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異世界人と銀の魔女  作者: NewWorld
第7章 魔女の剣と紅の魔獣
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第62話 エレメンタル・ブレード/ファイア・スターター

     -エレメンタル・ブレード-


「これがわたしの杖? ううん、『剣』……なのかな?」


 わたしは、「それ」のあまりの美しさに心を奪われていました。虹色に輝く細身の刀身に、植物が絡み合うみたいな造りになっている金色の鍔と柄。全体に凄く細かい装飾が刻み込まれていて、そこから立ち上る強い『精霊』の力、属性の気配にわたしは思わず息を飲むばかりです。

 若干、刀身の中央部分が丸みを帯びて膨らんで見えるのは、中に『新世界樹』の枝が入っているからなんだそうです。


「この形状では切断には向かんだろうが、撫で切り程度なら十分な切れ味もあるうえ、刺突による貫通力に関しては絶対の自信があるぞ」


 ガアラムさんは、少し疲れたような、でも満足げな顔でその『剣』を見せながら言いました。


「ガアラム、ちょっとこれ、どういうこと?」


 シリルお姉ちゃんは『剣』をまじまじと見つめながら、怪訝そうな声で言いました。


「む? やはり『杖』の方が良かったか? 嬢ちゃんには剣の才能があるようだし、この方がよいと判断したのじゃが」


「そんなことじゃないわよ。それはまあ、いい判断だと思うけど。それよりこれ、『精霊銀』の他に、『光剛結晶』まで使ってるでしょう? そんな大金、いくらなんでも持っていないわよ?」


 シリルお姉ちゃんは困ったような顔をしています。『光剛結晶』? それって確か凄く高価な鉱石じゃなかったでしょうか?


「それはサービスじゃよ。強度と耐久力を高めるにはどうしても不可欠だっからのう。特に先端部分が欠けないよう工夫する必要もあった」


「ちょ、ちょっと正気? そんな高価なもの、サービスしてもらっても困るわよ!」


「ええい! うるさいわい! 黙って受け取らんか! わしの生涯最後にして最高の傑作なのだからな」


 ガアラムさんは、とうとう怒りだしてしまいました。

 これではいけません。せっかくの心遣い、無駄にしないようにしなくては。


「ありがとうございます。これ、大事に使わせてもらいます」


 わたしは急いでそう言うと、ガアラムさんからその『剣』を受け取りました。

 そして、柄の部分を握った瞬間、この『剣』の凄さがわかったんです。手に吸いつくようにぴたりと納まるその『剣』は、まるで最初からわたしの身体の一部みたいに自由に振り回せそうな感じがします。

 それに、触れているだけで身体の奥から自然と力が湧き起ってくるようで、これは正真正銘、わたしのためにある『剣』なんだとわかりました。


「うわあ、すっごいな、これ。でも、いくらなんでも先端が細くて鋭すぎるんじゃないか? これじゃあすぐ折れちゃうだろうに」


「そのための『光剛結晶』じゃ、心配はいらん。そうそう欠けはせんし、欠けても光を吸収してすぐに自己再生する。まあ、その形状を記憶させるのが一苦労じゃったが」


 ルシアの懸念にも、ガアラムさんは胸を張って言いました。すごく、がんばってくれたんですね。


「その、『光剛結晶』ってどういうものなんですかね?」


 ルシアのそんな質問には、シリルお姉ちゃんが答えてくれました。


「『光剛結晶』はね、【フロンティア】『天嶮の迷宮』でしか採取できない極めて貴重な鉱物よ。光そのものを吸収して結晶化する性質があって、硬さも折り紙つきの代物。それだけに加工がかなり難しいはずなんだけど……」


「ほんと、爺さんも無茶するんだからな。加工の時は【魔力】の使い過ぎで2、3回倒れそうになったんだぜ?」


 そう話してくれたのは、ハンスさん。この人はこの人なりに、ガアラムさんのことを考えていて、今回はわたしの『剣』を造るのも手伝ってくれたらしい。


「シャルのために、無理をさせてごめんなさい」


「何を言うか。わしが勝手にやったことじゃ。……、それよりどうじゃ。その剣」


「はい。すごく手に馴染んで、使いやすそうです」


「それはよかった。で、銘は何にする?」


「銘、ですか?」


 ガアラムさんの話では、こういう一品物の傑作が仕上がった時は、何らかの銘を付けるらしいのですが、なんて名づけたものか……、あ、そうだ。


「ガアラムさんが造ってくれたから、『ガアラムさんの剣』じゃ、駄目ですか?」


 わたしがそう言うと、その場にいた全員が「いやいや、それはないない」と言わんばかりに、一斉に首を横に振りました。いい考えだと思ったのに……。


「わしの名前を付けるのは勘弁してもらいたいが、もし、よければわしに名を付けさせてもらっても良いかな?」


「もちろんです!」


「ふむ。なら、こうしよう。……『差し招く未来の霊剣(エレメンタル・ブレード)』。シャルとフィリス、二人が望む未来を差し招く、そんな剣になってくれればわしも嬉しい」


差し招く未来の霊剣(エレメンタル・ブレード)』……。うん。すごくいい名前です。


「名付け方まで【魔鍵】に対抗しているところが、爺さんらしいよな」


「うるさい! それより、ハンス。お前からも渡すものがあるじゃろうが」


「え? ああ、そうだった。その『剣』を造るのにどうしても『新世界樹』の枝を削らなきゃならなかったからさ、その削った部分ももったいないんで、もうひとつおまけで造ったものがあるんだ」


 ハンスさんがそう言って取りだしたのは、四つの透明な石が連なった首飾りみたいなものでした。


「これは、『樹精石』っていう特殊な性質を持つ石なんだけどさ、これはその中でも特別製でね。普通は魔力の豊富な木材、よくてもせいぜい『世界樹』の樹皮なんかを煮詰めた特殊な樹脂を冷やして固めるんだけど、こいつは贅沢にも、『新世界樹』を削ったものを全部丸ごと使ってるんだ」


「そんなものまで造ってくれたんですか? ありがとうございます」


「おっと、礼を言うのはまだ早いよ。もともと『樹精石』は、特定属性の【魔力】を込めることで、その属性への耐性を高める護符になるものなんだけどさ。驚くなかれ、こいつはそれどころじゃない。まあ、ちょっと試してみてくれよ」


 わたしは言われるままにその『樹精石の首飾り』を受け取ると、試しに石の一つに風属性の【魔力】を注いでみることにしました。

 すると、透明だったその石は、緑色に輝きはじめました。


「……なんだか不思議。身体が軽くなったみたい……」


「だろう? やっぱりシャルちゃんが使うとさらに効果が高いみたいだな」


 ハンスさんはうんうんと満足そうに頷きました。


「なるほど、属性に応じた身体能力を強化する効果があるのね。……驚いたわ。これじゃまるで、『妖精族』の【精霊魔法】(エレメンタル・ロウ)みたいじゃない」


 シリルお姉ちゃんは緑色に輝く『樹精石』をまじまじと見つめ、感心したように言いました。

 身体強化? そういえば、『妖精の森』で会ったレイフォンさんが【精霊魔法】(エレメンタル・ロウ)をそんな使い方していたような……。

 でも、この石、本当にすごい。注いだ【魔力】はそれほどでもなかったはずなのに、石の中ではいつまでも強い風の力が渦巻いているみたい。


「上手く使えば、周囲に気配のない属性の【精霊魔法】(エレメンタル・ロウ)も使うことができそうね。おまけにしては、かなり良い品だと思うけど、本当にタダでいいの?」


「ははは、もちろんだよ。まあ、お役に立てて何よりだ」


「うん。……ありがとう、ハンスさん」


 よく見れば、ハンスさんの手も細かい傷や火傷を治療した後みたいなものが見えます。煮詰めて固めたりするのも、そんなに簡単な作業じゃなかったのかもしれない。

 わたしは感極まって、思わずハンスさんの手を握ってしまいました。


「シャ、シャルちゃん。そんなに熱い目で見上げてこられたら、僕は、僕は!」


 あ、あれ? なんだかハンスさんの目が焦点を失ってぐるぐる回っているみたいな?

 と思う間もなく、その両手ががばっと左右に広がり、そして、次に見えたのは……


黒の虫(ブラック・バグ)》!


「ひ、ひいいいいいい!」


 黒い羽虫の群れと、それに飲み込まれるハンスさんの姿。

 わたしが恐る恐る振り返ると、そこにはなぜか、どす黒いオーラをまとったシリルお姉ちゃんの姿が……。うう、すっごく怖いです。


「ま、まあ、なんだ。とにかくタッグ戦が始まる前に間に合ってよかったよな。ははは……。えーと、そうだ。よし、それじゃあ、『剣』と『首飾り』の使い方も練習しないとだよな。うん、それがいい。そうしよう!」


「う、うむ、よし、微調整が必要なこともあるかもしれん。確かに、いちど本番前の練習は必要じゃろう。も、もちろんわしも付き合うぞ?」


 わたしが【生命魔法】(ライフ・リィンフォース)でボロボロになったハンスさんを治療している間、ルシアとガアラムさんは何かに脅えるように視線を泳がせながら言葉を交わしていました。


「まったく、この男は! 懲りもせずにこんなことばかり!」


 アリシアお姉ちゃんは、シリルお姉ちゃんのこういう部分を「潔癖症」だなんて言っていましたが、何か理由でもあるんでしょうか? 

 いずれにしても、シリルお姉ちゃんは、絶対に怒らせちゃいけない人なんだと改めて思いました。 



     -ファイア・スターター-


 アルマグリッド武芸大会の第二種目、タッグ戦の予選はやはり個人戦の時と同じく、シード以外の参加者によるバトルロイヤルで行われる。

 ただ、個人戦の時と違うのは、参加者の中にライルズさんがいること。


「おらおらおら! 他に手応えのある奴はいねえのか?」


 試合開始早々、手にした短剣『静寂なる爆炎の双剣(サージェス・フォルム・ソリアス)』から爆炎を放ちつつ、この広い闘技場を縦横無尽に暴れまわるライルズさん。

 タッグ戦の参加者たちの中にはA、B、Cランクの人たちが混じっているけれど、軒並み区別なく、ライルズさんは炎をまき散らしながら薙ぎ払っていく。


「うわあ、ストレス解消のために暴れてるって感じだよな、あれ。まだ、始まったばかりだって言うのに、いきなり全開じゃないか」


「それより、ルシア。ワタシたちにも敵がきていマス」


「ん? ああ、子供もいるから組み易しと見たってわけか。よし、フィリス。思い違いをわからせてやろうぜ」


「……もちろんデス」


 ワタシは腰の鞘から『差し招く未来の霊剣(エレメンタル・ブレード)』を抜き放つ。目の前には、戦士風の装備に身を固めた男女一組の敵の姿があり、他にも周囲を牽制しながらこちらの隙を窺っている人たちがいた。

 きらめく虹色の刀身に、周囲の冒険者たちからどよめきの声が聞こえ、観客席の方からもため息のような歓声が上がるのがわかった。

 約束どおり頑張って、ガアラムさんの剣の凄さを皆に見てもらおう。

 ワタシは剣をかざしながら周囲の【マナ】に語りかける。


〈渦巻きて、薙ぎ払う風〉


 かざした剣の先から巻き起こる風の渦は、しだいに勢いを強め、周囲で【魔法陣】の構築を開始していた魔導師や今にもこちらに斬りかかろうとしていた戦士たちを、まとめて宙に巻きあげ、吹き飛ばしていく。


「う、うわあああ! なんだこれ? 【魔鍵】か?」


「【魔法】? うそ!? この威力で? 発動時間が短すぎる!」


 そんな驚愕の声も次第に遠ざかっていき、気がつけばワタシとルシアの周囲には、空白地帯のようにぽっかりと無人の領域が生まれていた。


「うおお、すごいなこりゃ。やっぱり、バトルロイヤルはフィリスに出てもらって正解だったな」


 ルシアの言葉通り、【精霊魔法】(エレメンタル・ロウ)そのものの威力や効果範囲は、ワタシが出てきて使った方が大きくて広くなるみたいだったので、多人数を相手にする今回の予選に関しては、ワタシが出ることにしていた。でも、ここまで上手く行くなんて思わなかった。

 これもやっぱり、ガアラムさんの『剣』の効果が大きい。『精霊』であるワタシにとって、『新世界樹』や『精霊銀』でできたこの武器は、力を使うための媒体としてはこの上ないものだった。


 それからワタシたちは、このタッグ戦の前に二人で練習した通りの戦い方を続け、次々と対戦相手を減らしていった。

 

「右斜メ前方に、【魔法陣】構築を感知」


 『精霊』であるワタシは、世界の【自然法則】(エレメンタル・ロウ)を侵食して別の事象を引き起こそうとする【幻想法則】(ソーサラス・ロウ)、その発動媒体である【魔法陣】の存在を感知できる。

 シリルお姉ちゃんの“魔王の百眼”ほどの精度はないけれど、存在だけなら離れた距離にあるものでも確実に把握可能だ。実際、召喚術者が召喚した『精霊』への命令として、敵の【魔法陣】構築を攻撃条件とすることが多いのも、それが理由だったりする。


〈叩きつける風塊〉

〈降り注ぐ炎弾〉


 ワタシはこちらに向かって【魔法】を使おうとする相手を見つけては、虹色の剣を振りかざし、風や炎を飛ばして狙撃を繰り返す。ルシアもワタシに近づこうとする相手を食い止めながら、ワタシがそれらの敵に向けて放つ風の竜巻を自分に当たる部分だけ上手く『斬り散らして』回避する。


 そんなことを二、三度繰り返すだけで、周りの冒険者たちはワタシたちを強敵とみなして近づいてこなくなる。これもまた、予想どおり。後はこのまま見守るだけで勝ち残れるはずだったけれど、そうはいかなかった。


「あ、こっチに向かってきていマス」


 ワタシが警告するよりも早く、ルシアは『切り拓く絆の魔剣(グラン・ファラ・ソリアス)』を構えている。

 音の出ない爆炎。けれど、確実に破壊と熱をまき散らすそれを駆使し、高速で接近する影が一つ。


「おらあ!」


「っと!」


 ガキン! と甲高い音を立てて、二本の短剣と一本の長剣がぶつかり合う。弾かれたように距離を開け、再び方向と角度を変えて迫りくる赤い斬撃。

 ルシアは再びそれを防ぐ。時折放たれる《炎の矢(フレイムアロー)》も斬り散らし、巧みに身体の位置をずらしながら爆炎や炎の槍まで回避する。


「て、てっめえ! 訓練の時は手抜きでもしてやがったのか?」


 ライルズさんが少し離れた場所に着地するや、そう叫んだ。


「別に、そんなんじゃないですよ。ただ、今は後ろに守らなきゃならないものがあるんでね。絶対に負けるわけにはいかないってだけです!」


 ル、ルシア……。彼の背中がなんだかすごく、頼もしく見える。


「言ってくれるじゃねえか。まあ、いいや。それぐらい歯ごたえがなくちゃ、ヴァリスと戦えなくなった代わりにはならないしな! 責任、取ってもらうぜ?」


「気持ちはわかりますけど、勘違いしたのはそっちですよ?」


「うるせえ。いいから続けるぞ」


 ライルズさんは、猛スピードでこちらに接近してくる。って、ワタシの方?

 少し気を抜いてしまっていたワタシは、とっさに防御の魔法も使えない。駄目だ、やられてしまう!


「だから、させるか!」


 ルシアは完全に不意を突かれたはずなのに、ライルズさんの動きにしっかりと反応していた。横から割り込むように彼を目がけて剣を振り下ろす。けれどライルズさんは、こともなげにその剣を左手の短剣で受けとめ……ようとして、その顔を驚愕に染める。


「くあ!」


 ワタシに向かって斬りつけられようとしていた右手の短剣は、軌道を変えてルシアの剣へと向かい、左の短剣と合わさるように十字型に斬り結ぶ。

 それでもルシアの勢いは止まらない。ライルズさんは大きく体勢を崩し、弾き飛ばされるように地面を転がってから立ち上がる。


「っつう、くそ、ほんとに同一人物かよ。お前? 守るものがあるってだけで、こんなに強くなるわけあるかよ」


「……それより、パートナーはいいんですか? 彼女は魔導師系だって聞きましたけど」


「ああ? あいつはそんなに簡単にやられるタマじゃねえよ。それに、このタッグ戦は二人のうち、どちらかが残ってりゃいいんだからな。それより、熱くなってきたぜ! さあ、やるぞ!」


 相変わらずのバトルマニアぶりに、ワタシも少々引き気味になる。ワタシを狙ったのも、きっとルシアの言ったことが本当か確かめたかったからだろうけど、人間の少女の姿をした相手に斬りつけるのに、ためらいを感じた様子もないなんて、実に徹底している。


「……ちょっと、行き過ぎだな」


 ルシアが妙な顔をして、ぽつりと洩らすのが聞こえてくる。


「なんか言ったか?」


「いや、別に……」


〈激情を内に秘めたる粉火の塵芥〉


火蝶の鱗紛(ファイア・パウダー)


 ライルズさんはルシアの返事を待たず、今度は不可思議な赤い粉を散らす【魔法】を放ってきた。これってもしかして……。


〈焼き穿ち、貫け炎〉


炎の矢(フレイムアロー)》!


 放たれた炎の矢をルシアが斬ろうと振りかぶる。けれど、その眼前に舞い散る赤い粉に炎の矢が触れた途端、それは一気に爆発した。


「うおわあああ!」


「よっしゃ! これでどうだ!」


 ライルズさんは爆炎を避けるように右側から迂回してルシアに迫る。

 けれど、そこにはルシアはいない。


「危なかったあ。助かったぜ、フィリス」


「重いのデ、退いてクださイ」


 ワタシはこちらに寄りかかるような姿勢で安堵の息を吐くルシアに文句を言ったけれど、内心、なんとか助けられてほっとしていた。

 

「なんだと? こりゃあ、そのお嬢ちゃんがやったのか?」


 ライルズさんは足元に視線を向けたまま、驚いている。ワタシが地面に突きさした『差し招く未来の霊剣(エレメンタル・ブレード)』の先端からライルズさんが立っている場所を繋ぐ石床は、何かを引きずったかのように激しく削れていた。

 ワタシが地面ごとルシアをこちらに移動させた痕跡が残っているのだ。

 かつて『精霊の森』でレイフォンさんがやっていた地属性魔法をぶっつけ本番で使ってみたけれど、なんとか成功したみたい。


「ふうん、そうか。ヴァリスの言うとおり、かなりの実力者ってわけかい。こりゃ、ますます面白くなってきたじゃねえか」


 うう、どうやら目を付けられてしまったみたい。どう猛な肉食獣に見つめられているみたいで、ちょっと怖い。

 ルシアはワタシの前にさりげなく立ち位置をずらすと、呆れたようにライルズさんに声をかける。


「いくらなんでも、我を忘れ過ぎってもんでしょう。だいたい、もう決着付いてますよ?」


「なんだと? これからだろうが」


「いえいえ、ほら」


 ルシアが肩をすくめながら周囲を指し示す。

 そこで初めて気付いたけれど、今やワタシたちの他に立っているのは、闘技場の隅に佇む青い衣の女性だけだった。


 えっと、確か勝ち残りは8組だったはずだけど、この場合、どうなるんだろう?


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