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2 迫りくる死


なんだかんだ僕の1歳の誕生日がやってきた。

0歳11ヶ月になってからというもの、毎日びくびくしていたが、無事に1歳になることができた・・・ほっと、安堵する。


よかった。莉緒もLEV1になれたんだな・・・



しかし、そこまで思考して、ようやく気が付いたのだ。

・・・あ、あれ?ちょっと待てよ?


このバグスキルに、ゲームをやらない莉緒が気が付けるのか?



普通に考えたら絶対気が付けないのでは・・・!?


下手したらこれがゲーム世界とも思ってない可能性があるのだ!


『鑑定』だって使えることに気がつかなければ使えないし、『鑑定』でステータスを見なかったらゲームらしいシステムにも気がつかない・・・


正直、そういうのを使うゲームとか小説読んでなかったら『鑑定』なんて単語を使うことすらないだろう!

少なくとも絶対使わないよ!日本の一般会話で鑑定なんて使う?使わないよ!

それに運良くその単語を使ったとしても対象者を思い浮かべてないと発動しない!


しかもだ!たとえ、それに気がつけたとしても、こんなバグスキルという意味不明な仕組みに気がつけるはずがない。



つまり、僕が1歳になれたのは単純に僕が条件を満たしていたからで、もし僕の後に転生して生まれていたのならば、莉緒はまだ1歳になっていないのではないか・・・?というのがかなり濃厚なのだ。悪魔さんは同じ日に生まれるようにするなんて言ってないのだ



だとするならば・・・まだ死の危機は去っていない・・・

てか、それならば最初からどうしようもない事態ではないか・・・

いつ襲われるともわからない死。


死神によって常に首に鎌をかけられているようなものじゃないか!


おかしいだろこんなの・・・!!!


莉緒に接触できるチャンスはないのか?!

そう考えたものの、かなり絶望的だった。


何と言っても、そもそも僕が意識を得てから1歳を迎えるまでハートさん以外に人間に会っていないのだ。


周りは森に囲まれていて、近くに人は住んでいないようだし。

その時点であまり他の人との接触は絶望的な状態だろう。


悪魔さん!!おかしいではないか!近くに転生させるんじゃなかったの?!


ハートさんに聞きたいけど、さすがにいきなり喋り始めたらおかしいだろうし・・・下手したら『悪魔の子』だ!とか錯乱して僕は殺されるかもしれない。

ある意味間違ってないけど!それじゃ困る!


ハートさんがなんで僕が喋り始めないのか疑い始めたくらいじゃないと僕には意思の疎通を図るのが難しいと言えた。


弟や妹のいなかった僕には赤ちゃんが何歳からどんな感じで喋り出すかなんてわからないよ!



それになんでこんなところに住んでいるのかって話だよ!


人里離れ子育てライフ!とかいう次元の話じゃないよね!?ほんっとに人がいない!!下手したら鬱になるよ!


動物もほとんど見ないし、魔物だって見てない!もはやここまでくると怖い!

僕とハートさん以外に生き物はいないんじゃないか説まで浮上してるよ!


PWKの世界ではこういう森には魔物が出るものだが、それらしい姿も鳴き声も痕跡すらも見当たらない。どう考えてもおかしい!


・・・でも思い当たることはある。

僕がPWKを始めたのはリリースから1年後の大型アップデートを4回こなした後の世界で、初期とは全く違う状態とさえ言われていた。


・・・リリース直後はメインストーリーもなく、ほとんど魔物もおらず、プレイヤー同士で狩場争いがあったとのことだから、もしかしたらそれなのかもしれない。もしくは、生物の生息していない特別エリアなのか・・・だ。

生物がいないようなエリアだとすると、他に人間もいないわけで・・・悪魔さん、の言っていた契約と違くない?という話になる。

だってそうなると莉緒近くにいないじゃん?



おかしい・・・こんなはずではなかった・・・異世界転生で生まれた瞬間からこんなメンタル持ってかれるスタートを切るとは想像もしてなかった!



もしかしたら、明日、なんの前触れもなしに突然死ぬかもしれないわけだ。

考えていたらチリチリと脳が焼き付きそうになる感覚で頭がおかしくなりそうになる・・・

それに条件を満たせなかった場合に、どんなふうに死ぬのかさえ分からない!


莉緒が死ぬと僕も死ぬという契約があるというのがこんなにも都合が悪いとは思わなかった!

それに莉緒もそういう気持ちになっているとしたらと考えたら、いよいよ僕は耐えられないぞ。


むしろ莉緒の方が心労が大きいと思うから・・・。



莉緒からしてみれば・・・一番最初の段階なのに全く達成の目処が微塵も立たないのだ。そして失敗の結果は死。毎日迫りくる死の恐怖に耐えることになる。


それも、失敗すれば連帯責任で僕の命までかかっている。

莉緒がどの程度僕の命を考えてくれるのかはわからないけどさ・・・。


努力でどうにでもできることが多く、達成できなくとも死ぬことはなかった日本の高校生までの日常が・・・嫌に遠く感じられる。


考えないようにしよう、不安なことは考えたところで仕方ないのだ。





1歳になって3ヶ月が過ぎたあたりで、ようやく、そのことを考えるのをやめることができた。


莉緒のことは考えても仕方ない。頭の良い彼女のことだ、きっとどうにかなるだろう。

そういう楽観的な考えもできるようになってきていた。というのも、僕は覚悟ができ始めていたからだ。



莉緒がLEVの条件を達成できず、僕が死ぬとしても、僕は彼女を恨まない。

仕方のないことだ。諦めとも、達観とも言える気持ちが半々くらいだが、比較的清々しい感じに思えていた。


そもそも悪魔さんとの取引がしたこと自体が間違いだったのだが、僕らには選択肢などなかった。

もはや避けられない事故みたいなものだ。


ここ数ヶ月でメンタルはなかなか鍛えられている気がする。





1歳10ヶ月になったころ、僕は機を見計らってちまちまやっていたバグスキルによってLEV2になっていた。

そう、LEV上げのバグスキルで上がる上限まで上げたのだ。



つまり、ここから先は僕が自力でEXPを上げなければならない。


そして、このあたりで、おそらく、・・・いや、かなりの確率で莉緒はLEV1に上がっていると思い込めるようになってきた。

さすがに1歳以上年齢が違うとは思えない。


悪魔さんは契約をするにあたり「これは投資だ」と言っていたのだ。



僕が莉緒よりかなり後に生まれてくる予定だった場合、すでに莉緒が死んでいたら僕は生まれた直後に、もしくは生まれる前に死ぬことになる。そして、逆でもそうだ。


その辺、悪魔さんの考え方はどうなるんだろう?下手したら生まれるタイミングをずらしたことで1人分の魂の稼ぎを完全に無駄にすることになる。まあ0歳の赤ちゃんの稼ぎなどないに等しいだろうけどさ。


一蓮托生の条件が付いている時点で、2人の誕生日が離れすぎていると、悪魔さんの「投資」に影響を及ぼすのではないだろうか。悪魔さんがPWKの世界を知っていたのかは、わからないが、この世界では早く生まれたほうが攻略の記憶のアドバンテージがあって良いはずなのだ。アップデート前にいたほうがそれなりにアドバンテージがある。

僕ならなるべく早く、ある程度同じ日に生まれるように設定する。


ただ僕らを嵌めただけで、慌てふためく様子を見たいだけなら納得ではあるが、残念ながら僕も莉緒も表面上では慌てふためくような様子見せるタイプではないし、見ていて楽しめるような反応するような人間ではないはずだ。


僕らに契約を持ちかけるにあたってその辺りは観察していたという感じだった。

さすがにそのあたりは悪魔さんもわかっているのではないか?



悪魔さんが頭が良いのかはわからないが、このくらいは考えられるのではないか?



ということで、転生させるなら少なくとも同じ年が筋ではないか、と思う。

どこまで悪魔さんが生まれる場所や時間を指定できるのかは知らないが、近くに転生させるということを言っていた時点である程度場所の指定はできるのであろう・・・嘘でないならば。


僕の中での希望的結論は、年齢は1年も離れていないと考えるのが妥当ではあるはず、というところだ。


その結論から考えると、だ。

今この瞬間も僕は死んでいない。1年と10ヶ月経過しても、だ!


と考えるならば、どんな手段を使ったのかはわからないが、おそらく莉緒はLEVを上げている。



だから、きっと、そのうち会えるのだろう・・・

その時までに強くなっておきたいな・・・



何しろ、ある程度長生きするためには高LEVである必要がある。

80歳まで生きるにはLEV80ならなってないといけないしな!


僕の知る限り大型アップデートをこなした後のPWKの世界ではLEV上限はなかったはずだ。



今からあげておいて損はない!

LEVを上げておけば、莉緒の手助けもできるし!結果として長く一緒にいられるのだ!



そして今生こそは平和に暮らす・・・最終的にはこの世界で死ぬ前に人を殺しまくる、大量殺人鬼をやってないといけないんだろうけど・・・今は置いておこう。



ふと、前世を、死ぬ前までの平和だった日本での生活を思い出す。

日本を思い出すと、必然的に前世のお母さんやお父さんの顔が浮かぶが・・・もう、僕は死んでしまったのだ。呆気なく、ストーカーに殺され、幼馴染の莉緒も巻き込むという情けない突然の死でとても驚かせて悲しませただろうけど、僕は今生でも前世の両親に感謝している。


決して両親を忘れることはない。ありがとうございました、と勝手に一方的な感謝だけを思うことにしている。


悲観的な考えは僕自身の心にも体にも、また未来にも、現在にも、過去にも失礼だ。



よし!やるぞ!まずはとにもかくにもLEV上げだ!

とはいっても、魔物も敵となるような人間もいないためEXPの供給源がない。


それに、だ。

たとえ今の僕は魔物でも人間でも遭遇しても倒せる気がしない。



それはハートさんと僕とのステータスの差を見れば火を見るより明らかだ。

もうすぐ2歳になろうとしている僕だが、そんな僕の方がハートさんよりLEVは高いはずなのに格段に弱いのだ。


それはAGE、つまり年齢が関係しているのだろう。

筋力のつきやすさからいうとGEN、つまりは性別とかも関わっているだろうけど、それはこの際置いておこう。


とりあえず、年齢と共にステータスも勝手に上がると考えられる。

まあこれに関してはそんなに考える必要はない。勝手に年齢と共に身体が成長しステータスも成長するというだけのことだ。



しかし、それを待っていたら僕は3歳になる前に死ぬだろう。

3歳程度のステータスじゃ魔物を倒せず、EXPが手に入らない。すなわちLEVが上がらないから死ぬということになる。


ステータスをあげないとEXPを稼げない。

しかし、LEVをあげないとステータスは上がらない。

LEVを上げるにはEXPが必要。


これだけ考えたら詰みである。



だが、突破口があるとは思う。

PWKの世界でも存在してはいた方法だが、それ以外にもステータスが上がる方法があるのだ。


筋トレなどのトレーニングがそれに当たるだろう。トレーニングによりステータスを強化するのだ。

もちろん限度はあるだろうけど、やらないよりはマシだろう。

当面はハートさんの目がないうちに今できる筋トレを行うことにした。


ただ、変に負荷のかかる筋トレは肉体の成長に悪いと前世で聞いたことがあるので、程々にやる他ないだろう。


となると、今後の方針は適度な筋トレを行いながら、EXPの取得方法を考えるしかないな。






・・・そして僕は、2歳の誕生日を迎えた。

『鑑定』によって毎日確認していたのだ。やることないしね。


1歳の時もそうだが、特にハートさんにお祝いはされてない。そういう文化がないのだろう。

別に祝いを求めてないからいいけどね。



そして、2歳になったことによって僕は嬉しさで無意識に震えていた。

莉緒がLEV上げのバグを使っているかもしくはEXP-BOMBを使っていると確信したからだ。2歳になれたということは莉緒は1歳になっているのは間違いない!きっとそうだ!


正攻法では0~1歳までにEXPを積むまず方法がないはず。EXP-BOMBは手に入るとは思えないから、彼女はバグスキルを使ったのだろう。


あのスキル、普通に生活していて身につくとは思えないけど・・・どうやって見つけ出したのか皆目見当もつかないんだけれども!事実、上手くいったのだから良かった!


・・・しかし、もうバグは使えない。


LEV2までの累積EXP分までしか上がらないからだ。

2歳のうちに魔物をいくつか討伐するしかない・・・

EXP-BOMBならLEV3以上にもなるが・・・EXP-BOMBが手に入るとも思えない。


しかし、すぐ近くには魔物は出ないし、それなりに弱い魔物が出たとしても2歳のLEV2のステータスじゃ倒せないだろう。


少し遠くまで行ったとして、僕が倒せる程度の非常に弱い魔物がいるとも思えない。

悪魔さんがお膳立てしてくれていれば話は別だが、助けてくれるとはなんとなく思えない・・・



さてどうしたものか・・・その後しばらくずっと悩むこととなった。





2歳3ヶ月になった頃、僕は普通に歩けるようになっていたので、毎日畑にハートさんと一緒に出ていた。


そしてある時、畑の傍にネズミ型の魔物がいることに気がついた。


びっくりした!なんと言っても初めてハートさん以外の動く生き物に出会ったのだ!


ハートさんも「最近ネズミか何かが畑を荒らして困っちゃうわ~」と僕に向かって喋りかけているのを聞いていたので、ネズミがいるのは知っていたが、半分は幻想では?とさえ思っていた。


大きさは大体僕の頭くらいだろうか。普通のネズミよりは絶対にでかい。


それよりもだ、こんなタイミングで魔物とは・・・しかも最下級だ。うまくやれば僕でも普通に倒せるのではないだろうか?

でもまあ正直、こいつを倒したところでさほどEXPを得られないだろうけどね。



鑑定してみたところ、スモールラットLEV1だった。動物ではない、やっぱり魔物だ。倒してもEXPは2くらいだろう。

まず動物にはMGP、すなわちマジックポイントがない。

現時点では人間にはMGPはない。MGPがあるのは魔物という設定になっているはずだ。

後々人間にも使えるようにはなるのだが、その後の定義では人間以外がMGPを持ったらそれは魔物ということらしい。実に自分勝手なルールである。


とはいえ、弱いせいか、スモールラットにもMGPがない。


まあそんなことは置いといて、放置してるとこちらの食料を盗られてしまうので、討伐させてもらおう。

僕は、僕と同じくらいの大きさの石を拾って、ネズミまで少しだけ近寄ると、真上から落ちるようにかなり高くに向けて投げた。


思ったより石は高く飛んだ。

意外と僕、力はあるな。

たぶん日本で最上明彦として過ごしていた時の小学とか中学時代と同じくらいはある気がする。


まあたぶん逃げられるだろうからすぐさま拾ってある小石を本気で投げて、当たれば万歳というところか、そうやって逃げられた時のことを考えていたが、スモールラットは畑で作物を食べることに夢中だったらしく、まさかの一撃で潰れてしまった。


しかも、潰れた衝撃で血飛沫があたりに飛び散っていた。


う、うわぁ。グロテスク!!

ふと前世の死際を思い出す有様になってしまった。


トラウマになっていそうものだけど、意外と大丈夫だった。


ふう。意外と落ち着けてるな、僕。よしよし。



・・・てか、そんなに石が重かったか?自然落下でここまでとは。

結構高くまで投げ上げられてはいたが、重力加速度が地球より大きいのか?


たしかにちょっと筋トレはしていたため、いつのまにかハートさんよりATKとSTRは高くなっているが・・・まさか石が高く上がったのも驚きではあるが、ここまでに悲惨な状態になるとは思わなかった。


いや、人の頭くらいあるネズミを潰したことなんてなかったから勝手に疑問に感じるだけか?



ちなみにネズミ型魔物を倒したことでEXP2が手に入った。


ふむ。

なるほど。


・・・僕、思いの外強くなってるのかもしれない。

2歳にしては絶対に強い、はず。



石が地面に落ちた音でハートさんが驚いでいたが、キョロキョロして血が飛び散っていることに気がつき「きゃぁぁあ!!!!?」と悲鳴を上げて驚いていた。


そりゃ驚くよな。僕もこの血塗れの惨状にはびっくりしてる。


キョロキョロと探して、僕を見つけるやすぐに走って僕を持ち上げて強く抱きしめる。


「良かったぁ、ロキじゃなくてよかったぁ!」



え、僕が潰れたかと思ったの?

それだとしたら悪いことをしてしまった・・・


いったい何故にこんな場所で血塗れになることがあるのかという感じだけどさ。

・・・まあ血塗れの畑を前にして言えることでもないか。


ちょっと苦しいものの、未だに人語を発さないことになっている僕は「あうあう」しか言えない。


ごめんなさい、くらいは言いたかったな・・・



それにしても、ハートさんの反応が尋常じゃないのはなぜだろうか?


以前からかなり過保護なのだ。



過保護にしてもこんな魔物もほとんど出ないような場所で突然何かが起きると考えているのだろうか?まあ・・・魔物でできたけどさ。


そういえば、こんな人気のない場所に僕と2人暮らししている時点でかなり訳ありな気がする・・・



それは置いておいて、こんな状態ではまともに経験値を稼ぎに遠出などできそうにない・・・どうしよう・・・


僕は泣いているハートさんに抱きつかれながら困惑していた。





少し時間が流れ、2歳8ヶ月になった。



ネズミ型魔物の事件があってからはEXPは一切増えていない。

それに、未だに僕はEXPがいくつ上がればLEV3になれるかわかっていなかった。


数式がわからん・・・PWKの時とは明らかに違うからだ。

PWKの時はたしか特定の数列が使われてるという話だったけど、いまいちわからなかった。まだ高校に入って間もなかったし、数列とか良くわからん。


感覚的にしか覚えてないが少なくとも今ほど1レベル上げるのにかからなかったはずだ。


そういえば、地味に忘れてたけど、選んだ職業によっても成長が違うんだったな。

それでも最初の頃に大きな差はなかったはず・・・


だが、問題はゲームの世界では成人したキャラクターでスタートするため成り立つ話だったのだが、子供なので僕には職業がない。


無職の赤ちゃんなのだ。

こういうところはゲームと違くなってしまうのは必然か・・・明らかに違うからどうにもできない。

よって、まだ確かめる方法がないし、数学がわからない範囲のことなのでどうにもできない。



まあわかったところで、EXPを上がる方法がないので無意味なのだけれど、ハートさん以外に人いないし、そもそも僕は喋れないし、やることがないからこういう考察が無意味ながらも面白かったりする。



・・・ちなみに、LEV1になるためのEXPは64で、そこからLEV2に上がるまでにEXPは65さらに必要だった。


バグスキルでEXPを1ずつ増やしていた時に『鑑定』で確認していたから間違いない。

累積値EXP129でLEV2に上がっていたので安堵したっけな。


現在はネズミ型魔物、スモールラットのおかげで累積値であるEXPの表記は131だ。


今考えられるのはLEVが上がる毎にEXP1単位ずつ増えていくという仮説だ。その場合、なぜ最初にレベルが上がるときに64必要なのかは不明ではあるけども。その辺はまあいいだろう。

その考えでいくと、次は66必要なのでは?というところだが、次のレベルに上がるまではわからない。それに、なんとなく、そうじゃない気もする。


命の危機が迫っているというのになんとなく数式が何なのか考えてウキウキする自分がいた。

数学者はそういうのを楽しんでるのかな?僕には数字に関する才能もなければ努力する気力もないけどさ。



そういえば、全然関係ないけど、僕の出自について薄らと不穏なことを抱いたのもEXPの数式を考えていた時のことだったっけ。



EXPの法則がないかどうか、畑の傍の地面に数式を書いていた時にハートさんに見られた時のことだった。



ヤバイ!と思った。何せ、まだ僕は喋ることができない設定なのだ。

にもかかわらず、教えてもらった覚えもない数字を書いていたのだ。


中世ヨーロッパ系の時代設定の世界観では『悪魔の子』と言われても殺されてもおかしくないだろう。大陸魔人大戦の時期には魔族狩りとかが横行していた。女子供、家族とか問わず疑わしき者は惨殺されていたのだ。それ以前は知らないけど。

事実、悪魔さんの手が加わってるのであながち悪魔の子というのも否定できないという・・・まあそれは置いておこう。TTL、称号の『禁忌の転生者』ていうのもあまり良く無さそうだ。禁忌だもんね。『鑑定』スキルを使用できる人間に出くわしたらめんどくさそう・・・


しかも、発音は違えど、書き言葉は日本語と英語がごちゃ混ぜの世界である。数字も、もちろんこの世界では共通であった。


「あらぁ~?ロキはもう数字がわかるのかしら!さすがあの方の子ねぇ!」


と、笑顔で褒めてくれたのだ。

能天気すぎるだろ!何も教えられてない子供が数字かけるわけないって!とツッコミたかったが、そのくらいでこのハートさんという可愛らしい人はちょうどいい気がする。


しかしハートさんの『あの方』という言葉で僕は察してしまった。

なんでこんな人里離れたような森の中でポツンと赤ん坊と2人きりで生活しているのか、人と関わりを持たないのか、そう思った時、だいぶ頭の中で想像が膨らんでしまった。



実際は違うのかもしれないが、勝手に想像するに、ハートさんはどこかのお偉いさんの子供を身籠ってしまったが、それは許されないことだったため人里離れた場所で1人子供を産んで育てている、というところだろうか・・・だから莉緒も近くにいないのかもしれない。


本当なら近くで生まれるはずだったが、ハートさんがその場所から逃げてきたためにこのように莉緒と離れ離れと・・・そうなれば、たしかに悪魔さんとの契約の対象外かもしれない。生まれる場所は同じだったはずなのにその後で移動してしまったのだろう。


まあそれは置いといてだ、となるとだよ?そのうち出自がばれたら僕は命を狙われたりするのだろうか?

・・・本当かどうかはさておき、だとすると、ますます強くならねばなるまい。



でも、EXPが手に入らないんだよな・・・どうしよう・・・





時は少し流れ、僕が2歳10ヶ月になった頃。


さすがに焦りを隠せなくなってきた。


辛い。


それにそろそろ喋ってもいいかな?とかも思うところでもあったけど、全くハートさんが「あうあう」言ってても不審に思ってこないあたり、喋ってはいけない気がした。絶対にしゃべってはいけない赤ん坊シリーズを毎日やってる感じだよ。


マジで何歳から喋れるようになるのやら。前世の記憶がある限り、僕は4歳までにはしゃべってた気がするけど・・・


もはや、一か八か片言で喋ってもいいかなと思うところだったけど、たとえ意思の疎通ができたとしてもだ、遠出させてくれるとかそういうことはないと思うし、どちらかと言えば、関係性が単純に悪くなる可能性があったため、僕は言い出せないでいた。



それに、その日は朝起きると畑が荒らされていて、ハートさんは困っていた。

小さな獣によって、多くの作物が齧られていたのだ。



「困ったわぁ・・・」


しゃがみ込んで作物の様子を見るハートさん。さすがに困り顔である。


ちなみになぜかは知らないが、18歳のハートさんは身長や胸などはあまり変わらないものの、幼さはなくなりつつあり、おっとり美人さんという感じになっていた。

さすが、お偉いさんに手を出されるだけのことはある。僕の憶測だけど。


てか、日本だったら大学生くらいか・・・生きてたら僕も大学受験くらいだろう。



・・・しかし、まあ、僕はこの人の胸をしゃぶってたのか・・・く、思い出したらほんのり変な気分に・・・やめやめ!冷静になれ僕!!

そんなことを思いながらも、僕はふと、あることに気がついた。


もしかして、これ、スモールラットの仕業かな?


畑で血飛沫の惨劇を繰り広げた以降にもスモールラットの姿だけはたまに見ていた。

EXPに変えてやろうと思っていたが、血飛沫の惨劇以降、投石などでは倒せず、失敗続きだった。


どこからやってきたのかは知らないがどうやらこの辺りに生息し始めたらしいのだ。

困ったものだ、食料を盗まれるのは厳しい。



いっぱい食べて大きくならないと強くなれない。

まるでステータスの値を奪われているような気分になる。


となると、逆に奴らを僕のEXPの糧に、餌にしてやるしかないだろう。

とは言っても、あまり良い案はないのだけれど、試すだけ試してみよう。



日が暮れ始めた頃。

僕は少しだけ足を伸ばして、森のところまで歩いて行った。

畑からも見えるような場所だから、ハートさんも僕に目を配りつつ畑仕事ができている。



季節は夏から秋になりそうな頃。

少し肌寒さを感じることがたまにある程度の気候だ。



木の根付近や腐り落ちた木片にはキノコが生えていることがあった。

その中でも見るからに怪しい彩色のキノコがあることに数日前から気がついていた。

・・・これはきっと毒がある。わかんないけど。


しかし、怪しい色でも食べられる場合があると聞いたことがある。

毒でなかったら意味がないな。他にも別の怪しいキノコを採取する。


ふう。暇な時に散策しておいてよかった。まあいつも暇なんだけどさ。


被害にあった作物もハートさんによって齧られた場所だけを切り取って捨ててあったので、それを混ぜ合わせて畑の周囲に点々と置いておいた。



これで食べたスモールラットを毒殺してやるのだ!


毒殺でも意図してやったことはPWKでもEXPは手に入ったはずだしね。

まあ食べるかはわからないけどさ。


魔物と言えど、ネズミは主には夜行性だろうから、朝起きてきたら結果がわかることだろう。



僕は軽い気持ちでそう考えていた。

おそらくネズミも馬鹿じゃないからそんなの食べないだろうと思っていた。



しかし、朝起きて、畑の様子を見に行ったら、とんでもない光景が広がっていた。



最大は僕の頭の中2個分、最小で拳大くらいの様々なサイズのネズミがそこら中で無数に死んでいたのだ。



20や30は軽く超えていそうだ・・・



「なにこれえぇぇえ!!!?」


ハートさんが叫び声をあげる。


そりゃそうだよな・・・何が起きたってくらいネズミの死体だらけなのだから。しかも死に方はまちまちである。

血塗れだったり傷だらけだったり、不自然な方向を関節が向いてしまっている個体もあった。

キノコそれぞれの効果だろう・・・怖えぇ!

どのキノコがそうだったのかはわからないけど奇行で死ぬ毒キノコとかだったのか!



「かわいそうに・・・何があったのかしらねぇ?でも、きっと畑を荒らしていたのはこのネズミたちね、私たちにとってはよかったのかもしれないけど、この子たちは災難だったわねぇ」



ハートさん、優しい人だな、ネズミにも優しさを見せるとは・・・

ハートさんが1匹、2匹と拾い上げて森のそばの地面に埋め始めていた頃、僕は、ハッとして『鑑定』でステータスを確認する。



***



NAM:ロキ

GEN:男

AGE:2歳

STS:健康

LEV:3

EXP:217

HTP:80

STR:21

ATK:18

VIT:20

DEF:9

INT:121

RES:10

DEX:12

AGI:15

SKL:『言語理解』、『光明』、『鑑定』、『利き香草』

TTL:『禁忌の転生者』



***




LEV上がってるぅう!!?

一気にあがったせいでどれだけあげたら上がるのかもはやわからなくなったけどさ!

これならあと1年生きられる!!

莉緒次第だけど・・・


こうしてLEV3にまで僕は運よく上がることができたのだった。

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