【1分小説】夜影の舞踏会
満月の夜、世界で一番古い古城で開かれる舞踏会に多くの人々が集まった。主催者の魔法使いが杖を振ると、地面に映る影が実体を持ち、人々と踊り始めた。
参加者たちは自分の影と会話を楽しみ、影に願いをかけた。影はその願いを叶える力を持っていた。
ある少女は、影に想い人の好みを尋ね、美しい花が現れた。老夫婦は若かりし頃の思い出を語り合い、若者たちは未来の夢を影に打ち明けた。
影たちは、人々の願いを影の形で実現し、舞踏会の中だけでその力を発揮した。
やがて、人々と影が手を取り合い、一つの願いを心に抱いた。「世界に光を取り戻したい」と。
すると、突然、大量の蛍が生まれ、光を放ちながら舞踏会の空を舞い始めた。蛍の光は世界中に広がり、長い間影一色だった世界を照らし出した。
蛍たちが舞う光景に、人々は心を奪われた。
光があるからこそ影が生まれる。
人々は、調和の瞬間を迎えた。舞踏会の夜が終わり、光に満ちた新しい世界が始まったのだった。人々はこれからも、光と影の共存を大切にしながら、新たな日々を歩み始めた。
舞踏会が終わり、魔法使いは微笑みながらその光景を見守っていた。
ふと彼はこう囁いた。「これで使命は果たされたよ、さあ、戻ろう」と。その瞬間、魔法使いの姿が薄れ、彼は古城の影となった。
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