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第9話 封印階層


 通路の終端に、

巨大な扉が

立ちはだかっていた。


 金属でも、

石でもない。


 黒く、

鈍く、

脈打つような

質感。


「……扉が、

生きている?」


 後方の探索者が

声を潜める。


 扉の中央には、

複雑な文様。


 円環と、

爪痕のような

線。


 荒神龍斗は、

それを見た瞬間、

胸を押さえた。


 ――知っている。


 意味は

わからない。


 だが、

懐かしい。


     ◆


 Aランク探索者が、

慎重に

手を伸ばした。


 触れた瞬間。


 ドクン。


 空間が、

大きく脈動した。


「下がれ!」


 叫び声と

同時に、

扉が

軋みながら

開く。


 中は、

広間だった。


 天井が高く、

柱が並ぶ。


 だが――

床一面に、

無数の影。


「……魔物?」


 否。


 次の瞬間、

影が

一斉に

立ち上がる。


 ――ガーディアン。


 封印を守る

人工魔物。


 鎧姿。

だが、

目は赤く

光っている。


 十体以上。


「戦闘だ!」


     ◆


 一体目が、

槍を構え、

突進。


 速い。


 龍斗は、

半歩下がり、

刃を

斜めに走らせた。


 関節部。


 だが、

止まらない。


「……硬い」


 二体目、

三体目。


 包囲。


 剣が、

同時に

振り下ろされる。


 龍斗は、

床を転がり、

柱の影へ。


 衝撃で、

床が

砕ける。


 粉塵。


 視界が、

遮られる。


 だが――

龍斗には

見えていた。


 音。

気配。

踏み込み。


 粉塵の中から

飛び出し、

一体の背後へ。


 短剣を

首元へ

突き入れる。


 火花。


 内部で、

魔力が

弾ける。


 ガーディアンが

崩れた。


     ◆


「連携するぞ!」


 Aランクが

叫ぶ。


 前衛が

押さえ、

後衛が

魔法を放つ。


 だが、

ガーディアンは

止まらない。


 次々と

踏み込む。


 龍斗は、

無意識に

前に出ていた。


「荒神、

下がれ!」


 聞こえない。


 胸の奥が、

熱い。


 鼓動が、

重なる。


 ――守れ。


 声ではない。

意志。


 龍斗は、

深く踏み込み、

短剣を

連続で突き出す。


 一体。

二体。


 関節。

首。

核。


 体が、

最適な動きを

選ぶ。


 だが、

背後。


 重い一撃。


「っ――!」


 鎧の拳が、

背中を

打つ。


 吹き飛ぶ。


 壁に

叩きつけられる。


 息が、

詰まる。


「荒神!」


     ◆


 視界が、

暗くなる。


 だが――

完全には

落ちない。


 代わりに、

広がる光景。


 空。

雲海。

巨大な影。


 翼。


 咆哮。


「……まだだ」


 自分の声か、

別の声か

わからない。


 龍斗は、

歯を食いしばり、

立ち上がった。


 背中が、

熱を帯びる。


 見えない何かが、

背後に

重なった感覚。


 ガーディアンが、

一瞬

たじろぐ。


「……怯えてる?」


 探索者が

呟く。


 龍斗は、

一歩踏み出した。


 床が、

軋む。


 空気が、

震える。


 短剣を、

全力で

突き出す。


 正面の

ガーディアンの

胸部。


 装甲が、

砕ける。


 内部の核が、

露出。


 そのまま

叩き割る。


 爆ぜる光。


     ◆


 次々と

崩れる

ガーディアン。


 まるで、

何かに

怯えるかのように。


 最後の一体が

倒れた時、

広間に

静寂が戻った。


 探索者たちは、

誰も

動けなかった。


 Aランク探索者が、

龍斗を見て、

低く言う。


「……今のは」


「スキルじゃない」


「存在そのものだ」


 龍斗は、

荒い息のまま、

奥を見た。


 広間の最深部。


 台座があり、

その上に――

何かが

封じられている。


 長い柄。

鋭い穂先。


 槍。


 だが、

まだ遠い。


 封印階層は、

通過したに

過ぎない。


 荒神龍斗の胸で、

低く、

確かな鼓動が

鳴り続けていた。


 竜神は、

確実に

近づいている。


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