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第19話 人と竜の境界線


 闇。


 音も、

重さも、

温度もない。


 荒神龍斗は、

ただ

立っていた。


     ◆


 地面は

黒い水面。


 一歩踏み出すと、

波紋が

金色に

広がる。


「……ここは」


 声が、

やけに

遠い。


     ◆


「――精神界だ」


 背後から、

低く

重い声。


 振り向く。


     ◆


 そこにいたのは、

竜。


 巨大。


 天を

覆うほどの

金色の鱗。


 瞳は、

燃える

恒星。


     ◆


「俺……

なのか」


「違う。

お前の

前世だ」


 竜は

ゆっくり

首を下げる。


     ◆


「竜神。

世界を

護り、

世界を

滅ぼした

存在」


 言葉が、

胸に

刺さる。


     ◆


「……滅ぼした?」


「力を

抑えられず、

な」


 竜は

笑った。


 自嘲。


     ◆


 次の瞬間、

景色が

変わる。


 燃える

都市。


 砕ける

大地。


 逃げ惑う

人。


     ◆


 龍斗の

胸が

締め付けられる。


「……俺が、

やったのか」


「そうだ。

だから、

今度は

選べ」


     ◆


 竜が

前脚を

上げる。


 爪が

振り下ろされる。


 世界が

裂ける。


     ◆


「――来い」


 それは、

試練。


 龍斗は、

宝槍を

呼ぶ。


 蒼光。


 手に

馴染む。


     ◆


 突進。


 竜の

速度は、

概念外。


 一瞬で

距離が

消える。


     ◆


 龍斗は、

横に

跳ぶ。


 爪が

かすめ、

水面が

蒸発。


     ◆


 反撃。


 突き。


 だが、

鱗に

弾かれる。


 衝撃が

全身を

打つ。


     ◆


「……硬すぎる」


「それが、

神だ」


     ◆


 尾が

唸る。


 横薙ぎ。


 龍斗は、

防御。


 蒼光の

壁。


 だが、

粉砕。


 吹き飛ばされる。


     ◆


 転がり、

立ち上がる。


 息が

荒い。


 だが、

恐怖は

ない。


     ◆


「……力で

勝つ必要は

ない」


 龍斗は、

構えを

変える。


 深く、

低く。


     ◆


 竜が

踏み込む。


 その瞬間。


 龍斗は、

懐へ。


 鱗の

隙間。


 心臓の

位置。


     ◆


 突き――

ではない。


 宝槍を

下げ、

手を

伸ばす。


     ◆


「……止めたい」


 声が

震える。


「もう、

壊したくない」


     ◆


 竜の

動きが

止まる。


 巨大な

瞳が

揺れる。


     ◆


「……それが、

答えか」


 竜は、

ゆっくり

息を

吐いた。


     ◆


 次の瞬間、

現実が

割り込む。


     ◆


 警報。


 爆音。


 精神界が

揺れる。


「……まだ、

終わっていない」


     ◆


 景色が

二重になる。


 現実。


 都市。


 再出現した

裂け目。


     ◆


「……何度も、

来る」


 竜の声。


「だから、

契約しろ」


     ◆


「完全な

支配か、

完全な

融合か」


「選べ」


     ◆


 龍斗は、

目を

閉じる。


 思い浮かぶ

顔。


 守りたい

人。


 戻りたい

日常。


     ◆


「……融合だ」


「俺は、

俺のまま

強くなる」


     ◆


 竜は、

長く

見つめ――

笑った。


「……いいだろう」


     ◆


 金色の

光が

降り注ぐ。


 鱗が

砕け、

溶け、

龍斗に

吸い込まれる。


     ◆


「――新生、

竜神契約」


     ◆


 精神界が

崩れ、

現実へ。


     ◆


 龍斗は、

瓦礫の中で

目を

開けた。


 全身に

痛み。


 だが、

制御は

完全。


     ◆


 裂け目から、

新たな

魔物。


 強大。


 だが。


 龍斗は、

静かに

立つ。


 宝槍を

構える。


     ◆


「……もう、

暴走しない」


 踏み込み。


 世界が

震えた。


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