——さて、3回目はどうでしょう?
もう、私の中に悪魔は存在しなかった。
私の中には天使だけ。
悪魔は、私を肯定してくれるだけだった。だけど、天使は私のことを肯定してくれて、更に家族のことまで考えてくれる。
私は天使しか見ない。
私は天使しか見られない。
私は——天使しか、見たくない。
「わ、」
ぼくは、いもうとのあまんだちゃんがおめめをぱっちりとあけて、きゃっきゃってしたから、だから、ちょっとおどろいちゃった。
でも、すぐにあまんだちゃんのことをいいに、おかーさんとおとーさんのところにいく。
「おかーさん、おとーさん! あまんだちゃん、おめめあけてわらったの! かぁいーね!」
にこにこ、おかーさんとおとーさんにいう。
おかーさんとおとーさんは、ふわってわらって、ぼくのことをもちあげて、だっこしてあまんだちゃんのところにいった。
「あぁ……本当だな。アマンダ、可愛いなぁ……」
「ふふっ、お父さん。親バカもたいがいにしなさいな」
くすくす、おかーさんがやさしくわらう。そのおめめがすごくあたたかくて、ぼくはおかーさんからめがはなせなかった。
「あら。どうしたの、リアム? 私のことじーって見て。何かお顔についてた?」
やさしくぼくにおかーさんがいって、ぼくはちょっとびくってしてめをそらす。
「なぁおい……アマンダが可愛すぎるんだが……」
「お父さん……。親バカも過ぎたら、アマンダちゃんに嫌われますよ」
「嫌われっ……⁉ っ、いかん、そんなことはあってはいかんことだぞ……!」
「ふふふっ」
またくすくす、おかーさんがやさしくわらった。
ぼくがおとーさんをみると、おとーさんは……おかーさんをみながらぼーっとしてて、おかおがまっかっかになってて、りんごみたいだった。
「あははっ、おとーさんおかおまっかっかだぁー。おもしろーい」
きゃっきゃとあまんだちゃんもいっしょにわらって、ぼくたちはみんなでわらった。
そうして、ぼくたちはどんどんせいちょうしていった。
アマンダちゃんが2さい、ぼくが3さいになったときのことだ。
あるねるまえ、アマンダちゃんがとつぜん、ぼくにむかっていった。
「あまんだ、こころにてんしさまいるー」
「……ふぇ?」
「おにーちゃん、いるー?」
にこぉーっとわらうアマンダちゃんが、なぜかぼくにはこわくみえて、にげるようにベッドにはいって、めをとじた。こて、とアマンダちゃんがくびをかしげるのがみえたけど、ぼくはそれをむししてめをとじつづけた。
アマンダが10さい、ぼくが11さいの時。
ぼくのクラスで、大げんかが起きた。
その時、ちょうどぼくといっしょに帰ろうとぼくのクラスに来ていたアマンダの白くてもちもちのお餅みたいなほっぺに、大げんかしていた子の手が当たって。
つぅっと、あかいものがすべり落ちた。
あ、といった顔で、その子はアマンダを見た。
アマンダは、ほっぺの血をすっと手でぬぐって、それをじぃっと見る。
——そして、
「えへへっ」
にぃっと悪魔のように、しかし無邪気に笑った。
「……っ、アマンダ! 大丈夫⁉」
「おにいちゃん、血ってきれいだね」
「……え……?」
いっしゅん、アマンダの言っている意味がわからなかった。
でも、その言葉の意味がわかってきて、ぼくは無邪気な魔物のようなアマンダがこわくなった。
でも、ぼくはアマンダが大好きで。
でも、ぼくはアマンダの味方でいたくて。
だから、ぼくはアマンダのその考えを、ひていしなかった。
今思えば、その決断が悪かったのだと思う。
「お母さん、お父さん、お兄ちゃん。お話があります」
アマンダが16歳、僕が17歳の時。
突然、アマンダが僕たちに話があると言ってきて、僕たちは戸惑いながらもその話を聞いた。
……正直、衝撃的だった。
アマンダの中には“黒いわだかまり”がある、と言うのだ。
「私……物心ついた時から、なんでかわかんないけど黒いわだかまりがずっと中にいたの。とりあえずこの世界は自由じゃないっていうわだかまりが、ずっといるの。今も、いる」
「……それは、アマンダはどう思ってるんだ?」
お父さんが、アマンダに問うた。
すると、アマンダはその長い睫毛で瞳に影を落とし、何かを考えこむように顔を下に向けた。
「……私は……最初は、少し気持ち悪かった。でも、ずっと一緒にいるうちに、なんか……友達みたいに思えて来て。……ねぇ、お母さん、お父さん、お兄ちゃん。私って、変……だよ、ね?」
こくっ、と、息を呑んだ。
妹は、こんなに辛く苦しい悩みがあったのだ。なんで、それに気づいてやれなかった——。
きゅっと唇を噛み締め、僕はアマンダに言った。
「……確かに、周りの人はアマンダのその考え方を変だって言うかもしれない。でもね、アマンダ。これだけは、忘れないで。僕は、アマンダのこと変なんて言わない。というか、変って何? 普通なんて、誰が決めるの? 自分にとっては、自分が普通で回りが変じゃん。アマンダにとっては普通。それだったら、いいじゃん。僕はね、アマンダ。ずっと、君の味方だから」
ぎゅっと、アマンダを抱き締めた。
そして、ふわりと包み込むように、お母さんとお父さんも僕とアマンダを抱き締める。
「私もよ、アマンダ。私は、ずっとずっとアマンダの味方よ」
「俺もだ。アマンダ、今までよく頑張ったな。俺たちは、ずっとアマンダの味方だ」
アマンダは、僕たちに抱き締められたまま、数秒は俯いていた。しかし、直後——
わんわんと、大きな声を出して泣き出した。
悩みを体から出すように、透明な涙を流して。
長すぎるので3つに分けて書きました。
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