1 転生
大学院生が3歳児に転生した。煩く言う人もいないので図書室に籠っている。
1 転生
後に救国の王妃と呼ばれるマリエールの若き日の物語である。どんな英雄でも幼い時あるものだがマリエール限って言えば、彼女の幼少期はなかった。大学院生が実験に失敗してマリエール3歳に転生した。マリエールを死に居たらしめたのは風邪の類のようだが、高温が続いたことしかマリエールの記憶にないからどんな病気で死んだのかはっきりしない。熱がさめて目を覚ましているのを見てみんながほっとしているのが印象的だ。黒死病かと思ったという声が聞こえた。コレラだったのか。
その後に幼少期はない。自分にも幼少期は有ったろうが。ひたすら本を読んで過ごした。万能言語能力があるのでどんな本でも読める。何カ国語の言語で書かれ本があるが、多国の言語を習得した人物がいるのか。後で判った事として学院では外国語として西の国の言葉が必須だが。第2外国語として東の国の言語か北の国の言語から選択するので4カ国の言語の本がある。
楽器も芸術関係の物あるが、3歳児が扱っていると天才と言われてしまうのであまり扱わない。運動は身体が小さく成ったのでその分能力が落ちたので幾らやっても問題ない。3歳児のやる事に関心を寄せる人はいないのでのびのび読書に勤しんでいる。一応メイドがいるが、人に干渉しないタイプなので助かる。3歳児が歴史書を読んでいても何か言うわけでもない。時々どんな内容か聞いてくる。例えばこんな会話だ。
「今の王朝が出来た頃の話だね。前王朝は魔王を倒せず国が荒廃していた。現王朝の初代国王が魔王を討伐して前王朝から王位を禅譲されたという話よ。」
歴史好きの人間には、人気のある場面らしい。目をキラリとさせて語り出す。
「魔王の寿命が来ていたという説が一般的ですね。既に誕生して200年が経っており、全盛期の力に遠く及ばないと言われています。魔王が当初の討伐に失敗すると無敵の力になります。しかし、200年経てば力も弱まります。前王朝最後の国王が禅譲そんなわけないですよね。自分だって魔王を倒せたはずだと思いますから。魔王がいない時代の国王位、誰が手放したいと思います。脅しを掛けて奪い取ったのですね。正史は勝利者の歴史。真実は別のところにあります。」
3歳児に話す事じゃないよ。こうしてマリエールの転生人生が始まった。マリエールは読書とメイドの雑学でのびのび育った。メイドはそれなりに教養があり礼儀作法もあるのでマリエールのいい先生だった。もともとはメイドや護衛が何人かいたが黒死病の疑いのあるマリエールは見捨てられ、今いるメイドだけが付いてくれた。
ある程度魔法が使えることが判った。特にアイテムボックスはとてもありがたい。一日一回は散歩に行く実験の材料集めだ。魔法で電気が代用出来るか不明だが、理論上可能な事が判った宝石を作る結晶化、ライフワークである貴金属を作る物資変換、複製魔法。一朝一夕にはできる事ではないが材料を集めよう。メイドが不思議そうに聞く。
「お嬢様、女の子は綺麗な石とかお花を摘んだりすると思いますがその様な土を集めたりしないと思いますよ。変わってますね。」
人の事言えるのかと思ったが
「工作の材料になると思って集めているの。」
と優しく胡麻化した。
散歩で土の収集をしているとメイドに不信がられる。