心となっていった。
そんな中の一つに、英雄達の集い「Company of Heroes Online」があった。
略称でCoHOと呼ばれるそれは、よくあるファンタジー世界での冒険物。
テンプレで固めまくったような個性の無いRPGではあったが、その極端とも言える高難易度調整なゲームデザインと、キチガイとまで評価せしめた世界構築に、濃い廃人達が魅了された。
ゲームデザインで最も目を引いたのはモンスターのヘイトシステム。
敵対心といったパラメータでモンスターがパーティの誰を狙うかというシステムであるが、それがプレイヤー視点で見て合理的に設定されていた。
つまりは
『まずは軽装で体力の低そうなやわらかい相手を狙い、数を減らす』
『魔法使い等、強力な範囲攻撃を持つものを優先的に無力化』
『ヒーラー相当のキャラクターを最優先撃破』
CRPGでモンスターと戦うならばプレイヤーが普通に行う戦術であるが、それを(知能の数値によってばらつきは大きいが)モンスター側も同じように行ってくるように設定されていた。
もちろんプレイヤー側にも敵を後衛に近づかせないようなスキルも用意されていたが、通常のMMORPGの常識で後衛職を選んだプレイヤーが絶望するほどには厳しいバランスではあった。
何しろ、知力特化型といわれる強化が通用しないのだ。火力と防御力、そして立ち回り、そのバランスを考えつつ育成方針を練る事が重要となり、ヒーラーと一言で言ってもプレイヤー毎に千差万別なキャラクターが誕生した。
狙ったのか偶然か、その理不尽の境目を一歩越えたその調整に、少なくないプレイヤーが魅了された。
そして世界構築。
こちらはもう考えたデザイナーとそれについていったプログラマーの正気を疑うほか無い代物であった。
広大な世界を用意し、マップ切り替え無しのシームレス空間で全ての世界が作り上げられていた。平野も、ダンジョンも、町も、城も、プレイヤーハウスですら全てを一つの空間の中に作り上げてしまっていた。
通常であればプレイヤーハウスの入り口を潜れば別空間の私的空間に接続する。しかしCoHOではプレイヤーハウスは街中に点在する家屋の一部屋が与えられ、売買が可能な商品として設定されていた。何千人、何万人といるプレイヤーの一人一人に部屋を用意するのだ、それだけでも気が狂うほどの作業量となることは容易に想像できるだろう。
更には街中のオブジェクト全てに干渉することが可能であったり、下水や井戸などといった設備まで用意され進入することが可能であったが、最も異常であったのは書籍であろう。
図書館がある、書店がある、そこには本がある。
そして、その本全てが『実在及び非実在の実本』であった。
著作権フリーのものを集めたのか、並ぶ本一冊一冊がちゃんと読むことのできる紙の本であった。同じ本が並んでいるかと思えば、原本・英語訳・日本語訳等々、別の国の言語で用意された本であったり、現実世界での本以外にもCoHO世界での英雄譚や歴史書等、公式非公式交えた本が用意されていた。
その労力は想像するだけ馬鹿らしくなる程のものであったが、数多のリアルな世界を唄うVRMMORPGの中にあって、CoHOは正しく『リアルな』世界を用意したといえるだろう。
さて、長くなったが上記のような理由で一定数のプレイヤーを安定して確保していたCoHOであったが、その極端すぎるゲームバランスのせいもあり、初心者離れが極端であったため、そう遠くないうちにサービス崩壊の危機が来るのではないのかと囁かれていた。
そんな状況の中で一つ。
まったくの偶然ではあるが、CoHOは多くの初心者とドロップアウトした低レベル経験者の確保に成功した。
それはバランス調整でもなければ、大型アップデートでもなく、ただ一人のプレイヤーの登場によるものであった。
そのプレイヤーはCoHOのあらゆる廃ギルドのマスターを抑え最も有名なプレイヤーと認識され、親しみを持ってこう呼ばれていた
大樹の天使・・・と。