タイトル未定2024/05/19 19:52
あるさびれた場所にある『元』公衆トイレに駆け込んだ。
蛇口からは水も出ないし壁も地面も乾いたクソ小便まみれで鬼のように臭いが仕方がない。
大きな地震があって街全体の電気が止まった日だった。
『俺』は汲み取り式のトイレを見つけて歓喜していた。
汲み取り式は流さなくていいからね。
この場所は茂みの中にあり、ここにトイレがあるって事を知らない人も多いんじゃないかな?
紙はポケットティッシュを何袋か持ってきた。
うんちしよーっと。
「助けてください」
扉を叩く音と若い女の声がした。
トイレの鍵は壊れているし、俺はもうお尻を出しているしかなり困った。
この時の俺はかなり若かった。
思わず恥ずかしさを怒りで誤魔化そうとしてしまった。
「うるせーな!入りたきゃ入ってみろや!」
本当に入られたらかなり困るが。
「おっとお!?」
身体が冷たくなったと思ったら強烈な耳鳴りと頭痛が俺を襲った。
吐き気もする。
頭の中で大ボリュームのオペラが流れてるみたいだ。
便意と怒りはどこかに飛んでいった。
俺はパンツとズボンをあげて扉を開けた。
「……お待たせしました。ここ紙がないんで良かったらティッシュ……あり?」
誰もいなかった。
なんのこっちゃ分からねぇ。
諦めて野グソでもしたんかな?
元公衆トイレから離れれば離れる程、俺の体調は良くなった。
この時の俺はハードボイルドを気取り携帯を持っていなかった。
10年ほど経ってあのトイレについて調べた。
あの公衆トイレでは殺人事件があったそうだ。
入ってきていたのかも知れない。