約数
あるところに12がいた。道を歩いていると友人である、6に出会った。12と6の最大公約数である6を話した。両者は6の満足度を得て去って行った。12はさっぱりとした表情で、6は満足気な表情で去って行った。
田んぼの向こう側に24を見かけた。24はこちらに気づくとパタパタと駆け寄って来た。12と24の最大公約数である12を話した。両者は12の満足度を得た。12はホクホク顔で、24は嬉しそうに去って行った。
スーパーで2と3に会った。12は軽く世間話をした。12と2と3は三者の最大公約数である1の話をした。三者はそれぞれ1の満足度を得た。12ははにかんだ笑みを浮かべて、2と3はにこやかな笑みを浮かべていた。2と3はそのまま両者の最大公約数である1を話しながら楽しそうに去って行った。12はその場で買い物を続けた。
買い物の最中に37や43とすれ違った。彼らとは会釈するぐらいであまり喋らなかった。12と37の最大公約数である1を得た。また、12と43の最大公約数である1を得た。一瞬だけ目が合ったが、すぐに逸れた。彼らはいつも変なところを見ている。何だか不気味だ。視線が合っているのにも関わらずどこか遠いところを見ているような気がする。淀んだドブ川のような濁った瞳の色。まあ気にしてもしょうがないことだ。そう思って12は彼らの事を頭の中から締め出した。
顔馴染みの店員である、9と軽く会話をした。12と9の最大公約数である3を得た。耳寄りな噂を耳にしたのでこっそり共有しておく。9は驚いたかのようにこっちを見つめると楽しそうな表情を浮かべた。それにつられてこっちも楽しくなった。
家に帰ると家族である、12がいた。12とたわいない話をした。12と12は最大公約数である12を話した。互いにリラックスした表情を浮かべている。
仕事場に行くと5と8がいる。今日の仕事は60を作り上げる事だった。12と5は公倍数である60を作り上げた。12は5との最小公倍数で良かったと思った。自分の倍数である12や24だったら、自分1人にだけでできるから楽なのになとも思った。しかし、贅沢は言うまい。トラブルなく無事仕事も終わらせる事が出来たのだから。12は達成感もあるので実はそんなにこの仕事が嫌いではなかった。
12は5とはあまり仲が良い方ではなかった。時々世間話を5とする。12と5の最大公約数である1を得る。やっぱり友人であったり家族と話す方が好きだった。多少の気まずさを我慢して話を続ける。12は仕事を円滑に進めるにはこのたわいもない会話が必要なんだと朧げに自覚していた。何せ何だかんだ5とタッグを組んで仕事をすることが多いからだ。友人としての相性はあまり良くないが、仕事相手としての相性は悪くない方に当たるだろう。5もそれを自覚しているのかいないのか12と仕事することをそこまで嫌っているようには見えなかった。
一方12は8と仲が良かった。よく話をする。12と8の最大公約数である4を得る。なかなか話が弾んで楽しい。話していると仕事が手につかないのが難点ではあるが。5と比べて8と仕事をすることは不思議とあまり多くはなかった。こんなにも相性がいいと思われるのに。12はそれが不思議でたまらなかった。8に聞いても同じように首を傾げていた。世の中そんなに上手くは行かないものだと2人で笑い合った。
仕事をしている中でそこまで大きなトラブルに見舞われることは少ないが、時々厄介な問題にぶち当たることがある。7なんて可愛い方で、先月は113みたいな微妙な仕事があった。7は12と8で何とか手分けして対処しようとした。散々粘った挙句結局知り合いの28に頼んで処理してもらった。これだけでも大変だったのに113ときたらとんでもない。手当たり次第に電話をかけ、何とかならないかとかけずり回ったが結局どうにもならなかった。途方に暮れていたところ、たまたま5の知り合いの知り合いの知り合いに1582がいたのでそれで何とかしてもらった。この時ばかりは5の不思議な人脈に頭が上がらなかった。
テレビではよく1.947…*10^23の話や8.791…*10^12の話をしている。12にはもう複雑すぎて何が何なのかよく分からなかった。もっと24とか120とかに気を配ってくれたらいいのにとよく12や6に愚痴っていた。最近では3.256…*10^69で盛り上がっているが、もうさっぱりだった。そんな難しいこと言ってないでもっと分かりやすく説明してくれたらいいのにと12は思った。
12は友達である18と歩いている最中、8.556…*10^9とすれ違った。顔をチラッと見る。あれほど無表情な顔は、これまで見たことがなかった。余りにも淡白だったので一瞬痺れるような衝撃が頭に走った。言い表しようのない強烈な違和感に頭に残った。しかし、友達と話している内にその違和感が何だったのかすぐに忘れてしまった。どこで見かけたものだったのかもしれないが、まぁ大した問題ではないだろう。そう思い直すと12は再び18との会話に熱中した。
あるところに8556262093がいた。
8556262093は6に会った。8556262093と6の最大公約数である1を得た。8556262093は微妙そうな表情を6は爽やかな笑みを浮かべて去っていった。
8556262093は24に会った。8556262093と24の最大公約数である1を得た。8556262093は微妙そうな表情を24は怪訝な表情を浮かべて去っていった。
8556262093は2と3に会った。8556262093と2と3の最大公約数である1を得た。8556262093は微妙そうな表情を2と3は変わらず楽しそうに会話しながらニコニコとしながら去っていった。
8556262093は37や43にすれ違った。8556262093と37の最大公約数である1を得た。8556262093と43の最大公約数である1を得た。8556262093は微妙そうな表情を37や43は無表情で去っていった。
8556262093は120や1564と784と675と仕事をした。今日は345の仕事だった。675と1564が対応した。8556262093はただそれをぼ〜っと眺めているだけだった。
8556262093はテレビをつけた。1.947…*10^23や8.791…*10^12の話に一瞬興味を持ったが、すぐに飽きてしまった。テレビを消す寸前に3.256…*10^69の文字がちらっと目に入った。忘れない内にそれをノートの端切れに素早く書き留めた。
8556262093は12と18とすれ違った。8556262093と12と18の最大公約数である1を得た。8556262093は微妙そうな表情を12と18は一瞬何とも言えない表情を浮かべたがすぐに笑顔を取り戻しケラケラと笑いながら去っていった。