1話 プロローグ
奇跡というものが世の中には存在する。魔力、理力、超能力。理外にある力は全て奇跡を起こす。
だが、その力は生命体の祈りによって、常に引き起こされる。奇跡を願うのは知性ある者たちだけだからだ。
そしてその奇跡が常に人々に幸福を齎す結果となるわけでもない。
科学が物凄い進歩を歩んだ世界があった。
その世界では宇宙に夢を持たず、人々は自らが住む惑星を住みやすくしようとしていた。
その世界では核による抑止力は存在しなかった。なんとなれば、魔力が存在し魔法という力を使えたために。核分裂の理が違ったのだ。
魔法と科学の融合した魔法科学はどんどん進歩をしていき……。
行き着く先は戦争にて滅亡をするといった結果であった。
敵国の兵士を倒す兵器であったはずのクリーチャーが世界を徘徊し、人々を無差別に殺していった。本来は豊かな農地を作り出すはずの環境操作の技術は、砂漠と氷河が隣り合わせに存在する人の住めない過酷でありありえない環境を作っていった。
その中で人々は死んでいき……最後に残った人間はこう思った。
「魔法のない世界が良かった」
魔法科学の恐ろしさを知っていた男の最後の願いであった。
その願いは死んでいった人々の願いでもあった。世界に充満する魔力は死んでいった人々と最後に生き残った人間の願いに反応して奇跡を起こす。
並行世界にあった地球へと惑星を移動させたのだ。
融合という形で。
魔力の存在しない科学により成り立っていた地球と融合した惑星。
質量は数倍となり、崩壊するかと思われたが、奇跡は理を変えて、新たなる地球を創り上げた。
多くの人々がその衝撃で死んでいき、クリーチャーが彷徨う世界を創り上げた。
願った最後の人間も死んだが、奇跡はその結果を顧みなかった。魔力のない世界へと移動したことにより奇跡は終えたのだ。
科学の世界は魔力が加わったために終わりを告げた。
人々の悲鳴をレクイエムとして、世界は崩壊したのであった。
これはそんな世界を懸命に生きてゆく人々の話。
ではなく、
3つ目の世界があった。
そこで流行っていたゲームがあった。VRゲームであり、世界中の人々が熱狂するゲーム。
そこで、大勢の人が願った。
「ゲームキャラが生きていればな〜」
と。
駄目人間たちである。それだけリアルなゲームであったのだ。ゲームキャラは優れたAIを持ち、本当の友人や恋人だったらと願ったのだ。
本当に駄目人間たちであるといえよう。
だか、その願いはある一人の少女を特異点として発動し奇跡を起こす。
その世界でも存在はしていたが、オカルトだと認識されずに使われなかった魔力がその願いに反応して、収束して奇跡を起こす。
それは正しく機能した。
ゲーム内の一人のキャラに惑星の魔力は集められて、新たなる世界へと転生させた。
ついでに特異点となった少女も一緒に。
その者がもっとも活躍できるであろう崩壊した世界へと転生させた。人々はゲームキャラが現実世界で活躍して欲しいとも願っていたので。
惜しむらくは、それがおっさんであったことだろう。
ゲームの世界を壊さないように、もっとも必要のないキャラが選ばれたのだ。なんとなれば、ゲームが壊れたら困るというゲーマーの願いもあったので。重要キャラがいなくなるとストーリーなどがめちゃくちゃになるので。
人々の願いによる奇跡。活躍できるキャラと、存在がいらないキャラ。
矛盾した願いが整合性を保つように働き……。
一滴の水粒ともいえる新たなる魂は崩壊した世界へと落ちてゆくのであった。
おっさんの魂が。
おっさんだからすぐに死んじゃうだろう。哀れおっさん。




