没落寸前だけど公爵様に求婚される
初めて書きます。
頑張って最後まで書きます。
王城の舞踏会は、華やかな音楽と笑い声で満ちていた。
その空気を裂くように、突然大きな声が響く。
「エリシア・ルミエール!お前との婚約をここで破棄する!」
ざわり、と会場が揺れた。
私はゆっくりと顔を上げる。
婚約者であるアルフォード様は、私ではなく隣に立つ令嬢を抱いていた。
淡い桃色のドレスを着た彼女は、勝ち誇ったように微笑んでいる。
「理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「そんなことも分からないのか!ならばお前にも分かるように教えてやる!君はいつも不愛想で笑顔も見せない。月に一度の茶会では面白い話の一つもできないし。それに比べて彼女は愛想がいいし、会話もおも白い。彼女と一緒にいる方がよほど楽しい。何より君の家と違って借金などないからな」
周囲の貴族たちからくすくすと笑い声が漏れた。
・・・そうですか。
胸の奥が少しだけ痛んだが、私はゆっくりと頭を下げる。
「承知いたしました。アルフォード様」
静まり返る会場にぽかんとした顔をしている婚約者様。
大方泣きついてくると思っていたのだろう。
けれど、これでいい。
父の借金を抱えた没落寸前の伯爵家。
この婚約がなくなれば、もう社交界に居場所はない。しかし、それでもいいと思い私は静かに踵を返した。
ー帰ろう。今後のことを考えないといけない。
「待て」
低い声が私を呼び止めた。
振り返ると、そこに立っていたのは一人の男性。
銀色の髪、鋭い蒼い瞳。
王国で最も恐れられている公爵ーーレオンハルト様だった。
思わぬ人物の登場で会場がざわめく。
どうして、この方が。
「今の話は本当か?」
「……はい。婚約は破棄されました」
一瞬の沈黙。
「ならば問題ないな」
何かを決意した顔つきでレオンハルト様は私の手を取り、はっきりと宣言した。
「エリシア・ルミエール伯爵令嬢私と結婚していただきたい」
「なっ......!?」
アルフォード様が声を荒げる。
「何を言っているんだ!」
レオンハルト様は、冷たい目で彼を見下ろした。
「彼女を手放したのだろう?だったら私が彼女に求婚をしても何の問題もないだろう」
会場が静まり返る。
私は何がどうしてこうなっているのか分からなくて固まってしまった。
レオンハルト様が、私を?
「……どうして」
思わず呟くと、笑わないことで有名な彼が小さく笑った。
「気づいていなかったのか」
その声は、先ほどよりもずっと優しい。
「私はずっと待っていた」
「え……?」
「君があの男の婚約者だったから、手を出さなかっただけだ」
彼は私の手を強く握る。
「だが、もう遠慮する必要はない」
蒼い瞳がまっすぐ私を射抜いた。
「エリシア。私と結婚してくれ」
会場が息を呑む。
私は信じられない思いで彼を見る。
「……本当に、私で宜しいのですか」
没落寸前の伯爵令嬢なのに。
レオンハルト様は迷いなく答えた。
「君だからだ」
そして低く囁く。
「もう二度と離さない」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった。
読んで頂きありがとうございました!




