五話『再会』
マウニに配属され、補給部隊のまとめ役として仕事にも慣れてきたある日。
倉庫にて地球から配送されてきた荷物を検品をしていた時だった。
「久々だな、ヨウタ。」後ろから聞き慣れた低声が聞こえた。
父だ。周りの補給部隊員が作業を中断し、一斉に敬礼する。
「作業を続けてくれ。」
父がそう言うと、隊員たちはまた自分の作業に戻った。
父がマウニの一番端にある倉庫に来たのは、息子の仕事ぶりを見ることと、数日以内に攻撃を仕掛けることを連絡する為だった。
去り際に、「ヨウタ、色々なことに対する覚悟はしておけ」と残していった。
父はこの戦闘衛星の部隊長である。そのことからも、この作戦に対する並々ならぬ覚悟を感じた。
一方、父の心境は複雑だった。一人息子がこの戦いで亡くなる可能性があるということ。自分の中では、覚悟ができているはずだが、やはり人の子。死んでほしくないと願ってしまうのが親心である。
私の部隊には、親を地球に残した隊員が多くいる。
そのことを考えると、自らにのしかかる重圧で、禁煙したはずの煙草に手が伸びてしまうのだった。
館内放送で、食事の時間だと知らされる。
俺は、作業を切り上げ隊員と共にテーブルに座った。
「横、いいかな?」コウサカとカツギが声を掛けてきた。
「戦闘機乗りの隊舎はこことは違うだろ?」俺は疑問を投げかけた。
「艦長に呼ばれてね。」二人はそう答えた。
二人は、どうやら新型兵器の操縦訓練中らしかった。周りの隊員も興味を持って聞いている。
新型兵器はロボットのような見た目をしている戦闘機らしい。まあ隊員の半分以上は、女性初の戦闘機乗りであるコウサカの可愛さに目が向いていたが。
飯を食べ終え、仕事に戻る。
マウニ内部は広く、訓練場はここからでは見えない。ただ上空に戦闘機が登れば見えるはずである。検品を終えた俺は、マウニに到着した際に見た展望デッキに行き訓練場をみた。
ぼんやりと、全景が浮かぶ。訓練中なのか、戦闘機が隊列を組み飛び回っている。
俺は、なんとかコウサカとカツギを探そうと目を凝らした。
しかし、相手は戦闘機に乗っているため早くて掴めない。
「コウサカちゃん、探しているの?」いつの間にか横にナカタニがいた。驚いていると。
「新型兵器は、ここでは飛んでないわよ。トップシークレットなんだから。」と俺をからかって仕事に戻っていった。
俺は同期という感情よりももう少しだけコウサカに対して、強い気持ちを持っているのかもしれない。ただ、戦士として誰かを愛するということはそれだけ失った時のダメージが大きくなる。俺はきっとその狭間にいる。覚悟を持たずに、人を愛することは無責任だ。
自分の部屋に戻った後、地球にいるモリ隊長に連絡した。
数日後に攻撃が始まることを伝えると、物資の支給は一旦今向かっている便で最後にすると返ってきた。
「ヨウタ、気を付けてね」
その一言には愛が込められており、何千キロと離れた場所でもしっかりと熱を帯びて暖かかった。