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異世界人と銀の魔女  作者: NewWorld
第6章 竜の誇りと最強の傭兵
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第60話 戦う理由/やるべきこと

三日連続更新のラストです。次回は三日後ぐらいに幕間を更新予定です。

     -戦う理由-


 アルマグリッド武芸大会の個人戦。優勝者は大会始まって以来の同時優勝により、エリオット・ローグとヴァリス・ゴールドフレイヴの二人に決まった。

 それは、とりもなおさずヴァリスが世界最強の冒険者と肩を並べたことを意味する。

 表彰式は大会の全日程が終了後に、このアルマグリッドの外から招かれた王侯貴族などが見守る中で行われるらしい。“魔工士”たちの自治都市であるこのアルマグリッドにおいて、そうした国家レベルの賓客が招かれるのはこの武芸大会の時期だけらしいが、その分世界の注目度はそれなりに高いはずだ。


「いくらなんでも、有名になりすぎなんじゃないか?」


 俺はライルズさんの借りている高層住宅の窓から見える景色に圧倒されていた。

 眼下に集まる人の群れ。会場から出た途端、押し寄せる人の波に前回以上にもみくちゃにされた俺たちは、二手に分かれてどうにかその場を抜け出した。俺とヴァリスの二人はライルズさんの助けを借りてこの部屋まで避難させてもらったし、シリルたちの方は多分ガアラムさんの工房に戻っているはずだ。

 流石に高級住宅なだけあって、玄関には門番もいるし、セキュリティは万全らしいけど、これじゃあ俺たちの方は、しばらくガアラムさんの工房には戻れないな。


「まったく、やってくれるぜ。まさか本当にエリオットの奴にひと泡吹かせちまうとはな」


「ふん。勝ったわけではない」


 ライルズさんはヴァリスの言葉に呆れたように肩をすくめる。引き分けただけでも十分すごいっていうのに、何を言っているんだか。


「でもさ、あれだけ強くなってくれたら、これからの旅も安心してできるってものだよな。今のヴァリスなら大概の敵は相手にならないんじゃないか?」


「当然だ。お前たちを守ることが我の使命なのだからな」


 ヴァリスの声に、少しだけ得意げな響きが混じっているように感じた俺は、つい笑ってしまいそうになる。いつもむすっとした顔をしているけど、やっぱり嬉しいんだろうな。


 ふと気がつくと、ライルズさんがそんな俺を珍しい物でも見るような目で見ていた。


「……ルシア、ちょっと付き合え。退屈だから運動するぞ」


「へ? 運動ってまさかトレーニングですか? 勘弁して下さいよ。リラさんもシャルもいない以上、俺を治してくれる人がいないんですよ?」


 火傷したまま治してもらえないのは、御免こうむりたいよな。だが、ライルズさんはますます妙な顔をしたかと思うと、おもむろに立ち上がり、有無を言わさない様子で俺について来るよう促してきた。なんだか、逆らえる雰囲気じゃないな。


「訓練なら、我も付き合うぞ?」


「いや、お前は休んでおけよ。【生命魔法】(ライフ・リィンフォース)で回復した傷ってのは、芯にはダメージが残っていることが多いんだからな」


「ふむ。そうか」


 ライルズさんの言葉に、ヴァリスは意外にも素直に引き下がった。やっぱり疲れているんだろうな。って、それより俺、やっぱり訓練に付き合わされるのか? 参ったなあ。


 そして、トレーニングルームに入るなり、ライルズさんは俺に椅子に座るよう勧めてきた。


「あれ? 訓練しないんですか?」


「あれは口実だ。ちょっとお前と二人で話をしたいと思ってな」


「はあ、なんでしょう?」


 話の展開が掴めずに首を傾げる俺を、ライルズさんは半ば呆れたような、半ば感心したような目で見つめて、……いや、睨みつけてくる。


「お前はさ、もう少し自分にプライドを持った方がいいんじゃないのか?」


「プライド、ですか?」


「ああ。さっきから聞いてれば、ヴァリスがいれば旅は安心だの、訓練の怪我を治してくれる人がいないだの、相手が自分より強いことが前提みたいな言い方じゃねえか」


「え? でも、事実だと思いますけど」


「そうじゃねえよ。お前がそれを、なんの抵抗もなく受け入れているのが気に食わないんだ。少しも悔しそうに見えないのがな」


 なるほど、そういうことか。でも実際、どうなんだろう? 初めてヴァリスやライルズさんと戦ってぼろくそに負けた時も、これまでの試合でどんどん強くなるヴァリスの姿を見続けていた時も、エリオットの奴に名前すら聞かれずに用事を済まされた時でさえ、俺は悔しいなんて思わなかった。……いや、少しは思ったかもしれないけど、自覚することすらないレベルのものだった。


「だいたい、お前には剣士系最上級スキルの“剣聖”があるんだぜ? それは戦うために生まれてきたと言っても過言じゃない能力だ。普通なら、それでプライドを持たない奴の方が異常だろうが」


「うーん、そうは言われても……。ライルズさんはどうなんです?」


「……悔しいさ。決まってんだろ? エリオットの奴には本気すら出させられないままに四連敗だし、ほんの2、3か月前に試験してやったヴァリスにもあっさり追い抜かれちまったんだ。悔しくないわけがない。例え奴らが、生まれ持ってどんな特別な才能を備えていようともだ。そんなものは言い訳にもならない」


 ライルズさんは、俺の事を強く睨みつけたままで言葉を続ける。


「だから俺は、お前がどうしてそんな風にしていられるのかが、不思議なんだよ。今はあいつがいないから正直に言えば、だ。俺は、ヴァリスに嫉妬している。あいつの声に得意げな響きが少しあるだけで、意味もなく腹が立っちまうぐらいにはな」


 みっともない話だろう? と吐き捨てるように言うライルズさん。

 ……そんなことはない、と俺は思う。ライルズさんは本当に強い人だ。普通ならこんなこと、独り言としてだって口にはできないはずだ。自分の弱さや醜さと正面から向き合って、目の前にどんな困難が立ちふさがろうと、苦しみもがき、あがいてでも、それを乗り越えようとしている。

 俺は改めて、このライルズ・ハウエルって戦士のことを尊敬に値する人物だと思った。

 だから俺は、自分の気持ちを正直に話すことにした。


「ライルズさん。俺は、自分に自信が持てないんです。かつて失敗した俺は、また同じ失敗を繰り返すんじゃないかって、怯えているんです。だから、貴方みたいに頑張れない。頑張った先に待つものが、奈落の底かもしれないと思うと、駄目なんです。悔しいって気持ちは、目の前にある困難を全力で乗り越えようと思うからこそ、生まれるものでしょう?」


 負けてもいいと思っているなら、悔しいなんて思うわけもない。きっと俺は、意気地なしなんだろう。


「ばーか。だったら、お前は何のために戦っているんだよ。その理由って奴は、お前に負けることを許すのか? 訓練ならいいってもんじゃないぜ? 訓練で負ける奴は、実戦でもいつかは負ける。それが本当に、わかってんのかよ?」


 ライルズさんは俺を睨みつけていた視線を和らげた。茶色の瞳には、挑むような、試すような、そんな光が見え隠れしている。


「それは……」


 俺が戦う理由……?

 今の俺に、そんなものがあるのだろうか? 俺がこれまで戦ってきたのは、目の前に『敵』がいたからに過ぎない。当面の目標に決めた『冒険者』って奴が、戦う職業だからでしかない。もう少し積極的な理由があるとすれば、『仲間を護るため』ってことになるだろうか。


 そこまで考えて、ふと気づく。

 そもそも、『敵』というのは誰にとっての敵だろう?

 俺はなぜ、『冒険者』になることを決めたのだったか?

 そして、俺にとって『仲間』とは、いったい何なのだろう?


 ……その、すべての中心に『彼女』がいた。

 シリルの敵こそが俺の敵で、シリルに恩を返すために冒険者となり、シリルとともにあったからこそ、俺にもかけがえのない仲間ができた。ならば、それこそが、俺の『理由』だ。

 そしてそれは、その理由は、俺に、負けることを許さない。

 いつか俺の目の前に、今の俺ではかなわない相手が現れたとしたら、頑張ることが怖いだなんて、甘えたことを言っている場合じゃない。あの日の後悔より、もっと酷い後悔を俺は味わう羽目になる。それだけは、絶対に嫌だ。


「はっ! ようやくいい面構えになってきたじゃねえか。そうだよ。そうじゃなくちゃいけない。やらずに後悔するよりは、やって後悔する方がいいって言うだろ?」


「……ですね。やっぱり、俺も悔しがって、頑張って、もっと強くならなくちゃいけないんだと思います。いま、気が付きました。ライルズさんのおかげです」


 ライルズさんは、そんな俺の言葉にニカっと笑みを浮かべると、腰かけていた椅子からゆっくりと立ち上がった。そして、スタスタと部屋の真ん中まで歩み寄ると、勢いよく振り向く。その手には、いつの間にか【魔鍵】『静寂なる爆炎の双剣(サージェス・フォルム・ソリアス)』が握られている。


「ようし! そんじゃ、話もまとまったところで、いっちょうやるか!」


「ええ! それは、口実だって言ったじゃないですか!」


「うるさい! 強くなりたいんだろう? いいからさっさと、俺の憂さ晴らしの対象になりやがれ!」


「ああ!? いま、本音が出ましたね! それって単なる八つ当たりじゃないっすか!」


「心配するな! 【魔法薬】なら山ほどあるぜ。もっとも死ぬほど傷口にしみる奴だけどな!」


 ライルズさんは楽しそうに笑う。


 むう、仕方がない。ここはひとつ覚悟を決めるか。俺はそんな風に思いながらも、なんとなく心が高揚してくるのを感じていたのだった。



     -やるべきこと-


 『ルギュオ・ヴァレスト』。混沌の坩堝(るつぼ)

 『魔族』が行った実験の中でも、最も非人道的なものである。

 それは、もともとモンスターなどの生体を利用した研究分野を得意とする『パラダイム』が行ったものとしては、公的に記録が残る最後の実験でもあった。

 

「僕の村を滅ぼしたのが『魔族』だって? わざわざ僕の控室のテントまで押しかけてきて、何を言うかと思えばそんなことか」


 わたしの目の前には、灰色の髪に灰色の目をした男、エリオット・ローグがいる。彼は控室の簡易椅子に腰かけたまま、呆れたように言った。もっとも、あくまで表情ひとつ変えはしなかったけれど。


「やれやれ、僕の村も散々だな。『悪魔憑き』の住む呪われた村なんて言われたかと思ったら、今度は『魔族』に襲撃された村とはね」


 滅ぼされた自分の村のことを語る彼の顔には、依然として何の表情も見えない。


「襲撃じゃないわ。『実験』よ。……貴方は、生まれつき『亜人種』だったのかしら? 仮にそうだとしても、少なくとも十年前まではただの『亜人種』でしかなかったはずよ」


「……なんでそう思う?」


 わたしの言葉に、彼の声が一段低くなった。わたしの背筋に、冷たいものが走る。

 かなりデリケートな問題だけれど、それでも、彼には真実を伝えなくてはいけない。

 

「知っているからよ。あなたの村の人が『ルギュオ・ヴァレスト』と呼ばれる『魔族』の実験で半ばモンスターと化したことも、『魔族』の情報操作で集められた人間たちが、村人たちを化け物と信じて殺害したことも、全部ね」


 具体的な方法は不明だけれど、『パラダイム』は山間の小さな村で誰にも気付かれないように準備を進め、ある日一斉に、村人たちに【因子暴走(オーバードライブ)】を引き起こした。およそ百人近い数の村人たちは、例外なく全員が身体のほとんどをモンスターの因子に侵食され、人としての心も失い、暴れ狂った挙げ句、討伐のためにやってきた人間の一団に壊滅させられたのだ。もっとも、その人間たちを手引きしたのは『セントラル』だったけれど。


「……驚いた。『モンスターと化した』……か。君は本当に知っているんだな。確かに僕は、皆が僕の村の名前を『ルギュオ・ヴァレスト』なんて呼んでいるのを不思議に思っていたけれど、今の話が本当ならつじつまも合う」


「なら、信じてくれるのかしら?」


「君が僕の村で十年前に起きたことをそこまで正確に知っている以上、少なくとも嘘だと決めつけることはできない。……でも、たとえそうだとして、なぜ君がそんなことを知っているんだ?」


 やっぱり、それを聞かれるわよね。わたしは、体内の因子制御を少し速め、髪の毛の先を銀色に染める。


「わたしもある意味ではあなたと同じ、『魔族』に生み出されたものだからよ。もっとも、貴方の場合は『造りかえられた』と言った方がいいのかもしれないけど」


「その髪は? まさか君も【因子所持者(ハイブリッド)】なのか?」


「わたしは、人間と『魔族』の因子をかけ合わせた存在として生み出された、『魔族』の【因子所持者(ハイブリッド)】よ」


「……なるほど、『魔族』なんて伝説上の存在だと思っていたけどな。でも、それが本当だとして、どうして君は僕にそんな話をする? 君と『魔族』がどんな関係かは知らないが、少なくとも僕に今の話をするメリットはないんじゃないか?」


 彼の言葉は、あくまで冷静だ。自分の村が滅びた理由に『魔族』が関与していると聞かされてなお、取り乱しもしないなんて、【魔鍵】で精神制御でもしているのだろうか?


 いずれにしても、わたしは彼にすべてを話すことに決めている。

 あの滅茶苦茶な実験が行われたのは、対立する『セントラル』がわたしという『最高傑作』を生みだしたことに焦りを感じた『パラダイム』が暴走したからだ。もちろん、そんなことにわたしが責任を感じる必要はないのかもしれないけれど、知ってしまった以上、何もせずにはいられなかった。

 そう話すと、エリオットは灰色の目をすうっと細めた。


「だから、わざわざ試合後のこのタイミングにおしかけてきたってわけか」


 エリオットは恐らく、表彰式を待たずにこの街を後にする気だっただろう。だから、チャンスは今しかなかった。


「でも、危ないことをするね。そんな話を聞かされた僕が君を逆恨みして殺すかもしれないとは、思わなかったのか?」


「貴方に、真実を知ってもらいたかった。あなたが復讐を望むなら協力するし、望まなくとも、できる限りのことはするわ。わたしを殺すとしても、その前に考えてほしいだけ」


 エリオットは、とうとう目を閉じてしまう。そしてしばらく黙考していたかと思うと、いきなり目を見開いた。


「わからないな。なんでそんなことをする? かかっているのは自分の命なのに」


「わたしは、わたしの存在のせいで犠牲になった人たちに、なにもしてあげられないの。だって、みんな……死んでしまったから。でも、貴方がいた。間接的にであろうと、わたしの存在が貴方の村の運命を狂わせたのなら、わたしはどんな形でも、その償いをしたい」


 そう言うと、エリオットはそれまで腰かけていた椅子から立ち上がり、立ちつくしたまま話を続けていたわたしに、ゆっくりと近づいて来る。

 わたしは、動かなかった。彼の動作があまりに自然で、わたしに何の恐怖も与えなかったというのもあるけれど、何よりもわたし自身、彼には何をされても仕方がない立場なんだと思っていたからだ。


 エリオットはわたしの目の前に立ち、わたしの目を覗き込むようにしながら、いきなり、わたしの額を指で弾いた。


「いたっ!」


 え? え? なに? わたし、今、何をされたの? 今のって、ルシアが時々シャルをからかう時にするような奴よね? わたしは頭の中に大量の疑問符を浮かべ、目を白黒させながら額を両手で抑えた。


「馬鹿だな。君は。君が死んだら犠牲になった人はもっと浮かばれないじゃないか。君は生きて、死んだ人の分まで何かを成し遂げなくちゃいけないんだぞ。縮こまって後ろを向いてウジウジしている場合じゃない。胸を張って前を見て意気軒昂に生きていくのさ」


 さっきまでのテンションからは考えられないエリオットの言葉。彼は一瞬だけ悪戯っぽい笑みを浮かべたかと思うと、すぐに元の無表情に戻る。


「驚かせたかな? 今のはさ、僕の恩人が、かつて僕にしてくれたことで、かつて僕に言ってくれた言葉なんだ。だから、僕は復讐なんて考えない。僕のために犠牲になった村人たちのために、僕がやるべきことはそんなことじゃない。『ルギュオ・ヴァレスト』じゃなく、『ローグ村』の名前を皆に知ってもらうため、自分の名を世間に轟かせることなんだ」


「そう……よね。わかってる。わたしには、わたしの『やるべきこと』があるんだから。でも、そんな風に考えるのは、難しいわ。結局、罪と正面から向き合わない自分に言い訳しているだけみたいな気がしてくるもの」


「罪悪感を感じるんだろう? でも、それが『罪と向き合う』ってことなんだ。償いだなんて言って自分を追い込んだつもりでも、罪悪感を感じないなら、それこそ逃げていることに他ならない。死ねば許されるのか? そうじゃないだろう?」


 また、エリオットの口調が変わった。多分これも、その『恩人』の言葉なんだろう。

 復讐を考えていない、か。彼が冷静なのはそのせいね。でも、口で言うほど簡単なことじゃない。彼は、生まれ育った故郷のすべてを奪われているんだから。なのによく、こんなにも前向きに考えられるものだと思う。


「……大したものね。その『恩人』って人も」


「ああ、エイミアさんはすごい人だよ。彼女がいなければ、今の僕はない」


 え? エイミア?……そういえば、ルシアがエリオットにエイミアの事を聞かれたって言っていたけど、二人にどんな繋がりがあるのかしら?


「そういえば、君もエイミアさんに会ったんだろう? 黒髪の彼からも話を聞いたけれど、元気でいてくれているのかな?」


「ええ、弟さんのことも色々あったけれど、今でもきっと、立派に騎士団長の職責を全うしているんじゃないかしら」


 わたしには“魔王の百眼”はあっても、千里眼はない。この時すでにエイミアが聖騎士団長を辞めてセイリア城を旅立っているだなんて、夢にも思わなかった。


「とにかく、……真実を教えてくれて、ありがとう。やっぱり僕の村は『悪魔憑き』の呪われた村なんかじゃなかった。みんなは、僕のせいで死んだわけじゃ、……なかったんだ。僕自身が化け物と罵られようと、それがわかっただけでも十分だ」


 呟くように吐き出されたエリオットの満足げな言葉に、わたしは首を振る。


「駄目よ。貴方以外のいったい誰が、貴方と貴方の村の存在を正しく証明できると言うの? 『ローグ村のエリオット』は最強の戦士系冒険者。あなたがこれまで示し続けてきたことは、ちょっとくらい人間離れした姿を見せたぐらいで、無駄になるようなものじゃない。だから、表彰式にもちゃんと出なさい。それが貴方のやるべきこと、なんでしょう?」


「……参ったな。いつの間にか立場が逆になってる。結局、僕の方が君から訓辞を受けたみたいじゃないか。やっぱり、エイミアさんのようにはいかないか」


 エリオットは、ようやく年相応の少年のような笑みを浮かべた。

 当然よ。わたしは、16歳の男の子に言い諭されて終わるほど、子供じゃないわ。


 ……もっとも、わたしも実は、16歳なんだけど、ね。


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