第61話 ヴァリスの気持ち/理解不能
-ヴァリスの気持ち-
「ほらほら、早くいこ?」
「……ああ、今行く」
今日は楽しいピクニック!
シャルちゃんに教えてもらった公園に、ヴァリスと二人で弁当片手にお出かけです。
アルマグリッド武芸大会は個人戦終了後、壊れてしまった会場の修理のために当初の予定よりも一週間ほどの間隔を空けてから、タッグ戦を開始することになった。ヴァリスは一躍有名人になってしまったけれど、だからってずっと建物の中に閉じこもりっきりなのは良くないからね。
だけど、なんだか当のヴァリスは浮かない顔をしている。
「どうしたの?」
「『どうしたの?』ではない。なぜ我がこんな格好をせねばならんのだ」
「だってしょうがないでしょ? いつもの格好で行ったら、あっという間に人だかりに囲まれちゃうよ?」
あたしはにこにこしながら、ヴァリスの頭からつま先までを眺めやった。
試合のときに着ていた『波紋の闘衣』のかわりに身に付けているのは、男物の普段着だ。
丈夫そうな紺色のズボンに白色のアンダーシャツ。こげ茶色の革のジャケットに黒の色眼鏡。さすがに金色の髪の毛まではどうしようもないけれど、この姿を見てあの時のヴァリスだってわかる人は多分いない。
うーん、こうやって改めて見ると、本当に何を着てもヴァリスって様になっていると言うかなんというか、……うん! 格好いい!
「動きにくい服だな。それになぜ、こんな視界を遮るようなものをわざわざ付ける必要があるのだ?」
「ファッションだよ。って言いたいところだけど、色眼鏡については、ばれないようにするためには仕方ないでしょ?」
「そこまでして、外に出る必要があるのか?」
「はいはい、今更そんなこと言わないの!」
「ふむ……」
あたしは強引に話を打ち切る。あんまり出発が遅くなると、帰りにお買い物もできなくなってしまう。
ヴァリスが少し「やれやれ」と言いたげな顔をしているのが、かえって嬉しい。最近は、あたしがちょっと我が儘かな?と思うようなことをお願いしても、そんな顔をして引き受けてくれることが多いのだ。
街を歩いていると、道行く人がちらちらとあたしたちを見ているのが分かる。もちろん、みんなヴァリスの格好よさに惹かれてのことなんだけど、男の人なんかはあたしにも好意的な視線を向けてくれているみたい。
今日はあたしもちょっとお洒落をしているからね。『星光のドレス』も可愛いし、魔法の力で汚れない服だから便利なんだけど、いつも同じじゃ味気ないし。
だから、今日のあたしは、この街で見つけて買った淡いピンクのワンピースを着ている。ふわふわの飾りがついた裾はちょっと短めで膝上ぐらいまでしかないけれど、かわりに白いロングブーツを履いていた。
「この街は、今まで滞在してきたどの街とも違う雰囲気があるのだな」
「それはそうでしょ。なんて言ったって、壁の中の街なんだよ?不思議だよねー」
「それもそうだが、この街にはギルドもなければ王侯貴族もいないのだと思ってな」
「え? そう言えばそうね。うーん、魔工士の人たちの自治都市だっていうから、王侯貴族がいないのは当然なんだろうけど、やっぱりギルドも自治都市みたいなところには入り込みにくいのかな?」
こんなに冒険者が集まる街もなかなか無いと思うんだけど、言われてみれば不思議だよね。あたしが前にいたルーズの町みたいなちっちゃいところにだって、ギルドはあったんだもの。
「今度、シリルちゃんに聞いてみよっか?」
「シリルか。確かに彼女に聞けばわかるかもしれないが、なぜ、シリルはあんなにも博識なのだ?」
「冒険者歴が長ければ当然じゃない? 色々な国を旅してるみたいだし」
「それなのだが、シリルはいったい何歳なのだ?『古代魔族』の姿の時は、かなり若いように見えるが」
「え?言ったことなかったっけ? 16歳だよ、もうすぐ17歳になると思うけど」
「それで、冒険者歴が長いのか?」
あ、言われてみれば……。シリルちゃんって2年前くらいにこの街に来たことがあるようなことを言っていたけど、他にも色々な話を聞く限り、最低でも4年近くは冒険者してるはずなのに。
うそ? 12歳から一人で旅してるの? そっか、それであたしより年下なのにしっかりしてるんだね。
「12歳? シャルの歳と同じか」
さすがのヴァリスも少し驚いているみたい。
そんな会話を続けているうちに、街の建物の並びが途切れ、あたしたちの前には鉄の扉が現れた。
「これが昇降機だね。さ、いこ?」
あたしたちは、円柱都市外縁部直通の昇降機に乗り込む。ちょうど他に乗客はいないみたい。
「アリシア。我はお前に話しておかなければならないことがある」
二人きりになると、ヴァリスが急にそんなことを言い出した。周囲からは、うおんうおんという昇降機の駆動音だけが低く響いている。
「なに?」
あたしはなるたけ平静を装って返事をしたけれど、心臓がどきどきしていた。
「我のこの姿のことと、我がお前に感じている想いについてだ」
え? お、想い? ど、どどど、どうしよう!? まさかそんな展開?
あたしの頭の中はあまりの急展開に、もうパニック寸前。
「まず、お前に『真名』を呼ばれて人身となり、竜王様に繋がりを断つ許可を願い出た時のことだ。竜王様はそれを認めず、逆に繋がりを追認された。最初は、何か竜王様の不興を買ってしまったせいかとも考えた……」
……それは違う。あたしは、ヴァリスの言葉を心の中で否定する。あの時の竜王様に見えたのは、咎める気持ちなんかじゃなくて、『若い頃の自分を見ているようで微笑ましい』みたいな感情だった。続いてヴァリスは、そんなあたしの胸中を読んだかのように自分の言葉に首を振ってみせる。
「……だが、そうではなかったのだ。おそらく竜王様には、すべてお見通しだったのだろう。お前の【スキル】の本質も、我が人間の持つ強さというものにある種の憧れを抱いていたことも。だからこそ追認し、我自身に人身を選ぶか、竜身を選ぶかの最終的な選択権をお与えくださったのだ」
「……う、うん」
ヴァリスは自分の口で、はっきりと「人間に憧れていた」と言った。これまでのヴァリスを知るあたしからは、信じられないようなことだったけれど、シリルちゃんがあの日、魔具工房の屋上で言ったとおりだったんだ。
「そして、そんな自分の心を認めようともせず、必要以上に人間と関わることを避けようとしていた我のために何くれとなく世話を焼き、人間に対する興味を持たせてくれたのは、アリシア、他ならぬお前だ。だから、我はお前に、……感謝している。」
感謝? へえー、ふーん、散々気を持たせておいて、感謝か。まあ、ヴァリスらしいけどね。あたしは、がっかりしたような、けれども何故だかほっとしたような気持ちになった。……でも、油断するのは早かったみたい。
その直後、ヴァリスは苦笑気味の顔をしながら、こともなげにこう言ったんだもの。
「なんのことはない。かつてルシアを【転生】させたシリルのことをルシアの母親のようなものだ、などと言ったことがあったが、我にとってはアリシアが母親のようなものなのかもしれんな」
……え?
「どうかしたか?」
「は、母親? ここまでムードたっぷりに思わせぶりなことを言っておいて、母親?……もう! 知らない! ばかばかばかばか!」
あたしは昇降機が到着し、扉が開くや否や、思いっきりヴァリスを罵倒しながら飛び出した。
「おい、危ないぞ!」
もう、信じられない! よりにもよって、「お母さんみたい」ってどういう意味よ!
昇降機からカリオスト公園までは目と鼻の先だ。あたしは、公園目がけて全力疾走した。
この心の鬱憤を全部吹き飛ばしてやるつもりで風を切って走る。でも、あたしはいつもと違うロングブーツを履いているんだってことを、すっかり忘れていた。
「あ!」
ちょうど展望スペースを確保するために一段高くなった公園の、その段差部分に足をとられる。思いきり前につんのめり、顔から地面に激突する、その寸前。
「まったく、履きなれない靴で無茶をするな」
あたしの身体は追いついてきたヴァリスの腕で、軽々と抱きかかえられていた。
うう、なんだか悔しい。
「いったい、何がどうしたというんだ?」
「だ、だって! そ、その……」
あたしの声は消え入りそうなくらい、小さくなる。よく考えてみたら、あたしが自分で勝手に期待して、勝手にがっかりしただけの話じゃない。ヴァリスにしてみたら、お母さんなんて言葉も、悪気があってのものじゃないだろうし。
って……そういえば。
「ね、ねえ、ヴァリス。ヴァリスってお母さんいるの?」
「いや、『竜族』は一定の寿命を生きた他の『竜族』が残した【マナ】を元に生まれる。元は『魂のつがい』のいた『竜族』のものである必要はあるが、純粋に親とは呼べんな」
「じゃ、じゃあ、ヴァリスにとって、母親みたいって、どういう意味なの?」
「うん? 他の生き物にとって、母親というのは自身の拠り所となる掛け替えのない存在だと聞いたぞ。違うのか?」
「え? 違わないけど……、じゃあ、あ、あたしって、その……ヴァリスにとって、そういう存在ってこと?」
「……そう言ったつもりだったが、そこまで嫌がられるとは思わなかった。以後、気をつけよう」
「ううん! 気をつけなくていい! 嫌がってなんてないから!」
あたしはぶんぶんと首を大きく横に振る。もう、ややこしい言い方するんだから。
でも、嬉しい。嬉し過ぎて、顔が二ヤけてしまうのが止められない。
そんなあたしの顔を見て、ヴァリスが不思議そうな顔をした。
「ふむ。アリシアの機嫌は、山の天気のようにころころと目まぐるしく変わるのだな」
いったい、誰のせいだと思ってるのよう!
-理解不能-
今日は平和で、穏やかな一日だ。
ここ最近、実戦ではないとはいえ、戦闘に次ぐ戦闘を繰り返していた我にとっては、久方ぶりの休息の時間のような気がする。
むろん、決勝戦の後、数日の間はライルズの部屋やヴィダーツ魔具工房から外出もせずに過ごしていたのだから、この感覚も精神的なものには違いない。おそらく、全身の血が沸騰するような高揚感の中で戦い続けたあの時の余韻が抜けきるには、単に身体を休めるだけでは足りなかったのだろう。
アリシアが我に変装までさせて外に連れ出したのも、そんな我を見かねてのことかもしれない。
「ん? どしたの、ヴァリス?」
少し前までの剣幕が嘘のような上機嫌な顔で、アリシアは我を見上げてくる。
人間というのは不思議なもので、身に着けるものが少し違うだけで、その印象が大きく違って見える。花模様が細かくあしらわれている薄紅色をした上下一繋ぎの衣服は、アリシアの白い肌と水色の髪によく映えており、膝丈の長靴もまた、もとからすらりとした脚をさらに際立たせているようだ。
「えっと、ヴァリス? 流石にそんなにまじまじと見られると、ちょっと恥ずかしいかも……」
「む? ああ、すまん」
「あれ? もしかして、今になってようやく、あたしの可愛い服装に見惚れちゃったとか?」
何を言うかと思えば、的外れなことを言うものだ。
「いや、違う」
「即答!? ひどい……」
「我が見ていたのは、アリシアだ。服装ではない」
当然だ。我には人間の衣服のことはよくわからない。防具としての性能があればともかく、そうでもなければさして服そのものに気を留める理由などない。
「へ? あ、えっと、あは、あはは……。そっか、うん。その、ありがと」
妙なことで礼を言うものだ。だが、そう言いながら耳まで顔を赤くして俯くアリシアの姿は、なぜか我の目を惹きつけて離さない。……そんな自分の感情が、理解できない。
それから、我ら二人はカリオスト公園のベンチに腰掛けて雑談に興じつつ、持ってきた弁当を食べた。アリシアの手料理だというそれは、なかなかに味の良いものだったが、シリルの作る料理には少し及ばないようであった。
食事の際、我がうっかりそんな感想を口にしたばかりに、アリシアが頬を膨らませて機嫌を損ねてしまい、再び機嫌を取り直すのに一苦労する場面もあったが、それなりに心安らぐ時間を過ごすことができたように思う。
「じゃあ、今度は街の中を見て回ろうよ」
「それはいいが、あまりはしゃぎすぎると危険だぞ?」
「わかってる!」
この円柱都市アルマグリッドの特徴は、壁面内部の町並みがブロックごとにいくつかの種別に区分けされている点だ。大まかに分ければ、住宅街、武器街、防具街、雑貨街、飲食店街、ホテル街といったところらしいが、アリシアの興味はもっぱら装飾品の類が売られている雑貨街にあったようだ。
雑貨街はとくに一般の観光客に人気の場所だということで、魔法具によって明るく照らし出された通り沿いには、きらびやかに飾り付けられた様々な店舗が立ち並んでいる。
「あ、見て見て! これ、すごく可愛い!」
そんな通り沿いの店の一つで、アリシアは手に取ったものを我に示しながら、何か言いたげな顔をしている。
「気に入ったのなら、買ったらどうだ?」
「……買って」
「なに? だが、アリシアの所持金は十分あるはずだろう?」
「もう! そう言う意味じゃないの。いいから買って?」
「ふむ、よくわからんが、わかった」
アリシアが何にこだわっているのか、我にはよくわからない。
なんにしてもそれで彼女が満足するなら、まあいいだろう。我はアリシアから手渡されたものを手に、店員の待つカウンターへ向かった。
「十万五千ガルドになります」
やはり、以前買った魔法具に比べればかなり安い。アリシアの手持ちで買えないような金額ではない。我も一応、現金は持たされているがあまり使ったことはないため、手持ちは十分だ。適当に支払いを済ませる。
「お客様。こちらは、贈答品として包装なさいますか?」
「む?」
どういう意味だ? 我が首を傾げていると、横からアリシアが口を挟む。
「いえ、結構です。……ヴァリス、それ、今ここであたしの首にかけてくれる?」
「?」
訳が分からないながらも我は、アリシアに促されるままにそれを彼女の首にかける。
絡み合う金と銀の鎖。その先に取り付けられた青く澄んだ宝石のペンダント。色合いこそ美しいが、何の【魔力】も感じられないただの石だ。
……だというのに、
「ありがと。あたし、これ、一生大事にするね」
アリシアは満足そうに言って笑う。ちらりと横に目を向ければ、先ほどの店員が微笑ましげにこちらを見ているのがわかった。その視線に晒されていると何故か、いたたまれないような気分になる。……とにかく、早く店を出よう。我はアリシアの手を引くように、足早に店を出た。
「あ、ちょっと、ヴァリス、痛いってば!」
と、ちょうど店を出たところで、意外な顔にばったりと出会った。
「よう! 誰かと思えばヴァリスじゃないか! うん? なんだ、その格好? 畜生、いい男はどんな格好をしても似合うもんだなあ」
声をかけてきた相手は、ライルズだった。
「しーっ!みんなに気付かれちゃう!」
アリシアが慌てて注意するも、時すでに遅し、だ。あっという間に周囲に無数の人だかりができはじめる。
「おっと、やべえやべえ、仕方ねえ。責任とるか。……おい、てめえら! 見せもんじゃねえんだぞ、こら! 武芸大会優勝者のプライベートを邪魔するなんて、命が惜しくないのか? ええ!?」
どこぞのチンピラのような言葉だな。我は呆れてしまったが、一応の効果はあったようで、群衆は徐々に我らから離れ、遠巻きにこちらを見る人々が残るだけになった。
「にしてもなんだな、相変わらず随分仲がいいみたいじゃねえか。羨ましいこったぜ」
「な! 別にそんなんじゃ!」
アリシアは慌てたように我の手を振りほどく。しかし、一瞬後には何かに気付いたように声を上げた。
「あ、そういうライルズさんだって、隅に置けないなあ、そんなに可愛い彼女さん連れて」
見れば、ライルズの斜め後ろに隠れるように、一人の娘が立っていた。涼やかな水の色をした魔導師風の長衣を纏い、濃紺の髪を長く伸ばした彼女は、ライルズに影のように付き従いながら、穏やかな笑みを浮かべている。
「ああ、そんなんじゃねえよ。こいつはアイシャ・オーシャンノース。今度のタッグ戦で俺と組む冒険者仲間だ」
「アイシャです」
凪いだ水面のような、穏やかで澄み切った声。軽く頭を下げる動作ですら、流れる水のように滑らかで淀みというものをまるで感じさせない
ライルズとタッグを組むというだけあって、かなりの実力者であるように見える。
「お、気付いたか? せっかくのバトルに足手纏いな奴と出るわけにもいかないだろ? その点、こいつとならそんな心配もないってもんだ」
「やはり、名の知れた冒険者なのか?」
我の問いに、アイシャは首を振る。
「武芸大会で優勝された貴方ほどでは、ありませんわ」
「おいおい、謙遜するなよ、アイシャ。【水属性禁術級適性スキル】“蒼氷の結び手”の所持者自体、中々いるもんじゃないっていうのに、お前ときたら体術も【魔鍵】の力も大したもんじゃないか」
なるほど、それは侮れない。だが、アイシャの方はライルズの言葉に微妙な顔をした。
「……褒めてくれるのは嬉しいですけれど、わざわざこちらの手の内を明かさなくても」
「わざとだよ。俺はこいつらの手の内を知ってるからな。フェアな条件でやりたいのさ」
「ふふ。あなたらしいですわね」
濃紺色の瞳を細め、柔らかく笑うアイシャ。どうやらそれなりの信頼関係はある間柄のようだな。だが、それにしても……。
「ライルズ。勘違いしているようだが、我はタッグ戦には出ない」
「ええ! だってルシアが出るって言ってたぜ?」
「出るのはルシアくんとシャルちゃんの二人なんだよ。ルシアくんは保護者役だね」
アリシアの言葉に、ライルズはこの世の終わりだとでもいうような顔をした。
「まじかよ。それじゃ、せっかく慌ててコンビの相手を見つけてエントリーまでしたのに、無駄じゃねえか!」
「そんなことはない。シャルは小さくとも、かなりの実力者だ。甘く見ていると貴様とて痛い目を見るぞ?」
「へえ、そうかい。まあ、それならそれで、せいぜい楽しみにしておくかな」
ライルズは明らかに半信半疑な様子で、軽く手を振りながら去って行った。去り際にアイシャが軽く頭を下げてくる。
「なんだか、がっかりしながら行っちゃったね」
「ああ。だが、ルシアたちにとって有益な情報は得られたな」
「アイシャさんのこと? まあ、それもそうだけど、やっぱりライルズさんも隅に置けないなあ」
「ただの冒険者仲間だと言っていたと思うが?」
「ふふん。ライルズさんはともかく、アイシャさんの方は、かなり好意を持っているみたいだったもんね」
そうか、確かアリシアにはその手の感情が読み取れるのだったか。
……いっそのこと、我自身にも理解できない我の心について、その『力』で教えてもらいたいものだが、何故かそれだけはできないらしい。どうにも、不便なものだな。