荒野の光
夏休み、大学生の敏夫は軽自動車でツーリングをしていた。北海道は広大だ。まるで地平線がどこまでも続いているように見える。とても日本とは思えない光景だ。普段過ごしている東京とは違い、空がこんなに大きく、近く見える。標高は東京と変わりないけど、どうしてだろうか? 地平線がどこまでも続いているように見えるからだろうか?
「広いなー」
敏夫はその風景に驚きつつ、走っていた。道はどこまでもまっすぐに続いているように見える。そして、途切れがない。どこまで行けば、次の町までたどり着けるんだろう。全くわからない。
「これぞ北海道って感じだ」
次第に敏夫は焦ってきた。どこまで走らせればいいんだろう。早くどこかで休みたいのに。
「どこまで行けば町にたどり着けるんだろう」
徐々に敏夫は疲れてきた。どこで休もうか。全く決めていない。
「疲れたなー」
しばらく走っていると、広大な空き地のような場所にやって来た。そこはかなり広い。ここなら休めるだろうな。少し休んで、その先に向かおう。
「あそこで休もう」
敏夫は車をその空き地に入れた。この辺りには家屋の跡も、何もない。人が全く見当たらない。昔からここは無人の原野だったんだろうか?
敏夫は車を停め、椅子の腰掛を倒した。ここで少し昼寝をするようだ。東京では許せないけれど、ここでは大丈夫だろう。
「つっかれた・・・。寝よう・・・」
敏夫は疲れがたまっていた。カーフェリーで苫小牧港まで行き、そこから何時間もかけてここまでやって来た。とても疲れた。ここで少し昼寝をしよう。
敏夫は物音で目を覚ました。敏夫は首を傾げた。自分は車の中で寝ていたはずなのに、そこは古めかしい建物の中だ。そして騒々しい。どうしたんだろうか?
「あれっ、ここは?」
敏夫は辺りを見渡した。そこは校舎のようだが、木造だ。一昔前の校舎のようだ。夢を見ているのは確かだ。どうしてここに来たんだろう。
「学校?」
校舎には多くの生徒がいた。彼らはどこか懐かしい服を着ている。いつの時代だろう。ここは昔の風景だと思われる。
「けっこう賑わってるな」
と、敏夫は思った。一体ここはどこだろう。どうしてここに来たんだろう。どうしてこんな夢を見ているんだろう。まさか、昼寝をしている空き地の昔の風景だろうか?
「でもここってどこだろう」
敏夫は振り返った。そこには神威内と書かれている。ここは神威内という集落にある小学校だろうか? 聞きなれない集落だな。そして、この小学校も知らない。
「神威内?どんな場所だろう」
見ているうちに、敏夫は懐かしい気持ちになった。まるで古い日本の映画を見ていて、そこに紛れ込んだようだ。
「まるで古い映画を見ているようだな」
敏夫は思った。こんなに多くの子供たちがいたとは。とても賑やかだったんだろうな。この小学校は、今でもあるんだろうか? この校舎は今でも残っているんだろうか?
「こんなに多くの子供たちがいたんだな。これはいつの時代だろう」
敏夫は外を見て、何かを感じた。そこは、車を停めたあの空き地そっくりだ。まさか、車を停めた場所には、神威内小学校があったんだろうか? だとすると、この小学校はもうないんだろうか?
「まさか、ここ? まさか、あの荒野にはこれがあったのかな?」
と、光に包まれた。何があったんだろう。敏夫は目を閉じた。
目を開くと、そこは体育館だ。体育館は古めかしい。敏夫の通っていた小学校の体育館とは全く違う。そこには多くの人がいた。そして、彼らはどこか悲しそうな表情だ。卒業式だろうか?
「あれっ、これは?」
敏夫はステージを見た。そこには、『閉校式』という幕がある。これは閉校式の様子のようだ。神威内小学校は、いつ閉校したんだろう。それを覚えている人は、どれぐらいいるんだろう。ここにいる人々は、この神威内小学校の卒業生だろうか? だとすると、どういう想いで閉校式を見ているんだろう。
「閉校式・・・」
敏夫は寂しい気持ちになった。もうこの小学校はないんだな。校舎は解体されて、ただの空き地になってしまったんだな。何とかして残すことはできなかったんだろうか? 母校が消え、人々はどう思っているんだろうか? 悲しく思っている人は多いんだろうな。
「もうこの小学校はないんだな」
敏夫は彼らの様子を見た。彼らはみんな悲しそうだ。中には泣いている人もいる。母校が姿を消すのが、とてもつらいと思っているんだろう。これが時代の流れなんだろうか? 盛者必衰なんだろうか? 残すために、何かできなかったんだろうか?
「みんな悲しんでる・・・」
敏夫は目を覚ました。そこには空き地がある。やはり夢を見ていたのか。ふと、敏夫は思った。ここの卒業生は、閉校した神威内小学校の事を忘れていないんだろうか?
「ゆ、夢か・・・」
敏夫は助手席を見た。そこには、寝る前はなかったはずの写真がある。誰が置いたんだろう。車の中は閉めてあって、中からは入れないはずなのに。
「あれっ!?」
敏夫は写真を見た。そこには神威内小学校の写真がある。閉校式の後に撮った、在校生と先生の集合写真だ。彼らはどういう気持ちで記念写真を撮ったんだろう。
「これは、神威内小学校・・・」
敏夫は改めて知った。やはりここには神威内小学校があったんだな。子供たちの声がこだまして、とても賑やかだったんだろうな。今では何もない荒野だけど。
「本当にここは小学校だったんだな」
敏夫は車を降りて、辺りを見渡した。この辺りには何もない。ここに小学校があったという事は、この辺りには集落があり、多くの民家があったんだろうか? 今では信じられないけれど。
「もうここには何もないけど、ここには集落があり、小学校があったんだな。今の風景ではとても信じられないけど」
敏夫は再び車に乗り込んだ。次の町に早く向かわないと。
「さて、向かおうか」
敏夫はどこまでも続く長い道を見て思った。昔はどんな風景だったんだろうか? そうそうできないけれど、そんな時代の神威内に行ってみたかったな。だけど、もうあの頃には戻れない。人ももう戻ってこないだろう。人が消え、ここにいた人々は消えたこの集落の事、小学校の事をどう思っているんだろうか?