第一話 『邂逅』
操縦席の中では計機が動き、目標までの距離をモニターに表示する。惑星ヘヴンまでの距離は六万メートル、残り六十秒足らずで到着する。
これからが任務本番だ。
スペースヘヴン計画を我が宇宙戦略隊が知ったのは、昨日の昼間だった。
ムネモリ元帥から、惑星ヘヴンの偵察と調査の依頼を与えられ、先発隊を編成。
先発隊隊長として私が選ばれ、今は宇宙空間を目標に向かって進行している。
『隊長、目標見えてきました。』セキから無線が入る。
目の前に見えてきたのは、地球と見間違うかのように真っ青な惑星ヘヴン。
私は周りを見渡し、他の国の戦闘機の姿がないことを確認した。宇宙領土の争いは年々増加しており、一触即発の状況も起きうる可能性があるからだ。
先発隊よりも先にヘヴンの実地調査に行った探査船を探す。その船を中心に周辺を探索し、人類が生存できる環境かどうかを確認するのが今回の任務だからだ。
着陸を許可する。私が発したその言葉と共に、三台の戦闘機は、ヘヴンに到着した。
二酸化炭素濃度が高いが、シダ植物やコケ植物のようなものが生えている。二年前に飛ばした探査船も表面が風化し、植物に覆われていた。
宇宙服は必須だ。日差しと暑さが宇宙服越しにも伝わる。人々が暮らすには、何か対策を講じる必要があると感じた。現実は厳しい。私たちは歩いた、植生や土を採取しながら。
ちょうど探査船から半径五キロ地点。水流の音が聞こえる。かなり大きい。近づいてみると、大きな河が流れていた。人間が生きていく上で絶対的に必要なものの一つを発見したことになる。河に触れた隊員が突如水中に引き摺り込まれた。ワニのような大型生物かもしてない。咄嗟に銃を構えて、隊員がいた辺りに照準を合わせた。水面が揺れる。
水飛沫をあげて飛び出てきたのは、人型の何かだった。見た目は人だが、スライムのような質感と、手が先程引き摺り込まれた隊員の体を貫通していた。
こいつは人ではない。そしておそらく我々部外者に対して敵意を持っている。そして、宇宙服を貫通させる手のような部位。おそらく形を変化させたのだろう。
見たところ一人。こちらの方が数は多いが、果たしてそれがアドバンテージになるか、不明だ。
私は覚悟を決めた。通信担当の隊員に、ヘヴンでの調査・偵察の出来事。未確認生物との交戦を元帥に伝えるために、ヘヴンから脱出しろ。
残りの隊員には、俺と一緒に戦ってくれと。
私は、照準を合わせて、引き金を引いた。最後に浮かんだのは、妻子の顔だった。