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10 ダンジョン突入

浮遊感が少し長い。ちょっとだけ高いな。


サリアを無理やり落として悪いことをした。


中は不思議なことに明るい。洞窟のような構造で、周囲の岩が光っている。

入ってきたゲートは出入り可能なのかと思い、3メートルくらい上の天井までよじ登って一度出てみたが、何度でも出入りできそうだった。


ラーラさんと目が合って笑いかけられたため、軽くお辞儀して穴の中に戻った。


ふむ。ダンジョンという感じか?だとしたら、魔物も出そうなんだけど、子供じゃ太刀打ちできないよな。


そう思いつつ周囲を見渡すと、サリアだけがぽつんと立っていた。

他の子供たちはとっくに散らばったらしい。


「押しちゃってごめん」

「だ、大丈夫、慣れて、ます・・・」


サリアはうつむきながらそう答える。

本当に悪いことしたな・・・なんかお詫びをしたいところだ。


さて進行方向だが、一本道にはなっているが、前後両方向に道が伸びている。


「みんなどっち行ったんだろ」

「ふ、二手に分かれて、ました・・・」

「そうか、まあそうなるよね」


二手に分かれたのはどちらかといえば必然的か。無謀にも考えずに突っ走ったのだろうな。


安全かどうかなんてわからない。魔物が出るかもしれないというのに。よくもまあこんな行動的になれるものだ。

あれだけ報酬が出ると言われたら必死にもなるか、それにラーラさんが言ったことだからこそ、余計にみんなやる気になっているのだろう。これが、別の冒険者が言った言葉なら信用できないから入らない者も出てきたと思う。


・・・そういや、ここに来るまで30分くらい歩いたけど、魔物に出くわさなかったな。それもイベント仕様だったのか?だとしたら、たしかにここの洞窟内にも魔物は出ないかもしれない。


そんなことを考えつつ、サリアに声をかける。


「出たかったらもう外に出て大丈夫だよ。ラーラさんは別に当初の予定通り報酬を出してくれるって言ってたから」

「ほ、ほんと、ですか・・・?」

「うん」

「で、でも、仕事だから頑張り、ます・・・」


社畜魂を感じるなぁ、と思いつつもまじめで良いことだよなと結論付けて僕も探索することにした。


あの何だかんだ鋭いグラニーさんは、今回の件、何か怪しいと言っていたしね・・・


進み始めると、背後からサリアが付いてきていた。


まあ、最後までしり込みしていたわけだから、今動かなかったら動けなくなっただろうし、僕についてくるほうが心細くなかったのだろう。


サリアは僕の邪魔にならないようにと数メートルほどあけて歩いている。


まあ、僕もロキの体で同年代の子とはちゃんと喋れる気がしないからそのくらい離れてくれてた方が気が楽だけどね。


しばらく歩くと今度は3方向に道が分かれている。


はぁ。結構広いのか?面倒だな。

一番右側の道を行くと今度は4つの道が分岐していたので、また1番右の道を選択する。


しばらく歩くと、5つの道が分岐していた。


途中で他の道とつながった形跡がない・・・嘘だろ?


先へ進むと、驚くことにさらに6つの道が現れたではないか・・・


正解の道を選択したから進めているということ以外に考えられるのは、ただただ恐ろしく広いということだ。

このままだと他の子供たちは迷子になって出てこられないぞ・・・?

1番右を選択して進むと7つの道に分岐する部屋にたどり着いた。


・・・はぁ。


1番右を選択して歩き出す。ちなみにサリアは付いてきていた。

サリアとの距離がどんどん近くなってきている気がする。


一度立ち止まってサリアの様子を再度確認する。周りがオレンジ色の光で互いの顔色もうかがえるほどの明るさなのだが、サリアの顔は真っ青だった。


「大丈夫?」

「え、えっと、私に聞いてます、か・・・?」


君以外いないよ・・・もしかして他に誰か見えてるの?髪に隠れてよく見えないけど、視線が全然違うとこ向いてる気がするんだけど、え?急に怖くなってきたよ。ホラーとはあんまり得意じゃないんだけど。


「うん」

「え、えっと、町の外に出るのも、生まれて初めてで、そ、それで、こんなところに来たので・・・その・・・」


要するに怖いのだろうか?わからないけど、まあ年相応なら、こんなところに放り込まれたら泣いててもおかしくはないか。少なくとも僕の子供時代だったらこんなとこ入れられたら泣いてたわ。


「僕が無理やりゲートに押し込んだのも悪いし、ある程度先に進んたら一緒に戻ろう」

「い、いいん、ですか・・・?」

「僕はここに来れればそれでよかったからね」


今のところ魔物も出てくる気配はないし、このまま帰ってもいいだろう。報酬も別になくてもいいし。てか、この感じから察するに、多分どこまで行っても同じだろう。


それにしてもだよ?

ふと立ち止まって分岐部屋の地面に計算式を書く。もしも、全ての通路が同じだけ分岐してるとしたら2から7まで順に掛けて・・・えーっと・・・5040の道がある可能性が・・・嘘だろ?そんなわけないよな、ははは。


そう思いながら7つ分岐の部屋を一番右を選択して進むと、8つ分岐のある部屋が現れた。


地面に筆算を書いて計算する・・・5040掛けることの8・・・40320の道があるの、か?!嘘だろ?


ちょっと気になって一旦戻って別の道を選んでみたが同じ分岐数の部屋に出た。


「うわ、これは・・・」

「ど、どうしたん、ですか・・・?」

「いや、気にしないで大丈夫、


これはひどいな。こんなダンジョンだめだろ・・・元に戻って、一番右を選んで再度8分岐の部屋の先を行くと進むと9つ分岐した部屋が現れた。


計算したくないが、立ち止まって地面に数字を書いて計算する。


・・・40320に?9を掛けて、362880?!

これはバカすぎる数字だ!誰だこんなの考えたやつ!


もしかしたら正解の部屋を見つけるまで無限に広がってんじゃねえだろうな・・・


これはだめだ。よし、帰ろ。


「じゃ、帰ろうか、まだ1時間も経ってないだろうけどもう良いでしょう」

「でも、カタナ、見つけてない、ですよ・・・?」


真面目だな・・・というかこんなの無理ゲーだから!

一部屋分進むだけでも5分くらいかかるのに、無限に広がってるんだよ?全部虱潰しに探したら何十年経っても答えにたどりつかない可能性あるわ!


「まあ、見ての通り、無理だからね」

「・・・?で、でも、先に進んだら、あるかもしれない、ですよ・・・?」


怖がってるのにまだ進む気あったのかよ。驚きだよ僕は。

というか、数学がわからないからこそ、いつかそのうち当たると思えるのか・・・。


そんなサリアをよそに、帰ろうとだけ告げて引き返すと、衝撃の事実を知ることになる。


それは3分岐の部屋まで戻ったときのことだった。


・・・帰り道が、ねぇ。


それまでは問題なく戻れたのに、急に帰り道がなくなっていたのだ。

まさか、時間が経過すると戻れなくなる?!もしくは進みすぎると戻れなくなるのか?!


まずい!!出られないぞ!!!


糞ゲーじゃねぇか!!


その時ふとグラニーさんの言葉を思い出した。


・・・『他の町で孤児が突然大勢いなくなった』と。


あぁ、そういうことか。

他の町でもこんな感じのイベントはあったのだろう。


何が原因かは不明だが、おそらくゴールにたどり着くまで帰れませんてやつだ。

こんな無限に広がる可能性のある分岐数じゃ正直ゴールなど見つけようがない。


何かヒントがないと無理だ!


しかしヒントがない・・・こういう時はトライアンドエラーしかない!


「あ、あれ?たしか、こっちから来ました、よね・・・?み、道がない・・・」


僕は絶賛青ざめて泣き出しそうなサリアの手を引っ張ってまた同じ、一番右分岐の道を辿って10番下の部屋まで来た。


ふむ。よし、これで3分岐の部屋まで戻ろう。

これで4分岐の部屋にまでしか戻れないなら時間や部屋を一定数進んだら戻れなくなるわけではない。


サリアが途中でへばり出したので時間が掛かったが、3分岐の部屋まで戻ることができた。


となると進みすぎたら一定地点まで戻れなくなるという可能性は低いか?

いや、ある程度進むと3分岐までしか戻れなくなる条件付きの可能性もあるか・・・失念していた。何が答えだ・・・?


とりあえず、ある仮説を考えた。

もしかしたら、だが、正解の道を進むと戻れなくなるとか・・・?

試しに3分岐の部屋から真ん中の道を選んで進み、4分岐部屋にたどり着いた。さらに一番右を選んでから5部屋まで行き、4分岐部屋まで戻ってみた。


なるほど。解けたかもしれない。


4分岐部屋には3分岐部屋に戻る道が消えていた。


仮説ではあるけど、つまり正解の道をある程度先に進むと元に戻れなくなる・・・これは気がつけば簡単な類か?もしくは一定数の部屋を通過すると、戻れなくなる可能性もあるが・・・仮説に基づいて検証してみよう。


そう思って僕は全力で行動すべく、サリアをおぶって走り出した。


こっちじゃない・・・こっちか、いや、こっちだった!

よし、戻って・・・よし!道がなくなった!


部屋を行き来した数でペナルティで戻れなくなるわけでもないな!

仮説がおそらく正解に近づいている!


僕はどんどん先へと進んだ。

サリアは「ご、ごめんなさい!ごめん、なさい!」と最初の頃はずっと謝っていたが、だんだんと慣れてきたのかそのうち僕の背中で寝てしまっていた。


まあ・・・置いていくわけにもいかないからね。


そんなわけでかなりの速度で走り回った結果、9分岐部屋までが帰り道がなくなった。


おいおいおい、どこまで続くんだよこれ・・・


答えがあるとしてもそれがどの段階で出現するのかわからないからメンタルにくるな・・・


このダンジョンのようなゲートに入ってから4時間くらいは経っただろうか。


一旦休もう・・・僕は背中のサリアを下ろして地面に突っ伏した。


地味に身体が疲れる。ちょっとのども乾いたし・・・水ないけどさ。

・・・ということで目をつぶって意識を飛ばさない程度に休憩し始めた、その時だった。


何やら気配を感じて目を開けると、地面から触手のようなものが出ていることに気がついた。


「んん!?おおぉい!なんなの?!」


僕は飛び起きて剣を引き抜き、対峙しようとすると、触手は地面に引っ込んでいった。


・・・なるほど、条件はわからないけど、立ち止まったり意識を飛ばしたような状態でいると魔物が出てくる、のか?


長期戦に持ち込んで疲れて気を抜いたところで襲いかかる・・・初見殺しだなこれは・・・


ふとサリアに目線を移すと、しっかり目覚めていたようだ。


「今の見た?」

「み、見ました・・・!」


驚きのあまりに硬直自体しているようだが・・・気にしてられないな。

僕はサリアを再度おぶって先に進み出した。



すると13分岐部屋まで到着するとある変化があった。急に部屋に入った時と同じようなゲートが現れたのだ。他に通路はない。

つまり答えの分岐を選んだ先にあるゴール、というところだろうか。


「やっと着いたか・・・?」

「もうダメかと、思いました・・・!」


やめて、それはなんか死亡フラグっぽい。と言っても伝わらないだろうから無言で僕はサリアを背負ったままゲートに入ったのだった。


・・・?


ゲートの先にはまた少し空間の広い部屋があり、洞窟と変わりはないが、変わりがあるとすれば正方形の部屋ということだ、そしてゲートではなく扉が1つだけある。そして、気がつくと背後に退路は存在していなかった。


進むしかないのか・・・


そう思って扉に近づこうとすると、少し離れたところから声が聞こえてきてビクッとした。


「開かないぞ、その扉」


死角にいたらしく、気が付かなかったが声の先を見ればエナが体育座りで待機していた。

・・・エナもクリアしていたのか。


僕より先に攻略していたのか・・・?もしくは他にももっと短い距離でゴールに続くルートがあったとか?

・・・まあいいか。過程はどうであれここにいるのは事実だし。


「そうなんだ」


「ん。開け方はなんとなくわかるんだ。あと1人必要だぞ」


エナに言われてハッ!とした。

ここまできて人数条件付きのダンジョンだったなんて落ちあり得るのかよ?!


たしかにPWKでもそんなパーティ限定ダンジョンはあったが・・・アンダー15限定てだけでもハードルが異常に上がっているってのに、冒険未経験でパーティも組んだことのないであろう子供がクリアできるわけないだろこんなの!


ブチギレそうになるところではあるが・・・まてまて、本当に4人必要なのか?


エナに理由を聞くと、どうやら壁にの四隅にそれぞれ両手をつけるような場所があるという。

・・・たしかにあった。


「これ、押している間だけ開くとかいう落ち?」


「ん。その可能性もある。その場合は追加で2人必要だぞ。だけど、4人同時に触れた時に鍵が開く仕組みだと思いたい」


もはや脱出ゲームの様相を呈しているのだが、PWKにこんなダンジョンあっただろうか?僕が知る限りはないんだけど・・・

そんなことを思っていても仕方ないけどさ・・・


「ん。まあ一時的にではあるが、手を組んでくれないか?私はエナって言うぞ、君たちは?」


僕はサリアを下ろしながら名乗った。ステータスを鑑定で見られるから名乗り合うのが慣れないけど、前世と同じ感覚でサラッとできた。


「僕はロキ。割と最近冒険者『見習い』になった。もちろん、こちらこそよろしく」


「ん。私も最近冒険者『見習い』になったんだ、よろしく」


次にサリアにエナは目線を動かす。サリアはビクッとして萎縮したようだ。

そういや、ラーラさんの家の前でダラオンとバトってたから、怖いのかもしれない。


とはいえ、僕もサリアに名乗ってもらってないからな・・・代わりに紹介してあげるのもおかしいし。


「この子は喋るの苦手なんだ、後でおいおい名前聞こう」

「背負うほどの仲で名前を知らなかったのか?」

「え、えっと・・・」


ごもっともでもあるにはあるのだけれど・・・


「まあそう言うこともあるって」


話をはぐらかすことにした。

僕はもともとわかっていたからということは言うべきではないだろう。


さて、どうしたものか。

少なくとももう1人現れるまで待つにしても、もしかしたら来ない可能性もあるんだよな。


・・・そして、おそらくグラニーさんの言っていた他の町で起きた孤児集団失踪もこのダンジョンか似たようなところが原因だろう。

となると、時間が経ったらこの空間から外に排出されるということは無さそうだな。


その時は・・・まずいなジ・エンドだ。


こんなとこで終わるのかよ・・・迂闊にダンジョンに入るんじゃなかった・・・

ここできて僕が死んだら莉緒まで道連れだぞ・・・


・・・ゲームの世界はままならないな。突然のバッドエンドが事故みたいに普通に起きるのだ。

バッドエンドは前世もそうだったけどね。


ゲームと同じ世界観だから少し忘れそうになるけど、ここはゲームではない。死んだらそれまでだ。現実と何が違うというのか。

いや、死んだ後も恐ろしいことになることがわかっている今、前世よりもシビアではないか?


そんなことを思っていると、右隣で体育座りをするサリアの方からお腹が鳴る音が聞こえてきた。

ダンジョンに入った時からは考えられないくらい近いところに陣取っているサリア。もはや30センチくらいの距離にいる。


ギュッとお腹を抱えるサリア。


そういえばそろそろお腹が減ってきたな。


こういうダンジョンだとは思わなかったけど、長期戦も覚悟はしていたので、安上がりな蒸かしたジャガイモをいくつか持ってきてあった。

僕は懐からジャガイモを取り出してサリアに渡した。まあ冷え切ってるけど。


「お腹減ったろ」

「ぇ?いいん、ですか・・・?」


さらにぎゅるるるーと音をがなる。


そんな音立てながら言われても・・・いや、放っておきづらいわ。


ジャガイモを渡すとついでにエナにもジャガイモを放り投げた。


「・・・私にもくれるのか?」

「まあいつまでかかるかわからないし。それに、さっきよろしくしたばっかだろ?」

「義理堅い子だな。将来女たらしになるんじゃないぞ?」

「なんでそういう反応になる?」


ニヤッと不敵に笑うエナ。

なんというか様になるな。妙に大人びているというか、本当に7歳かよ。


そんなことを思うのをやめて、ただジャガイモを食べることに集中することにした。


はー、ジャガイモは安定だな。前世ではそれほど好きではなかったジャガイモだが、この世界に来てからはなぜかおいしいと感じる。

他の食事がおいしくないからかもしれない。あと、パサパサしてるイメージだったが、この体は唾液分泌が多いのか、あまり苦に感じない。



・・・話題は特になかったので、3人とも話はしばらくなくなってしまった。


誰か喋れよと思うが、誰か喋ったところですぐにぷっつんとすぐに話が終わってしまうのであった。

口下手女子、クール女子、子供苦手な僕では盛り上がりようもない話だよな。


早く誰か来てくれと僕は一

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