082 それぞれの戦争A
例えば、空から降り注ぐ雨粒が全て4~5メートルの化物だったら。
想像を絶する悪夢――ある男性が頭痛に叩き起こされ、窓から外を眺めたら、それがあった。
「な、なあぁっ、なんだこりゃぁぁぁああっ!」
彼は王国の片田舎で一人で暮らす、ありふれた中年男性である。
村を出たときに魔物に追いかけられた経験ぐらいはあるが、冒険者や守護者といった類のものとは無縁な人生を送ってきた。
なので彼が腰を抜かし、尻餅をついたのは、決して大げさなリアクションなどではない。
そしてその直後、天から降り注いだ大型侵略者が、建物もろとも彼を押し潰した。
男の視界が瓦礫と、紫と黄色の不気味な肉塊に埋め尽くされる。
(ああ、死んだな……)
相手が何なのかもわからないまま、命を落とす。
そう思い目を閉じた次の瞬間。
彼はガゴンッ! という全身を揺らす硬い衝撃を受けた。
『うおぉぉああああっ!?』
思わず叫ぶ。
だが声もなんだか変だ、こもっているような感覚がある。
何者かに殴られ、転がった彼は、瓦礫を押しつぶしながら地面を転がった。
彼はそこで気づく。
『なっ、なんじゃこりゃ……!? 俺の体が、鎧に――いや、守護者にっ!』
眼の前から肉の巨人が迫る。
両手をだらんと下げ、両肩を交互に前に出しながら突進してくる。
『あ? 守護者って何だ……って、うわぁっ、またかよおおぉッ!』
彼は振り上げた拳を、迫る大型侵略者の顔面に叩き込んだ。
その強烈な一撃に、相手は勢いよく倒れ後頭部を大地に強打する。
ブチュッという潰れた音と共に、透明の粘液が地面を濡らした。
彼は己の――否、守護者の拳を見つめる。
『一体、何が起きて……』
それとほぼ同時に、
『きゃぁぁぁぁああああっ!』
『や、やってやるよ。やってやるぅぅぅっ!』
『いやっ、いやぁっ、来ないで! 来ないでえぇぇええっ!』
村人たちの、エコーがかかったような悲鳴が周囲に轟いた。
全員が守護者を纏い、がむしゃらに武器を振り回して、降り注ぐ大型侵略者たちを追い払おうとしている。
だが、その数はあまりに多すぎた。
瞬く間に村は侵略者に埋め尽くされていき、村人たちは互いの姿すら見えなくなる。
『なんだこれはっ』
上も、下も、右も、左も――山も、空も、川も、大地も全てが、ひしめく異形で埋め尽くされた。
伸びてきた手が守護者の腕を掴む。
『離せっ、触るなっ!』
力任せに振りほどくと、侵略者の腕の筋が何本か切れた。
続けて勢いよく振り下ろされた腕が、彼の肩を殴りつける。
『ぐがっ、痛い……痛いっ、やめてくれぇぇっ!』
腕を振り回し、遠心力で殴りつける。
命中した侵略者の頭がひしゃげた。
だが背後から今度は侵略者が抱きついてくる。
振りほどこうとすると、今度は横から腕が伸びてきて、次は脚を掴まれて――
『うわああぁぁああっ! なんなんだよっ、なんなんだよこれぇぇええっ!』
叫んで、暴れて、踏み潰して。
それでもすぐに別の侵略者が前方を埋め尽くす。
さながら無限に続く肉の壁であるかのように。
それはこの村に限った出来事ではない。
その時、その瞬間、世界は侵略者に呑み込まれつつあった。
◇◇◇
とある村では、二人の少女が必死に杖から魔術を放ち、侵略者を追い払おうとしている。
だが隙間なくひしめく化物たちは、そんな二人が肩を寄せ合うことすら許さなかった。
『ルーン、無事なのっ!?』
視界を埋め尽くす異形、異形、異形。
相手の場所を確認する方法は声ぐらいのものだった。
『だ、大丈夫、すぐ近くに……っ、邪魔、しないでっ!』
ルーンの守護者が放つ闇の球体は、触れた相手をことごとく溶かした。
開いた空間の先に、ティルルの守護者の姿が見える。
彼女自身の生き様を示すように光り輝くその鎧は、しかしすぐに新手の侵略者に遮られ見えなくなった。
『あなたたち、どこまでも私の邪魔をぉっ!』
『な、なんなんだろうね、こ、これっ! 頭もすっごく痛いし、わけわかんないよぉ!』
『わかんないものを考えたって仕方ないわ、今はただ二人で生き延びることを考えましょう!』
『……! わ、わかった。そうするっ』
必死で自らに降りかかる脅威を振り払うティルルとルーン。
一方で、こんな状況下でも他者を助けるために動く者もいた。
一足先に、マヴェリカから守護者の使い方を叩き込まれたトーマである。
彼は守護者アポロンを繰り、街の中心部で村人たちを襲う侵略者たちを射抜いていた。
(わずかに二人の声が聞こえる――ならあっちは大丈夫か)
もちろんルーンとティルルのことも心配はしていたが、他の村人に比べれば二人が戦えることも知っている。
互いに守り合う二人よりも、無力な村人を守ることを優先したのだ。
だが、それでも――
『い、いぎゃぁぁあああっ!』
必死にフライパンのような武器を振り回していた守護者が、侵略者に囲まれ、腕を引きちぎられている。
『おばさんっ!』
急いで駆け寄ろうとするトーマだったが、遮るように頭上からエネルギー波が発射された。
足を止めると、目の前の地面がえぐられ大きな穴があく。
アポロンは弓を構えると、空中から落下してくる侵略者を次々と撃ち落としていった。
しかしそれも気休めにしかならない。
敵の撃破により空いた空間は、すぐに別の個体によって埋められてしまうからだ。
『こいつら、倒しても倒してもまた出てきてッ!』
倒せる。
だがそれでは話にならないぐらい数が多い。
悔しげな表情を浮かべながらも、ひたすらに戦い続けるトーマ。
『助けてくれぇ、トーマくんっ! 頼む、助け――ぐああぁぁぁああっ!』
村のどこかから、知っている男性の断末魔が聞こえた。
トーマが悔しさに噛んだ唇に血が滲む。
(悔やむな、どうあっても今の僕には救えなかったッ! 悔やむ暇があったら――!)
すべての村人を救うことはできない。
無理だったら諦めるしかない。
落ち込んでいる暇もない。
そう言い聞かせても、やはり落ち込むものは落ち込む。
纏わりつくモヤモヤとした負の感情から目を背けつつ、敵に殴打され、地面を這いつくばる守護者を発見する。
そこを狙ってエネルギー波を発射しようとする侵略者を狙撃しつつ、トーマはその守護者に駆け寄った。
手を差し伸べると、相手は立ち上がりながら頭を下げる。
守護者の状態で頭を下げるというのはなかなかにおかしな光景なのだが、細かいことを考えている余裕はなかった。
『あぁ……ありがとうございます、助かりました』
『立ってください、力を合わせて戦いましょう』
『戦わないと、ダメなんですか?』
『はい』
トーマはそう断言する。
戦闘経験がある自分が、できるだけ多くの人を助けたいと思っている。
だがこの状況が、ただ助けを求めるだけで生き延びられるほど甘くはないことも認識していた。
おそらく現時点でトーマが想像しているよりも、これは最悪の状況なのだから。
『戦わなければ、死ぬだけです』
その真剣な言葉に、相手は迷いながらもこくりと頷く。
(そうだ、迷いも後悔も邪魔になるだけだ。戦え。戦って、一人でも多くの命を救え!)
そして彼自身も、自分に言い聞かせるようにそう心の中で呟くのだった。
◇◇◇
別の街でもまた、似たような戦いが起こっていた。
前に立つ鎧は、シールドを展開し侵略者たちを食い止める。
そして後ろにいる二体の守護者が、肩や手のひらの砲門から魔術を放ち攻撃を繰り出していた。
後方の守護者の搭乗者が声をあげる。
『お母さん、お願いだから下がってっ!』
『そうよ、あとは私たちが戦うからっ!』
その声はミーシャとメーナの姉妹のものだった。
かつて王都でエルクの手下に囚われ、その後ドロセアに救われてからは、親戚の元へと身を寄せていた彼女たち。
しかしすでにその親戚は押しつぶされ、街の住民も大半が息絶え、周囲で生き残っているのは姉妹とその母親の三人だけだった。
『違うわ……私、気づいたのよ。あの日、あの時、ドロセアさんが病気を治してくれたのは――きっと、二人を助けるためだったんだって!』
病弱な母は、そこで姉妹に助けられながら生活をしていた。
エルクの手下に夫が殺される前は、まだ力仕事以外の面で手伝うことができていたが、現在の彼女にできることはほとんどない。
(あなたが死んだあと、何度その後を追おうと思ったことか。けれど娘二人を置いてこの世を去るわけにはいかないという責任感が、私を繋ぎ止めていた)
伴侶を失い心も弱り、それに引っ張られるように体調も悪化していく日々。
現在、世界は侵略者による絶望に覆われている。
だがそんな中で、彼女は不謹慎だと思いながらも、かすかな希望を抱いていた。
(そう……この命は……ここで使うためのものだったのね)
脆弱な肉体ではなく、この鎧ならば。
攻撃面では劣るようだが、シールドで相手を抑え込むことができる。
こんなにも家族の役に立てたのは久しぶりだ。
生きがいを感じる。
自分の命に、“意味”が与えられている感覚は、幸福感となって彼女を包み込んでいく。
『もうやめてよぉ、お母さんっ!』
ミーシャが声を荒らげる。
母はシールドを展開しているものの、繰り返し放たれる侵略者のエネルギー波、そして打ち付けられる拳により、徐々に消耗していた。
削られた障壁を貫き、鎧そのものが傷つきはじめている。
『お母さんが死んだら意味ないんだからっ! ねえ、聞いてるの!? ねえっ!』
メーナも続けてそう呼びかけたが、母は動かない。
二人とも敵の数が多すぎるため、手を休めることはできず、声を出すので精一杯なのだ。
なおも母の守護者は傷ついていく。
鎧は砕かれ、片腕が引きちぎられ、そしてついに頭部に腕が伸びた。
(あなた……私は、胸を張って同じ場所へ――)
侵略者の腕が、震えながら守護者の頭を上に引っ張る。
ガゴッ、ガギッ、と鈍い金属音を響かせながら、相手に致命的な破壊をもたらす。
『二人で、仲良く生きていくのよ』
死の間際だというのに満足気な声で娘に語りかけながら、頭部を失った守護者は膝をついた。
それきり、何も言わなくなる。
痛みによる絶命か、あるいは命すらも守護者とリンクしていたのか。
どちらにせよ、この状況で身動きができない守護者が無事で居られるはずもない。
わずかな生存の可能性すら踏みにじるように、侵略者の群れはその亡骸を踏みつけ、殴り、潰していく。
『あ、あぁぁぁぁあああああああっ!』
姉妹の悲鳴がシンクロした。
なおも敵は二人に迫る。
彼女たちを守る“壁”は失われ、いくら魔術を放ち、侵略者を倒しても数の暴力で押しつぶされるだけだ。
『嬉しくないっ、こんなもの遺されても、ちっともッ!』
『お母さん、お母さん、お母さんっ!』
涙をぼろぼろと流しながら、必死に魔術を乱射する二人。
『うわぁぁぁぁああああああッ!』
喉から血が出るほど必死に叫びながら、眼前の守護者を撃破する。
侵略者たちはそんな二人の気迫に圧されてか、距離を取った。
一瞬だけ安堵する姉妹。
だがそれが過ちだとすぐに気づく。
取り囲む守護者の体がぐぱっと割れ、その裂け目から二本の腕が現れた。
絡まるように天に伸びたその異形の腕の先端――両手のひらの間に、エネルギーが集束していく。
『メーナ、私たち……』
『うん、お母さんのところに……』
手をつなぎ、死を覚悟する双子たち。
しかし――
『これだけの風を纏えるのなら、世界のどこでもひとっ飛びでございます!』
戦場を駆け抜ける一陣の風が、侵略者の群れを天へと巻き上げた。
そして空中でバランスを崩す化物たちを、武士めいた守護者シナトベは刀で次々と切り裂いていく。
続いて現れた氷のドレスをまとった守護者ヤフチャールは、イナギが仕留めそこねた残りを吹雪で氷結させていった。
『あ、あなたたちは……?』
ミーシャが呆然とそう尋ねると、アンターテはスカートをなびかせながら優雅にくるりと回り、答える。
『助けに……いや、いっしょに戦いにきたの』
◇◇◇
簒奪者達は、この戦いにおいて人類を導く立場として、王都から世界中に散らばっていた。
王国南西部付近の上空では、黄金の守護者ゴルディオスと、花の守護者アフロディーテが大量の侵略者に己の魔術を浴びせている。
飛んでいるわけではないが、侵略者を踏み台にすれば高度を維持できる程に敵の密度は高かった。
ゴルディオスが両手から放つ黄金神の威光は、触れただけで相手を金へと変える力を持つ。
全身が金となった侵略者は、その機能を失い金塊となって地表へと落下していく。
『はっはっは! こんだけ黄金がありゃ、戦いが終わったあとの世界は金には困らねえだろうなァ!』
己だけでなく、周囲までも巻き込んで金色へと染めながら、ミダスは上機嫌に笑った。
近くで戦うシセリーは、そんな彼を見て微笑む。
『金の価値が下がったらどうするの?』
『価値が下がろうと煌めきは変わらねえよ。壊れちまった世界が寂しくないように、俺が彩ってやる!』
『それはスマートな戦い方ね、さすがミダスだわぁ』
負けてられない、と言わんばかりにアフロディーテは手のひらに光を生み出す。
その中から現れたのは、綿のような“種子”だった。
そして守護者が息を吹きかけるような仕草を見せると、種はふわりと風に乗り、侵略者の肉体に付着する。
直後、種は根を伸ばし体内へと侵攻。
その肉体が持つエネルギーを吸い取りながら、色とりどりの、美しい花々が開花する。
『なら私も咲き乱れましょう、この世すべてを花で埋め尽くすほどにッ!』
植物の苗床へと変えられる侵略者たち。
黄金と花吹雪が舞い散る戦場は、さながらミダスとシセリーの最期を彩る祝祭のようでもあった。
◇◇◇
一方、王都を離れた北の大地で、ガアムは一人で奮戦する。
人狼めいたその守護者の主な武器は、素早い動きと高いパワーから繰り出される爪撃。
魔術と呼ぶにはあまりにシンプル過ぎる、身体能力強化に特化したその戦い方は、イナギと似たタイプと言えるだろう。
もっとも、彼の場合はイナギのように優れた剣技を身につけているわけではなく、どちらかと言うと“野生”を全面に押し出した荒々しい戦い方だが。
爪で串刺しにし、血を浴びながら別の敵を引き裂く。
またあるときは、鋭い牙で敵の首筋を噛みちぎる。
誰も見ていない戦場で必死に戦いながら、彼は誰に向けるでもなく、一人で言葉を垂れ流す。
『わかってる。わかってんだよ。エレイン様が俺のこと見てないってことぐらい!』
出会ってから数年が経ったが、その頃からそうだ。
人間扱いされてこなかったガアムを救い出して、人として扱ってくれた。
ただそれだけの理由で、肉体すら持たないエレインに惚れ込んでしまったガアム。
誰から見ても彼がエレインに好意を持っているのは明らかだったし、エレイン自身もそれを知っていた。
だから執事として傍に置いてくれたのだろうし、大事に育ててくれたんだろう。
だがそれは、おそらく好意から来るものではない。
『でもよお、思えば最初から俺の行動は自己満足だった。エレイン様が優しいからそれを拒まなかっただけで、あの人は一度だって“応えて”なんてくれなかったんだ!』
エレインに元来備わっている“優しさ”。
常識、倫理観――そういうものの“結果”に過ぎないのだ。
アンターテにしてもそう。
まるで愛しているような、家族扱いをするような素振りを見せておいて、どこか冷たく、中途半端なその関係は、エレインの感情がそこに宿っていないからこそ起きてしまう悲劇だった。
ガアムがそのことに気づいたのは、マヴェリカが現れてからだ。
今までエレインの“感情”だと思って見ていたものは、感情ではなかった。
彼女が感情を抱く相手は――マヴェリカだけだ。
『それでもいいと思ったからついてきたんだろ、なぁガアム!』
残酷なほどこっぴどく振られて。
最後の最後にかけてもらったさよならの言葉も、嬉しい一方でどうしようもなく惨めで。
きっとそれは、叶うはずないものを追いかけ続けた末路だ。
ガアムが言う通り、最初は違ったはずではないか。
肉体すらない相手に恋をした。
その人についていっていいと思った。
相手のことを何も知らないのに、人生を捧げようとまで考えたその感情は、決して見返りを期待したものではなく――
ただただ、純粋な自己満足。
この人のためになら、命を使っても構わないという、自己陶酔。信仰。
彼の根底にあるものは、そういう感情だったのだ。
『使い果たす。誇りを持って、この命を、あの人のために! 誰かに認められるためじゃなく、俺自身が満足して逝くためにッ!』
そう開き直った途端、ガアムは己の体が軽くなるのを感じた。
空を埋め尽くす侵略者に向かって飛び上がり、一振りで十体もの侵略者を引き裂く。
『ぐぅおおぉおおおおおおッ! 千切れろッ、裂けろッ、粉微塵になれッ!』
肉塊となった侵略者を足場に再び飛び、またしても群れを両断する。
だが当然、反撃もあった。
振り払う爪を相殺するように繰り出された殴撃――これは問題ない。
力で上回りそのまま切り裂く。
次に脇腹へと突き刺さったエネルギー波――わずかにバランスを崩す。
大したダメージではないが、攻撃の威力が落ちる。
少しでも攻撃の手を緩めると、敵の増援スピードに追いつかなくなり、数の上での不利さが増してしまう。
『足りねえか!? これでも、これだけの力があってもまだッ! なら――』
だが、まだ彼には――否、彼らには切り札があった。
現状、ただ守護者を使えるだけならば、S級魔術師との大きな差は無い。
簒奪者であるというアイデンティティ、そして“半年限り”という死への恐怖が限りなく薄い肉体のアドバンテージを活かす、とっておきの方法がある。
『解き放つまでだッ! 簒奪者にはまだ“上”があるッ!』
ガアムは戦場の真っ只中で、あろうことか守護者を解除した。
そして己の中にある魔力を暴走させる。
人の体を突き破り、魔物としての――巨大な人狼となったガアムがそこに現れる。
だがこれだけでは、ただ大きいだけで守護者よりも弱い。
重要なのは、魔物化してもある程度の理性が残ること。
そしてその理性により、己の内に宿る本能を呼び覚ますこと。
ガアムが意識を集中させると、人狼の全身に光が浮かび上がる。
やがて白い光は形と色を得て、黒の鎧となって獣の肉体を覆った。
『グルゥガアァァァァアアアアアアッ!』
魔物化と守護者の同時使用――簒奪者のみに許された、一度限りの最強の力。
彼は巨大化した爪を大きく振るった。
ゴオォオオッ! と暴風が巻き起こり、巻き込まれた百体を越える侵略者の肉体は目に見えないほど細かく切り刻まれる。
『かかってこいよ侵略者。簒奪者の本気ってのを見せてやらあぁぁッ! グルアァァァァアアアッ!』
獣の咆哮が響き渡り、押し寄せる侵略者たちはその数を減らしていく――
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