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第七話「未来」

 あの戦争から数年が経った。

 地球からマウニを経由して惑星ヘヴンに入植することは当たり前になり、我が国は地球で自由に暮らしてきた繁栄の歴史を取り戻しつつあった。

 シェルターは、大将が区画を分割し、インフラは京都の碁盤の目を参考に整理した。

 街にはビルが出来、人の活気も盛り上がっている最中である。

 今日は、父の新居に行く日だ。

 父は、惑星ヘヴン全域調査を完遂したのを最後に退役し、今は新居で植物を育てながら隠居している。

 ピンポーン。玄関ベルを鳴らすと、父の声が聞こえる。

 父の新居は古民家風で、庭に縁側、床の間に掛け軸、違棚と和風尽くしだ。

 俺は、お土産に軍で特定の曜日に食べられているレトルト版のカレーを差し入れた。

「ヨウタ。お帰りなさい」

 俺のことをヨウタという人は、モリ隊長しかいない。

 モリ隊長は父と結婚した。というより、モリ隊長は俺の実母だということを移住してから知らされた。子どもの俺としては、もっと早く知らせてくれても良かったのではないかと思うが、二人なりの約束があったらしい。

 その約束はまた今度話してもらうことにしよう。

 モリ隊長も補給部隊隊長を俺に譲って退役し、今は父と二人で楽しく暮らしている。

 俺が今日、父の新居に来たのには理由がある。まだ理由は二人に話していない。

「どうした、何か言いたそうだな」相変わらず父の洞察力は鋭い。

「実は今日来た理由は、結婚の報告です」

 二人の顔が変わる。

「相手は?」母が興味津々に尋ねた。

「実は今日、呼んでいます。」

「そうなのか、早く入ってもらいなさい。」父が促し、扉が開く。

 扉を開けて入ってきたのは、いつもの制服姿とは違い、爽やかで女性らしい服装をしたコウサカだった。

「コウサカさんね、制服と違って私服もかわいいのね」

「ヨウタの初恋の人でしょ」母にはもうバレていたようだ。

 俺とコウサカの間にも父母と同じくらい紆余曲折あったが、惑星ヘヴンに移住してから付き合い始めた。惑星ヘヴンに来てから、いろいろなことが起こった。

「息子を頼む。」父は一言だけ残し、庭仕事に出かけた。父にこんな一面があるなんて知らなかった。

「今日はお母さんが腕によりをかけるわよ、二人とも食べていきなさい。

 これは上官命令よ。」

 張り切ってしまった元隊長は止められない。でも、母の手料理は世界一うまいから期待しよう。

「ヨウタ、お父さん呼んできて。あの人照れているだけだから。」

「照れてない」さすがは元隊長。情報把握能力は衰えていなかった。地獄耳は健在だ。

 家中に、笑い声が響く。

 これからの未来は、きっと明るい。

 そう確信して母の料理を待つ為に、テーブルに着いた。


 完


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