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7 冒険者『見習い』(3)


冒険者『見習い』として、依頼人である知らないおばあさんの家の庭の草刈りをスピード上げてやり終えた。


ちょっと早くやりすぎたかも?


めちゃくちゃ広い庭ではなかったものの、まだ5歳の男子にしては1時間でこの量をすぐに終わらせるには少し早かったような気もしてしまう。

比較対象がないからわからないけど、僕のステータス、おそらく同年代のステータスの6倍くらいは高い気がするから多少遅くやってもおそらく早くなる。


おばあさんとハートさんの会話に混ざりつつ待っていると草刈りが終わってから2時間くらい経ってからラーラさんは戻ってきた。


「ず、ずいぶん早いな!」


やっぱり早かったな。もしかするとラーラさんがやるより早かった可能性がある。ステータスがほぼ同じとはいえ、僕の方が全ステータスで見ると少し高いしね。


「とりあえず終わらせておいたよ」

「これならまた他の頼めそうだ!」


おばあさんに依頼完了のサインを事前にもらっていたらしく、ギルドから大きなサイズの5枚硬貨小さいサイズの硬貨を数枚、依頼料として受け取ってくれていた。そしてそのうちの3枚を僕に渡してくれた。


これは1000単位の硬貨で3枚だから3000エルだ。

エルはこの国の貨幣の単位になる。これもゲームと同じだ。


・・・PWKは日本で作られたゲームであったため、PWK内部は全世界共通で日本円、1円が1単位として使われる仕組みになっていた。


硬貨の種類は1単位、5単位、10単位、50単位100単位、500単位、1000単位、5000単位、10000単位の9つの種類がある。日本円と同じだ。2000単位はないのはまあ、よく理由はわからない。

まあ僕は前世でも使ったことないので特に支障を感じたことがない。


それにしても、税率の高さにもかかわらず現代日本とこんなに相場が違うってのはどういうことなのやら。

まあその辺はゲームと同じて感じか。製作者の配慮という感じで。金銭感覚が近い方がプレイしやすいとかいう。この世界に製作者がいるのかはわからないが、いわゆる神か。いるかもしれない。悪魔がいるくらいだからね。神がいろいろ操作している可能性がなくはない。


まあいいか、考えても仕方がない。

・・・ちなみにPWKでは依頼を受けた後、依頼完了後にギルドに戻ると受付で換金できる仕組みだった。ここも同じらしい。


「半分以上もらっていいの?」

「良いんだよ。むしろあたしは何もしてないしな!」


なかなか良い人のようだ。

だけど、もともとの依頼料が結構少ないな。まあでも草刈りだとこんなもんかもしれない。


草刈りなんてPWKでやったことないし。草刈りで約5000エル。つまり5000円という感じだから、まあ妥当な気もしなくはないか。相場がわからないけど。あ。でも、70%税金で取られるから依頼料は約1万6千エルだったのか?

そのうち3000エルを冒険者『見習い』としてもらったわけだ。


前世の感覚でいくと1時間3000エルになったというわけだ。

まあそのあと2時間はおばあさんと喋ってたのでその時間を仕事と考えると時間当たり約1000エルか。


僕は子供だし妥当か、むしろかなり良いかもしれない。ただ、全額もらえるならもっと良いよね、3時間で5000エル。時間当たり1666エルだ。これを1人でできるなら1時間で依頼を終えられれば時間当たり5000エル!かなり良い報酬だ!

冒険者として働けたらうまく稼げそうだ!


ハートさんの月給は2倍になってからは50万エルもらっているが、まあ税金で60%持っていかれるらしいのでもらえるのは20万エルだ。


関係ないけど、年間、額面で800万エル以上もらっている人は70%持ってかれるらしい。それ以上は知らないけど、もっと年収が高額になるとさらに税率がはね上がるとか。


・・・いやはや恐ろしい。がっつり仕事しようと思えないよね。それがチェーン店の進出を妨げているのかもしれない。稼いでもほとんど税金として吸収されるのだ。


よくもまあ『ヤークルスブレッド』はチェーン店で出店しようと思ったもんだと感心してしまう。大きくなればなるほど税金が大きくなって苦しくなるということだ。


まあとはいえ、今まで手取り10万エルでよく頑張ってたよなぁと思う。

結局格安の店で食事を仕入れて、足りない分は外で採取した植物とかで済ませていたっけ。


あ。冒険者も同様に税金を取られてるはずだから、1万6千万エルが依頼料だったんだよな・・・ちょっと高いかも。PWKでは税金という概念があるにはあったが、もっと安かった。やはり魔王のせいなんだろうな。まわりまわって神のせいとも言える気がするが・・・まあそれはいいか。


ラーラさんと別れてから『ヤークルスブレッド』ラーリア支店で売上金を受け取り本社へと向かうことにした。


さて、ステータスがどうなったか、見てみるか、あまり期待できないけど・・・『鑑定』と。 


***


NAM:ロキ

GEN:男

AGE:5歳

STS:健康

JOB:冒険者『見習い』

LEV:6

EXP:3021

HTP:520

STR:91

ATK:86

VIT:82

DEF:78

INT:124

RES:84

DEX:78

AGI:87

SKL:『言語理解』、『光明』、『鑑定』、『利き香草』

TTL:『禁忌の転生者』


***


お、お、お、お!?

JOBついてんじゃん!!??やべぇ!!まさかとは思ったけど本当についた!!こんな抜け道があるとは!!


「ロキちゃんうれしそうね~?」

「う、うん!」

「結構いい仕事みたいでよかったわ~毎週仕事やってみる~?」

「うん!!」


即答である。ハートさんはにこっと綺麗に笑う。ラーラさんとはやはり全然違う豪快な笑い方だ。

さてと、冒険者『見習い』なれたのなら、これからのことを考えなければな。

冒険者と同じようにスキルが得られるのだろうか?


・・・よし、これは実験しなければなるまい!


PWKの世界において、JOBすなわち仕事は1つだけしか選べない。

でも、冒険者の中でもさらに追加でJOBが付く。剣、盾、回復、盗賊などだ。しかし、ラーラさんは冒険者としかついてなかったっけ。


冒険者の中の職業を追加するにはその追加JOBに関する取得条件を満たせばよい。

今の場合、簡単に取れそうなのは・・・今ある2本の剣を使えるから、剣が妥当か。

家に着くまでに魔物が出るから、いくつか取得条件を満たすための行動を取ってみるか。


ということで、アテンの町に着くまでに魔物が出たので、ゲーム知識をもとにいくつか条件を満たしてみた。

その結果がこれだ。


***


NAM:ロキ

GEN:男

AGE:5歳

STS:健康

JOB:冒険者『見習い』職:剣

LEV:6

EXP:1012

HTP:520

SKP:2

STR:91

ATK:86

VIT:82

DEF:78

INT:124

RES:84

DEX:78

AGI:87

SKL:『言語理解』、『光明』、『鑑定』、『利き香草』、『剣:強斬』

TTL:『禁忌の転生者』


***


SKLに『剣:強斬』が追加になった。職業名の付いたスキルはクールタイムが存在したっけ。

『剣:強斬』を『鑑定』っと。


***


『剣:強斬』

敵単体に物理攻撃時、物理ダメージ+20%増。

SKP消費1

クールタイム:10秒


取得条件:5分以内に剣で5体殺害。


***


あーやっぱりこれくらいしか見れないか。効果距離や詠唱時間がない。

その辺りは単純に技量などに依存するようだ。技量といってもステータスにはない。隠しパラメータというか、身体的条件とか気の持ちようとかに依存するというところだろう。ゲームの世界と現実を混ぜるとこうなるわけか。


でも、ちゃんとスキルは手に入った・・・まぁ取得条件は同じみたいだけど、効果が僕の知っている内容よりも弱いな・・・『見習い』だからだろうか。まあこれくらいなら問題ないな。この調子で行けば取得条件LEV10、スキルなしで1時間以内に300体殺害、で手に入る『剣:邪剣』が特殊攻撃が物理攻撃ダメージ+50%、特殊ダメージ+50%となる。


魔王戦ではこれを連発しなければ勝てないと聞いている。


でもこれクールタイムあるしな・・・ちなみに、スキル自体はSKPを消費して実行されることになるが、SKPは割とすぐ回復するので、あんまり気にしなくて良かったりする。大概クールタイムよりも短い時間で全回復する。


まあそれでも、1人で魔王に立ち向かうとなると相当厳しいことになりそうだ。魔王だって攻撃強いしそれ全部回避しないと難しそうだけど、LEV10までしか上がらないし、行動速度や回避率、命中率に影響を与えるステータスのAGIはLEV10までにはそれほど上がらないだろうから、1人だと全回避などはおそらく不可能だろう・・・。


現状では少なくとも盾職がいなければ攻略不可能だろうな。回復職は魔法がないから存在しないし。ポーションも初期は流通してないし。そして僕はその作り方だって知らない。

そういうJOBに就いてなかったからね。

もし盾職が居たとしても同じ攻撃系の職がいてくれないと・・・厳しいのでは?冒険者『見習い』だとステータスやスキルにデバフでもかかってるのか少し下がる可能性があるし。


やっぱり仲間集めしないといけないか・・・でもな・・・難しい気がするな・・・はぁ。


そういやPWKの世界ではジョブチェンジは1日1回までしかできなかったけど、明日には別ジョブが取れるか確認しないとな。と、現実逃避するのであった。





翌週、ハートさんの仕事を手伝うついでに魔物を倒し、盾『盾:緩衝』を手に入れた。


***


『盾:緩衝』

敵単体に盾による物理防御時、物理ダメージ20%減。

SKP消費1

クールタイム:10秒


取得条件:5分以内に盾で5体からの攻撃を防ぐ。


***


盾はその辺に落ちてた倒木を使ってみた。攻撃を防げればオッケーなんですよこういうのは。ゲーム的に。


まあ結局取ったところで、剣と盾は同時には使えないんだけどさ。

JOB限定SKLはJOBが一致してないと使えないからね。


でもまあ、とりあえずそれを取った時点であることに気が付いた。


莉緒と会えれば、たぶん莉緒はLEV5以上になっているだろうし、少し教えればうまく魔王討伐パーティ組めるかも、ということだ。


まあ莉緒を見つけられてないんだけどさ・・・。

というか、莉緒に一緒に戦ってもらうってどうなの?という気持ちもある。

てか僕と会いたいのかも不明だ。前世のことなんて忘れて、思い出したくもないと思っている可能性だってあるのだ。


・・・あんな死に方すれば仕方ないだろう。僕が莉緒なら、正直会いたくない気がする。


一応、同じくらいの子供がいたら今までも『鑑定』して来たが、『禁忌の転生者』や『鑑定』などの僕が持っているような先天性のTTLやSKLのようなものを所持している者には出会えていない。


まあそうだよな。悪魔さんの事前情報が正しいならたぶん莉緒は元々いたクローウェル領のどこかにいるだろう。僕が今いる、セレス領にはいないと思われる。


そんなことを考えつつ、僕はラーリアの『ヤークルスブレッド』にハートさんと一緒に来ていた。

しかし、どうやらまたもや早く着きすぎたようだ。

女性の店長が驚きテンパっていた。


「ごめんなさい!今週も数字が合わなくて!今計算し直すから明日か明後日まで待ってください」

「いいですよ~時間はありますか~」


ハートさんはにこにこしながらそう返す。


またか。まあこういうのはズレてしまいやすいのだろう。ラーリア支店の店長は数字もそんなに得意ではないようなので余計に時間がかかっているようだ。


「さすがにどこかに行っててもらうのも悪いのでバックヤードでお茶でもしててください!」

「いいんですか~?」


にこっと綺麗に微笑むハートさん。時間も有り余ってるし、まあこんなことで怒るような短気な人ではない。


「じゃあ、僕は仕事してくるよ」

「そうね~じゃあ、ロキちゃんの仕事手伝おうかしら~?前回は何もしなかったしね~?」

「いいよ、大丈夫!今回からは僕1人で問題ないよ」

「そう~?わかったわ~気をつけるのよ~?」

「うん」


そう言ってからすぐさま部屋の裏に向かっていくハートさんをしり目に僕も歩き出す。


まあまあ放任主義で助かるなぁ。

ということで、店を後にして僕はまたグラニーさんを訪ねることにしたのだった。


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