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第11話 覚醒の兆し


 宝槍を握った瞬間、

世界が

軋んだ。


 空気が、

引き絞られる。


 龍斗の足元から、

淡い蒼光が

広がり、

円陣を描く。


「……何だ、

これは」


 探索者たちが

距離を取る。


 槍の穂先が、

低く

鳴動した。


 ――ゴォン。


 心臓と、

同じ

律動。


     ◆


 次の瞬間、

天井が

崩れた。


 瓦礫が

雨のように

降り注ぐ。


「伏せろ!」


 叫び声。


 だが、

遅い。


 瓦礫の向こう、

闇が

蠢く。


 数。


 多い。


 獣型。

人型。

混成。


 守護層を

越えて現れた

迎撃群。


「第二波だ……!」


     ◆


 最初の魔物が、

飛びかかる。


 龍斗は、

反射的に

槍を振った。


 ――軽い。


 重いはずの

宝槍が、

羽のように

扱える。


 横薙ぎ。


 蒼い軌跡。


 魔物の胴が

ずれる。


 一拍遅れて、

崩れ落ちた。


「……斬った?」


 自分の声が、

遠い。


 だが、

考える暇はない。


 次。


     ◆


 獣型が

地を蹴り、

群れで

襲い来る。


 龍斗は、

踏み込み、

突き。


 穂先が

貫通。


 魔力が

爆ぜる。


 引き抜く。


 血ではない。

光の霧。


 背後。


 人型が

剣を

振り下ろす。


 龍斗は、

槍の柄で

受け流し、

肘を

叩き込む。


 鈍い音。


 魔物が

吹き飛ぶ。


     ◆


「動きが、

別人だ……」


 Aランク探索者が

呟く。


 連携が

追いつかない。


 だが、

龍斗は

止まらない。


 視界が、

広がっている。


 敵の

重心。

踏み込み。

次の動き。


 すべてが、

読める。


 ――知っている。


 体が、

覚えている。


     ◆


 天井の裂け目から、

さらに

落下。


 大型。


 甲殻を持つ

魔獣。


 咆哮と

同時に、

衝撃波。


 探索者が

吹き飛ばされる。


「回復が

間に合わない!」


 龍斗は、

前に出た。


「俺が

止める」


 自分でも

驚くほど、

声は

静かだった。


     ◆


 魔獣が

突進。


 床が

砕ける。


 龍斗は、

真正面から

迎え撃つ。


 槍を

引き、

腰を

落とす。


 ――突き。


 蒼光が、

直線を描く。


 甲殻に

ひび。


 魔獣が

勢いのまま

迫る。


 だが、

龍斗は

退かない。


 もう一度。


 今度は、

ひねりを

加える。


 ひびが

走り、

甲殻が

砕けた。


     ◆


 核が

露出。


 赤く

脈打つ。


 龍斗の胸が、

強く

共鳴する。


「……これだ」


 踏み込み、

全身を

使って

突き抜く。


 爆音。


 魔獣が

崩れ、

霧散した。


     ◆


 静寂が、

戻る。


 瓦礫の

落ちる音だけが

響く。


 龍斗は、

肩で

息をしながら、

槍を

見た。


 穂先の光が、

徐々に

収まっていく。


 同時に、

頭の奥が

軋む。


 断片。


 空を覆う

黒雲。


 炎を吐く

巨影。


 そして――

槍を握る

自分。


「……まだ、

全部じゃない」


 だが、

確かに

一歩。


     ◆


 探索者たちが、

ゆっくりと

近づく。


 Aランク探索者が

真剣な目で

言った。


「荒神。

今のは

スキルだ」


「スキル?」


「いや……

それ以上かもしれん」


 龍斗は、

答えなかった。


 胸の奥で、

低い声が

囁く。


 ――目覚めよ。


 竜神は、

まだ完全ではない。


 だが、

確実に

覚醒へと

向かっている。


 宝槍と共に。


 荒神龍斗の

戦いは、

次なる

段階へ

踏み込んだ。


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